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2022年5月28日 (土)

労働判例百選(第10版)

 『労働判例百選(第10版)』は,今回は執筆者ではないので,自分の研究費で購入しました。判例百選は振り返ると,2002年の第7版で初めて執筆に加えていただき,第8版と第9版まで書かせてもらいました。事件は,それぞれ高知放送事件・最高裁判決,第四銀行事件・最高裁判決,パナソニックプラズマディスプレイ(パスコ)事件・最高裁判決でした。第9版は,すでに評釈を書いていた事件であり(第8版もそうでしたが),同じようなことを書いても意味がないと思い,自説を「180度回転させて」,すでに発表している評釈とは正反対のトーンで書いてみました。読者には読み比べてもらえると教育的効果があると思ったのですが,この試みは成功したかはよくわかりません。いずれにせよ,この原稿は,自説によるものではないので,私の業績リストには加えていません。まあ,こういうこともあって,判例百選は第9版で引退となりました。短い間でしたが,どうもありがとうございました。編者の先生には心より感謝しています。判例百選の執筆者に名を連ねるということは,現役バリバリということを意味するので,少し寂しい気がしますが,今回の執筆者には,私の知らない研究者の名前もたくさんいて,世代交代があるのは読者にも新鮮でよいことでしょう(今回はオランゲレル(烏蘭格日楽)さんも入ってよかったです)。拙著の『最新重要判例(第7版)』(弘文堂)は,ロートルの私が一人で200の判例を扱うという無謀なことをしていますが,『労働判例百選』の良い意味でのコラテラルな効果に便乗して,労働判例の理解の広がりに貢献できればと思っています。
 選択判例を見比べると,ほとんど重なっていますが,『労働判例百選』のほうが収録判例が少ないにもかかわらず,私が採り上げていないテーマも採り上げられていて(障害者雇用など),拙著の第8版がもしあるならば,判例選択の参考にさせてもらおうと思っています。また,同じ項目でも,違う裁判例が採り上げられているものもあり,私のほうが保守的な選択をしている感じがしましたが,拙著では解説で新しい動向を書こうとしている点の違いによるものだと思います。
 それはともかく,一読者としてコメントをいうとすれば,本を開けた瞬間,余白が少ないなと思いました。できるだけ多くの情報を盛り込もうとしたのでしょうかね。事件によっては,文献の引用がやや多すぎるのではないか,と思うところもありました。巻末に文献一覧を載せて,文中では引用を簡略化したほうが(菅野・2019など),読者にとっては読みやすいのではないかと思いましたが,判例百選にはすでに固まった様式があるのかもしれませんね。

 

 

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