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2022年5月 7日 (土)

記憶力では勝負できない時代

 今朝の日本経済新聞で,「3メガ銀,今年度の中途採用8割増―新卒偏重から転換」というタイトルの記事が出ていました。銀行が従来型の人員(新卒採用)を減らすのは,AI時代の到来とともに予想されていたことです。新たな業務に対応した即戦力が必要となるので,中途採用が増えるのは当然です。これは新卒を採用して,企業内で人材育成するという日本型雇用システムの終焉を象徴する出来事といえます。FinTechの登場でゆさぶられる銀行などの金融機関で,こうしたことがまず起こるのですが,その後,多くの企業(とくに大企業)でも同様の変化が生じることでしょう。中小企業では,もともと中途採用が多いので,変化はそれほど顕著な形では現れないようにみえるでしょうが,ただ中途採用の質がデジタル人材に変わっていくという点では大企業と同じような変化が予想されます。
 大学も高校も,また学生もその保護者も,意識を変えておかなければ大変なことになります。学歴不問というのは,かなり前から話題になることがありましたが,結局は一般化しませんでした。だから今回も同じと思っている人が多いと思います。しかし,企業内でどのような人材が必要となるかは,生産に用いている技術によって左右されるのです。その技術の革新がとつてもない速さと規模で起きているのです。現在の学歴は従来型技術の下で求められていたスキルを前提としたものですが,求められるスキルが変わるのです。当然,学歴の内容も変わります。
 受験秀才が秀才である理由の一つは,記憶力の良さにあります。ブッシュマンの時代から,優秀とされる人は記憶力が抜群であったと思います。言語や文字の発明により,脳で記憶する必要性は小さくなりましたが,それでもなお記憶力は重要な意味をもってきました。記憶力などをつかさどる脳の部位(大脳皮質や海馬)の発達が,ヒトが生き延びるために必要であったのです。そのため,記憶力の高い人の遺伝子は,生存に有利なので,ずっと継承されてきたのだと思います。だから,そういう部位が発達していて「頭が良い」人が尊敬されるのも当然だったのです。そういう人が社会を統率していくことが,ヒトの生き残り戦略においても重要であったのです。
 しかしいまデジタル時代が到来して,記憶のかなりの部分が「外付け」のようになると,ヒトの生存戦略における記憶の価値が減っていくことになるかもしれません。そうなると,私たちにとって生存のために求められるものが変わっていくでしょう。記憶だけでなく,様々な精神活動もAIが代替できるようになると,脳はどう変化するのでしょうか。人間を人間たらしめている大脳皮質や前頭前野にも変化が生じるのでしょうか。ぜひ脳科学者に話を聞いてみたいです。

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