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2022年4月26日 (火)

パラサイト―半地下の家族

 アカデミー賞もカンヌのパルム・ドール(Palme d'Or)もとった作品ということで前から関心を持っていましたが,Prime Videoで無料配信しているのに気づいたので,観てみました。坂の上の豪邸に住む富裕なパク一家と貧民窟にある半地下の家に住むキム一家。凄まじい社会的格差があり,とても接点などなさそうなのですが,キム家の息子ギウが,留学する友人から,パク家の娘の家庭教師を引き継ぐよう頼まれたことから接点が生まれ,ギウはパク家の幼い息子ダノンの美術の家庭教師に妹のギジョンを推薦し,さらにパク家のお抱え運転手をギジョンの策略で追い出し,キム家の父をその後任に据えることに成功し,さらにパク家の家政婦が桃アレルギーであることを利用して,咳き込む彼女が結核の疑いがあるとして追い出して,キム家の母をその後任に送り込み,結局,キム家は家族全員がパク家にパラサイトすることに成功しました。もちろんパク家の人たちは,彼らが家族であるとは知りません。ただしダノンだけは,4人のにおいが同じであることに気づいていました。
 パク家がダノンの誕生日に泊まりがけのキャンプに出かけたため,その留守中にキム家の4人が酒盛りをしていたのですが,ここから話が急展開します。まず家政婦の前任者がやってくるのですが,恐ろしい告白をします。さらに大雨となり,キャンプを切り上げてパク家が突然帰宅することになります。
 実はこの家の地下には人が住んでいたのです。半地下どころではなく,日の当たらない地下に住んでいるという究極の下層民がいたのです。でもパク家はそのことを知りません。前家政婦は,借金取りから逃れて地下に隠れていた夫にこっそり食料を与えていました。パク家の不在を知った前家政婦は,何とか夫に食料を与え続けてほしいと懇願に来たのです。最後は,ダノンの誕生パーティのときに悲劇が起こり,ギジョンは殺され,父親はパク家の主人を殺してしまいます。細かいところは映画を観ての楽しみ,ということにしておきます。
 この映画が韓国の格差社会の現実を示しているかどうかわかりませんが,おそらくそれほど乖離したものではないのでしょう。徹底的に下品だが,たくましく生きているキム家,上品で嫌みもないパク家ですが,でも両者が接してしまうと,どうしても相容れないものが出てきてしまいます。キム家がいくら取りつくろっても,パク家はキム家の悪臭に耐えられないのです。しかし,この悪臭はキム家の人たちは自覚していないので,指摘されてもどうしようもないのです。これは単に体臭だけではなく,どうしても隠すことができない貧民としての臭いというものを象徴しているのでしょう。そこに格差の絶望的なところがあるような気がしました(ただ,パク家の長女がギウに恋してしまうところは,恋はこういう格差を簡単に超えてしまうことを示しています。もっとも,こういう恋は,いっときの情熱にかられた「熱病」であり,それが覚めたときには,たいていはうまくいかなくなるのですが)。
 どことなくコミカルな感じのする前半とサスペンス風の後半の落差が見事で,うまく作られていると思いました。また半地下の風景,地下室の中の様子,豪邸からみた窓の風景のコントラストもうまいと思いました。最後は,ギウがいつか金持ちになって,あの豪邸を買い取って,地下に逃げ込んだ父親を救い出したいと考えているというところで終わっているのですが,それはどうみても無理そうであり,このままこの父親は一生,地下で生きていくのかということを連想させて,なんとも後味が悪い終わり方になりました。しかし,ここで安易に,ギウが成功してハッピーエンドということにしなかったところが,映画の成功につながったのかもしれませんね。

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