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2022年3月10日 (木)

強く美しい将棋でA級へ

 昨日の順位戦B1組は,A級昇級がかかっていた藤井聡太竜王(五冠),稲葉陽八段,千田翔太七段がそろって勝ち,藤井竜王が102敗でトップとなり昇級,稲葉八段と千田七段は93敗で並びましたが,順位が上の稲葉八段が勝って昇級を決めました。稲葉八段は降級後に1期で返り咲きです。藤井竜王は,もちろん初めてのA級です。いよいよ来年度は名人獲りの年になります。谷川浩司九段の最年少名人記録を破るかが注目されます。
 藤井竜王に敗れた佐々木勇気七段は,7連勝後,5連敗となりました。しかし,来期は順位も上げて,千田七段と並ぶA級昇級の最有力候補となるでしょう。ただ昨日の対局は,佐々木七段にとっては,藤井竜王の強さを思い知らされたものになったのではないでしょうか。佐々木七段が桂の成り捨てで飛車を呼び込んで,角と飛車が並んだところで香の田楽刺しをしたのです(飛車か角がとれる)が,これがどうも悪手だったようです。華麗な手順とみえたのですが,藤井竜王はその先をみていたのです。その後も藤井玉は中段でぽつんとしていて,どうみても危なそうですが,なかなか寄らず,逆にあっというまに佐々木玉が寄せられてしまいました。相手に多少,攻められていても,しっかり読み切って最短距離で攻め勝つ将棋は魅力的です。最終盤も,自玉に詰みがなかったので,相手玉に詰めろをかけて安全に攻める手もあったのですが,詰みがある以上は詰みを狙うという,まさに谷川流の寄せで見事に相手を投了に追い込みました。
 先日のA級順位戦の最終局での,羽生善治九段と広瀬章人八段の対局は,広瀬八段が勝ったのですが,最終盤で羽生玉にわかりやすい詰みがあるのに,広瀬八段は羽生玉を詰まさずに,詰めろをかけました。プロからすると,下手に詰みをめざすと,万が一,詰ましそこなえば負けてしまうので,慎重に詰めろをかけて攻めるというのが,勝負にこだわるのならありえる戦略です。ただ,これは美学の問題であり,詰みがあるのなら,それを目指すのがプロであるというのが谷川流で,これは勝率を下げてしまいかねませんが,それでも谷川九段は1300勝以上しているのです。そういう将棋だからファンを魅了して,プロからも尊敬されるのです。広瀬八段の将棋は,その点で残念でした。藤井竜王は,大一番でも,安全勝ちなどを目指さず,詰みがあれば詰ましてしまうということで,美しく強い将棋でした。広瀬八段はA級に連続在籍しているトップ棋士ですが,これでは藤井竜王には勝てないだろうなと思ってしまいました。
 来期のA級は,渡辺明名人か挑戦者の斎藤慎太郎八段のどちらかが1位となり,そのあと糸谷哲郎八段,佐藤天彦九段,豊島将之九段,広瀬八段,永瀬拓矢王座,佐藤康光九段,菅井竜也八段,それに藤井竜王と稲葉八段という順位になります。
 B1組は,羽生善治九段が来期も順位戦を指すのかが注目ですが,おそらく指すでしょう。B1組からの降級は,すでに決まっている松尾歩八段と並んで,木村一基九段が千田七段に負けて降級,阿久津主税八段が,久保利明九段との負けたほうが降級という対決に敗れて降級となりました。木村九段は,順位3位からの降級でショックも大きいでしょう。松尾八段は,A級に上がれないまま,降級となってしまいました。同世代の阿久津八段は2A級に昇級していますし(ただしトータルで1勝しかできませんでした),山崎八段も今回降級することになりましたが,1度はA級に昇級しました。引退したハッシーもA級に1期だけ在籍したことがありました。彼らと同世代の松尾八段もまだ可能性がないわけではありませんし,このままでは終われない気持ちかもしれません。現在,NHK杯では決勝進出をはたしているので,そこでB2組降格のうっぷんを晴らせるかもしれません。

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