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2022年3月 9日 (水)

Putin の夢を実現させてはならない

 ウクライナの大統領ゼレンスキー(Zelenskyy)を,以前に頼りないと書いてしまいした。プロの政治家としてどうなのかという見方もあったものの,国家存亡の危機の際にみせた胆力はさすがで,さしものPutinも手こずっている感じです。
 Putinの武力侵攻は,私たちの観点からすると狂っているとしか言えないのですが,彼を単に異常者とみているだけでは,この戦争の本質を見誤るかもしれません。彼には彼の論理があるのでしょう。それを考えるうえで参考となるのが,前にプロスペクト理論を紹介したときにふれた「参照点」の議論です。彼にとって,領土としての「参照点」は,ウクライナも含まれているのです。というか,彼は30年前のソ連崩壊の屈辱を雪ぐということを考えているとも言われており,そうなると旧ソ連こそ,彼の考える領土の「参照点」となるわけです。ウクライナはむろん,バルト三国なども含まれます(カリーニングラードを飛び地にしない)。とりわけウクライナは,NATO諸国との間の緩衝地であったわけで,その地がNATO寄りになるとすれば,Putinはロシアの安全保障にきわめて深刻な脅威となると受けとめても不思議ではありません。もちろん,だからといって軍事侵攻が許されるわけではなく,国際常識からすると彼は「狂っている」のですが,彼は決して精神に異常をきたして戦争をしているのではなく,ある意味ではゼレンスキーと同じような気持ちで国家の危機を守っているつもりでいるのかもしれません。もちろん,そうした夢や野心は,絶対にこうした武力によって実現させてはなりません。
 こうした領土へのこだわりは,中国にもあてはまるようです。中国は,清朝時代に列強にずたずたにされた屈辱を忘れていないでしょう。中国の領土の「参照点」は,清朝の最盛期の領土だとも言われています。そうすると,台湾はもちろん,モンゴル,ウイグル,チベットも領土となるし,冊封国まで含めれば琉球(沖縄)や朝鮮なども含まれることになります。もし,中国がこうした独自の「領土」の論理に基づき,その奪還という夢を実現しようと考えているのだとすると,日本はそれがおかしいと批判するだけでは武力侵攻を止められないかもしれません。中国の論理を理解し,中国の次の一手を読み間違えないようにしっかりとした対策をとることが必要となります。その際,日本には,武力ではなく,平和的な外交で勝負してほしいです。ウクライナの現状をみると,こうした主張の説得力が乏しいのはわかるのですが……

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