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2022年3月29日 (火)

意欲ある役人に任せよ

 328日の日本経済新聞の社説では,「こども家庭庁は本来の役割を果たせるか」というタイトルで,現在の子ども政策について厳しいコメントがされていました。幼保一元化が進まないのは,幼稚園行政の権限を手放さない文科省が悪いという書きぶりでした。長年議論されていながら,なかなか出口がみえない幼保一元化について,一度わかりやすく論点を整理して国民に示してもらえればと思います。たんに官庁の縄張り争いというだけでもないようです。
 ただ,いずれにせよ,幼稚園と保育所が異なる制度として併存していることがわかりにくいのは確かです。子どもと家庭のためにどういう政策が望ましいのか,そのためにはどういう仕組みが必要なのか,という逆算方式で考えてもらたいものです。
 これからは従来の官庁の縄張りをまたがる問題がどんどん出てくることでしょう。労働の場面でいうと,フリーワーカー(フリーランスなどの自営的就労者)の扱いが,厚生労働省と経済産業省にまたがっており,さらにテレワークとなると総務省も関係し,業界規制という観点から,業種によっては農林省や国土交通省なども関係してくるというように,担当官庁が錯綜してしまっています。内閣府が,それを統合するということになるのでしょうが,内閣府自身もそもそも混成部隊で,出身官庁からどこまで独立して仕事ができるかよくわかりません。
 私は,政府が決めたプロジェクトごとに,省庁の枠を超えて意欲と能力のある官僚を集めて,出身省庁から独立して活動してできるTask forceを作り,そこで法案を練り上げて,直接,国会に提出するというようなことをやってもらえればと思っています。若手官僚は,政策のことをやりたくて役所に入ったはずです。できるだけ若くて柔軟で体力も気力もあるうちに,政策にタッチさせてやってもらいたいです。出身省庁から独立して(つまり省益ではなく,真の意味での国民の利益を考えて)活動しても,出世に役立たないから本気でやらないだろうという声もありそうですが,出世などを気にせずにやる気を見せてくれる官僚はきっといると信じています。それに官僚も今後は長く働くつもりはなく,中途で退職して次のキャリアを展開しようとする人が増えていくと思います。そうなると組織は流動化し,中途で辞めていく人がいても,また良い人材が入ってくるという好循環が起こるでしょう。
 それともう一つ指摘したいのは,役所の会合は,私が知るかぎり,役人は事務局で,委員には有識者というような編成が多く,その委員の名前はだいたい同じになります。役人は裏方に回り,自ら腕をふるえない以上,自分たちが使いやすい委員を選任する必要があるので,どうしても候補者はかぎられてくるのです。たとえば労働政策でいえば,バリバリのプロレーバーは選ばれないわけです。しかし,役人が自らチームをつくって委員となっていれば,外部の意見は,いわば「参考意見」として,いろんなタイプのものを聞くことができ,それだけ視野が広がって良い政策立案ができるはずです。とくに落としどころが決まっていない課題には,多様な意見を集めることが必要です。難題に直面して必死に解決を模索しながら,政策をつくりあげる場が官庁であるということになってほしいものです。そうなると研究者志望でも,政策志向があれば,官庁に入ってみようかという気になるかもしれません。
 こども家庭庁のような新しい組織に対しては,とくに子育て世代の若い役人のなかで,自ら腕をふるってみたいと思っている人が多いと想像しています。新しい官庁が,省益を考えず,国民そして自分たちのこどものために何ができるかを真摯に考えてくれる役人が叡智を結集できる場となってほしいと心から願っています。

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