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2022年2月 8日 (火)

労働組合の役割

 2月7日の日本経済新聞の朝刊の複眼で「多様な働き方に労組は」というタイトルで,識者らの意見が出ていました。JILPTの濱口桂一郎さんや東大の神吉知郁子さんも登場していました。また別の面では,労働協約の地域レベルの拡張適用も採り上げられていて,ドイツのことをJILPTの山本陽大さんが紹介していました。ということで,労働組合は旬のテーマのようです。もっとも法律家たちは依然として,労働組合に相当な役割を期待しているのですが,現実には解体に向かっているのではないかと危惧しています(私は『労働者代表制に関する研究』(有斐閣)などでも執筆しているように,もともと親労働組合派ですが,ただそれは藤田若雄先生流の誓約集団型のものです[宗教的な背景はありませんが])。
 紙面で日立製作所の執行役専務の方が述べておられたように「人の管理はマスから個別の管理に変わっていく」ところです。私の『人事労働法』(弘文堂)も,そういう視点から個人の納得を重視する議論を展開していますが,「個別の管理」を重視すると,労働組合というものの役割は相対的に低下せざるをえません。うまく意見を集約できれば,労働組合はなお統一的な交渉チャンネルとして有用ですが,個人の見解が多様化するなか,そういうことは経営側が人事管理として行うほうが,より効率的にできそうです。日立の企業別組合がどういう組織かは知りませんが,大企業の企業別組合が,オープンショップにして労働者に加入の選択ができるようにしたとき,どれだけの従業員が労働組合に頼ろうと考えるでしょうか。企業内のコミュニケーションも,ICTの発達でずいぶんと変わってきているなか,労働組合的な組織が,個人化やICT化にどのように対応していけるかが,今後の生き残りのポイントであり,そこでうまくいかなければ労働組合不要論もでてくるでしょう。
 一方,労働組合の活性化の可能性は,実は,個人事業主(フリーワーカー)のなかにみられるようにも思えます。昨日,ECCジュニアの講師が労働組合を結成したという報道がされていました。フランチャイズ経営で,講師は個人事業主とされているので,コンビニの加盟店の労働組合と同じような話になるのかもしれません。オンライン講義を認めないというフランチャイザーの態度に反発しているようなので,少なくともその点は,オンライン推進派の私としては講師側にシンパシーを感じてしまいます。
 今後この「労働組合」がどういう活動を展開していくのかわかりませんが,フランチャイザー側が協議に応じるというのであれば,団体交渉にこだわらずに協議をしたほうがよいと思います。一方で,フランチャイザー側が,団体交渉でないなら誠実交渉義務もないとして,いい加減な対応をすると,泥沼の法律紛争になりかねません(労働者性,使用者性をめぐる法解釈が錯綜し,労働委員会や裁判所で長年闘うことになるでしょう)。私は個人事業主(フランチャイジー)にとっても,また経営者(フランチャイザー)のためにも,法的な意味での団体交渉かどうかにこだわらないほうがよいし,もちろん経営側もしっかりと「労働組合」に誠意をもった対応して話し合いをしてもらいたいと思っています。
 ところで,労組法上の労働者や労働組合に該当するかはともかく,働く人たちが自分たちの職業に関係する利益を守るために結集するというのは,労働組合の原点にかかわるものです。憲法の「職業」概念も,自営か雇用かに関係なく,こうした団結と結びつくものだと思っています(この点は,2015年の「憲法の沈黙と労働組合像」法学教室41634頁で,個人事業主そのものに言及しているわけではありませんが,そうした発想を示唆しているつもりです)。まさに誓約集団型の労働組合を想起させるものであり,それが労働法の外に置かれてきた個人事業主のなかにみられるのは興味深いです。

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