日本の教育が危ない? 日本の教育が危ない?
2月15日の日本経済新聞朝刊のインサイドアウトの「学校パソコン,もう返したい 1人1台ばらまき先行,教師なお「紙と鉛筆」」という記事は衝撃的でした。教師が簡単にデジタル対応できないのは予想できていましたが,それでも「GIGAスクール構想」が失敗に終わりそうな現実を目の当たりすると絶望的な気分になってきました。問題意識をもっている親たちは,自分の子を公立学校には行かせたくないと考えるようになるでしょう。子に十分なデジタル教育をしてくれる私立学校や海外の学校へと退避するかもしれません。 現時点のデジタルデバイドに配慮して,低いほうに合わせた教育を継続するのは,格差をつけないようにする優しい政策のようですが,根本的な解決にはならず,いっそう深刻なデジタルデバイドを生んでしまうのです。これは労働政策の面で,労働者の能力開発についての政策を後回しにして,現時点の生産性の低い労働者の賃金を格差是正という理由で引き上げる政策を進めると,よりいっそう格差を固定化するというのと似た面があります。しかも教育のほうは,教師側のデジタルデバイドも原因ということなので,問題はいっそう深刻です。
現在の子どもたちは,デジタルネイティブです。ゼロ歳児でも,1歳近くになると,スマホやタブレットを触り,適当にスクロールしながら画面を変えていきます。もう少し大きくなると,パスワードも突破してしまいます。ももちろん,昔から赤ちゃんのリモコン好きは有名です。子どもにデジタル機器を触らせないようにしようと思っても,おそらく現代の生活ではそれは不可能に近いことでしょう。まだ言葉を話せなくても,Siriに語りかけたりもします(そうすると,Siri は片言でも聞き取って答えたりもします)。在宅就労が増えて,親が子を膝に乗せてパソコン作業をすることも増えているでしょう。(良いか悪いかはさておき)デジタル環境にどっぷりつかった子どもたちが次々と入園,入学してくるなかで,「紙と鉛筆」しか対応できない教師は,親だけでなく,子との間でもコミュニケーションがとれないでしょう。学校に入ったとたん,途上国レベルの教育ということになっては困ります(実はいま途上国とされている国は,デジタル的にはもっと進んだ教育に取り組んでいるようです)。
良い教育ができなければ,人材劣化が起こったり,あるいは人材流出が進んだりするので,どっちにしろ日本の将来は大変なことになります。首相をはじめ偉い人たちは,自分たちの孫に対してどのような教育を受けさせたいかということをよく考えて,公教育の改革に真剣に取り組んでもらいたいです。教育委員会の幹部にも,デジタルスキルのある人に加わってもらわなければ困ります。
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