藤井聡太五冠誕生
王将戦は,藤井聡太四冠の4連勝で,ついに史上最年少の五冠(竜王,王位,叡王,王将,棋聖)となりました。これで豊島将之九段に続き,渡辺明三冠も4タテで撃破しました。たいへんなことですね。王将戦は挑戦者決定リーグに最強メンバーが集まることでも有名で,かつては名人位に次ぐ価値のある棋戦だったと思います。この歴史ある王将のタイトルをついに,この天才棋士が獲りましたね。これで,前にも書いたように,棋界の勢力図は完全に変わりました。藤井五冠,渡辺二冠(名人,棋王),永瀬拓矢王座がタイトル保持者です。ただ,もはや四強や三強ではなく,藤井一強時代というべきでしょう。今後,渡辺二冠に挽回する力が残っているかですが,藤井五冠を脅かすとすれば,それはもう少し若い世代になるかもしれません。
五冠ということになると,谷川浩司九段も経験がなく(いまから思えば,1991年の竜王,王位,王座の三冠時代に,フルセットの末に福崎文吾八段(当時)に王座を奪われたのが大きく,そこで王座戦を防衛していれば,その後の棋聖,王将の二冠の獲得で五冠の達成ができていました),大山康晴,中原誠という昭和の大名人と羽生善治九段しかいません。19歳での五冠ということが大きく報道されていますが,驚くべきは五冠を達成したことそれ自体であり,10代という点は,(それも凄いことではありますが)棋士は20代が最も強いといえるので,五冠の衝撃ほど大きなものではないように思えます。ただ,藤井五冠の場合は,この勢いはとまらず,21歳の八冠もありえないことではありません。
棋王戦は,渡辺二冠と永瀬王座との間で現在進行中であり,藤井五冠が挑戦するとしても1年後となります。名人戦は,まずは来期にA級に昇級して,そこで挑戦権を獲得しなければなりません。次の名人戦で渡辺名人が防衛すれば,渡辺名人との対局となり,挑戦者に決定している斎藤慎太郎八段が名人位をとると,斎藤八段との戦いとなります。王座戦は秋に始まりますので,当面は6月から7月にかけて行われる棋聖戦,王位戦,叡王戦の防衛戦をこなしながら,次の王座戦で六冠を目指すことになるでしょう。叡王戦では,すでに渡辺二冠と永瀬王座は敗退しています。王位戦は挑戦者決定リーグがこれから始まりますが,こちらも渡辺二冠と永瀬王座はすでに予選で敗退しています。王位戦リーグは,前王位の豊島九段が挑戦者になる可能性が高いと思われます。かつて藤井五冠の前に壁として立ちはだかっていた豊島九段としては,そこでリベンジできるかが注目です。