ロクセラーナ
ウクライナが,きなくさくなっていますね。ロシアという国は,終戦時のソ連の行動などから信用できないと思っていますが,今回はBiden 大統領が,昨夏のアフガニスタンの轍を踏まないようにということか,積極的な介入姿勢をみせているため,かえって事態をこじらせているような印象もあります。好戦的な言葉の応酬をしている白人たちに任せていたら,世界はどんでもないことになるのではと恐怖を感じています。
ウクライナという国は,私たちにとって,とても遠い国です。どういう国で,どういう暮らしをしている人なのかなど,ほとんど想像がつきません。地球儀でみてみると大きな国ですね。ロシアと西欧の中間に位置するので,こういうところが争いの焦点となりやすいのかもしれません。現在,ウクライナの大統領は,ドラマで大統領役をやって人気を博した勢いで当選したといわれている政治の素人のようで,だからダメと決めつけることはできないものの,この世界レベルの戦争危機をどう乗り越えられるのかという点からは,頼りない感じがしてしまいます。
ところで,ウクライナというと,思い浮かぶのがロクセラーナという女性のことです。ロクセラーナとは,ルーシ人の女という意味で,ルーシ人は現在のウクライナに住んでいた人です(ただ,ルーシ人をウクライナ人と言ってよいのかはよくわかりません)。16世紀のオスマン帝国最盛期のスレイマン大帝の皇后の座に,奴隷の立場からのしあがってついて,その次の皇帝の母にもなった女性です。彼女は,本名はアレクサンドラで,家族も含めギリシャ正教の信者でしたが,タタール人に襲われて,家族や婚約者は殺され,彼女だけ奴隷としてオスマン帝国に売り飛ばされたのです。しかし,彼女はたくましい女性でした。スレイマンを誘惑して,自らが世界支配をしようともくろむのです。彼女の野望は実現し,スレイマンから大変な寵愛を受けます。スレイマンには,同じように奴隷から大出世した大宰相イブラヒム(Venezia共和国領であったParga出身でイタリア語も話す)もいますが,彼とも対立し,彼の死亡後,大きな権力を握ります。
スレイマン(1世)以外は世界史の教科書には出てこない登場人物ですが,私が知っているのは,トルコのドラマ「オスマン帝国外伝~愛と欲望のハレム~」を観たからです。このドラマは,アレクサンドラ(後にヒュッレムと呼ばれるようになります。ロクセラーナは西洋からの呼び名のようです)が,上述のような,奴隷の立場から,当時の文字どおり世界の最高権力者の一人にとりいって大出世し,後継皇帝の母になるというサクセス・ストーリーが,まさに大河ドラマ以上のスケールで展開されています。私はまだ全編(シーズン1~4)をきちんと観たわけではありませんが,ときどき寝る前に観て楽しんでいます。
現実は,もちろんドラマのように楽しんでなどはいられません。ドラマでもタタール人の侵略で,一家皆殺しで奴隷にされるというところから始まっています。いまウクライナの人(とくにロシア系ではない人)は,ロシアからの侵攻にビクビクしている毎日でしょう。この現代社会において,隣国による自国侵略がリアルに差し迫っているという状況が欧州の真ん中で起きているのです。大国の自制が望まれるなんて呑気なことを言っている場合ではないのかもしれませんが,だからといって経済制裁の威嚇をしても,それじゃガスパイプラインを止められたらどうするのかということを考えると,欧州は本気で制裁はできないのではないでしょうか。日本はロシアにも米国にも,ガスではなく,外交のパイプがあるはずであり,制裁をちらつかすような荒っぽい方法を使わない,もっとうまい外交で仲介ができないかと思いますが,すでに日本の手に余るのかもしれません。ただ日本では,NATOを拡大するなというロシアの要求は無理難題を言っていると受け取られていますが,自国の領土の近くに敵の軍事的な同盟が及んでくることに警戒感をもつ気持ちもわからないではありません。だからといって主権国家のウクライナを侵略してよいということには絶対にならないのですが,条件を出しているかぎりは,和解の可能性があると思ってしまうのが,”労働委員会”的な発想です。国際社会の現実はそんな甘いものではないのかもしれませんが。
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