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2022年2月23日 (水)

スノーデン

 公益通報者保護法やEnronの内部告発などが小さく思えるほどの超弩級の内部告発が,Snowden氏によるアメリカ政府の諜報活動に関する内部告発です。少し前の2016年の映画ですが,その実話をテーマとした,Oliver Stone監督のその名も「Snowden」を観ました。純粋な正義感にあふれる青年は,公私に関係なく他人の情報を,テロ対策という名目で,ただ実はそれと無関係に盗取することに我慢できなくなったのでしょう。自分のもつ技術が,そういうことに使われていたことへの贖罪の意識もあったのかもしれません。まさにすべてを捨てて決死の覚悟で内部告発をしたのです。日本の公益通報者保護法は,「不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的」があれば保護されなくなるのです(21項柱書)が,そんな主観的要件を設定するのが馬鹿げたことと思えるほど,正義のための「純粋な」内部告発だったのでしょう。NSA(アメリカ国家安全保障局)CIAなど国家秘密にかかわる仕事に従事し,報酬をもらっている以上,その漏洩行為は許されないというのは当然としても,国民に嘘をつきながら,国民から黙ってプライバシーにかかわる情報を収集するというのは,アメリカの民主主義の精神に反するというSnowden の信念を支持する人も多いでしょう。映画を観ているだけでは,彼が“whistleblower”(警笛をならす人,すなわち「内部告発者」の意味)になる前に,十分に内部的な違法の是正活動に尽力していたか不明です。ただ,そういうことをやろうとしても無理であった可能性は高く,そのためマスコミへのリークも仕方がないと考える人も多いのではないかと思います。Snowden氏は,現在も亡命先のロシアにいるのでしょうか。米ロ関係がこじれることが,Snowden氏のこれからの運命にも影響を及ぼすかもしれません。ただ,史上最大の内部告発者といえるSnowden氏をどう扱うかは,アメリカ政府としても今後,頭が痛いことでしょう。
 日本も無関係ではありません。彼は日本に住んでいたことがあり,スパイ活動をしていました。映画のなかで,もし日本が同盟国でなくなったら,日本は終わりと語るシーンが出てきます。たんに電話を盗聴するだけでなく,物的施設への打撃も考えていたのです。送電網,病院などにマルウエアを仕込ませていて,日本中を真っ暗闇にすることができるというのです。アメリカというのは,そういう国だということです。この映画のシーンは,何かのSF映画と思わず勘違いしてしまいそうなのですが,そうではありません。
 Snowdenのリークが20136月で,この映画の公開が2016年です。それから5年以上経ち,状況がどう変わっているのか,よくはわかりません。Intelligence の活動は,テロ防止など国益を守るための必要性は理解できるとはいえ,やはり不気味です。家の中にいても,インターネットにつながっているかぎり,いつ誰が覗いているか,わかりません。パソコンやスマホが危ないだけでなく,IoT家電のようなものも,もちろん危ないわけです。悪意ある人がやるのはもちろん問題ですが,自国やさらには外国政府がやっているかもしれないのです。情報については,その利用方法についての教育も大切ですが,サイバーセキュリティ教育が重要なのであり,さらにいうと,公権力による私人への「サイバー攻撃」(とくに個人情報の無断での盗み取り)がなされないようにすることも,デジタル社会における新たな基本権人権(自由権)として保障されるべきでしょう。現在の憲法であれば13条の幸福追求権や21条2項の通信の秘密に含まれるという解釈になるのかもしれませんが,「デジタル憲法」論もあることなので,そこできちんと位置づけてもらいたいですね。
 そんなことを考えさせてくれる映画ですので,まだ観ていない人は,ぜひ観てみてください。私はHuluで観ました。

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