ニューカラー
2月2日の日本経済新聞で紹介されていた「2030 Game Change (3)教育 ニューカラー層,21世紀の主役に」という記事は注目です。ニューカラーとは「new collar」のことですが,ホワイトカラー(white collar)でもブルーカラー(blue collar)でもないというか,そういう分類とは次元が異なるものです。Wikipedia によると,「A new-collar worker is an individual who develops technical and soft skills needed to work in the contemporary technology industry through nontraditional education paths.」と定義されていました。従来の教育コースとは異なる形で,現代の技術社会に求められている職業上のスキルを習得している労働者ということでしょう。
木曜日に,大阪府社会保険労務士会の大阪北東支部でオンライン講演をしました(テーマは「AIと雇用」)が,そこでもDX社会に適合した教育の重要性に言及しました。労働問題は,今後は教育問題だという,いつもの主張ですが,ニューカラーという言葉をつかうと,教育の重要性がより明確になっていたかもしれません。上記の日経新聞の記事では,「終身雇用の慣行を背景にリスキリングの意識が希薄な日本」と述べて,警鐘を鳴らしていましたが,社会保険労務士のように専門的な職業に従事している人であっても,これからはリスキリングは避けられないでしょう。
ところで,DX社会というと,デジタル技術をもった理系的な知識や技能が求められると考えがちですが,そうではなく,AIやロボットなどの機械ではできない,まさに人間的なものが求められる職業に将来性があるわけです。DX社会に必要なのは知的創造性をはじめとする,まさに総合的な力です。学歴は,DX前の社会を想定した学力の格付けのようなもので,それは今後,まったく意味をもたなくなるわけです。ちなみに宇宙飛行士への応募は学歴不問だそうですが,知力・体力・人格が総合的に求められる職業には学歴は関係ないということでしょう。
日経新聞の同じ日の紙面には,もう一つ「人材の価値,開示に指針」というタイトルで,政府が,この夏にも,企業の「人的資本」に関する情報開示指針をつくるという記事が出ていました。人材教育面では,リキリングや社外での学習機会の方針が開示される情報の候補になっているようですが,私が投資家なら,学歴の散らばりなども情報として知りたいところです。
人材のダイバーシティは,いろんな個性をもった社員がどれだけいるかということも,ほんとうは含むはずなので,学歴の多様性がチェックポイントになるのです。学歴が能力の尺度にならなくなるなか,企業がほんとうに能力のある社員を採用していれば,学歴がちらばっているほうが自然でしょう。ひょっとすると,ニューカラーが主役になる時代には,これまでとはまったく違う新たな学歴の序列が現れてくるかもしれません(通常の四年制大学卒が学歴の最下位となり,種々の専門学校卒のほうが,はるかに上位に位置づけられるなど)。
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