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2022年1月 2日 (日)

デジアナ・バランスのもつ可能性

 デジアナ・バランスは,デジタルとアナログのバランスという意味ですが,2020年のAt will workでの「Work Story Award」で審査員をしたときに私からの賞に付けた名が「デジアナ・バランス賞」でした(株式会社ナラティブベースに授与しました)。
 日本におけるデジタル化の遅れは深刻なので,デジタル・ファーストの精神でということを強調してきましたが,ほんとうはその次のステップがあるはずです。アナログとのバランスです。心や感情のようなアナログ的なものの価値はデジタル時代においても色あせることはありません。もっとも,アナログ的な価値をデジタル化を拒否する言い訳にしていることもあるので,あえてこれまではデジタル化の価値を強調してきたのですが,ほんとうは両者のバランスが必要です。おそらく2022年は,社会の隅々にデジタル化が浸透するDX元年となるでしょう。そうなると次の目標はアナログ的な価値の再発見であり,デジアナ・バランスとなるのです。もちろん様々な分野での最先端を走っている方は,デジアナ・バランスの重要性など先刻承知のことでしょうが,いまでもなおデジタル化を,国に指示してもらえなければやれないような企業や個人が少なくありません。デジタルと言われたからデジタル,テレワークと言われたから渋々テレワークというのでは,デジアナ・バランスにより新たな価値を生み出していこうとする姿勢に欠けていると言わざるを得ません。
 私の専門とする労働についても,デジアナ・バランスという視点をもって根本から考え直さなければなりません。デジタル変革が進むなか,人は労働にどのような意義を見いだすのでしょうか。私は2020年に刊行した『デジタル変革後の「労働」と「法」』(日本法令)では,(成功しているかどうかわかりませんが)この根本問題から考えてみようとしました。労働の意義を考えてみることで,これから自分たちがどうやって生きていけばよいかが見えてくるような気がします。私の考える労働とは,自分の所属する共同体社会への貢献であり,具体的に言えば,自分たちの住む社会の抱える課題の解決のために,自分のできることで貢献することです(それは突き詰めれば動物としての生存を確保するために作られた共同体の持続可能性を目的とするものといえます)。そこではアナログ的な接点のある日常生活をベースにしながら,最先端のデジタル技術を活用して社会課題の解決に取り組むということが想定されています。ICTの発達により,私たちの住む(帰属する)社会は,サイバー空間にも広がるし,国境の垣根を超えてグローバルに広がっていきますが,そうなっても,自分たちの身の回りのアナログ的な世界が出発点であることに変わりありません。
 労働の意義の考察は,社会の再構築という作業にもつながります。資本主義にしろ,民主主義にしろ,それ自体が価値あるものではありません。プラトンがだしたように,自分たちの住んでいる社会(当時のアテネ)のためには民主主義は良くないという結論だってありうるのです。共産主義に勝ったつもりでいる資本主義も,ほんとうに勝利を収めたといえるか結論を出すのはまだ早いでしょう。私たちはアナログとデジタルを行ったり来たりするという,未知の社会で生きていかなければなりません。そのような新たな社会の出現に向き合い,その特徴をつかみ,そこにある社会課題を析出して,知恵を出しあって解決していくことこそが,これからの労働の中核に据えられるべきものだと考えています。この労働は知識労働であり,個人が独創的なアイデアを寄せ合って社会に貢献するのです。そうしたなかから,民主主義でもない,資本主義でもない,新たな政治システムや経済システムが生み出されていくかもしれません。

 

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