« 最新重要判例200労働法 | トップページ | 悪女考 »

2022年1月12日 (水)

Medici

 大学の同僚が,新型コロナウイルスのために延期になっていたFirenze大学への留学に,昨年秋にようやく出発できました。いままたイタリアでは感染爆発が起きているのですが,大丈夫でしょうかね。
 Firenzeは素晴らしいところです。私の第二の都はMilanoですが,文化的にはFirenzeに負けていることは認めざるを得ません。Medici家が残した素晴らしい財産は,いまもFirenzeの人の誇りであり,世界中の人を魅了してやみません。
 そんなMedici家ですが,それを題材にしたイタリアとイギリスの合作のドラマ「MEDICI」があって,前から観たいと思っていたのですが,これがHuluで観ることができるとわかり,そのためだけにHuluに加入しました(2週間だけなら無料たったのですが,正式加入してしまいました)。イタリア版大河ドラマという感じですが,シーズン18話で終わりで,ちょっと短いです。とはいえ内容は十分濃いものでした。
 名著である森田義之『メディチ家』(講談社現代新書)と合わせて観れば,ドラマの理解はより深まります。シーズン1は,「メディチ王朝の始祖」(森田本の表現)であるGiovanni di Bicciから,その長男のCosimo (通称は,Cosimo il Vecchio)が権力を奪取していくところが描かれています。イタリアの話なのにイタリア語ではなくすべて英語であったのが,ちょっと残念ですが(GiovanniはあのDustin Hoffmanが演じています),イタリア人俳優も英語はとても上手で,近年強く感じているイタリア人の英語力の飛躍的向上がここにも現れているなと思いました(私の若い頃に出会ったイタリア人の英語は,訛りが強くて聞きづらかったのですが,いまはそういうことは全くありません)。
 15世紀前半のFirenzeは政治的な対立が激しく,このドラマではAlbizzi家のRinaldo との壮絶な戦いが描かれています。Cosimoは死刑判決を受けて絶体絶命のところを,妻のContessina が乗り込んで助けて(史実とは違うでしょう?),esilioFirenze追放)でとどまります。しかし命を捨ててもFirenzeに残りMedici家を守るつもりであったCosimoは,Contessina を深く恨むことになり,亡命先のVenezia に同行をさせずにFirenze に残るよう命じます(これはひどい仕打ちです)。Veneziaでは,CosimoMaddalenaという奴隷女にぞっこんとなり,その後,政敵Albizzi の追放にともなってFirenzeに帰還する際には,この女性も連れて帰ります。当然,家庭内はぎくしゃくしますよね。そのようななかでも,Cosimoは政治的な力は着実に高めていきます。
 ドラマでは,Meidici家が銀行家ということで目の敵にされるなか,お金を使って買収をしたり,政略結婚もしたりしながら,上流階級にのし上がっていくところが凄いです。他方で,文化への理解は強く,Medici家のパトロネージがあったからこそ,今日なおFirenze人から慕われているのでしょう。ドラマでは,Duomoの建設の功労者のBrunelleschiも少し登場します。この時期はペストも起こっており,社会は混乱状態でしたが,そうしたなかCosimoは市民には寛大な姿勢を示し,その支持を高めていきます。政敵には厳しかったのですが,新興のMedici家がのし上がっていくためには,正面から対抗してくる上流階級とは徹底的に戦い,大衆には自分たちは「あなたたち側の人間」というポーズを失わないことを処世訓としていたからでしょう。
 Cosimoの右腕であった弟Lorenzo は殺されてしまい,長男のPieroは頼りない後継者でしたが,その子Lorenzo (il Magnifico)で,Medici家は黄金期を迎えることになります。Lorenzo (il Magnifico)からシーズン2となるのですが,まだ日本では観ることができません。早く観たいですね。シーズン1は,誰がBicciを毒殺したかというミステリー仕立てにもなっていて,最後に種明かしされるのですが,これも見物です。
 Mecidi家は,その後,Lorenzoil Magnifico)の次男のGiovanni de Medici 16歳で枢機卿となり,その20年後に史上最年少で教皇LeoⅩとなります。Medici家から教皇が出たことで,Firenze市民たちは歓喜したようです(森田本)。しかし,このLeoⅩは政治的な面では悪名も高く,贖宥状(昔は世界史では「免罪符」と習った)を乱発して資金を調達しようとし,Martin Luther(マルティン・ルター)の宗教改革を引き起こしました。宗教改革は,Medici家側からみていくと,また別の視点をもつことができて,世界史をより面白く学べるかもしれません。金満,豪華絢爛,文化的爛熟,俗臭プンプンの教会と,禁欲的なプロテスタントとの対比は興味深いです。ちなみにFirenzeでも,Lorenzoil Magnifico)が亡くなったあとに ,これも世界史の教科書に出てきていたSavonarola(サヴォナローラ)の改革がありました。一種の宗教改革ですが,その急進的な改革は支持されませんでした。やはりプロテスタント的なものは,イタリアになじまなかったのでしょう。彼は火あぶりにされますが,その場所には,Firenzeの中心にあるPiazza della Signoria(シニョリーア広場)に銘板があります。早くFirenzeを再訪できる日が来ればと思っています。 

 

« 最新重要判例200労働法 | トップページ | 悪女考 »

映画・テレビ」カテゴリの記事