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2022年1月 3日 (月)

仕事と幸福

 労働しながら幸福を実現する。少し前にこんなことを言うと,二兎を追う者は,一兎を得ずという先人の教えを知らないのかと叱られたかもしれません。あるいは二兎を追えるなどというのは,怪しく社員をマインドコントロールする経営者のようだとして胡散臭く思われたかもしれません。
 私はいまから約6年前の2016年に「勤勉は美徳か?―幸福に働き,生きるヒント」という新書を光文社から出しました。それほど多くの人に読まれた本ではないように思いますが,二兎を追う可能性を追求したものです。
 13日の日本経済新聞の1面に「心の資本」というテーマが採り上げられていました。法律家のメリットに,憲法で幸福追求権が保障されているということを教わることがあると思います(13条)。これが個人の尊重と並んで最も高い法的価値であることを,たたき込まれます。心の資本もそういうことにつながると思います。もちろん幸福追求や個人の尊重が大切であることは誰でも知っていることでしょうが,それを単に抽象的な理念としてでなく,具体的な議論において大真面目にやるのが法律家なのです。そういうことをやる人たちも社会には必要でしょう。
 上記の拙著も,労働者が仕事をとおして幸福を追求するためにどうしたらよいかを,私なりに論じたものです。大学入試でも本書の一節が採り上げられたことがありました。Kindle unlimitedにも入っていて,サブスクしていれば無料で読めますので,冬休みの間に(今日までの人も多いかもしれませんが,その人は春休みに)ぜひ読んでもらえればと思います。いまとなればデジタルを活用した幸福というものも,論じていればよかったなと思いますし,もっと柔らかく書けたかもしれませんが,6年前の私には無理でした。同じ光文社新書の『君の働き方に未来はあるか?』と並んで,これからの職業人生に向けて悩んでいる人に手に取ってもらえればと思います。本文最後に紹介したヴェネツィアのゴンドラ職人は,イタリア人であるのに(?),仕事に喜びをみつけています。そんな風になれたらいいなと思います。仕事と幸福の両立はじっとしていてもダメで,明確な戦略と正しい戦術をもってすれば実現できるというのが本書のメッセージです。なんていうと,やはりどこか胡散臭い本のように思われるでしょうかね……。

 

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