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2022年1月 7日 (金)

賃上げ

 岸田首相の口から「賃上げ」という言葉がよく聞かれます。これは安倍政権時代の「非正規をなくす」と同じように,労働者にとって良い話だし,経営者も文句を言いにくいし,本当にそれがうまく実現できれば経済も良くなり,悪いことがないマジックワードのようです。しかし,「賃上げ」と言われても,そのままでは企業も賃金を上げることはできないでしょう。補助金があっても,しょせん一時的なものにすぎません。
 企業が成長して価値を増やしたときに,その果実を従業員に還元するという賃上げは,企業の戦略として当然ありえることです。それをしなければ従業員のモチベーションが下がり,持続的な成長は期待できません。ただ,成長をするためには,投資が必要でしょう。これからの成長には,まずはDXGXへの投資が鍵となり,そこにまず資金を投入し,成果が出れば賃金で還元するというシナリオはありえます。しかし成長の前に,まず賃上げというのは,どうなのでしょうか。賃上げして,それが消費に回れば需要が高まり経済も回るという循環は,現実的なシナリオなのでしょうか。
 DXGXとは別に,企業の成長の源泉はいまや無形資産だと言われています。実は私は昨年の年初に次のテーマとして一つ考えているものがあると書いていましたが,それが無形資産でした(十分に研究できておらず,今年に持ち越しています)。無形資産から企業が価値を生み出す時代になっているなか,そこへ投資をすることは当然のことであり,それは要するに人への投資です。連合の芳野会長も「人への投資」ということを言っていますが,それがこの意味であるならば同意できます。ただそれは,目先の賃上げではありません。むしろ賃上げの原資とされそうなものは,無形資産の価値を高めて将来の賃上げにつなげるための投資に充てるべきしょう。目先の賃上げを考えるのか,将来を見据えた賃上げを考えるのか。二兎を追うのは難しいでしょう。そう考えると,政府が人気取りのために,目先の賃上げを進めようとするのは,将来のことを考えると間違った政策ではないかが心配です。

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