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2022年1月31日 (月)

入試不正に思う

 かつて聖日出夫の「試験あらし」という漫画があり,私も中学生か高校生くらいのときに読んだことがあります。あの漫画でどのようなカンニングの方法が使われていたか忘れましたが,普通の人ではできないような超人的なアイデアや器用さを駆使していたと記憶しています。しょせんは漫画の中の世界ですが,マジシャンならカンニングで大学入試を突破できるかも,と思わせるようなものでした。
  しかし現在なら,そんな神業的なことができなくても,文明の利器を使えば誰でもできてしまうかも,と思わせるようなカンニング事件が起きてしまいました。世間の人は,ひょっとして試験監督者がきちんと仕事をしていなかったのではないかと思っているかもしれません。しかし,もしほんとうに報道されているような方法でやっていたとすると,なかなか見破るのは難しいでしょう。
 そもそも試験監督は,全国的なテストにせよ,当該大学の入試にしろ,期末試験にしろ,基本的には性善説でやらなければならないでしょう。プロの刑事とかならともかく,日頃は研究者をやっている人間に,不正行為を取り締まれというのは,かなり無理のあるタスクです。素人ですから疑い始めると,いろんなことが疑わしく思えてきます。顔,目線,手の動きなどは人それぞれで,少しでもおかしいと感じたものとを疑っていけば切りがないし,不正摘発に力を入れすぎると,受験生に余計なプレッシャーをかけることになりかねません。できるだけ受験生には,リラックスして日頃の力を発揮してもらいたいと思っているので,むしろピリピリ感をできるだけ和ませたいというのが多くの試験監督者の気持ちでしょう。不正行為をする受験生なんてめったにいないはずであり,そんな例外的な人のために性悪説に立って厳しい監視をするというのは適切ではないでしょう。
 不正行為を防止するときの考え方は二つです。不正行為ができないようにすること,不正行為をしたときのペナルティを重くすることです。後者は受験生が未成年の場合には可哀想ということになって寛大な処分になりがちですが,そういう甘いことをするくらいなら,公正な試験のためには,不正行為なんてやろうとしても無理という状況を作ること(不正行為をしようとしてもできないと諦めさせること)が必要でしょう。プロの試験あらしのような者がいれば別ですが,それは漫画の世界のことですから。
  個人的には,監視カメラを設置してAIに異常行動を察知してもらうのが一番よいと思っています。介護施設で夜の見回りをするかわりに,AIに監視してもらい,何かあったときだけ人間が駆けつければよいというような技術がすでにありますが,それを応用できるでしょう。コストがどれくらいかかるかわかりませんが,技術的には可能なはずです。もし,そこまでのことが無理なら,外部との通信ができないようにジャミング(jamming)をするといった手もあります。
 いずれにせよ,試験は教員が実施して監督するという先入観を捨てるべきです。公正な試験をするためには,どのような方法が適切か,そこにデジタル技術を活用することができないかということを考えるべきでしょう。これは,これからのDX社会において普通にもつべき思考法をあてはめたものともいえます。もっというと,入試自体を,CBTcomputer based testing)方式にしてしまうなど,新たな発想でやることも考えられます。さらにAIが管理して一定の到達度に達すれば入学を認めるということにすれば,入試は不要となります。
 私の知るかぎり,大学はDXにきわめて遅れており,むしろオンライン講義に消極的な姿勢などDXとは逆方向の圧力がかかっているような気がします。今回の問題をきっかけに,入試というものを根本的に考え直してみればどうでしょうか。これまでも何度か提言してきていることですが。

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