救済策はよいが,現場への配慮も
先日の大学入学共通テストでは,試験の直前に,感染者や濃厚接触者への救済策が発表されましたね。受験生に救済をというのは,気持ちとしては,よくわかります。ただ,不公平感があるという意見もわからないではないので(ほんとうのところは,共通テストを受けられないことがプラスになるのかマイナスになるのかは,よくわかりませんが),政府はきちんとした説明をして,今回の措置を正当化することが必要です。受験生が可哀想というのであれば,今後,可哀想な受験生を全員救済しなければ不公平となります。今年だけの特例措置だといっても,そんなことが通用するのでしょうかね。こういうことは,政府の信用性に影響します。不公平に鈍感で,前政権や前々政権と同様,「説明しない」政府だということにならないように気を付けてもらいたいです。
直前に救済措置が発表されたので,現場はたいへん混乱したのではないかと思います。共通テストなしで2次試験だけで評価しろというようなことも言われているようですが,入学試験は時間をかけて準備をしているわけで,そんな突然の方針転換に上からの命令一つで簡単に対応できるわけがないでしょう。こういうことは,事前にしっかり想定して計画しておくべきであったと思います。オミクロン株が急速に増える可能性があることは,かなり前にわかっていました。とくに重症化リスクが高いことが新たにわかったから今回の緊急避難的措置をとったというような事情があるわけでもありません。事前計画の不備と指摘されても仕方がないでしょう。こういう突然の方針変更があっても,日本の労働者は真面目にかつ器用に対応してしまう能力があるのですが,そういうことに頼り(甘え)すぎて事前計画をおろそかにすると,いつか大きな失敗が起こる可能性があります。こういう危機管理能力の低さも,最近の政権の問題です。優秀な人材はいるのでしょうが,それが政権の中枢にいないのではないかと思ってしまいます。
臨機応変というと聞こえはよいですが,その場しのぎの思いつき対応が,現場に過重な負担をかけることは労働問題としても捉えるべきなのです。共通テストでいえば,責任あるポストにいる人(大臣ら)は,大学入試がつつがなく行われるためにも,こういう無理なお願いをするときには,現場の実施者たちにもっと丁寧にお願いをすべきだと思います(大学側の判断に任せると言っても,事実上強制しているのは明らかです)。コロナ対応でも政府の朝礼暮改で中央官庁の職員や地方自治体の職員は疲弊していないか心配です。今日,民間企業であれば,社長や重役が頭を下げてお願いしなければ,緊急対応であっても,なかなか現場は動いてくれないでしょう。しっかり危機管理をして,現場の労働者(公務員も含む)に対して過重な労働負荷が生じないようにすること,もし危機管理を失敗してしまったときには,素直にそのことを認め,迷惑をかける現場の人に丁寧にお願いすることが大切です。労働者を,命令一つで好きなように動かせるという雇用的「奴隷」労働から解放することこそ,「働き方改革」の本丸のはずです。
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