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2021年11月25日 (木)

ワクチン接種拒否のペナルティーイタリアの例

 ワクチン接種をしない従業員への解雇が問題となっているようです。厚生労働省は,そういう解雇はできないと言っているようです。法律論としては,ワクチン接種命令の根拠があるか,根拠があるとして,その命令を拒否したことが(普通)解雇事由ないし懲戒解雇事由に該当するか,該当するとしても,それが権利濫用となるか(労働契約法16条または15条),といった点が問題となるでしょう。伝染病に罹患していることが明らかな従業員が,企業の自宅待機命令に反して出勤した場合は,通常は懲戒解雇を免れることは難しいでしょうが,ワクチン未接種はそれと同視できるようなケースとはいえないでしょうね。
 ところでイタリアでは,ワクチン接種証明書(「グリーンパス」と呼ばれています)を提示しなければ入れない場所が徐々に拡大されています。労働者に対しても,921日に制定されたDecreto legge(法律命令)3条により,1015日以降,グリーンパスなしでは就労ができなくなりました。使用者は検査をしなければなりません。グリーンパスをもたない労働者は,それを所持して提示するまでの間(ただし,長くてもイタリアの緊急事態宣言の終了日である1231日まで),正当でない欠勤として扱われ,無給ですが,懲戒処分は受けず,また雇用(労働ポスト)は維持されます(つまり解雇はできない)。なお上記の欠勤が5日を超えて継続した場合,従業員数15人未満の企業では,労働関係の「停止」とすることができます(その間はその労働ポストに別の有期雇用労働者(期間は10日以下)を採用できます)。ここでいう労働ポストというのは,ジョブ型特有のもので,労働者はそのポストの業務に従事するために採用され,退職や正当な解雇がないかぎり,そのポストの保持権をもちますが,その労働契約関係が(一時的に)停止された場合には,その期間に限って別の人を採用してもよいことになります。結局,イタリアでは,ワクチン接種をしていないことを理由とする解雇は許されませんが,ワクチン接種をしていなければ無給の自宅待機にするということです。なお,グリーンパスをもたずに就労場所にアクセスした労働者は過料を課されます(懲戒処分も重ねて課されることもあります)。
 イタリアの上記の制度はどなたかが紹介されるでしょうから,詳細はそれに委ねるとして,ここではイタリア政府が,感染の広がりを予防するという目的を掲げ,ワクチン接種証明書をフル活用しようとする姿勢を強く打ち出していることを指摘しておきたいです。ワクチン接種を法律できちんと位置づけて,証明書の携行を,就労や行動の自由を認める条件とする方針は日本でも参考にすべきかもしれません。
 昨日のニュースでは,Draghi首相は,さらに「Super green pas」と呼ばれる行動制限を導入しようとしているようです。ワクチン接種証明書なしではアクセスできないサービスの範囲を広げて,事実上のロックダウンを打ち出すようです。これまでは特定のサービス(それは映画館,ジムなどから始まり徐々に拡大し,上述のような職場にまで及んでいました)へのアクセスを制限していたのを,126日以降,essenziale(英語のessential)でないサービスすべてに及ぼすという方針のようです。イタリアでもやりすぎという声があるようですが,それだけ状況は楽観を許さないということでしょう。Draghi首相の行動制限への意欲は,かなり積極的です。
 欧州ではlock-downに対して,激しい抵抗が起きているようです(ベルギーなど)が,感染状況は日本より深刻なようです。国際的な交流を始めるには,もう少し様子をみたほうがよいかもしれませんね。

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