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2021年11月 7日 (日)

The Whole Truth

 邦題は「砂上の法廷」です。Keanu Reeves 主演の法廷映画です。アメリカの法廷では,証人が宣誓のときに,“Do you swear that you will tell the truth, the whole truth, and nothing but the truth” と言って誓うのですが,この映画で出てくる証人は少しずつ嘘をいいます。以下,ネタばれあり。
 豪邸に住む大物弁護士のBoone が胸をナイフで刺されて死亡しました。犯人として逮捕されたのは17歳の息子のMikeでした。指紋もあるし,自分がやった(正確には,自分がもっと前にやるべきだった)とも言っています。有罪は動かしがたいところでした。Booneの後輩で,この家族と親交のあった弁護士Ramsay が弁護を引き受けます。しかし,Mikeが何も話してくれないので,弁護のしようがありません。Ramsayは,最強の嘘発見器と言われる若い女性弁護士Janelleを助手にします。
 裁判は,Mikeに不利に進行します。Janelle Ramsayに不満を述べますが,Ramsayは,Muhammad AliForeman戦を例に出して,最初は徹底的にロープ際まで追い詰められたあと,最後に逆襲して大逆転するという戦法をとるんだと言います。Mikeの母親のRosettaも証言台に立ちますがMikeが「自分がやった」と言ったという証言をするとともに,自分が夫に虐待されていたことを証言します。実際,Rosettaが,夫に精神的な虐待を受けていたことは,多くの人が知っていたことでした。ただ肉体的な虐待(暴力)の有無はわかりませんでしたが,Rosettaが夫の死んだ翌日の診断書や写真が証拠として提出され,彼女がひどい暴力を受けていたことが明らかにされます。そして,これまで沈黙を守っていたMikeが証言台に立ちます。彼は自分が父親から性的な虐待を受けていたという衝撃の証言をします。そしてその虐待は,チャーター機のなかでもあったと証言しました。しかし,チャーター機の客室乗務員のAngelaは,そんなことは目撃しなかったと言います。その証言を揺るがしたのが,Janelleでした。操縦士のことをたずねろというMikeのささやきを受けて,JanelleAngelaと操縦士がただならぬ仲であったと察知して,コックピットで話し込んでいることがなかったかという質問をします。Angelaは明確な証言ができず,機内での性的虐待がなかったという彼女の証言もゆらいでしまいます。こうして,この殺人は,Mikeが,日常的に虐待されていた母を守るために,そして自身もずっと受けていた性的虐待もあって,父を殺したというストーリーができあがります。しかし,Janelleは,Mikeが偽証をしているのではないか,という感触をもっていました(彼女は嘘を見破る天才です)。Janelleは,Rosettaが真犯人ではないかと疑っているようでした。
 陪審員の評決は無罪でした。評決が出る前に,Mikeは,母親にほんとうに殴られたのかということを質問しています。もちろんRosettaは,それを肯定しますが,Mikeは実はRosettaへの暴力があったことは疑っていたのです。無罪放免となったMikeですが,Ramsayを呼び出します。実はMikeは,犯行現場にいたとき,その場にRamsayの時計があったことを目撃していました。Ramsay はその後に来たはずでした。Mikeは,Ramsayが犯人であると疑っていたのです。そして真実は……。
 最後の時計のところは,それを知っていたのなら,最初から検察官に言うべきであったと思うのですが,なぜ彼が黙っていたのかは釈然としません。ただ,時計があっても,あとから駆けつけたときに落としたという言い訳はできるので,法律専門家志望で頭脳明晰なMikeは,指紋(母の守るために後から自分でナイフを握った)も自白もある自分が言っても仕方がないとあきらめていたのかもしれませんね。ただ母親に偽証までさせていたところから,この裁判の流れは,Ramsayが仕組んだもの(Mikeを無罪にするためではありますが),と感づいたのでしょう。
 この映画は,あまり評判は高くないようですが,私は面白い法廷映画だと思いました。法廷は真実を追究する場であっても,証人はみんな程度の差はあれ嘘をついていました。映画のタイトルは,それへの皮肉なのでしょう。

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