前川孝雄『人を活かす経営の新常識』
FeelWorks の前川孝雄さんの本です。いつもご著書をお送りいただき,ありがとうございます。経営者に向けた実務書ですが,いろいろ参考になるところがあります。
本の構成は8章,50講というものになっています。
第1章「“働きがい”こそ現場改革の原動力」,第2章「若手世代をいかに育てるか」,第3章「真の女性活躍はこれから」,第4章「ミドル・シニアこそキャリア自律を」,第5章「コロナ禍に打ち克つ経営とは」,第6章「リモートワークで問われるマネジメント改革」,第7章「ハラスメント予防は職場ぐるみで」,第8章「これからの人を活かす会社の条件」という魅力的な見出しがついた章で構成され,今日の人事管理上の問題がほぼカバーされていると思います。話は具体的でわかりやすく書かれています。
いくつかのテーマについてふれると,第48講の「『雇用を守る』経営は,社員を大切にしているのか」は,重要な問題提起であり,まさに本書のタイトルにある「新常識」として経営者も政策担当者も考えていかなければならないことです。第12講の「若者の公務員・大企業離れは日本型組織への警鐘」は,まさに同感です。
第5講「自らやる気を高められる人は強い」は,内発的動機の重要性を説いています。研究者の世界でも,何のために研究をしているのかという動機付けがはっきりしていない人は,そのうち論文を書かなくなり,順番で当たってくるような判例評釈や解説記事のようなものしか書かなくなってしまいます。学位をとる,どこかの教員ポストを得るという動機だけで研究者になった人は大成しないでしょう。これは研究者の世界の話ですが,他の分野にもあてはまるでしょう。いかにして自分の仕事を,自分のやりたいものにして,それに前向きに取り組めるようにするか(日曜の夜がブルーになるということがないようにしたいものです)。若いときは,それができるようにするための準備期間なのです。その意味でも,第7講「『石の上にも三年』は時代遅れ」は重要な指摘です。この本では,上司たちの若者への接し方についてのアドバイスとして書かれていますが,私は日頃から若者に向けて,3年その会社で我慢できるほどの価値があるか,将来への準備となるか,というようなことをよく見極めたほうがいいと言っています。
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