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2021年11月 7日 (日)

学会報告

 今日は,日本労働法学会のワークショップで,労働時間に関する報告をしました。私が以前に書いた『労働時間制度改革』(中央経済社)の議論に,最近のデジタル技術の議論を付加したものです。ワークショップで議論の素材を提供するということなので,私のような尖った見解の人でもよいとコーディネータの島田陽一先生がお考えになったのでしょう。島田先生には,お声をかけてくださったことに感謝しています。もう一人の報告者は,なんと毛塚勝利先生で,労働法の大権威と一緒に報告させてもらうというのは,たいへん光栄なことでした。しかも毛塚先生は,私よりも,もっと尖った報告をされていて,刺激的で,久しぶりに議論をさせてもらうことができてよかったです。毛塚先生は何とか私との対立点を見いだそうとされていたかもしれませんが,対立点よりは,共通点のほうに大事な論点があったような気がしました(労働時間規制の公共的性格や,最後にふれられた環境問題に関することなどがそうです)。もちろん,学会のなかでもコメントしたのですが,毛塚先生と私とでは社会観がかなり違っているので,最後には相容れないところが残るでしょうが,でも,こういう骨のある議論をさせてもらったのは久しぶりで,勉強になりました。フロアからも予想してたよりは質問が出てよかったです。最初に島田先生が警告を発してくださったおかげだと思いますが,建設的な質問が出て良かったです。前にやった解雇の金銭解決のときとは違っていました。
 なお,どなたか忘れましたが,従来型の働き方と自己管理型の働き方の区別について質問されたところで,私はデロゲーションの一環として捉えるべきとする観点から自説に則して回答をしましたが,拙著『人事労働法』(弘文堂)では,この点について,働き方ではなく,従業員を「旧来型従業員」と「自己管理型従業員」に分類したうえで,後者については,一定の基準を法律で定め,それを就業規則で具体化し,納得規範を適用してその適用範囲を定めるという構想を提唱しています(これは私のやってきたデロゲーションの議論の,人事労働法における発展形態です)ので,同書182頁以下も参照してもらえればと思います。
 ところで今日は,私が比較的多く話してしまったせいか,あまりフロアとの対話はできなかったような気がしますね。ワークショップは,ほんとうはフロアの参加者間の横の議論もあってよいのですが,リモートでビデオオフではなかなか難しいです。リモートでも参加者が顔出ししてやる方法もあると思うのですが。将来的には「メタバース」を活用して,アバターを使って臨場感あるワークショップができたら,もっと盛り上がるのではないかと思いました。いずれにせよ,全員が集まるような学会はやる必要はないので,コロナ後も少なくともハイブリッド型でやることは定着させてほしいです。 

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