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2021年11月18日 (木)

もはや一刻の猶予も許されない

 今朝のNHKのニュースで,長期失業者の数が増えていると報道されていました。失業率の表面的な数字だけをみると,雇用調整助成金の大盤振る舞いもあって,それほど悪い数字になっていませんが,潜在的な失業者は増えているとみたほうがよいでしょう。コロナ禍の影響ですが,今後,エネルギー価格の高騰や悪い円安のインパクトで,企業業績の悪化が予想されます。コロナの第6波が来ると,リベンジ消費の牽引役として期待されている観光業や飲食業まで打撃を受けるおそれがあります。企業の延命を図り,雇用問題を引き起こさないようにするための,短期的な措置はありえますが,それは持続的な対応にはなりません。
 思い切った労働市場改革が必要です。コロナ危機,雇用問題,デジタル化というのは,ばらばらに対応してはダメで,同時に取り組まなければなりません。もともとDXが失業問題を生みだすということは,私も含めて多くの人が指摘していることで,リスキリングをはじめとする職業教育が最も重要な政策となることは,だいぶん前からわかっていたことです。これにコロナが起こって,その動きが加速したのです。さらに環境問題が追い打ちをかけ,対応が遅れてきた日本企業に大きな負担となってきています。そのしわ寄せは雇用に向かいます。企業が十分な生活保障をしたうえで解雇を実施するという意味での解雇の金銭解決の重要性は,折に触れて指摘していますが,いまこそ真剣に考えるべきでしょう。今後苦境に陥ることになるだろう多くの日本企業が,致命的な打撃を受ける前に再生(おそらく解体的出直し)のきっかけをつかみ,同時に労働者の生活保障を両立させるためにも,私たちが『解雇規制を問い直す』(有斐閣)で提案している金銭解決制度の実現は,どうしても必要な政策です。解雇保険までは導入できなくても,いわゆる事前型の金銭解決の制度に向けて動きを始めなければ,日本経済はどうしようもなくなるでしょう。事後型の金銭解決の法技術的な詰めをするというような悠長なことをしている場合ではありません。法律家以外の人の間では,金銭解決についての事前型と事後型がどう違うかについて十分に理解されていないように思いますが,両者は制度設計としてまったく異なるもので,政策として必要なのは事前型です。これが政府のプランのなかにはないのが現状です。
 労働市場といえば,デジタル人材不足にどう対処するのかも深刻な問題です。デジタル人材は,なにも理系人材だけではありません。デジタル技術をどう使って社会貢献につなげるかを考える際には文系的な人材も必要でしょう。飛行機の飛ばし方がわからなくても,飛行機を使って社会にどのように貢献できるかを考えることはできます。文系と理系の融合は,両者が没交渉であってはいけないというだけで,それぞれに特化した能力を磨くこと自体は依然として必要です(比較優位論)。数学が苦手な人に,無理に数学を専門的に勉強させる必要はなく,数学的思考はこういうものだということを教える程度でいいのです。文系でも,文系的な観点からデジタル技術社会で貢献ができるような能力を育てる教育が必要です。
 小学校の学習にタブレットをもちこむことは,それが目的ということではなく,タブレットを使うことによってどのようなことができるかを子どもたちに実感させることが大切なのです。それにより,デジタル技術をよりブラッシュアップするにはどうすればよいかを考える理系的な方向にも,またデジタル技術をどう活用したら社会に役立つかを考える文系的な方向にも,子どもが進めるようになります(もちろん両方の面で才能のある人もいるはずで,そうした人の力を伸ばすことも必要でしょう)。このような取組みを進めることが,10年後に失業問題が深刻化しないようにするために必要とされる政策です。
 このままでは,今後数年内にデジタルデバイドの影響がどんどん顕在化してきて,機械との競争に敗れた中高年層が路頭に迷うことになります。そうなるとその対策だけで手一杯で,将来に向けた対策は後回しになるでしょう。デジタル時代にあった職業(再)教育や学校教育の推進は,一刻の猶予も許されません。
 いつも同じようなことばかり言っていますが,危機感を共有してもらいたいです。

 

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