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2021年10月27日 (水)

秋北バス事件

 LSの授業は,2週にわたり,就業規則がテーマでした。労働契約法が制定されて,秋北バス事件判決(最大判昭和43年12月25日)の意義は小さくなりましたが,やはり労働法の授業をやるうえでは,この判決を詳しく扱わざるを得ないでしょう。改めて秋北バス事件判決を,反対意見まで含めてじっくり読むと,忘れてしまっていたことがよみがえってきます。やはり既に法律がある分野の論点と,法律が何も規制しておらず,新たな法的ルールが求められている論点では,判決のもつ「緊張感(?)」が違うような気がします。秋北バス事件は,まさに後者の論点に関するものであす。
 私にとっては,この判決は,反対意見も含めて,博士論文の原点となるものであり,この多数意見の「合理的であれば従え」という法理への違和感が,私の労働法理論のベースになっています。労働契約法の制定により,就業規則の不利益変更は,単なる条文の解釈の問題となってしまった感がありますが,法律ができても実際の紛争の解決には必ずしも役立つものではないため,やはりこれまでの判例をしっかり読み込まなければ,条文を使いこなすことはできないでしょう。最高裁の裁判官がどのように考えて秋北バス事件判決にたどりつき,格調高い反対意見を書いた裁判官とどのような議論を戦わしたか,第四銀行事件(最2小判平成9年2月28日)で,どのように反対意見を書いた河合裁判官が孤軍奮闘したかを考えてみることは,実務家となるうえでの貴重な訓練となることでしょう。

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