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2021年7月15日 (木)

ビジネスガイド8月号

 

 昨日も書いた最低賃金引上げについての中小企業の助成措置は,今日の日経新聞をみると,雇用調整助成金の適用要件の緩和のようですね。ただこれは,コロナ禍における時限的な措置のようですが,賃金は一度上げてしまうと,助成がなくなったから引き下げるということは簡単ではないので,いったいどうなるのでしょうかね。最低賃金に最も影響を受けるのは有期雇用の非正社員で,企業としては最低賃金に見合うだけの貢献が期待できないとなると,期間満了で雇止めにして後は機械化を推進するというようなことになる可能性もあります。最低賃金引上げは,それが狙いというわけではないでしょうが,結果としてデジタル化を推進することになるかもしれません。
 最低賃金政策に対する批判は,ずいぶんと前から書いているのですが,わりとまとまって書いていたのが,日経プレミアシリーズの新書『雇用改革の真実』(2014年,日本経済新聞出版社)です。そこの第5章「政府が賃上げさせても労働者は豊かにならない」には,最低賃金だけでなく,「同一労働同一賃金」についての批判も書いています。この新書は,もう忘れられた本かもしれませんが,この議論も含め,雇用政策の正論を書いているつもりなので,少し古くなり「新書」というに適さないかもしれませんが,しっかり労働問題について考えてみたいと思う人は,ぜひ読んでみてもらえればと思います(そこから次に『雇用社会の25の疑問(第3版)』(弘文堂)あたりに進んでもらえればと思うのですが)。
 ビジネスガイドの最新号では,「キーワードからみた労働法」のテーマとして,「同一労働同一賃金」を選んでいます。2回目なので,part 2としています。同一労働同一賃金のことは,もう書き尽くしたとも思っていましたが,2021年に中小企業に短時間有期雇用法が施行されたこともあり,マスコミもよく採り上げていたので,このテーマにしました。同法8条は,法規範の内容として不十分なものですし,政策的にも適切でないので,あまり相手にしたくないのですが,少なくとも変な裁判例が出たりしたら,しっかり批判していくのが法律家の責任だと思っています。ビジネスガイドの原稿では,ハマキョウレックス事件の後日談とでもいうような事件も扱っています。無期転換後の労働条件について正社員との格差があることについて,労働契約法20条(旧規定)や短時間有期雇用法8条が適用されないなか,労働契約法32項の一般的な均衡規定や就業規則の合理性の欠如などを根拠として争った事件です(この事件を採り上げたのは,読者から,無期雇用労働者間の労働条件の格差問題について書いて欲しいというリクエストがあったことも関係しています)。有期雇用と無期雇用の間の労働条件の格差を法的に争うことができるとすると,無期転換後の労働条件と最初から無期雇用であった正社員の労働条件との格差も法的に争えるとする考え方が出てきても不思議ではないのですが,私はもともと労働契約法20条(旧規定)に私法上の効力を認めることに反対の立場なので,法的紛争の範囲が拡大していくことを憂慮しています。なお,私の提唱する人事労働法では納得規範を重視するので,これは結局,会社が無期転換組の労働者に,従来と同じ就業規則を適用して労働条件を変更しないことについて,どこまで納得同意を求めたかという問題として論じることになります。詳しくは,ビジネスガイド最新号をご覧になってください。

 

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