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2021年6月19日 (土)

棋聖戦第2局

 藤井聡太棋聖(二冠)に,渡辺明名人(三冠)が挑戦している棋聖戦第2局は,171手の長手数になりましたが,藤井棋聖が勝ちました。これで2連勝となり,防衛に王手をかけました。序盤から難解な展開で,藤井棋聖が時間をつかい,残り時間でも渡辺名人と大差がついて,局面はほぼ互角であったので(AIの評価値による),そうなると持時間が多く残っている渡辺名人が有利かなと思っていたのですが,徐々に戦況の雲行きが怪しくなり,途中で逆転してしまいました。渡辺名人は,こういう混戦になったらとても強いという印象がありましたが,どうも藤井棋聖相手には,勝手が違うようです。
 筋違い角という,角の本来の筋とは違う筋で打ち合うというアマチュアにはちょっと難しい将棋で,しかも直線的な攻めではなく,相手の手を殺しながらじわじわと攻めるという感じでしたので,プロ的には熱戦,素人的には難解という将棋でしたね。
 渡辺名人が58手目に9四角という筋違い角を放ったとき,残り時間は108分で,藤井棋聖は50分でした。そこで藤井棋聖は25分考えて5八金と守りを固め,そこから数手進んで,名人の角が7六まで出てきた62手目で,名人は残り94分で,藤井棋聖は25分でした。そこで藤井棋聖は1分考えて,5六角という筋違い角を放ち,ここで名人は44分の長考で3四歩と守りに手を入れて,残り時間は少し接近しました。この手に藤井棋聖が17分考えて6八金と指して守りを固めた時点で残り7分です。そこから,藤井棋聖はほとんど時間を使わずに名人の角を追い回し,結局,9二にまで追いやって,7四歩と指して封じ込めました。しかし,藤井玉は周りに金銀の守備がない裸の状態(しかも居玉)です。これが77目で残りは5分,名人は38分。そこから100手近く指し続けるのですが,藤井二冠は,名人が投了したとき時間を2分残していたので,その間に3分しか使わなかったことになります(1分未満は切り捨てなので,実際に考えた時間はもっと長いのですが)。こんなことができる棋士は,藤井二冠しかいないでしょう。時間をかけなくてもこれだけの手が指せるのもすごいですし,そうした力があるのに時間がある間はじっくり手を読んで考えるところもすごいです。谷川浩司九段が,感覚に頼らずにじっくりと読むという蓄積が年月を経て力になると言われてましたが,藤井二冠の時間の使い方は,まさに王道を歩む棋士のそれといえるでしょう。
 いずれにせよ,プロ棋士は,きれいな手を指すだけでなく,相手に悩んで時間を使ってもらおうということで,局面を複雑にする手を指したりするのですが,藤井二冠のように時間がなくなってからの早指しでもAI並の正解手を指し続ける相手にはそういう手は使えそうにないですね。
 まさか名人が3連敗ということはないと思いますが,その可能性がないとも言えないような藤井二冠の勢いですね。 

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