藤井聡太二冠(王位・棋聖)が,朝日杯将棋オープン戦で3回目の優勝をしました。デビューしてから4年少しで3回目の優勝というのは驚異的です(他の棋戦も含めると優勝は5回です。師匠の杉本昌隆八段はデビューして30年ですが,棋戦優勝はありませんから,藤井二冠のすごさがわかります)。デビューした年に,この棋戦で,準決勝で羽生善治九段に勝ち,決勝で広瀬章人八段に勝って,大変な話題になったのですが,このときは当時の名人の佐藤天彦九段,そして竜王であった羽生九段をやぶり,将棋界のみならず世間も驚かせました。その翌年は決勝で,当時,棋王であった渡辺明名人に勝って2連覇をはたしましたが,そのときにはもう誰も驚かなくなっていました。昨年は優勝した千田翔太七段に準決勝で敗れてしまい,惜しくも3連覇は逃しましたが,今年は,デビュー以来6連敗していた大の苦手の豊島将之竜王に初めて勝ち,準決勝では渡辺名人に勝ち,決勝では三浦弘行九段に勝ちました。同じ日に準決勝と決勝をやるのが,この棋戦の特徴です。ちなみに持ち時間は40分で,切れたら1分将棋という早指し戦です。
今日はAbemaで中継をしていたので,仕事の合間にずっとみていました。午前中の渡辺名人戦は,途中で,AIの評価値が確か99%まで渡辺勝ちになっていて,渡辺名人が必勝の状況でした。素人目にも,渡辺名人が大優勢で,藤井側の玉が頼りなく中段に引っ張り出されていました。ところが,名人が最終盤で1手だけなのですが緩手を指したために,たちまち評価値は逆転し,そのまま藤井二冠の逆転勝ちとなりました。評価値が逆転しても,そう簡単には勝ちにならないのですが,終盤の強さはAI並みの藤井二冠は大逆転勝利をはたしました。渡辺名人にこういう勝ち方ができるのは,藤井二冠くらいしかいないのではないでしょうかね。
決勝の三浦戦も,藤井玉は中段に引っ張り出され,最終盤でAI評価値では,藤井二冠の緩手もあって三浦九段が優勢になりました。しかし,最後は三浦九段のほうに緩手が出て,きわどいところで藤井二冠の逆転勝ちになりました。
藤井二冠は詰将棋の選手権でも何度も優勝していて,終盤が強いのはわかっているのですが,不利になっても粘り強く指して,逆転を目指すという勝負術も兼ね備えています。それが,これだけの高い勝率につながっているのだと思います。将棋は,相手に信頼されるということが大切です。信頼されていると,一手一手に深い意味があると相手が考えてくれるので,それだけ相手の持ち時間が奪われて有利となりますし,相手の悪手も出やすくなります。三浦九段も優勝を逃した悔しさもあったはずですが,「相手が藤井さんだから」と言っていたくらい,藤井二冠の強さはトッププロの間でも浸透しています。王将戦のリーグではちょっとした挫折も経験しましたが,先日は,順位戦のB級2組も軽く通過を決めて,いよいよ来期はB級1組です。おそらく1期で通過して,2022年にはA級棋士になるでしょう。A級ではそう簡単には勝てないかもしれませんが,名人位がいよいよ射程に入ってきましたね。
ところで,王位戦が,まさか冗談か,と思ったのですが,「お~いお茶杯王位戦」に名称が変わりました。伊藤園が特別協賛して2期だけ名称が変わったようです。藤井二冠が,対局中にお茶をよく飲むのは有名で(初手を指す前にも,必ずお茶を飲みます),伊藤園もお茶を提供していたようなので,語呂合わせのようですが,よい宣伝になることでしょう。藤井二冠が,お茶を飲みながら,王位を防衛して,伊藤園に利益をもたらすということでしょうね。
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