山崎八段昇級
順位戦は,そろそろ佳境を迎えています。昨日はB級1組で,山崎隆之八段が対局では敗れたとはいえ,他の棋士が敗れたのでA級への昇級を決めました。これまでで最も時間のかかったA級昇級です。山崎八段は,早くから天才と言われて,その独創的な棋風はファンも多いのですが,なかなか大きな活躍ができませんでした。タイトルは取っていないし,順位戦もB級1組に長く滞留していました。年齢が近い阿久津主税八段などは,A級に上がってすぐに落ちるというのを2度繰り返していますが,それでもA級の経験があるということは残ります。あのハッシーこと橋本崇載八段もA級を1期経験しています。山崎八段は,もう無理だろうと思われていたのですが,40歳手前でやっと昇級です。今期は難所の永瀬拓矢王座に勝つなど,好調を維持して,最終局を待たずに昇進を決めました。
A級というのは,若くて才能のある棋士がスムーズに到達するケースが多いのですが,苦労して昇級するケースもないわけではありません。ただ,この場合は,すぐに降級してしまうことが多いように思います。いまから40年前,木村義雄名人(第14世永世名人)の三男であった木村義徳七段(当時)が,44歳でA級(名人戦挑戦者決定リーグ戦 )への昇級を決めたことは,よく記憶しています。これまであまりパッとしなかった棋士が,ある一瞬輝いたのです。結局,A級では全敗で,すぐに陥落となりました(阿久津八段も1回目のA級は全敗で陥落し,2回目も最終局で1勝したものの,あとは勝てませんでした)。A級の壁は厚いものがあります。山崎八段は,木村八段よりも強いと思いますが,関西勢の仲間(豊島,斎藤,糸谷,菅井)も多い中,どこまで力を発揮できるでしょうか。ようやく名人に挑戦できるところまで来たのです。現在B級2組にいる藤井聡太二冠(王位・棋聖)が上がってくるまでに,名人を獲得して,藤井八段を迎え撃ってほしいですね。
そのB級1組は,もう一人の昇級候補は,もちろん永瀬王座です。永瀬王座は,現在の四天王の一人で,A級にふさわしいのですが,順位戦はすんなりとはいきませんね。最終局に勝てば昇級ですが,負けると,木村一基九段が勝てば,1期でA級に返り咲くことになります(昇級は二人)。
名人への挑戦を決めるA級のほうは,渡辺明名人に誰が挑戦するかですが,最有力だった豊島竜王が脱落して,先頭を走るのはA級に上がったばかりの斎藤慎太朗八段です。最終局で勝てば挑戦権を獲得し,敗れたときには,広瀬章人八段が勝てばプレーオフになります。対戦相手をみると,斎藤八段の挑戦の可能性が高いと思います。A級からは,残念ながら稲葉陽八段が陥落です(もう一人は,三浦弘行八段です)。稲葉八段は,名人挑戦経験もあるのですが,最近はパッとしない状況で,降級もやむを得ない感じです。関西勢として,1期で復帰を期待したいところです。