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2021年1月20日 (水)

司法試験の合格者発表

 今日は教授会の日でしたが,法科大学院関係の教員は何となく落ち着かない感じでした(といってもオンライン教授会なので,はっきりその感じをつかめたわけではないですが)。それは,今日は司法試験の合格発表の日だったからです。法科大学院のある大学では,全国ランクングが発表されるようなものなのでドキドキでしょう。
 それで神戸大学はどうであったかというと,まずまずでした。全国的には最も有力な法科大学院の一つに挙げられるにふさわしい成績であったでしょう。ランキングといっても,指標はいくつかありますが,専門家の間では,合格者数は必ずしも決め手になりません。合格者が多くても不合格者が多い大学はダメだからです。その意味で合格率が重要で,しかも2人受けて1人が合格で5割というのでは意味がなく,ある程度の合格者数がいなければなりません。神戸大学は126人の受験で62人の合格で,合格率では全国8位,合格者数では全国7位で,なかなかの成績でした。専門家の評価としては,一橋大学が1位(合格率2位,合格者数5位),次いで東京大学(合格率3位,合格者数1位),京都大学(合格率4位,合格者数3位),慶応大学(合格率7位,合格者数2位)で,そして神戸大学という順位でしょう。中央大学や早稲田大学は,合格者数は多いですが,合格率はやや低めです。東北大学は,合格率は神戸大学より高いですが,合格者数は神戸大学の半分以下です。
 ということで,神戸大学の同僚は,ほっとしているかもしれません。とくに司法試験科目の教員はみんな教育熱心で,研鑽を怠っていません。その努力が報われてよかったです。もっとも,半分近くが不合格であったことも確かです。試験をやめて別の人生に向かったほうがよいと思う学生もいるのですが,試験に向けて頑張りたいと言う以上,私たちは全力でサポートしなければなりません。私たちは法科大学院の学生との関係では,研究者としての面は大幅に後退し,教育者にならざるを得ないのです。
 ところで,合格者も,決して将来は安泰でないということは,いつも述べているとおりです。私は法科大学院では労働法を担当していますが,いつか労働委員会での和解の経験(担当事件の9割くらいは和解で終結しています)から,紛争の解決とはどういうことか,そして,そのなかで弁護士に対して期待することはどういうことか,ということを話せる機会があればよいなと思っています。
 (法人のみを相手にする場合は違うかもしれませんが)法律家であっても,どれだけ法律にこだわらずに事件に向き合って紛争の解決に助力ができるかが,とても重要なことではないかと思っています。国民は必ずしも法律による解決を望んでいるわけではないからです。今後はこういうことが十分にわかっている弁護士しか生き延びることができないように思えます。合格者は,いったんは少し法律から離れてみて,自分が法律家として社会にどう向き合うかをじっくり考えてみてはどうかと思います。

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