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2019年7月15日 (月)

日雇派遣規制の見直し

 昨日の日本経済新聞に「日雇い派遣は速やかに解禁を」というタイトルの社説が出ていました。「政府は規制改革推進会議の答申を受け,本業の収入が年500万円以上ないと認めていない副業としての日雇い派遣について,年収条件を見直す方針を決めた」ということのようです。
 2012年の民主党政権時に導入された労働者派遣に対する余計な規制は見直されるべきということは私も主張してきました(例えば,『雇用改革の真実』(日経プレミアシリーズ)の第4章「派遣はむしろもっと活用すべき」や『雇用社会の25の疑問-労働法再入門(第3版)』(弘文堂)の第23話「労働者派遣は,なぜたたかれるのか」を参照)。私以上に,明快に問題点を指摘していたのは,小嶌典明先生です。『労働法の「常識」は現場の「非常識」』(中央経済社)の第12話「『日雇い派遣』禁止の奇々怪々」では,2012年の法改正のおかしさを的確に指摘されています。
 日雇派遣のニーズの高い者(世帯収入500万円未満の主婦や定時制学校に通っている者など)に制限をかけて,世帯年収が500万円以上あって副業的に行う日雇派遣ならやってよいというようなおかしな法律があるのです(労働者派遣法35条の4,労働者派遣法施行令4条,労働者派遣法施行規則28条の3等を参照)。まさに小嶌さんが言われるような「奇々怪々」な規制です。日雇派遣をおよそ禁止するとまで言えば,まだわからないわけではありません(ただ派遣は臨時的・一時的なものであるのが原則とされているので(労働者派遣法25条),そうすると日雇派遣こそ望ましいことになるはずです)が,ニーズの低い者にだけ認めるという点で「常識」外れなのです。
 小嶌さんは,「政府や行政当局にやる気さえあれば,いつでも法改正はできる」と書かれています(「直接雇用のみなし」のこと念頭においた記述ですが)。今回は,労働政策審議会が動かないから,規制改革推進会議からの提案となってしまったのでしょうか。このルートが必ずしも良いとは思わないのですが,労政審がおかしな規制を自ら改めていくことができなければ,このルートが存在感をもつようになるでしょう。  
 いったん作ったものでも,おかしいものであれば,迅速に廃棄することが必要です。「直接雇用のみなし」にはいろいろな考え方の違いがあり意見が分かれるのはわかりますが,「日雇派遣」は論理的におかしい規制というべきなので,この時期の見直しは遅すぎたほどです。

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