経済教室に登場
明日(10日)の日本経済新聞の経済教室に,同一労働同一賃金に関するテーマで登場します。昨年の3月にフリーランスに関して執筆して以来の登場です。2012年以降は,毎年1回の頻度で,執筆している感じです。最近では本業に近いはずの「法学教室」(有斐閣)よりも,「経済教室」からのほうがよく声をかけてもらっている感じですね。
今回の内容は,読者が経済界の方が中心であろうということを意識して,法学の細かい議論には入らず,法律家の観点からみた同一労働同一賃金とは何なのか,ということを法学を専門としない人にわかってもらえるように書いたつもりです。とはいえ,3000字では書き尽くせていませんので,より詳しくは今年3月に刊行した拙著『非正社員改革-同一労働同一賃金によって格差はなくならない-』(中央経済社)をみていただければと思います。
もちろん,法律家の観点といっても,いろいろな立場の人がいて,私とは全く違う内容の議論をする人もいるでしょう。読者は,よく読み比べて,判断していただければと思います。私の立場の最も大きな特徴は,労働契約法20条は,私法上の効力のない訓示規定であるというものです。私法上の効力などというと,わかりにくいので,今回の論考では,私法上の効力があるというのを,裁判で実現できるという,やや不正確な言い方にしています(実は,私法上の効力があろうがなかろうか,不法行為での請求は可能なのですが)。私の説の基本にあるのは,均衡基準を明確にしていない均衡待遇規定に私法上の効力を付与するのは無理だというものです。そういう無理なことを強行したら混乱が生じ,それは労働者にも,経営者にもよくないし,ひいては規制の「副作用」により,政策目的を達成できないことになる,というものです(今回は副作用のことまでは書けませんでした)。そして,実際上も,混乱が生じているのではないですか,ということを指摘しました。
私法上の効力を否定する私の見解は最高裁(ハマキョウレックス事件)で否定されたのですが,実は最高裁は,私の主張のエッセンスまで否定したのだろうか,というと,そうでもないと思っています。最高裁では,均衡待遇が問題となった事件ではなかったからです。
それはともかく,今回の論考の最後は,正社員論にシフトしていきます。これも拙著で述べたように,非正社員問題は,正社員問題でもあります。正社員が変われば,非正社員も変わる。技術革新で非正社員のやるような単純業務はなくなるでしょう(この部分も今回はカットされています)。そして正社員の仕事は,デジタル経済社会の到来により大きく変わる。デジタルデバイド対策こそ,喫緊の政策課題だというのが,一番言いたいことでした。労働行政にはやや厳しい言葉を使いましたが,日頃思っていることをストレートに出しました。厚生労働省は新法に対応するための「取組手順書」などを出しているのですが,私としては,誤った政策の実現に,行政が過剰サービスをしている状況をみかねて,警告を発さざるを得なかったのです。もちろんこんな警告を発しても,行政は何も変わらないでしょうが,何かを感じてくれる行政関係者(あるいは政治家)がいれば,それで良しです。
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