将棋

2017年8月11日 (金)

藤井聡太四段 順位戦3連勝

 順位戦C級2組で,藤井聡太四段が,高見泰地五段に勝ち,3連勝となりました。今回はすきっと勝ちましたね。寄せも早くて見事でした。
 新人の藤井四段の順位は最下位に近い45位で,このクラスは3人しか昇級できません。1つでも負ければ今期の昇級は難しくなります。全勝(10勝)しても昇級できない可能性さえあります。ただ,3戦終わったところで,全勝の藤井四段は7位に浮上しました。藤井四段より上位で3戦全勝が6人しかいないということです。順位戦の対戦相手はすべてあらかじめ決まっていますが,そのなかには現在上位の6人は含まれていないので,直接対決で引きずりおろすことはできません。ただ,この前に負けた三枚堂達也四段(2勝1敗)との対局が最終戦に入っています。そこまで全勝で行けるでしょうか。今期の通算成績は25勝3敗となりました(勝率は0.893)。
   羽生善治三冠に菅井達也七段が挑戦している王位戦は,羽生三冠が勝って1勝2敗となりました。羽生三冠は,棋王戦挑戦者決定トーナメントで,まさかの及川拓馬六段に完敗という番狂わせがあったのですが,こういうのを引きずらないのが羽生三冠の強さですね。王位戦は,これから菅井七段がどこまで羽生王位を追い込めることができるかが楽しみです。
 A級順位戦は一斉対局ではないので,ぽつぽつと3回戦に入っています。稲葉陽八段は深浦康市九段に勝って2勝1敗。2期連続の挑戦に向かって前進です。深浦九段は1勝1敗です。広瀬章人八段は佐藤康光九段に敗れて,ともに1勝2敗です。A級昇級以降,安定した成績を残している広瀬八段ですが,序盤での2敗は痛いですね。次の久保利明王将(2勝)と羽生三冠(1勝1敗)との対局が前半の山場でしょうか。

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2017年8月 4日 (金)

藤井聡太四段3敗目

 7月27日に,銀河戦で,すでに勝ったことのある平藤眞吾七段に勝ち24勝2敗となっていた藤井聡太四段は,今日,王将戦の一次予選の決勝で,強敵の菅井竜也七段との対戦となりました。ここまで順調に勝ち上がってきましたが,さすがに決勝では強敵とあたってしまいました。これまで公式戦で対戦したなかで一番強い相手でしょう。なぜ強いかというと,菅井七段は通算勝率7割を超える若手強豪であるというだけでなく,現在,王位戦で羽生善治三冠とタイトル戦を戦っている旬の棋士で,しかも羽生三冠相手に2連勝しているのです。ということで,菅井七段もここで藤井四段に負けているようでは,タイトル奪取への勢いがつきません。
 この対局は先手の菅井七段が得意の中飛車で,玉を穴熊に囲うなか,藤井四段がやや無理気味に攻めさせられるという流れになりました。独特の鋭い攻めの感覚をもつ菅井七段は,先日の羽生戦でも攻め倒して快勝していました。藤井四段との本局でも,快勝といってよいでしょう。さすがに藤井四段も,このクラスが相手となると,まだ苦しいということでしょうか。これで24勝3敗で,勝率は9割を下回り,8割9分となりましたが,まだ高い勝率であることに変わりはありません。次は,来週順位戦C級2組で高見泰地五段との対局です。
 進行中の王位戦は,上述のように,菅井七段が2連勝して面白くなっています。来週第3局があります。
 王座戦は,羽生王座への挑戦者は,中村太地六段と決まりました。中村六段は王座戦には相性がよく,4年前にも羽生王座に挑戦し,2勝1敗で羽生王座を追い込んだこともありました(その後2連敗で奪取失敗)。その前年にも中村は挑戦者決定戦にまで進出しており,そこで羽生に敗れたという因縁もありました。その年は,棋聖戦の挑戦者にもなり,羽生棋聖に3連敗で敗れていました。4年前のあと一歩ということがあって以来,少し低迷していた印象のある太地六段ですが,再び大舞台に登場して,羽生と戦うことになります。順位戦ではなかなかスムーズに昇級できずB級2組にとどまっており,関西の若手との出世争いでは一歩遅れを取っているところもありますが,羽生相手にビッグタイトルをとれば一気に追いつけます。
 羽生三冠は,王位戦では菅井七段,王座戦では中村六段と,実力若手の相次ぐ挑戦を受けています。そろそろ50歳に近くなってきている羽生三冠がどこまで持ちこたえることができるでしょうか。
 もう一つ大きな棋戦の竜王戦は,結局,挑戦者決定戦に進出したのは,藤井聡太四段に勝った佐々木勇気六段ではなく,また佐々木六段(7月11日に六段に昇段)に勝った久保利明王将でもなく,松尾歩八段でした。松尾八段は,1組で優勝しており,この棋戦に白星を集めています。そして,その対戦相手は,稲葉陽八段に勝った羽生三冠です。渡辺明竜王に挑戦するのは,松尾八段と羽生三冠の三番勝負の勝者となります。ランキング戦の1組決勝でも両者は対戦し,松尾八段が勝っていますが,さて挑戦者決定という大一番でどうなるでしょうか。松尾が挑戦権を得れば,はじめてのタイトル戦登場となります。将来の名人候補と言われ,もう若手とはいえない年齢(37歳)になった松尾八段ですが,ここで大きな花を咲かすことができるでしょうか。
 それにしても,こうみると,藤井が強いとかなんだかんだ言っても,やっぱり棋界は,羽生三冠を軸に回っている感じですね。

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2017年7月24日 (月)

藤井聡太四段(1日で)2勝

 B級1組の2回戦で,谷川浩司九段が斉藤慎太郎七段に勝って2連勝となりました。斉藤七段は1勝1敗です。関西の後輩若手に貫禄の勝利です。全盛期を思わせるような豪快な将棋で76手で若手強豪の斉藤七段を投了に追い込みました。やはり順位戦となると,持ち時間が長いので,実力を発揮できますね。2連勝は阿久津主税八段と谷川浩司九段だけです。初戦が空けだった糸谷哲郎八段は1勝です。2連敗は木村一基九段と丸山忠久九段。今年のB級1組は,A級以上の激戦と言われています。誰もが昇級も降級もあるという感じです。谷川九段はまずは残留をめざしてほしいですが,今期の降級は1人とはいえ,やはり5勝はしなければ安心できないでしょう。 
 藤井聡太四段は,棋聖戦の一次予選で2局対局しました。初戦は,西川慶二七段との対局は,かなり危ない勝ちだったように思えましたが,二局目の阪口悟五段には,前回は大逆転での辛勝の相手でしたが,今回は完勝でした。これで今期23勝2敗となりました(通算で33勝2敗)。もっとも,今回の相手は二人とも棋界では最弱の部類の相手ですので(失礼かもしれませんが),勝って当然でしょう。若手四段の間は棋戦の一番下からやるので,最初はこういう相手が多く,勝ち数も稼げます。問われるのは,勝ち数ではなく,内容です。もう少し歯ごたえのある相手との対局が来ればいいのですが。
  明日からは,王位戦です。羽生善治王位と菅井達也七段の対局です(2日制)。菅井七段1勝を受けての第2局です。

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2017年7月22日 (土)

藤井四段の33戦目

 藤井聡太四段の勝敗は,まだNHKのニュースになっていましたね。上州Yamadaチャレンジ杯という若手だけが登場して,持ち時間20分という早指しで,すでに3勝して勝ち上がっていた藤井聡太四段でしたが,三枚堂達也四段に敗れました。200手を超える激戦で,最後は30秒将棋で何が何だかわからない感じでしたが,最後は後手の藤井四段の無念の投了となりました。これで今期は21勝2敗です。棋戦初優勝の期待がかかっていましたが,そんなに甘いものではなかったですね。
 竜王戦決勝トーナメントでは,その初戦で藤井四段を破ってその連勝をとめた佐々木勇気四段が,次の阿久津主税八段にも勝ち,強さをみせましたが,その次の相手であった久保利之王将には歯が立たなかったです。藤井四段に完勝した佐々木四段も,やはりA級棋士でタイトルホルダーの久保王将が出てくると,ダメでしたね。若手棋士は相手がまだ軽い間には力を発揮できても,一流棋士が出てくると力が出せないことが多く,そこがトップ棋士の貫禄と技なのでしょう。竜王戦はベスト4が決まり,次は松尾歩八段対久保王将,羽生善治三冠対稲葉陽八段になります。それで最終的な勝者が,渡辺明竜王に挑戦します。
 順位戦では,A級は2回戦が終わりました。本命だった羽生三冠に豊島将之八段が勝ちました。3年連続で新八段がそのまま挑戦ということになるでしょうか。2回戦が終わって,2連勝は,久保王将と豊島八段だけ(初戦が空きだった,深浦康市九段は1勝)。2連敗は行方尚史八段,佐藤康光九段だけです(2回戦が空きだった,屋敷伸之九段は1敗)あとは1勝1敗という状況です。もう一人の本命だった渡辺竜王は,深浦九段に痛い敗戦を喫しました。今期のA級は,佐藤天彦名人への挑戦争いも注目ですが,降級が3人という例外的な事態なので,厳しい降級争いにも注目です。現在2連敗の2人は降級候補でもありますが,どこまで巻き返せるでしょうか。

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2017年7月12日 (水)

藤井四段31勝目(デビュー以来)

 藤井聡太四段が,加古川青流戦トーナメントで,都成竜馬四段と対戦しました。すでに2勝している相手で,早くも3戦目です。藤井四段は後手で,先手の都成四段がゴキゲン中飛車戦法を採用しました。藤井四段は途中押し込まれた感じで,玉を上部に引っ張り出され危ない感じにみえましたが,後手玉を1筋から攻めて,最後は見事に勝ちきりました。完勝したという感じではありませんでしたが,なかなか相手に決め手を与えず,相手が隙をみせたところで一気に襲いかかるという,まさに勝負師の将棋をみせてくれました。これで31勝目です。今期の成績でいえば,21勝1敗です。もちろん断トツの好成績です。
 棋聖戦は,羽生善治三冠が,挑戦者の斉藤慎太郎七段に勝って,3勝1敗で防衛です。最終局は,あまり見せ場がなく,羽生棋聖の完勝だったのではないでしょうか。先日のNHK杯では,松尾歩八段相手に,電撃的な逆転勝利をあげた斉藤七段でしたが,羽生相手には,力が発揮できなかったですね。一連の若手の挑戦のなかでは,斉藤七段が羽生三冠にいちばん歯が立たなかった印象を受けました。
 わが谷川浩司九段は,新しくタイトル戦に昇格した叡王戦の段位別予選の九段戦に登場し,南芳一九段と対局しました。かつては何度もタイトルを争った黄金カードである谷川・南戦も,最近では,ほとんど話題にならなくなりました。この将棋は,飛車を振った後手の谷川九段が穴熊にするという展開です。じっくりと相手の攻撃を待ったうえで,一気に逆襲して,久しぶりに谷川九段らしい切れ味のある快勝譜でした。やっぱり谷川九段には,こういう将棋を指してもらいたいです。

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2017年7月 7日 (金)

新たな1勝

  藤井聡太四段が,順位戦C級2組で,中田功七段と対局しました。どんなに他の棋戦で勝っても順位戦で取りこぼすと,昇級が遅れます。名人への道でもあります。だから棋士にとって順位戦はきわめて重要な棋戦です。
 中田七段は,コーヤン流三間飛車という名前も付いているくらいの三間飛車のスペシャリストです。藤井四段との初手合いでも,後手の中田七段は三間飛車で臨みました。藤井四段は居飛車穴熊にし,中田七段の攻撃をしのいで,最後は見事に中田玉を詰ませました。藤井四段に力強さというものはとくに感じませんでしたが,ここ一発の若手キラーの得意戦法を撃破し勝ちきったことで,再出発のための大きな1勝となったことでしょう。これで順位戦は2連勝です。また今期20勝1敗となりました。もちろん現時点で対局数,勝ち数,勝率の3冠王です。
 もう一つ,王位戦が始まりました。羽生善治三冠に,菅井竜也七段が挑戦です。菅井七段は,谷川浩司九段の弟弟子の井上慶太九段門下です。羽生三冠は,棋聖戦では,同じ関西勢の斎藤慎太郎七段と対局しています。名人戦でも,関西の稲葉陽八段(菅井七段の兄弟子)が登場しました。稲葉八段は佐藤天彦名人に惜しくも敗れたものの,檜舞台に次々と関西の精鋭達が登場しているのは嬉しいことです。
 そこで王位戦の第1局ですが,菅井七段の快勝でした。先手の羽生王位の居飛車穴熊,後手の菅井七段は,得意の振り飛車で,途中で穴熊に構えました。とくに終盤の攻防は見応えがありました。飛角両取りがかかり窮地に陥ったようにみえた菅井七段でしたが,両取り逃げるべからずの格言どおり,これを放置して果敢に攻めていきました。羽生王位が苦しんで持ち時間にも大差がつくなど,菅井七段の充実ぶりがうかがえました。
 王位戦は2日制の七番勝負で長丁場ですが,菅井七段にとって,まずは幸先よいスタートとなりました。

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2017年7月 2日 (日)

藤井四段30連勝ならず

 藤井ブームがこれで沈静化するでしょうか。藤井聡太四段の連勝は29で止まりました。佐々木勇気五段の将棋は完璧でした。藤井四段はノーチャンスだったですね。将棋は先手が,正しく指してミスをしなければ勝てるということでしょう。佐々木五段の豊かな才能を感じさせられた一局でした。でも,藤井四段の29連勝,しかもデビュー以来ということがつくと,相撲の双葉山の69連勝,女子レスリングの吉田沙保里の206連勝に,匹敵するといえば言い過ぎでしょうか。
 将棋ファンとしては,マスコミがこれだけ注目してくれたことに喜びを感じるとともに,あまりに一般の人が将棋を知らないのだということを再発見もできました。棋士の方,もっと普及に頑張りましょう。ひふみんばかりでは,イメージが偏ります。
 いつもの棋戦情報に戻ると,棋聖戦の第3局は,挑戦者の斎藤慎太郎七段が,羽生善治三冠に勝ちました。後手の羽生三冠が意表をつく振り飛車で,斎藤七段は穴熊で対抗し,これに羽生は猛烈に攻めかかりましたが,斎藤七段はしっかりかわし,最後は羽生玉を見事に仕留めました。これで流れが変わるでしょうか。
 女流王位戦は最終局にまでもつれましたが,里見香奈女流王位が伊藤紗恵女流二段に勝ち防衛しました。女流の将棋は,激しい攻め合いが多いのですが,今回もなかなか面白かったです。伊藤さんは,見せ場を十分に作ってくれました。
 順位戦はB級1組もついに始まりました。わが谷川浩司九段は,今期も不調ですが,順位戦初戦は,ハッシーこと橋本崇載八段に大逆転勝ちで幸先の良い出だしです。最近,ハッシーには連敗していたので,ここでの勝利をきっかけに復調をはたしてほしいです。
 昇級組の斎藤七段は,九段に昇進した木村一基九段に勝ちました。勢いに乗っています。もう一人の昇級組の菅井達也七段は,阿久津主税八段に敗れました。そのほかは,前期惜しくも昇級を逃した山崎隆之八段は,前期ぎりぎりで降級を逃れた郷田真隆九段に勝ち,B級1組の常連となりつつある松尾歩八段は,丸山忠久九段に勝ちました。糸谷哲郎八段は明け番です。
 今期のB級1組は名人経験者(谷川,丸山),竜王経験者(谷川,糸谷)がいるなどハイレベルです。前王将の郷田九段もいますし,現在,羽生三冠に挑戦中の斎藤七段もいます。そして菅井七段も,王位戦で羽生三冠への挑戦を決めました。谷川九段にはA級復帰を目指してもらいたいですが,これだけの新旧の実力者がそろうと,現実的には,残留を目標とすることになるでしょうかね。

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2017年6月27日 (火)

藤井聡太四段29連勝

 報道がすごかったですね。NHKの19時のニュースでもとりあげられ(そこで永瀬拓矢六段は藤井勝ちを予想),実際21時のニュースのころは,すでに藤井四段が優勢になっていましたが,番組は藤井特集という感じで,しかも番組中に投了シーンがあったので,映像的には最高だったことでしょう。
 私は,この将棋は,夕方くらいから,スマホの将棋アプリで棋譜を追い,iPad,ノートパソコンを使って,AbemaTVとniconcoの解説をみていました。夕方くらいでは,藤井四段が不利だと思っていました。藤井四段の飛車が3六にいて,増田四段が2七角と打ち,4九の金との飛金両取りをかけていました。増田四段は飛車の入手が確実な状況で,藤井四段の玉はそれほど堅くなく,8筋の飛車が藤井陣をにらんでいるし,なんと言っても,藤井四段は2枚の角をもっても,打つところがなく,また2四に出た銀は浮いていて,おまけに1五角などの攻防手の邪魔になっているなど,どうみても藤井四段は劣勢でした。もっとも,niconico動画の解説をしていた谷川浩司九段は,必ずしもそうはみていなかったようであり,2枚の角をうまく使えれば,先手もやれると考えていたようです(Abemaのほうの若手の解説は軽くて,解説対決では,谷川九段を登板させたniconicoの勝ちでしたね)。
 ここで2一桂の頭に打った2二歩が絶妙手だったようです。その手を指す前に藤井四段は長考していました。その途中で夕食のメニューを店員らしき人が聞きにきて,しばらくしてそれが品切れで,また聞きに来るというハプニングもありました。聴衆は藤井四段の思考を邪魔するなと突っ込んだと思います。品切れは縁起が悪い,なんて思っていたのですが,勝負には関係なかったですね。
 2二歩を同金と払った増田四段ですが,そこからの藤井四段の攻撃が凄かったです。増田陣の欠点は,居玉であり,7一銀も好守に参加していないこと(ただし本局ではそれほど悪形ではないとのこと),8五の飛車が不安定な位置にあることでした。藤井四段は,このタイミングで7七桂と跳んで8五の飛車にあて,飛車が逃げたところで,今度は6五と二段跳びをしたのです。素人なら桂馬の高飛び歩の餌食ですが,これで一挙に局面が変わりました。たった2手で,景色を変えてしまったところが凄かったのです。
 ここでは前に増田陣の金を2二に追いやっていたことが効いていて,7五角が絶好手となりました。かなり攻め込んでいたと思っていた増田四段ですが,このあたりから防戦一方となります。そして1五角で攻防の金取りをかけ,増田四段は飛金交換を強要され,藤井四段は金を入手して一挙に勝勢になりました。
 とくに5三桂といった重い攻めをしながら,最後はその桂を成り捨てるなど,詰め将棋の名手ならではの華麗な手筋もみせました。最後は一発逆転を狙って放った2八角に対して,その望みを絶つ3八飛で,増田四段は戦意喪失しました(3八飛は素人が指しそうな手で,俗に友達をなくすというような辛い手でしたが,これが決め手となりました)。
  本局の桂馬の活用は,中原誠第16世永世名人のようであり,角の活用は,谷川九段(第17世永世名人)のようでもあります。そして勝負術は,羽生善治三冠(第19世永世名人)のようでもあります。
 人間がソフトに勝てないということがほぼ確実になった将棋界です(佐藤天彦名人が2連敗)が,それでも将棋をこれだけ楽しむことができるのです。いまや藤井四段の連勝は社会現象となっています。AI時代において,AIをうまく使って成長した若い天才の頭脳に,私たちは夢を託しているのかもしれません。本局でも,人間では指しそうにない桂馬の活用は,いかにもソフト好みの手だと評されていました(藤井四段が5三桂を打った局面は,プロでもみたことのないような異様な局面だったようで,Abemaの解説者は困惑していましたね。ただ谷川九段は5三桂を予想していましたが)。AIは,棋士の仕事を奪うのではなく,棋士の可能性を広げるのでしょう。ただ通常の天才では太刀打ちできなくなる厳しい時代の到来でもあります。
 竜王戦決勝トーナメントは,旬の棋士が集まります。初戦で勝った藤井四段の次の対局は,佐々木勇気五段です。若手の実力者です。佐々木五段は,NHK杯のときのように,和服の正装で対局するかもしれません。7月2日の対局は,都議会選挙よりも,兵庫県知事選よりも,藤井四段の30連勝なるかという報道で盛り上がる可能性がありますね。

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2017年6月22日 (木)

藤井聡太四段28連勝(歴代記録タイ)

 将棋ネタの頻度が高まりました。藤井四段が勝ち続けるからです。
 プロの将棋は勝てば勝つほど対局が増えます。強い人ほどたくさん対局をして,収入も増えます(あたりまえですね)。
 ですので年間最多対局という記録もあり,過去最高は,羽生善治三冠が2000年に達成した89勝です。連勝記録は対戦相手次第で勢いということもあり偶然性もないわけではありません。それでも28連勝はすごいのですが,記録保持者の神谷広志八段の場合は,狂い咲きといったら失礼ですが,人生の運をすべて使ったという感じかもしれません。神谷八段は記録男ではありますが,順位戦のA級経験もないですし,タイトルもとっていないので,トッププロ棋士ではありません(神谷八段,申し訳ありません)。
 そこで,棋士の強さを示す記録としては,年間対局というのが出てくるのです。もっとも,この記録も,ある程度強くなって,予選免除で本戦から登場するとか,いわゆるシード棋士になったりすると対局数もそれだけ減るので,ある時点での最強を示す記録ではありません。ただ,若いときに年間最多対局数の記録をとっている棋士はすべて大成しています。歴代ベスト10をみると,過去最多は,羽生三冠の2000年の89局です(この年の年間68勝も,年間勝数歴代1位です)。ついで故米長邦夫の88局(1980年),谷川浩司九段(1985年)と佐藤康光九段の86局(2006年),中原誠永世名人の82局(1982年),羽生三冠の80局(1988年),森内俊之九段の79局(1981年),森下卓九段(1991年)と羽生三冠(1992年,2004年)と谷川九段の78局(2000年)です。
 ここに中原,谷川,森内,羽生という永世名人がそろっていることがすべてを物語っています。それに米長も佐藤も名人経験者です。森下九段は無冠の帝王ですが,若い頃は羽生と何度もタイトル戦を戦った元A級棋士で,その実力は折り紙付きでした。
 ところで現在,藤井四段は,今年度だけでみても,昨日の対局の前までに17連勝ということで,どこまでこの記録に迫れるかも注目です。もちろん最多勝利(羽生の68勝),最高勝率(中原の0.8545)も狙えるでしょう。
 そこで,澤田真吾六段との対局でしたが,藤井四段の完勝でした。これで今年度18勝0敗(対局18,勝数18,勝率1.0000)です。無敗の28連勝も異次元ですが,対局数や勝数などの地味な記録も注目したいところです。
 澤田戦では,先手藤井四段の駒が前半から伸びていき,澤田陣の飛車や金が押し込まれているような感じですが,プロ的にはどうも,こういうのは指しすぎで,逆襲をくらいやすい形のようです。実際,澤田六段は逆襲して,途中で飛車・銀両取りに角をうち,銀をとって馬を作ったあたりは互角の印象もありました。そのあと,藤井四段は銀で馬を追ったのですが,澤田六段の6六馬が香取りで,しかも玉に迫るというので,呼び込みすぎかと思ったのですが,5五角と打ち返して馬を消しました。その後,澤田六段から飛車,桂,香のどれかが取れる位置に味のよい角打ちがあったのですが,藤井四段はいったん飛車を逃げた上で,6四に角をうち,これが攻防の好守で,あとは4四歩から4筋を攻めて一気に寄せてしまいました。澤田六段としては,せっかく馬を作ったのですが,それが窮屈で働かず,働かせようとして飛車にあてたために,飛車が4筋に移動し,攻撃に参加してしまいました。4七に歩を打てば飛車を止めることができたのですが,その順が回ってこない鋭い寄せでした。谷川九段の高速のきれいな寄せとはまた違う,ライフル銃のようだが,鋭利な刃物でもあるといった感じの寄せに思えました(プロはどう評価しているのでしょうかね)。負けたほうはショックが大きいのではないでしょうか。この相手には,もう勝てないと思ったでしょう。
 澤田六段とは,前の対局では激戦をしていて実力は互角という感じでしたが,たった数日のうちに藤井四段は格段に強くなっていた感じです。育ち盛りのころの力士は,「一晩寝るたびに強くなる」なんてことをいいますが,将棋の世界の藤井四段も,そういう感じですね。
 次は竜王戦の決勝トーナメントの初戦です。相手の増田康宏四段は,非公式戦の炎の七番勝負の初戦の相手で,藤井四段が勝っています。藤井四段が入るまでは現役最年少棋士だった19歳です。増田四段の竜王戦決勝トーナメント進出も,棋界では十分に大きなニュースになる快挙なのですが,藤井フィーバーでかき消されています(テレビのほとんどすべての報道番組でとりあげています)。心中おだやかではないでしょう。増田四段の雪辱はなるでしょうか。ひふみんは,藤井四段はあと5連勝はすると無責任な予言をしていましたが……。

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2017年6月19日 (月)

藤井聡太四段27連勝

 藤井四段のことは,負けるまで追い続けたいと思います。アマの藤岡隼太さんとの対局は,強さを見せつけましたね。藤岡さんは先手でしたが,勝てるチャンスはない圧勝でした。最後は藤井玉に迫ったようにみえましたが,藤井四段からの角捨ての妙手があり,見事に藤岡玉を詰ましてしまいました。プレッシャーも感じず,そして実力がどんどんついている感じです。水泳で中学生や高校生がレースごとにどんどん強くなって記録をあげていくという状況に似ています。水泳なら一気に世界記録を出すという感じでしょう。これを将棋でいえば,一気に竜王にまで上り詰めるということなのですが,どうなるでしょうか。次の28連勝目がかかる相手は,先日も激戦を繰り広げた澤田真吾六段です。予想は互角でしょう。澤田六段もこれから何度もやるべき相手に,こんな目立つところで2連敗するわけにはいかないので必死だと思います。
 その横で静かに進行している棋聖戦第2局は,先手の羽生善治三冠が,挑戦者の斉藤慎太郎七段に連勝し,防衛に王手となりました。斉藤七段の攻めと受けの呼吸がちぐはぐだったようで,最後は羽生三冠の猛攻を受けて勝負どころを作ることもできなかった感じです。これまでの若手の挑戦者は,まずは羽生三冠から先勝し追い詰めて,それでも逆転されるというパターンだったので,羽生三冠に先行されてしまうときついですね。斉藤七段は開き直って,大胆に攻めていくことができるでしょうか。

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