将棋

2017年5月19日 (金)

藤井聡太四段18連勝

 ついに表題は名人戦よりも藤井四段のほうを選択することとしました。
 まずは名人戦から。第4局が終わり,後手の佐藤天彦名人が,稲葉陽八段に勝ちました。これで2勝2敗のタイです(後手番の4連勝)。素人には難しすぎる戦型の将棋でした。稲葉八段の穴熊,佐藤名人の右玉となりましたが,稲葉八段の遠見の角が結局不発だったようです。名人は玉飛接近の悪形で素人がやると叱られますが,名人に定跡なしです。佐藤名人は20日にソフトのチャンピオンのPonanzaと第2局がありますが,盛り上がりは今一つですね。ここで負けると,名人がAIに完敗となって,本来は「事件」なのですが,名人が勝つと予想している人はほとんどいないのではないでしょうか。
 いまの話題はやはり藤井四段です。若手が出場する加古川青流戦(トーナメント)で,竹内雄悟四段との初戦がありました。先手の竹内四段が振り飛車,後手の藤井四段の居飛車でした。3四角を突かない最新先方のようです。途中では竹内四段に勝ち筋が何度かあったようですが,最後は藤井四段が勝ちきりました。すでに藤井四段は相手に信用されているので,相手が自分で転んでくれるというところもあるようです。
 勝負の世界は信用が大切で,相手になめられると,相手が最善手を指しやすくなります。藤井四段はまだデビューして18戦です(公式戦)が,1度も負けていないということで,すでに対戦相手は藤井四段の指す手を信用して怖がるという現象が起きているのではないかと思います。
 次の近藤誠也五段は強敵です。藤井四段の真価が問われるところでしょう。

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2017年5月14日 (日)

藤井聡太四段NHK杯登場

 藤井聡太四段の17連勝は,王将戦第1次予選の西川和宏六段との戦いによるものでした。西川六段には申し訳ないのですが,手合い違いという感じで,藤井四段の圧勝でした。このクラスの棋士では止められないでしょう。次は18日で加古川青流戦の竹内雄吾四段戦です。おそらく山場は,竜王戦6組のランキング戦の決勝の近藤誠也五段との対戦あたりでしょうか。近藤五段は,先日のNHK杯でも,加藤桃子女王に快勝でしたし,この前の王将戦もリーグ入りして,結果は2勝4敗でしたが,豊島将之七段や羽生善治三冠に勝つなどの実力者です。おそらく公式戦でこれまで当たった棋士のなかでは,今日の千田翔太六段に次ぐ人でしょう。
 その豊島七段は,非公式戦でしたが,先日,藤井四段に勝ったのですが,それがテレビのニュースに流れるくらいですから,藤井ブームはすごいです。
 それで今日のNHK杯戦です。異例のことなのですが,藤井四段の勝利はすでに報道されていました。でもどのように勝つかに多くの人は関心をもったはずです。視聴率はすごかったのではないでしょうか。
 内容は先手の千田六段が攻めていくなか,藤井四段が自陣の底に4一角と打ち,また飛車も1四に押しこまれて素人目には窮屈な感じで,先手優勢のようでしたが,途中で千田六段が,7六歩の銀取りを放置して,攻め合いにいったのが暴発気味で,最後は少し早めと思いましたが,千田六段が潔く投了しました。
 千田六段は昨年のNHK杯にベスト8に進出していますし,先日の棋王戦でも渡辺明棋王に挑戦して,あと1勝まで追い込んだ若手最強豪の一人です。コンピュータ将棋にも精通している新感覚棋士ですが,それでも藤井四段に勝てませんでした。感想戦でも,千田六段が,藤井四段をリスペクトしている感じがよく伝わってきました。千田六段は悔しかったでしょうが,それを超えるほどに藤井四段の強さを感じたのでしょう。
 千田六段は,どうみても好形にみえない1四飛について,彼のデータには入っていなかったことを正直に語っていました。
 実は,ここがAIの限界も示唆しています。これまでのデータにない局面が登場したとき,コンピュータは弱点をみせます。千田六段にとっては,時間さえあればなんとかなったのかもしれませんが,時間の制限のないなかで,過去にない局面が出てくると,いくらコンピュータ仕込みの精密な頭脳をもっていても,判断が狂うことがあるということです。そして,逆にここに藤井四段のスケールの大きさを感じます。
 いつか負けるときも来るでしょうが,かつての年間最高勝率である中原誠16世永世名人の50年前の記録(47勝8敗で0.8545)が破られることは,ほぼ確実ではないかという気もしてきました。

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2017年5月 5日 (金)

名人戦第3局

  藤井聡太四段の快進撃はどこまで続くでしょうか。新人王戦でアマチュアの横山さんに勝ち16連勝です。アマチュア相手でも公式戦です(初戦は大橋貴洸四段に勝利)。このほかに藤井四段が参加しているのが,NHK杯(すでに初戦で千田翔太六段に勝ったことは報道されていて,来週にオンエア)です(予選では,浦野真彦七段,北浜健介八段,竹内雄吾四段に買っての本戦入りでした)。また棋王戦は予選通過まで,あと1勝で,次は関西の若手の澤田真吾六段です(ここまで豊川孝弘七段,大橋四段,平藤真吾七段に勝っています)。王将戦は1次予選が進行中で,ここまで有森浩三七段,小林裕士名七段に勝っています。次の西川和宏六段との対戦で17連勝がかかります。竜王戦も6組のランキング戦で,加藤一二三九段,浦野七段,所司和晴七段,星野良生四段,金井恒太六段に連勝し,次は近藤誠也五段と6組の優勝をかけて対戦します。すでに昇級は決定していて,6組で優勝すると本戦出場となります。
 非公式戦の炎の七番勝負では羽生善治三冠に勝ったりと話題になっていますが,公式戦ではほんとうの強豪とはまだ当たっていません。おそらく一番早くあたりそうなのは竜王戦の本戦か,NHK杯でしょうかね。
  藤井聡太ブームで影がうすい感じですが,地味に名人戦も進行中です。第3局は5月1日と2日に行われ,挑戦者の稲葉陽八段が勝ち2勝1敗となりました。稲葉八段は後手番でしたが,この名人戦はすべて後手番が勝つという展開です。将棋は先手の佐藤天彦名人が,早い段階で交換した角を5六に打ち,角が激しく動く戦いとなりました。稲葉八段の玉は中段に引っ張り出されて不安定な状況のようにみえましたが,最後はきれいに先手の龍を抜いて交換することができ,稲葉八段が勝ちを決めました。ソフトによると途中で名人のほうが優勢だったようですが,名人が飛車を見捨てて攻めたあたりから,稲葉八段に形勢が逆転し,最後は大差になりました。激しい戦いで見応えがありました。

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2017年4月27日 (木)

藤井ブーム到来か

 藤井聡太四段の炎の七番勝負の最終局,羽生善治三冠戦は,先手の藤井四段の圧勝でした(収録はすでに2月になされていたようです)。途中で,角桂と金の交換という駒損をするのですが,持ち駒の金を中段に打って攻め,銀も相手の2枚の角を狙って攻め上がり,最後は銀3枚と角で羽生玉を追いつめました。羽生三冠は最後は藤井玉を追い込みましたが,藤井四段は余裕でかわした感じです。ソフトの評価値も,1回も藤井四段の優勢は動きませんでした。力強さを感じる将棋で,これは大変なことになりました。名人になるには順位戦を上がっていかなければならないので5年かかりますが,最高賞金の棋戦の竜王戦は初年度からいきなり竜王になるチャンスがあるので,藤井竜王が誕生するかもしれません。藤井竜王といえば,藤井システムで竜王を奪取した藤井猛九段が有名ですが,もう一人の藤井の登場です。マスコミもこの話題を逃していません。ワイドショーでも扱われています。フィーバー到来という感じです。
 藤井四段の目下の敵は,すでに佐藤天彦名人と渡辺明竜王となっているのかもしれません。羽生三冠も佐藤康光九段もやっつけたいま,その次の世代のトップ棋士が照準でしょう。ここにあっさり勝つと,世代交代が一気に進むことになります。
 そんななか昨日の棋王戦の予選では平藤真吾七段との対戦がありました。平藤七段も相当頑張って,藤井四段は一見危なさそうでもあったのですが,しっかり読み切って勝ちました。これで14連勝です。これからは相手もいっそう必死になるでしょうが,藤井四段の力は頭一つ抜けている感じですね。
 一昨日は,棋聖戦の挑戦者決定戦もありました。糸谷哲郎八段と斎藤慎太郎七段の関西若手どうしの対戦があり,終盤はこじれましたが,1分将棋のなか,いったん逆転されたのを再逆転して勝ちました。これで斎藤七段はタイトル戦初登場です。昨年も永瀬拓矢六段が初挑戦して,羽生棋聖にあと1勝まで追い込んでいます。ただ,この最後の1勝が若手にはなかなか難しいのです(佐藤天彦名人もそれでいったんは敗れたあと,名人の奪取につながっています)。藤井四段の炎の七番勝負では負けてしまった斎藤七段ですが,タイトル戦での活躍を期待しましょう。
 藤井フィーバーで,昨年の三浦事件のネガティブな印象を払拭できそうです。棋界のホープを大事に育てていってもらいたいです。

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2017年4月23日 (日)

名人戦第2局

 将棋名人戦は,佐藤天彦名人が稲葉陽八段に勝って星をタイに戻しました。急戦で,後手の名人が攻め倒した感じです。ただ現在は,将棋界の話題は,名人戦よりも,また名人対将棋ソフトの対戦でもなく,藤井聡太四段がデビュー以来の連勝をどこまで伸ばすかということに移っています。13連勝のことは新聞にも出ていました。しかも,その13連勝目は,NHK杯で,躍進著しい千田翔太六段に勝ったというものです。NHK杯は,放送までは結果は知らされないのですが,これは例外中の例外ではないでしょうか。どのような将棋であったか楽しみです(放送は5月14日です。この日は視聴率が上がるでしょうね)。
 藤井四段は公式戦ではありませんが,炎の七番勝負では,増田康宏四段,永瀬拓矢六段,斎藤慎太郎七段,中村太地六段,深浦康市九段,佐藤康光九段と対局し,永瀬六段に負けただけの5勝1敗と,こちらも好調です。最終局は,23日に羽生三冠が相手ですが,どうなるでしょう。
 これも非公式戦ですが,「第零期 獅子王戦」では,藤井四段は羽生三冠と対局して,羽生三冠の勝ちとなっています。
 14連勝がかかる公式戦は,26日に棋王戦の予選で平藤真吾七段と対局です。羽生三冠にもち勝ち,さらに公式戦無傷の14連勝を達成すれば,また新聞で大きく報道されるでしょうね。

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2017年4月 7日 (金)

名人戦

 名人戦が始まりました。若手のフレッシュな対決です。初戦は稲葉陽八段が勝ちました。封じ手以降,佐藤天彦名人の手は冴えなかったですね。3四角の飛金両取り以降,後手の稲葉八段が一方的でした。72手の短手数であるのは,横歩取りの激しい戦型からして仕方ないのですが,名人戦としては,若干物足りないものもありましたね。
 佐藤名人は,コンピュータに負けたショックも引きずっているのでしょうか。稲葉八段の充実ぶりもありますが。まだまだ長丁場です。ほんとうの勝負は6月でしょう。

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2017年4月 1日 (土)

電王戦第1局

 名人がソフトになすすべなく敗れるというのは,20年前ならエイプリルフールのネタだったかもしれません。
 今日の佐藤天彦名人とPonanzaの戦いは,71手で先手のPonanzaの勝ちでした。コンピュータのあまりの圧勝で,言葉もありません。Ponanzaの初手3八金という鬼手に,名人は幻惑されたのかもしれません。手が進んで,後手の名人が8筋突破と桂取りを狙って指した9八角が疑問だったようで,先手が2九飛と桂取りを受け,さらに8八歩と桂取りに打ったところで,もう先手が勝てない変化になっていたようです。どちらの玉にも手がついていませんが,後手の名人に勝ち目はなくなったようで,早めの投了になりました。
 第2局は5月にあります。佐藤名人は,稲葉陽八段との名人戦の真っ最中のなかでのPonanzaとの対局となります。なんとか頑張ってほしいですね。
 棋王戦は,渡辺明二冠が逆転防衛で,千田翔太六段はあと一歩のところでタイトルを逃しました。このあと1勝が若手にとって遠いのです。ここを乗り越えられるかが,一流棋士になれるかどうかの試金石です。ちなみに千田六段は,コンピュータを使って強くなったと広言している棋士です。
 森内俊之九段のフリークラス転出もびっくりしました(順位戦には参加しないということ。名人に復帰する道がなくなる)。永世名人資格者であり,B級1組への陥落はプライドが許さなかったのでしょう。谷川浩司九段はB級1組に落ちても頑張っていますが,このあたりは生き方の違いですね。谷川九段も,もしB級2組に落ちればフリークラス宣言をするでしょうが,本人はB級1組はA級と実力差はほとんどなく,そのクラスにいるかぎり,第一線で指しているという意識をもっておられるのでしょう。ぜひ頑張ってほしいです。
 NHK杯の佐藤対決は,康光九段が勝ち,3回目の優勝となりました。和俊六段は快進撃でしたが,最後は元名人の康光九段の前に敗れました。相撲でいえば,文句なく三賞独占です。決勝の将棋も,最後までハラハラする接戦で,解説の羽生善治三冠も言っていたように,非常に面白い将棋でした。和俊六段は敗れたとはいえ,実力を十分に発揮したと思います。
 康光九段は,2月に会長になり,すでに多忙になっているでしょうが,そのなかでの優勝は見事です。

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2017年3月19日 (日)

ハッシー敗れる

 先ほど終わったNHK杯戦は,佐藤和俊六段がハッシーに勝ちました。ハッシーはあと一歩だったですが残念でした。私は対局中,ハッシーが2八歩を見落として,また二歩をやらかさないかハラハラしていました。 
 佐藤六段は,順位戦は最も下のクラスのC級2組ですが,これで決勝進出となりました。佐藤というと,現名人の佐藤天彦,決勝の相手の元名人でA級棋士の佐藤康光九段など数名いますが,最もマイナーであった和俊六段も,これで一躍有名になったでしょう。大波乱の優勝が起こるでしょうか。C級2組は,かつて櫛田陽一当時の四段が優勝したことがありました。今回は,和俊六段は,何と言っても羽生善治三冠に勝っていますし,前回優勝の村山慈明七段にも勝っており,これで康光九段に勝って優勝すれば,誰もフロックとはいえないでしょう。
 王将戦は,久保利明九段が勝って,王将に復位しました。これで5期目となります。郷田真隆九段は3連敗後,2連勝して粘りましたが,最後に力尽きました。久保九段は,兵庫県加古川市出身の私にとっての地元棋士です。41歳の差し盛りの世代です。まだまだ頑張って欲しいです。久保九段は,順位戦でもB級1組首位で見事にA級復帰を決めていて,好調な1年の締めくくりとなりました。
 A級では振り飛車党は久保九段だけです(かつては広瀬章人九段も振り飛車党でしたが,いまは違います)。振り飛車はアマチュアにとって,わかりやすい戦法なので,久保九段の将棋は人気があります(とはいえ,「さばきのアーティスト」と呼ばれるところなど,レベルが高い将棋です)。
 B級1組からもう一人の昇級は,これまた関西勢の豊島将之(新)八段です。もっと前に昇級しそうでしたが,やっと昇級できました。最後は幸運で,山崎隆之八段が勝てば昇級だったのですが,阿久津主税八段に敗れて,糸谷哲郎八段に勝った豊島七段が昇級を決め八段になりました。一方,山崎八段は大きなチャンスを逃してしまいましたね。豊島七段との直接対決で敗れたのが痛かったです。
 降級のほうは,郷田(前)王将が,飯島栄治七段と,負けた方が降級という戦いに勝ってかろうじて残留となりました。最後に2連勝しての残留はさすがですが,王将は久保九段にとられてしまったので,来年度は再起の年になります。
 B級2組からは,斎藤慎太郎(新)七段が,1期で抜けて昇級。また菅井達也七段もようやく昇級で,次年度のB級1組は,関西勢が,谷川浩司九段というレジェンドがいて,山崎八段という若大将がいて,糸谷八段,斎藤七段,菅井七段という将来有望な若手がそろう激戦となります(ちなみに,糸谷八段は大阪大学の修士号をとったことがニュースになっていましたね)。A級からは森内俊之九段が落ちてくるので,おそらく来年度のB級1組は,谷川・森内という二人の永世名人や丸山忠久元名人,郷田真隆元王将らが降級候補とならざるをえない厳しい展開です。もちろん,谷川ファンとしては,降級しないように,ひたすら応援です。
 棋王戦は,これまた関西勢の千田翔太六段が渡辺明竜王に勝って2勝1敗になり,奪取に王手をかけています。
 何年か前から関西の若手勢は注目を集めてきましたが,2年前の糸谷八段の竜王奪取あたりから,ようやく形になって現れてきているようです。

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2017年2月26日 (日)

将棋界の一番ながい日

 A級順位戦の最終局の結果は次のようになりました。
 まず名人挑戦者争いについては,羽生善治三冠が,これまでカモにしていた屋敷伸之九段に敗れて,挑戦者争いから脱落しました。佐藤康光九段(新会長)は,広瀬章人八段との熱戦を制しました。これで,広瀬八段も挑戦者争いから脱落して,稲葉陽八段の挑戦が決定しました。この稲葉八段は,森内俊之九段と千日手で指直しとなっています。森内九段は勝てば残留で,佐藤九段が降級,森内九段が敗れれば,そこで降級です。森内九段は指直し局では粘ることができず無念の投了となりました。いつかは来るかもしれないことでしたが,第18世永世名人で,2013年には竜王と名人という最強タイトルの2冠であったことを考えると,早すぎる降級になってしまいました。それにしても来年のB級1組は,今年以上にたいへんなメンバーで戦われることになりそうです。佐藤九段は,最近のNHK杯でも若手を撃破するなど調子が上がってきていて,今期はかろうじて残留となりました。
 4月からの名人戦は,佐藤天彦名人と稲葉陽八段というフレッシュな対決です。稲葉八段は,初タイトル挑戦が名人戦ということになりましたが,関西の大先輩の谷川浩司九段と同じように,A級1期で一気に名人位に駆け上がれるでしょうか。数年前のNHK杯では,天彦名人が勝っていたと思いますが,それほど対戦はしていないはずです。天彦名人としては,ベテラン相手のほうがかえって戦いやすかったかもしれません(天敵の深浦康市九段は除く)が,どうなるでしょうね。
 女流名人戦は,里見香奈女流5冠が,上田初美女流三段(数日前のブログで女流初段と書いて失礼しました)を200手に及ぶ激戦の末に下して防衛しました。最終局はお互いの執念がぶつかりました。途中で上田さんにも勝ち筋があったようですが,最後は里見さんがうまくかわして,玉を安全地帯に逃がすことができました。
 ところで先日,初の外国人の女流プロが誕生したということがテレビのニュースでも話題になっていました。これを見た人は,プロ棋士が誕生したように誤解してしまいそうな報道の仕方だった気がします。里見さんたちは女流プロではあっても,正式な意味でのプロ棋士ではありません。女流プロをプロ棋士と呼んで間違いとまでは言えませんが,まさに現在里見さんがプロ棋士を目指して三段リーグで奮闘していることからもわかるように,女流プロのトップ棋士でも,本当の意味でのプロ棋士である四段になるのは至難の業なのです。
 女流プロというのは,いわば女性枠だけのもので,将棋のレベルということから考えると,現在は男性しかいないプロ棋士のレベルと格段の違いがあります(ときどき女流が男性プロ棋士に勝つことはありますが。稲葉八段も里見さんに負けたことがあります)。
 外国人が女流プロになるということは,グローバル化という点では良い話のようですし,暗い話が多かった将棋界にとっては明るいニュースでしょうが,それだけのことです。里見さんが四段になったとき,そしていつか男女に関係なく外国人がプロ棋士になったときこそ,ほんとうの価値あるニュースとなるでしょう(日本将棋連盟が外国人に入会を認めているかどうかは勉強不足でよく知りません)。

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2017年2月19日 (日)

ハッシー強し

 今日のNHK杯は,王将奪取に王手を掛け,先日,A級復帰を決めたばかりの久保利明九段とハッシー八段の対局。先手の振り飛車穴熊の久保九段が,ダイヤモンド美濃のハッシーを完全に封じ込めたように思えましたが,劣勢のなか,決死の馬切りで活路を見いだし,金を犠牲にして龍と飛車を交換します。しかし攻めは,龍とと金の細いもので,一方,久保九段は1段目に飛車を打って,下段からハッシーの玉を追いつめます。久保九段完勝の流れでしたが,ハッシーが玉の逃げ道を作ると同時に攻めも睨んでいた7筋の歩突きで,ついに詰めろがかかる局面まで挽回し,そして最後は入玉もにらみながら,気づけば逆転していました。まさに大逆転ですが,劣勢のときは早指しで相手を調子づかせてミスを誘い,優勢になってからは,ハッシーの正確な指し回しが光りました。最後の大事なところで1分を残していて,万が一にもミスはしないという用意周到さも,ハッシーのプロ棋士としての能力の高さを示すものでした。前回の深浦康市九段相手にも大逆転でしたが,大物相手の連勝で,初優勝も視野に入ってきましたね。あとは昨年のように二歩はしないでくださいね。
  久保九段が昇級を決めたB級1組(ラス前)で,もう一人の昇級者の決定は,最終局に持ち越しとなりました。谷川浩司九段に勝った山崎隆之八段は8勝3敗で,次の阿久津主税八段に勝てば自力で昇級です。阿久津八段は,郷田真隆王将に勝っていれば,久保九段に次ぐ昇級候補の一番手になっていたのですが,敗れて7勝4敗となり,逆に3勝の郷田王将に残留の目が出てきました。ただ最終局で,阿久津八段が山崎八段に勝てば8勝4敗で星がならび,あとは同じ7勝4敗の豊島将之七段と糸谷哲郎八段(6勝5敗)との対局次第となります。順位の関係では,豊島七段,阿久津八段,山崎八段の順番なので,3人が8勝で並べば豊島七段の昇級となります(頭ハネ)。糸谷八段はライバルの豊島七段の昇級を阻止するでしょうが。山崎八段と豊島七段は,昇級すれば初のA級です。高い実力が評価されながら,B級1組で足踏みしている豊島七段,魅せる将棋で天才の誉れ高い山崎八段のどちらが昇級しても関西勢なので,嬉しいところです。阿久津八段も前は1期で全敗して陥落したので雪辱をねらっているところでしょう。
 ハッシーは木村一基八段に勝ち(6勝5敗),木村八段に残っていたA級復帰の可能性を絶ちました(木村八段は,7勝5敗で今期終了)。
 降級候補は,ともに3勝8敗である飯島栄治七段と郷田王将で,最終局で激突します。どちらも,負けた時点で即降級となります。飯島七段は勝っても,畠山鎮七段が勝てば降級です。畠山七段は,敗れれば即降級ですし,勝っても,郷田王将が勝っていれば降級となります。つまり郷田王将は勝てば残留,負ければ降級で,他人の対局結果に関係しない状況です。
 B級1組も,今期の最終局(3月9日)は,A級と同じくらいに盛り上がりそうです。
 タイトル戦は,佳境に入った王将戦(7番勝負)は,郷田王将が一矢を報いましたが,防衛には3連勝しなければならず厳しい状況が続いています。久保九段は王将奪回目前です。
 棋王戦(5番勝負)は,渡辺明棋王(竜王)が,千田翔太六段に勝って,1勝1敗です。勝負はこれからです。千田六段は,NHK杯でも,先週,佐藤康光九段(新会長)に敗れており,調子が下降線にあるのでしょうか。
 来週は,女流名人戦(5番勝負)の最終局もあり,里見香奈さんが女流五冠を守るかが注目されています。上田初美女流3段が2連勝し,里見さんが2連勝して星が並んでいます。ちなみに里見さんはプロ棋士(現在は女流棋士)をめざす三段リーグ(年2期)にも在籍しており,昨日まで7勝7敗です。今日も対局があります。三段リーグは上位2名が四段昇段(プロ棋士になる)で,3位の次点が2回であってもプロ棋士になれます(ただし,その場合は,順位戦のないフリークラスへの編入)。里見さんの今期の成績は厳しいですが,少しでも順位を上げておいて,次期以降の昇段の可能性を残しておいてほしいですね。三段リーグは26歳の年齢制限があり,もうすぐ25歳になる里見さんに残されているのは,時間との戦いになります(勝ち越せば29歳まで延長可)。
 そういえば,三浦弘行九段の復帰戦は,羽生善治三冠との一戦で,因縁の竜王戦の予選でしたが,羽生三冠の勝利でした。メディアでも大きく報道されましたね。

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