経済・政治・国際

2017年10月 8日 (日)

希望の党の公約

 

希望の党が政策を発表したというので,HPで瞥見してみました。第一印象は,それほど悪いものではありません。財政出動に寄りかかったものではなく,むしろ規制改革による競争力向上とセイフティネットの強化という点を強調しているようで,そうだとすると政策の方向性としては間違っていないような気がします。少し女性活躍推進政策に偏重しているのは,党首が女性であるから仕方がないでしょうね。
 ただ気になったのは,同一労働同一賃金に言及していること。これはいつも言っているように理論的にも政策的にも問題があるものですし,女性の活躍という文脈で使うべきではないのですが,スローガンとしてはインパクトが強いので,少なくとも政党公約としては使い続けるのでしょうね。バックに経済学者がいるからかもしれません(経済学者は,法学者以上に,同一労働同一賃金が「好き」です)。
 「正社員化促進法」なるものも提唱していますが,これも間違ったものです。希望の党は別のところでは,先端分野での競争力を高め,起業を促進し,経済の自律的成長をめざすという正しい政策に言及していますが,正社員化を促すというのは,これと相容れないものを含んでいます。正社員化をたんに雇用や賃金の安定というセーフティネット的なものととらえているふしがありますが,これは誤りです。正社員というのは,なぜ存在するのか,そして今後どうなるのか,ということが理解できていないのではないでしょうか(理解するためには,拙著『AI時代の働き方と法-2035年の労働法を考える』(2017年,弘文堂)を読んでください)。
 消費税凍結の代わりに,企業の内部留保への課税により社会保障などの財源確保をするという提案も,気になります。租税理論的にこれをどう考えていいのか,私は知識不足でよくわからないところがありますが,素朴な印象としては,企業が剰余利益を賃金にまわすか,投資にまわすか,配当にまわすか,内部留保するかといった点は,企業の経営判断にまかせておいたほうが,経済の活力を向上させることにつながると考えています。法人税があるので,企業が所得を増やすと,税収も増えるのです。このために必要なのは競争力向上政策です。法人税の税率の水準には議論があるところですが,いずれにせよ法人がたくさん稼いでくれれば税収は増えます。そこで税金で支払った残りを,どう使うかは,企業に任せるべきであり,内部留保をしたときにさらに課税するのはいかがなものかと思います。企業の内部留保は,個人の貯金性向と同じで,将来の不確実性への備えという面もあります。内部留保課税により配当でどんどん外部流出していくと,一瞬,投資家を引き寄せることはできるかもしれませんが,冷静な投資家は,そういう企業はかえって将来性に不安があるとして敬遠する可能性も高いです。賃金で外部流出させるのも同じことで,たとえば高額の賃金を従業員に支払う企業は,投資家から持続可能性に疑問をもたれるかもしれません。逆に将来への確実性が高まれば,自然な形で賃金や配当が増えていき,そうすると国民の購買力は高まり,また投資家の疑心暗鬼が生じにくいので金融市場は活性化し,日本経済も成長していくことになるのではないでしょうか。
 希望の党の「希望」という何にふさわしいのは,将来への不確実性を減らす政策であり,それこそが日本経済にとって必要なものです。内部留保への課税は,これに逆行し,将来をいっそう不安にさせるもので,希望の党にふさわしくない政策のように思えます。
  なおマイナーな点かもしれませんが,電柱の地中化は良い政策です。ドローンを飛ばすためにも,地震のときの被害を拡大させないためにも,ぜひやってください。
 それと,国家公務員のICTの活用による削減も良い政策です。ただ,もっとICTのことを強く打ち出し,テレワークなどの働き方改革にかかわる政策にも触れてほしかったです。今より自由に働ける社会が,到来しようとしているのです。希望の党にふさわしい政策でしょう。この点についても前記の拙著(『AI時代の働き方と法』)に書いているので,ぜひ小池さんのブレーン(誰か知りませんが)には参考にしてもらいたいですね。

|

2017年10月 2日 (月)

激動する日本政治-共産党にチャンスか?

 安倍首相の無謀な解散が,日本政治に大混乱を引き起こしているようです。民進党は壊滅の危機にあったのが,少し希望が出てきました。希望の党が出てきたことにより,前原さんは,希望の党とくっついて,たとえ民進党はなくなっても,民進党議員の延命は図れると考えたのでしょう。前原さんと小池さんがくっつくということは元々予想しえたものでした。ただ,民進党の左派は小池さんにとっては不要なわけで,そこを切り捨てるのは当然のことです。民進党議員をまるごと飲み込んでもらえると甘い夢をみて,主義主張を捨てて小池さんについていこうとした民進党左派もいましたが,いまは枝野新党(民主党?)という受け皿ができて,そこで生き残ろうとしています。この新党は民進党のダメな部分が結集している政党のようにも思えますが,そうとは思えません。共産党と連携できるところが強みです。
 実はこの政界再編で,最大のチャンスが来たのは共産党ではないかと思っています。保守票を,自民・公明連合と希望・維新連合で食い合いをし,左派の受け皿を枝野新党,共産党,社民党が一手に引き受ければ,かなり良い勝負ができる可能性もあります。
 もちろん普通の予想は,自民と希望の一騎打ちでしょうが,連立の可能性を広げていくと,いろんな変数がありえます。一つの鍵は,共産党が,その名を捨てて実を取ることができるかです。思うのは,イタリアの民主党誕生のときです。かつてユーロコミュニズムの騎手と言われたイタリア共産党(PCI)は,1991年に解党し,当時の左翼民主党に結集しました。これが中道左派政権の誕生への道を作りました。実際,Prodi首相ら,中道左派政権がイタリアに誕生するきっかけとなり,今日に至るまでの中道右派と中道左派の戦いという構図ができあがりました(もっとも最近では,Movimento 5 Stelle などの政党も有力ですが)。また元共産党のMassimo D'Alemaは,1998年に首相になっています。さらに現在の大統領のGiorgio Napolitanoも,共産党出身です。
 共産党は消えても,政治の中枢に人を残したといえるでしょう。安倍首相にとっても,小池知事にとっても,もし日本共産党がイタリア共産党と同じような決断をして,アレルギーの強い共産党という名を捨てて,中道左派の大同団結を図ったとしたら,たいへんな危機に陥るでしょう。
 私の心のどこかには共産党シンパの部分があるのですが,現実的には,いまの共産党に政権をとってもらいたくはありません。保守の下で,雇用・労働政策はリセットし,そのうえで,しっかりとした経済・産業政策を展開してもらいたいものです。
 しかし,こうした中道左派政権誕生の可能性を,たとえそれがわずかであっても,作りだしたのは,衆議院を解散した安倍首相自身です。日本の現代史において,最も愚かな政治判断をした首相とならないことを祈るばかりです。

|

2017年9月27日 (水)

小池が来た!

 衆議院の解散については,憲法学説上,7条説や,69条説といった議論がありますが,少なくとも憲法には解散権について明確に定めた規定はありません。だから首相に解散権があるというのは,ちょっとどうかなという気がします。たしかに7条説により,結果として,内閣に解散権があり,だからその首長たる内閣総理大臣に実質的な権限があるということかもしれませんが,それにしても,どんな権利にも濫用というものがあるはずです。
 今回の安倍首相の解散には,多くの人が言うように「大義」はなく,解散が先にありきで,あとから理由を考えたというのが見え見えです。もちろん民意を問うということが大義だということかもしれませんが,衆議院議員の任期は4年と定められていて,本来その間は任務をまっとうするのが原則でしょう。したがって,解散は,それなりの理由が必要であり,少なくとも政治的な説明責任はあるはずです。
 説明というのは,ただすればいいというものではありません。国民にわかりやすい「口調」で説明するのが,丁寧な説明ということではありません。内容が大切です。消費税の使途を変更すると今日決断したから,解散することにした,なんていうのは,あきれてしまいます。消費税引上げは2年後のこと。少子高齢化はずっと前からわかっていること。なぜこのタイミングかさっぱりわかりません。北朝鮮への対応も,いま国民において安倍首相の方向性に強い異議が出されているわけではありません。それなのに信を問うというのも,理由がわからないのです。むしろ選挙による空白期間は,日本にとってたいへんな脅威とならないでしょうか。河野外相や小野寺防衛相は,それなり頑張っているみたいです。いまの内閣のままで,もう少し行けばよかったのではないでしょうか。
 ということで,これは解散権の濫用と言いたいところです。今回の解散の真の目的は,今の時期にやらなければ,自民党はもっと議席を減らすからということのようです。今回も議席を減らすようだけれど,先延ばしすると,もっと減らす可能性があので,いまやるということのようです。民進党も弱っているし,若狭・細野新党も脆弱な感じだから,ということです。こんな数合わせの戦略でやっているから,小池都知事の急襲をくらう隙ができたのでしょう。選挙の行方はよくわかりませんが,小池新党(希望の党)への期待は大きいようです。東京都の選挙だから見守るだけだったけれど,国政選挙だから,ぜひ小池氏を応援したいという人がかなりいそうです。
 この選挙,ひょっとするとほんとうに首相を選ぶ選挙になるかもしれません。安倍首相への信任投票的な感じの選挙だったのが,小池か安倍かという選挙になってきました。安倍首相は,解散は野党にも政権をとるチャンスが出てくるからいいだろうと言っていました。でも,自分が負けるとは思っていないでしょう。
 小池都知事は保守であり,自民党の支持層と重なりますし,民進党も前原代表をはじめとする保守層がいて,そことの連携が十分に可能です。さらに維新なども政策的には近いものもあり,小池連立政権で一気に首相へという道がありえないわけではありません。国民は森友・加計で逃げてきた首相には批判的です。同じ保守なら,清新なイメージの小池氏のほうがいいという有権者が雪崩を打つように小池氏に投票する可能性があります(そうなると自民党からの離党もどんどん出てくるかもしれません)。
 思えば,イギリスのCameron首相やイタリアのRenzi が,自己の政権基盤を強化するために,別にやらなくていい国民投票をやって,票を読み違えて敗北して下野したという例があります。どちらも,まさかの転落だったのですが,安倍首相もやらなくてもいい解散をして同じ轍をふむ危険がないとはいえません。
 ところで,いまや実質的権限が奪われている労政審が大急ぎで認めた「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」は,どうなるのでしょうかね。小池氏の労働政策がどいうものかはよく知りませんが,もともとこの法案の内容には反対だったので,リセットしてもらっていいのですが。

|

2017年8月22日 (火)

民進党の最後の代表選挙か?

 民進党の代表選挙が盛り上がりませんね。前の代表である蓮舫が,2重国籍の疑惑を晴らす証明をして,国会で加計学園問題について安倍首相に対してかなり切り込んでいったなと思っていたら,突然の代表交代です。何かあったのかと思えば,都議選の結果の責任をとるということです。蓮舫おろしをするのなら,安倍首相の追及は別の人にやらせればよかったのです。代表の交代で一番喜んでいるのは安倍首相ではないでしょうか。前原氏にしても,枝野氏にしても,「昔の名前で出ています」です。民進党の人材難を露呈してしまいました。
 そもそも安倍首相批判で一番キレがよいのは同じ自民党の石破茂氏です。これでは民進党の存在理由がありません。また民進党は,保守自民党と対抗できるリベラル政党のはずですが,安倍政権の働き方改革などには,リベラルな(あるいは,リベラルなようにみえる)政策がかなり入っていて,民進党が独自に労働者にアピールできるものがあまりありません。せいぜい「高度プロフェッショナル制度」に反対するとか,解雇の金銭解決に反対するとかいった程度でしょう。ただ,これこそ愚かなポピュリズムで,国民にとってほんとうに必要な政策が後回しになってしまいます(なお,今朝の日本経済新聞では,「安倍政権の新自由主義的な経済政策に対して,社会民主主義的な対立軸が明確になる意義はある」と書かれていましたが,いまの安倍政権の経済政策はケインズ主義で,ぜんぜん新自由主義的ではありませんよね。日経は,現在の安倍政権は新自由主義派だと考えているのでしょうか)。
 防衛・外交といった大きなテーマでも,実は自民党は前防衛大臣で自ら大きく転んでいたのに,民進党はその好機をうまく利用できていません。ぐずぐずしているうちに,北朝鮮の脅威が高まってきており,こうなると国民は経験と安定を求め,また理想論より現実論でいく自民党のほうに傾いていくでしょう。
 もっとも,現実だけでいくなら,優秀な官僚だけで十分です。理想を語るだけなら,学者で十分です。政治家こそが,理想を語りながらも,現実と折り合いをつけて,国民を幸福にすることが可能なのです。その技量が民進党にあるでしょうか。左派的な大きな政府論や社会保障の充実は,財源面で説得的な主張をしないかぎり,現実性がなく,国民を幸福にできそうにありません。思うに,同じ時間軸で勝負しているかぎり,自民党に勝てる余地はないと思います。そこで,あえて10年後の日本をどうするかといった未来と理想を語ればどうでしょうか。時間軸をずらすことによって,いまの自民党の政策が10年後の日本にとって良いのか,という議論ができると思います。そのためには,将来に向けた明確なビジョンを描くことが必要なのですが,民進党にそれができるでしょうか?

|

2017年8月15日 (火)

終戦記念日に思う

 終戦記念日がいつかを知らない若者が増えているそうです。たしかに72年前というのは,遠い昔です。私が大学生のときの72年前というと大正時代であり,たいへん昔のことのように思えていたはずです。いまの大学生たちが終戦記念日を知らないのも仕方ないことかもしれません。
 しかし,そのことと戦争の悲惨さを知らないのとは別のことです。戦争に行った生き残りの世代の人々も徐々に少なくなっています。戦争はどこか遠い国のことのように思えますが,日本も悲惨な戦争の当事国として,72年前までは戦っていたのです。
 私たちの平和な生活は,戦争が起これば吹っ飛びます。いくら未来の労働政策を考えようなんて言っていても,すべて無意味なことになるかもしれません。北朝鮮からのミサイルがもし日本の本土に落下すれば何が起こるでしょうか。大地震どころの騒ぎではないでしょう。天変地異ならまだ諦められても,自国にいながら他国の攻撃で殺されるなんて死んでも死にきれないでしょう。その意味で,原爆投下で亡くなった人の無念さはどれほどだったかと思います。
 北朝鮮の態度は,昨日今日に始まったことではありません。あのときこうしていればよかったということは,繰り返してはならないのです。北朝鮮への挑発が危険なことは,以前にこのブログでも書いたことがありますが,私たち国民は,もっと政府のやることに関心をもっていなければなりません。アメリカとの関係も慎重に考える必要があります。アメリカを信用してはならないのは歴史の教訓から明らかです(ロシアも同様ですが)。
 前防衛大臣にお気に入りの無能な大臣をつけ,そして大混乱を引き起こすといったむちゃくちゃなことをした首相は猛省をすべきです。本気で日本の防衛を考えているのでしょうか。前外務大臣も,たいした用もないのに神戸大学に来るなどのんきなことをしていました。人柄温厚そうだとはいえ,そんなことは関係ありません。核兵器禁止条約に日本が交渉にすら参加しなかった責任は,この大臣にあります。
 私たちは,この内閣に頼るしかありません。首相をはじめ現在の防衛大臣,外務大臣にはしっかり頑張ってもらうしかないのです。

|

2017年8月 8日 (火)

凋落の兆し?

 驕る平家は久しからず。誰もが知っている格言ですが,なかなか肝に銘じて行動するのは難しいことです。いまだから言うのではないのですが,今回の内閣改造で,おやっと思ったのは,江崎鉄磨沖縄・北方担当大臣でした。73歳で当選6回,初入閣で二階派。派閥均衡,在庫一掃で,比較的楽な大臣ポストに当てた,ということではないかと思ったのです。案の定,自ら転んでしまいましたね。謙虚に官僚答弁を読み上げるということですが,「仕事人内閣」の看板に泥を塗りました。人事にはいろいろな配慮があるのでしょうが,「仕事人」という看板は,そういうものを乗り越えて適材適所にするということのはずです。前の法務大臣もそうですが,自分でしっかり語れないような大臣(あるいは語るとろくなことを言わないような大臣)は即刻去るべきです。国民をバカにしてはなりません。沖縄の人も怒っているのではないでしょうかね。首相は,言葉使いだけは丁寧になっていますが,ほんとうに危機意識をもっているのでしょうかね。国民はバカだから,ちょっと低姿勢になっていれば,すぐに人気は回復するなんて思っていませんかね。
 もう一つ気になるのが,小池百合子都知事系の若狭勝議員が立ち上げた「日本ファーストの会」です。すでにネットでも指摘されているようですが,これは最悪のネーミングです。Trumpの「アメリカファースト」が,世界中から顰蹙を買っているのに,今度はそれの日本版かと思われてしまいます。こういうネーミングを平気でやるところに,政治センスの低さがうかがえます。小池さんの「都民ファースト」に乗っかるということだけを考えているから,こういうことになるのでしょう。
 こういうちょっとしたところに,本質がうかがえます。国民をみていない政治家は,必ず痛い目にあうというのが,民主主義のはずです。選挙に勝った者は権力者です。首相は当然ですが,小池知事も若狭議員もいまや大変な権力者なのです。権力は腐敗します。私たち国民は,民主主義社会の権力の源泉が自分たちにあるという自覚をもって,腐敗や慢心を見逃さないようにしましょう。

|

2017年8月 4日 (金)

人づくり革命に期待できるか?

  第3次安倍第3次改造内閣が誕生しました。厚生労働大臣も変わりました。前大臣については,その主導の懇談会や有識者会議に参加する機会がありましたが,大臣が変わると,また新たなものが次々と立ち上がるのでしょうかね。
 今回,注目したいのは,経済財政・人づくり革命を担当する内閣府特命担当大臣に茂木敏充氏が就任したことです。「人づくり革命」に実力派の大臣がついたことで,今後の政策の展開が楽しみです。と思っていたのですが,今朝の日経新聞では,茂木大臣は,「3日の会見で,『個人が新たな能力を身につければいつでも人生の再起動ができる。政府も多様な支援策を用意する』と述べた。近く政府に新たな会議を設け,教育無償化や社会人の学び直し支援,子育て世帯への支援充実などを議論する」と出ていたので,私が期待しているものと少し違っていました。
 「人づくり」は,もっと中長期的な支援の下に,AI時代にそなえたものでなければなりません。おそれているのは,厚生労働省は目先の法案のことにエネルギーをとられ,内閣府もキャッチーな政策に目を奪われ,文部科学省は省内の混乱の沈静化に追われ,「どのような人」をつくるのかという,最も重要な政策がおざなりになる,ということです。
 安倍政権は,すでに人気も低下傾向で,そんななか次の選挙が少しずつ近づいてきます。中長期的なビジョンで政策を進める余裕が今後なくなっていかないか心配です。安倍内閣は,とにかく,いろんなことをやっている感を見せるのが大切だと考えている内閣のようですが,後からみて,見せかけだけで,たいした中身がなかったということにならないようにしてもらいたいですね。優秀な若手官僚を,そんなつまらないことに動員して,彼ら,彼女らのエネルギーを浪費してほしくないからです。
 「人づくり革命」が,革命の名に値するものになるとすれば,これまでの人材とは異なるまったく新たな人材(つまり,AI時代に対応できる人材)を,国家の戦略で育成していく必要があります。この内閣にそれができるでしょうか。

|

2017年7月 3日 (月)

井戸さんが5選

 兵庫県知事選は,サンテレビでは,開票早々に現職の井戸さんの当選確実でした。おめでとうございます。勝谷さんには,もう少し接戦をしてほしかったけれど,30万票差ということでは,どうしようもなかったですね。カツヤマサヒコshow のアシスタントをしていた女子アナの榎木麻衣さんが,お通夜の席のような悲しそうな顔をしていたのが印象的でした。本人の敗戦の弁が,Yahooニュースで出ていて,彼らしくてよかったです(言葉が下品でしたが)が,やはり最大の敗因は髪型を変えて,県民に迎合したような印象を与えたところではなかったでしょうか。政見放送も一回だけ見ましたが,あまり上手ではなかったです。テレビの人ですが,コメンテータとしてはいいけれど,自分が主役で人に訴えかけるという面では,現職の井戸さんとは役者が違いました。
 でも,共産党以外はオール与党の現職に果敢に挑んだ戦いには,ある種の男のロマンも感じました。彼は有名人で一般人とは違うとはいえ,組織の支持のない候補でした。兵庫県への愛を必死に訴えかけていたことは,よくわかったのです。その情熱で64万票を集めたというのは,ある意味ですごいことです。
 今回残念だったのは,投票率が低かったことです。年齢別の投票率の数字はもっていませんが,私の周りでは選挙に無関心な若者が多かったです。若者が戻ってこない県になっている兵庫県に,選挙でも若者が背を向けているような気がしました。ここに兵庫県の深刻な問題があります。井戸さんは,その抜群の安定感をいかして,5期目を自身の県政の総決算として,兵庫県の魅力をいっそう高め,若者が未来を感じる県になるよう,ぜひ取り組んでもらいたいです。71歳は高齢には思えますが,気力もまだ充実しておられるようですから。
 一方,都議会選は,兵庫県の知事選とは違い,盛り上がりました。都民ファーストというわかりやすいネーミングの党が,都民の心をつかみ,小池人気もあって,歴史的大勝を勝ち取りました。でも多くの人が指摘するように,自民党が勝手に転んだという面もあり,これだけ次々と問題が発生して自民党が勝てば,都民は日本中から馬鹿にされていたことでしょう。
 今回のように風が吹いて当選した候補には,いろいろな人が混じっているはずですが,どっちにしても小池チルドレンでいいのです。公明党にせよ共産党にせよ,個々の候補者ではなく,党に投票しているのです。都民ファーストは小池党ですから,都民は小池さんに投票したようなものです。党内で小池さんといろんな議論をすることは必要ですが,最終的に決めた政策は一枚岩で行かなければならないでしょう。小池さんのリーダーシップが見ものです。
 負けたとはいえ,自民党はまだ23議席あります。民進党は,今回の風にも乗れず,さらに議席を減らして5議席となりました。現有が7議席なので,減り方はわずかですが,民進党には未来がないということがはっきりしました。これから数回の選挙で,社民党と同様,この政党も消えていくことでしょう。
 都民ファーストにせよ,以前の大阪維新にしろ,これまでの地方自治におけるアンシャンレジームを打破しようとする強烈な突破力のある人が現れ,改革の波を起こしてきました。やはり,オール与党はあまり健全ではありません。4年後の兵庫県知事選は,どうなっているでしょうか。

|

2017年6月 2日 (金)

北朝鮮リスクにどう立ち向かうか

 Trump大統領が,北朝鮮の金正恩を「smart cookie」と呼んだことが話題になったことがありました。金正恩を軍事オタクの狂者と思っている人からすると,なんという発言かと驚いたと思います。私もそうです。相変わらずミサイルも飛ばすし,日本人の忍耐も限界に来つつあります。斬首作戦などという穏やかならぬ表現も使われていて,日本人が過激化しつつあることも心配です。ただ,ここは冷静に考えてみる必要もありそうです。まず,金正恩をマッドとか,バカ者とかと想定することは,危険だということです。Trumpが述べたように「smart cookie」なのではないか,と考えて対処をとったほうがいいのです。
 あの極貧国をここまで存続させていること自体,たいへんな手腕ともいえます。ミサイル発射など絶望的な軍事戦略に頼っていて,合理性のかけらもないという見方もありますが,よく考えると日本人だって,第2次世界大戦のときは,あのアメリカ相手に無謀な戦争をしたのです。国内では,天皇は現人神と考えられていたのです。外国からみれば,当時の日本人は不合理の極みだったことでしょう。あの戦争は,日本に原爆を落とされて悲劇的な終結となりました。金正恩は,日本が核をもっていれば,あのような終結にならなかったと思っているかもしれません。
 統治者であるならば,国民の経済水準を上げることが大切です。それは北朝鮮も同じでしょう。精神的な統治や思想統制だけでは,もたないはずです。大砲よりバターでしょう。これまでは,アメリカの経済制裁をなんとかかいくぐってきたのでしょうが,やはり正面から解除を求めたいのかもしれません。その対話のテーブルにつかせるためには,アメリカ本土に着弾できる核ミサイルが必要だと,金正恩が考えていても不思議ではないのです。
 まったく次元が違いますが,労使交渉も,労働組合にストライキ権があるからこそ,対等な交渉が実現するという面があります。実際,欧州の労働法の文献では,交渉が妥結して締結される労働協約を「休戦協定」と呼ぶこともあります。労働協約の締結中にストライキをしない義務を「平和義務」といいます(平和義務は教科書でも使われている言葉です)。ストライキは,それ自体が目的ではありません。交渉を有利にするための手段です。ストライキの威嚇は,対等な交渉を進めるために必要だというのが,労働法的な思考です。
 それと北朝鮮の問題は次元が違うといえばそうなのですが,いずれにせよ交渉こそがメインで,軍事力はその手段にすぎないとするならば,軍事力ばかりに目を向けていては対応を誤ることになりかねません。北朝鮮にとっては,拉致問題も,核も,外国から経済援助を引き出すためのカードです。中国に石油供給を止めるように圧力をかけることは,かつての日本のABCD包囲網を想起させ,それこそ日本がやってしまったような絶望な戦争に北朝鮮を駆り立てる可能性があります。戦争をしたら国が滅びるかもしれないという場合には,戦争を仕掛けたりしないという合理的な想定があてはまらないのは,日本の経験からもわかるのではないでしょうか。
 北朝鮮リスクをなくす方法には,金正恩に花をもたせるような徹底した経済援助(バターの供給)をして,北朝鮮国民(国民に罪はない)の経済状況を改善し,その手柄は金正恩に帰着させるというディールをもちかけるという戦略もありそうです。そうすることによって,北朝鮮が核爆弾などの危険な外交カードを使わなくてよくなり,拉致問題を人質にする必要もなくなれば,一番いいのです。これは楽観的すぎるシナリオでしょうか。
 強硬な軍事オプションしかないのでは,という世論が高まってきているのが怖いです。金正恩を殺してしまえという乱暴な議論も耳にします。もし,あの戦争で,昭和天皇が敵国に暗殺されたり,処刑されていたりしたら,日本人はどう思っていたでしょうか。金正恩が北朝鮮で神格化されつつあるということに留意しておかなければなりません。それに,金正恩を暗殺して,ほんとうに拉致被害者が帰ってくるとも思えません。
 怖いのは軍の暴走です。これも日本の経験からいえることです。北朝鮮軍を抑えることができるのは,金正恩しかいないとするならば,いかにして彼を利用するかを考えるべきです。ストライキ権を背景とした敵対的な団体交渉よりも,協調的な労使協議のほうが,効率性が高いのです。こうした知見を北朝鮮外交においても活かしてほしいです。パリ協定離脱といった愚かなことをしたTrumpですが,経済的合理性に徹した交渉なら得意でしょう。北朝鮮リスクを小さくできるのは,この方法しかないと思っています。今朝の日経新聞のオピニオンでは,制裁と圧力による「非核化」を追求せよという意見が出されていました。「非核化」は重要ですが,それを「制裁と圧力」によって実現するのは無理だと考えるのが,現実的ではないでしょうか。
 外交や軍事の素人の一つのオピニオンにすぎません。お前のような甘い考えではダメと叱られるかもしれません。しかし,日本国民として,真剣にこの北朝鮮リスクに向き合わなければならないと思っています。外交や軍事の専門家に任せきっていてよいということではないでしょう。

|

2017年5月10日 (水)

外国の大統領選をみて思う

 大統領選は,アメリカ,フランス,韓国のいずれも,国民が直接選ぶことができます(アメリカはやや複雑な仕組みですが)。ですから熱狂しますし,ポピュリズムが生まれやすいように思えます。こうした選挙では,雇用問題,格差問題,貧困問題などが主要なテーマになりやすいようです。
 パレートの法則では,国民の2割が,8割の利益を生み出すとされます。国の富がなかなか平等に配分されにくいとなると,多くの国民から直接支持を得ることが必要な大統領選では,国民の所得に直結するテーマが争点となりやすいのでしょう。そうなると右も左もなくなります。政治思想がどうであろうと,国民を食べさせるにはどちらがいいかという選択になるからです。フランス大統領選の決選投票でのMacronとLe Penは究極の選択と言われましたが,社会党や共和党では,どうやって自分たちを食べさせてくれるかわからないからそうなったのであって,今回,新たな対抗軸が誕生したとみるべきなのかもしれません。フランス人にとって有利なのが,親EUや欧州的価値観の共有か,自国主義かという軸です。そこには歴史観や思想などももちろん関係しますが,それよりも,経済や雇用面でプラスかどうかのほうが重要となってきているのでしょう。Brexitは,イギリスの国民の多くが,反EUのほうが,自分たちの経済や雇用に有利だという判断をしたのでしょう。こうした経済優先主義の傾向は,若い層ではいっそう強まっていくのではないかと思います。
 日本では,国民が国のトップを直接選ぶ選挙がないので,こうした国民の本音がストレートには現れにくいように思います。ただ自民党の支持率が高いことからうかがえるのは,国民は現状にそれほど不満はなく(もちろん,突っ込んでいけば,不満がゼロということはないのですが),むしろ現状を大きく変える要因(北朝鮮の動向,トランプ政権の政策,中国の軍拡など)に関心があるのだと思います。安倍政権が支持されるのは,経済政策や雇用政策よりも,外的な環境変化のなかで日本を守るのに相対的に一番信頼できるということなのでしょう。雇用政策については残念なことが多い現政権ですが,それでもビクともしないのは,実はそこは国民の主たる関心となっていないからかもしれないのです。国民は将来の「安心」が欲しいのです。雇用はもちろん大切なのですが,北朝鮮から核ミサイルが飛んできたら,雇用の問題などは吹っ飛びますし,アメリカの通商政策いかんで日本の産業は打撃を受けて雇用にも影響するし,こうした基本的なところの「安心」が大切なのです。
 東京都知事の小池百合子さんが,豊洲問題を利用して,都民の「安心」を一番考えているのは自分だと主張しているのは,豊かな東京都民にとってプライオリティの高い,食の「安心」に訴えかける巧みな戦術だったのかもしれません(小池さんも,豊洲が「安全」ということは,すでにわかっているのでしょうが,「安心」が大切だというポーズが政治的には大切なのです)。

|