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2018年6月13日 (水)

解雇の金銭救済制度の検討会

 厚生労働省で,「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」が立ち上げられたようです。解雇の金銭解決制度の迷走は大変なことになりましたね。前の報告書では,やたらと細かい法技術的な議論をしていたので,労使から法律家でやってくれということになったのでしょう。しかし,そもそもその会議での課題設定は,不当な解雇は無効で,そのときに労働者側から金銭解決の請求をする制度をどうするか,という限定されたものでした。その枠内での解決を目指すものであり,これでは正直なところ,あまり意味のある議論ができません。
 こんなことに優秀な研究者を集めてその時間を奪ってしまっていいのでしょうか。課題設定に根本的な誤りがあるのです。これは昨年秋に厚生労働省の役人が話を聞きに来たときにも説明しましたが,これはもう役人にはどうしようもないことなのかもしれません。おかしい場合には,引き返して,出直すことが必要ですが,それができないのが政策形成の問題ですね。
  日本経済の将来にとって必要な解雇ルールとは何か。それは不当な解雇を無効としながら,労働者から金銭解決を請求できるようにすることにあるのでしょうか。もちろん解雇が無効な場合に,労働者から金銭救済を求めることができるようにすることに異論はありません。でも,それは解雇ルール全体からみると周辺的な問題です。その周辺的な問題のために法技術的な論点を詰めるための人的資源を投入するのは,どう考えてもおかしいです。
 経済的解雇や能力不足解雇などの場合に,不当とされれば無効となるという制度は妥当なのでしょうか。そもそも不当な解雇とは何なのか。解雇を抑止するために必要なのは,解雇を無効とすることなのか,ということを検討するこそ重要なのです。それは解雇規制とは何かという問題と関係し,そこで私たちが出した結論は,金銭解決しかないということです。『解雇規制を問い直す-金銭解決の制度設計』(有斐閣)で問題提起しているのですが,ほとんど反応がありません。今回の検討会には執筆者の一人の明治大学の小西康之さんも入っていますが,彼のアイデアは壮大ですので,法技術的な検討という細かい論点ではなく,より大きな法制度設計のところで活用してもらいたいのですが(小西さんには,余計なことを言わないようにと叱られるかもしれませんが)。

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