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2018年5月21日 (月)

田村和大『筋読み』

  田村和大『筋読み』(宝島文庫)を読みました。「このミステリーがすごい」大賞の優秀賞受賞作です。
 女性モデルの宮原が生き埋めされた殺人事件で,山下という男性が出頭しました。山下の供述は当初は殺害して埋めたというものですが,後に宮原が生き埋めされて殺されたことを捜査官のミスで知ってしまい,供述を翻しました。供述の信憑性はあやしいのですが,宮原の殺害現場である彼女の自宅で採取されたDNAが山下のものと一致しました。山下の自供もあったので,起訴が決定されました。
 もっとも,警視庁捜査一課の刑事である飯綱だけはこれに異議を唱えたため,捜査から外されてしまいます。ちょうど同じ頃,ある交通事故がありました。自動車から飛び出た男が車に轢かれましたが,飛び出した車から出てきた男女につかまり,そのまま連れ去られるという奇妙な事件でした。管理官の迫口は,飯綱に対して,この事件の応援に行くよう命じました。
 車に轢かれたのは少年(ツェットと呼ばれていました)でした。ツェットは,サクラ・ウエルネスという会社の遺伝子組み換えなどの研究をしている研究所で,水野という女性研究者の治療を受けていました。警察は,この少年を病院に移送したのですが,略取されてしまいます。ツェットにはタグが埋め込まれていて,そこから居場所がわかったからです。
 そんなとき,ツェットと山下のDNAが一致したという驚くべき情報が届けられました。可能性としては,ツェットは山下のクローン人間ではないか,ということでした。
 山下を問い詰めると,山下はあっさりとこれを認めました。山下と水野は付き合っていましたが,水野は子供を産めない身体なので,宮原を代理母として,山下のクローンを妊娠させようとしていたこと,しかし水野は結局は妊娠しなかったと山下に伝えて,その後二人は別れていたこと,ところがあるとき実はクローン(ツェット)が生きていて宮原を殺していたこと,この殺人は宮原が水野に金銭の要求をしていさかいになって,ツェットが水野を守ろうとしてなされたものであること,そして水野が山下に身代わりになるよう頼んだことを自白したのです。
 これにより事件の構図は大きく変わり,山下は犯人の身代わりで,実行犯はツェットで,そこに水野が事件に大きく関わっていることになってきました。そこで警察は水野を探して,八ヶ岳の研究所に行きます。そこで,水野と研究所の所長の竹内の会話を耳にすることになります。
 というようにダラダラと書いていくと大変なので,ここで終わりにしますが,最後のほうで,次々とドンデン返しがあって,それなり楽しめました。     ☆☆☆(五つが満点。☆四つにしなかったのは,研究所の所長の竹内の悪事を暴くということにしては,仕掛けが大きすぎて無理な感じがしてしまったので。でもそう感じなかった人が多いから大賞をとったのでしょうね)

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