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2018年3月 5日 (月)

イタリアの選挙

 イタリアの国政選挙は,日本でも注目されています。中道左派政権対中道右派政権という図式に,新たに登場したM5s(Movimento cinque stelle:五つ星運動)が勢力を伸ばし,台風の目どころか,イタリアの政治の中心にのし上がろうとしています。
 マスコミは,M5Sをポピュリズム政党と呼び,日本語ではご丁寧にも「大衆迎合政党」と訳してしまっていますが,これはちょっと可愛そうかもしれません。「大衆迎合」というよりも,むしろ大衆の支持を受けている政党というべきで,「迎合」というネガティブな訳を使うべきではないでしょう。「ポピュリズム」はニュートラルに(それゆえ意味が不鮮明にもなりますが)「大衆主義」くらいに訳しておいたほうがよいでしょう。
 イタリアの新聞La Repubblicaのネットニュースをみると,現時点(イタリア時間で0時49分)で主要な政党(ないし政治グループ)の得票数をみると,トップがM5sで29.6%,Lega Nord(北部同盟)がが21.2%,前首相のRenziが党首のPd(民主党)が20.1%,元首相のBerlusconi の政党であるFI(Forza Italia)が13.2%,次いで旧ネオファシスト系のFdI(イタリアの同胞)が4.0%,左派のLeU(Libertà e Uguali:自由と平等)が3.1%という状況です。
 M5sのトップは動きませんが,過半数は取れないので,連立となるでしょう。そのとき,中道右派のFIとLegaとFdIの合計が,M5sを超えれるかが焦点です。中道左派Pdは中道右派連合に勝てそうにないので,連立の主導はM5sか中道右派かになりそうです。
 最終的な可能性はM5sとPd,M5sと中道右派,中道右派とPdという組み合わせですが,M5sはかつての反EUの姿勢を弱めているようなので,親EUの中道左派や中道右派と組むうえでの障害は低くなっているかもしれません。ただRenziは激しくM5sのリーダーのDi Maioへの攻撃をしていたので,M5sとの連立はないでしょう。Renziとしては,中道右派との大連合を模索することになりそうですが,ただ中道右派の中心がFIではなく,Legaになると,移民政策で対立しそうなので,この連立も難航が予想されます。また,現在のイタリアの政治の混乱はPdへの批判ともいえるので,Pdは2割の票は取るとしても,強い影響力をもてないかもしれません。
 昨日の日本経済新聞の朝刊の赤川省吾氏の署名記事は良い内容でした。とくに「ユーロ圏3位の経済大国でありながら統合をけん引することはできず,いつも政治・経済は不安定。欧州連合(EU)が構造改革を強いればイタリア有権者の権力嫌いに拍車がかかるだけだ。そうなればイタリアの主要政党が民意を引き留めるため,さらにポピュリズムに傾く悪循環を生む。もっとも本当の混沌に陥れば,裏で社会を支える超エリートが驚くべき求心力で危機を乗り越えてきた歴史がある」と書かれていたところは重要です。「裏で社会を支える超エリート」が,よくイタリアで言われる「classe dirigente」(支配層)と呼ばれる人たちでしょう。「混沌のなかの秩序」,これがイタリア的な民主主義なのかもしれません。
 アメリカの支配層は,大衆を使って,Trumpを台頭させたのかもしれません。イタリアの支配層が,どのような選択をするのか。選挙結果だけでなく,その後の動向も注目です。

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