« 名古道功『ドイツ労働法の変容』 | トップページ | 経営労働政策特別委員会報告 »

2018年2月 7日 (水)

プラットフォームの責任と自営的就労者の集団的権利

 先日の比較法シンポジウムの話の続きです。今回のインディペンデント・コントラクターの議論の背景には,デジタライゼーションやUber化が働き方にもたらすインパクトということもあり,その点も活発に議論がされました。
 とくに韓国の李ジョン先生から,韓国で流行っているカカオタクシーの例が紹介されて,興味を引きました。これはUberと同じような配車アプリを使ったタクシーサービスです。カカオタクシーは,ドライバーを使って,ユーザーに運送サービスを行っているのか,それともカカオタクシーはアプリを提供して,ドライバーとユーザーをマッチングしているだけなのか,という点です。前者であれば,カカオタクシーがドライバーに対する使用者となる可能性が高く(指揮命令の有無によりますが),後者であれば,ドライバーはインディペンデント・コントラクターとなるでしょう。
 この問題は,Uberをめぐっても,各国で類似の論点が浮上し,裁判にもなっています。日本でも紹介されているので,皆さんも聞いたことがあるでしょう。
 さらにGramanoさんからは,フランスの2016年の法律についても,紹介されました。その場では詳細はわからなかったので,後でネットで調べてみると,その法律は,LOI n° 2016-1088 du 8 août 2016 relative au travail, à la modernisation du dialogue social et à la sécurisation des parcours professionnels でした(「労働,労使対話の現代化及び職業的過程の安定化に関する法律」(法律名は仮訳))。その第60条で,労働法典の第7編(Septième partie)のLibreⅢ(第3章)に,新たにTitleⅣ(第4節)が追加され,「TRAVAILLEURS UTILISANT UNE PLATEFORME DE MISE EN RELATION PAR VOIE ÉLECTRONIQUE」(意訳すると,デジタルプラットフォームを利用する労働者)という表題の下に,デジタルプラットフォームを利用する自営的就労者(travailleurs indépendants)の保護のための規定が新設されていました(L.7341-1条以下)。
 そこではまず,自営的就労者が労災保険に加入する場合のプラットフォームによる保険料の補填(L.7342-2条),継続的な職業訓練へのアクセス権の保障(L.7342-3条)が定められ,さらに集団的権利も保障されました。集団的権利については,全訳(仮訳)しておきましょう。

L.7342-5条
 L.7341-1条の労働者(筆者注:デジタルプラットフォームを利用する自営的就労者)により組織化されたサービスの提供を,その職業上の要求を主張する(défendre leurs revendications professionnelles)ために,共同して拒否する行動(mouvements de refus concerté)は,濫用の場合を除き,契約(筆者注:債務不履行)責任を引き起こさず,プラットフォームとの関係の破棄理由にはならず,その活動の遂行に対する制裁的な(or 不利益な)措置を正当化するものではない。

L.7342-6条
 L.7341-1条の労働者は,労働組合を結成する権利,労働組合に加入する権利,及びその集団的利益を労働組合を通して主張する権利を享受する。

  従属労働者でいうと,L.7342-5条はストライキ,L.7342-6条は団結権の規定ですね。ストライキが団結権の前に来ているのは,フランスでは,ストライキ権は団結が行使するものとは構成されていないことを反映しているのだと思います(拙著『雇用社会の25の疑問-労働法再入門-(第3版)』の第5話「労働者には,どうしてストライキ権があるのか。」53頁も参照)。1946年の憲法前文でも,団結権(Tout homme peut défendre ses droits et ses intérêts par l’action syndicale et adhérer au syndicat de son choix.)とストライキ権(droit de grève)は区別されています。
 デジタルプラットフォーム利用の自営的就労者に限定したものとはいえ,団結権まで認めていることは,競争法との関係がどうなるのか,ということも含めて,興味深いところです。適用範囲を定める規定によると,サービス提供の内容の特徴と価格をプラットフォームが決定していることが条件となっています(L.7341-1条)。ここに経済的従属性をみているのでしょうかね。
 先のシンポジウムでも,経済的に従属的なインディペンデント・コントラクターのストライキをどう考えるかが,活発に議論されました。いずれにせよ,フランスのことも調べていく必要がありそうです。

|

« 名古道功『ドイツ労働法の変容』 | トップページ | 経営労働政策特別委員会報告 »

労働法・雇用政策」カテゴリの記事