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2018年2月

2018年2月23日 (金)

裁量労働制

 普通の人まで「裁量労働制」という言葉を口にするようになりました。それが良いのか,悪いのか,私にはよくわかりませんが,こんなことで国会が紛糾するのは情けないことです。
 裁量労働制を導入して労働時間が短くなるのなら,そもそも裁量労働制というみなし労働時間制を導入する必要なんてありません。裁量労働制を導入して労働時間が長くなるとすれば,それは企業が割増賃金を払わなくてよいから,もっと働かそうとしたということになりそうですが,そもそも裁量労働制は,業務の性質上,業務の遂行方法について,大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため,使用者が業務の遂行手段や時間配分の決定等について具体的な指示をしない(あるいはすることが困難な)業務に導入されるものです。だから労働者の意に反して労働時間が長くなったとすれば,これは裁量労働制の本来の趣旨に合わない運用がされていたということです。それは運用の問題であって,制度の問題ではありません。この制度が,そうした運用を不可避的にもたらすというものでもないでしょう。
 もっとも裁量労働制の運用に問題が多いことは想像に難くありません。私たち大学教員の多くは,専門業務型裁量労働制の適用を受けていると思いますが,これが法の趣旨に合致しているかは甚だ疑問です。教員は研究者としての側面はともかく,教育業務(とくに入試関連),学内行政や様々な書類提出業務(雑用)で,多大な時間がとられることがあります。時期による繁閑の差はあるとはいえ,繁忙期の労働時間はきわめて長くなります。もちろん裁量労働制で1日8時間とみなす労使協定が締結されていれば,割増賃金は夜10時以降まで働かない限り,法律上は大学側に支払義務はありません。
 だからといって教員の多くは,裁量労働制をはずしてほしいとは考えていないでしょう。実労働時間の管理のほうが,うっとおしいからです。研究室から何時になったら帰りましょうなどとなると,研究に支障が生じる人も出てくるでしょう(文科省の要請する資料を期限までに出せなくなるなんてことも起こります)。
 こんなファジーな運用をしているから,持続できている制度でもあるのです(本来は,もっと簡明なエグゼンプション[適用除外制度]にすべきというのが私の見解です。詳細は拙著『労働時間制度改革』(2015年,中央経済社)を参照)。
 いずれにせよ大事なのは,導入の際にきちんと手続をふみ,適用対象者の同意を得ておくことです。対象業務が増えようが,この点さえしっかりしていれば問題はないはずです。
 企画業務型裁量労働制では,労働者の同意を得ることは,「労使委員会」の必要的決議事項でもあります。専門業務型裁量労働制では,労働者の同意は,「労使協定」の必要的記載事項ではありませんが,労使協定があるだけでは,制度適用を労働者が当然に強制されるものではなく,労働者の同意が必要となります。この労働者の同意を,就業規則の合理的な規定(労働契約法7条)や(組合員の場合に)労働協約の規定で代替できるかは解釈問題となりますが,これを否定する理由はないように思えます。
 いずれにせよ,労働時間が増えるかどうかは本質的な問題ではありません。いろんな働き方に応じた最適な労働時間制度とは何かということを考える場合,むしろ裁量労働制は導入の手続要件が厳しすぎるので,あまり普及していないほうが問題ともいえます。とりわけ企画業務型裁量労働制の採用企業の割合は,厚生労働省の「平成29年就労条件総合調査」によると,1.0%にすぎません。そのことは,裁量労働制の真の問題は,これにより労働時間が長くなるかどうかといった話ではなく,この制度がほとんど利用されていないので,この制度の真のインパクトを論じるエビデンスが少なすぎるという点にあるのかもしれません。

 それにしても,裁量労働制をめぐるゴタゴタで,厚生労働省の若手職員が過労にならないか心配です。そんなことが起これば,ジョークにもなりません。私も前に首相の周辺に問題ありと書きましたが,でも何もかも役人の責任にすべきではないでしょう。発言をした以上は,その内容の第一の責任者は首相です(手柄は自分,失敗は部下というのでは困ります)。労政審も騙されたというのは,少々格好が悪いでしょう(見破れなかったわけですから)。いずれにせよ,役人の出すデータには気をつけよ,ということです。私も含めて,役所関係で仕事をすることがある者にとっては,少しでも疑問があれば,役人がいやがりそうなことでも,問いただす姿勢を避けてはならないというのを教訓とすべきなのでしょうね(そんなことをしていれば,役所からますます嫌われますが)。

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2018年2月22日 (木)

水町勇一郎『「同一労働同一賃金」のすべて』

 水町勇一郎『「同一労働同一賃金」のすべて』(有斐閣)をいただきました。いつも,どうもありがとうございます。現政権の同一労働同一賃金政策を牽引してきた水町さんが,法改正に備えて,啓蒙のために出版したというところでしょうか。個人的には,この政策には反対で,より広い観点から非正社員問題を理論的に論じる本を執筆中ですが,それはともかく,どうしてこういう政策が出てきたかを知るうえでは,とても参考になります。
 資料的な部分が多いですが,政策に深く関与している人の立法経緯の解説的な本となると,有斐閣がやはり強いですね。本書でとくに助かるのが,法改正案がまだ出ていない段階で,要綱の内容を条文化までしてくれて,その解説もついているところです。そもそもネットの要綱のPDFは縦書きでとても見にくくて苦労していたので,有りがたいです(私の日頃のペーパーレスの主張とやや違っていますが)。
 もっとも,実際の法改正の時期は少し先延ばしになったという報道もあります(同一労働同一賃金は野党も賛成なのでしょうが,時間外労働の上限規制強化だけ先行させると企業負担が重すぎるということで政府はバランスをとったのでしょうかね。そうなると,同一労働同一賃金推進派にとっては,とんだとばっちりというところでしょう)。法案審議や可決後の施行が遅れそうになると,法改正の内容についても,もう一もめあるかもしれません。様子見をしていた感のある最高裁判決(長澤運輸事件とハマキョウレックス事件)の動向も気になります。
  有斐閣からは,私がすでに予告していた『解雇規制を問い直す-金銭解決の制度設計』も届きました。こちらは,読んですぐに実務に役立つというようなものではなく,法学と経済学の学問的コラボを味わってもらいたい本です。私たちの提案に則したモデル条文もつけていますが,これはLinuxのようにオープンソース的なもので,研究者に改良を加えていってもらえればと思います。なおモデル条文の別表1は特に具体的には掲げていませんが,そこには解雇禁止を定める法律が盛り込まれることが想定されており,今後,その内容は可変的です。別表2以下は,具体的な金銭補償額が図表化されていますが,これも可変的で,毎年改訂されていくことが想定されています。法律はルールだけ定め,その内容は経済学者の手により改訂され,ネットで公開されていくというようなことができれば,これも新たな立法の形式として面白いのではないかと思います。本の中でははっきり書いていないので,追記しておきました。

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2018年2月21日 (水)

鶴光太郎『性格スキル-人生を決める5つの能力』

 鶴光太郎さんから,御著書『性格スキル-人生を決める5つの能力』(祥伝社新書)をいただきました。前にいただいた『人材覚醒経済』(日本経済新聞出版社)に続き,またまた話題の書の刊行という感じですね。
 人事関係の人と会話をすると,ビッグ・ファイブという言葉をよく耳にします。人間の性格を5つの特徴でとらえることができるというもので,そのどの性格を強くもっていれば,人生に成功しやすいとか,失敗しやすいとか,そういう研究があるようです。鶴さんの本にもそういうことが紹介されています。
 人事のほうでは,これを採用選考に利用して,どのような性格をもっている人が会社にとって良い人材か,困った人材かを選別するために使っているところもあるようです。もし,この性格分析でAIが使われると,特定の性格をもっていてネガティブな評価がされてしまうと,システマティックに採用過程から排除されてしまうという差別が起きそうでもあります。
 もっとも鶴さんは,こうした性格は,後天的に改善できるものもあるとして,希望を与えてくれています。逆にいうと,AIによる分析は,その後天的な改善可能性やそれを受け入れる性格的な柔軟性まで組み入れていなければ不十分ということになりそうですね。
 5つの性格のうち特に重要なのが,Conscientiousnessです。「誠実性」と訳されることも多いですが,鶴さんは「真面目さ」と訳しています。これは正直であるとかそういう意味ではなく,「計画性,責任感,勤勉性の傾向」と定義されていて,自己規律,粘り強さ,熟慮という形で表れるものです。
 このほか,Openness to experience(経験への開放性), Extraversion(外向性), Agreeableness(協調性),Emotional Stability(精神的安定性)です。最後は,Neuroticism(神経症傾向)と呼ばれることもあるようです。
 確かに会社の人事からすると,Cが大切でしょうし,日本ではAも大切でしょう。最近のメンタルヘルス問題をみると,Nも無視できません。
 鶴さんは,こうした性格に関するスキルは鍛えることができるとし,企業における転勤とかも,こうしたスキルの形成に役立っていたと肯定的な評価をされています。
 でも,人生に成功することが,会社での成功に依存していた時代には,会社人間に合った性格スキルを習得することは大切でしょうが,それは社畜的な人材となりやすい性格ということにならないでしょうか。
 アメリカでは,ベースに強い独立心や個性があるので,そういうなかではCは組織のなかでやっていくうえで,非常に重要なものとなるのかもしれません。日本では,独立心や個性の発揮が鍛えられていないので,組織がCやAを求めると,それは危険なことになるのかもしれません。
 というような素人的な感想はいくらでも出てきて,(第5章の鶴さんの大学教授としての個人体験談も含めて)突っ込みどころ満載ですが,それだけ皆で楽しめる本ともいえます。
 ちなみにもう一つのキーワードはGrit(やり抜く力)ですが,藤井聡太六段のときにも触れたように,集中力と負けず嫌いは,Gritを高めるのかもしれません。

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2018年2月20日 (火)

フリーランス労働法?

 今朝の日本経済新聞で,「フリーランスに最低報酬 政府,労働法で保護検討」という記事が出ていました。いよいよフリーランスの問題に,本格的に政府が取り組むのか,ということで喜ばしいと思ったのですが,記事をみていると,いろいろ突っ込みどころがあります。プロからみたコメントは,ちょうど昨日,フリーランスについて原稿執筆依頼があったばかりなので,書くエネルギーはそこに取っておきます。なお私の政策提言は,英語でよければ,15日に流れたNHKのRadio Japanを聞いていただければよいし,拙著『AI時代の働き方と法』(2017年)の第7章に詳しく書いています。
 ただ少しだけ書いておくと,最低報酬という点は,家内労働法の延長線上の話なのでしょうが,フリーランスのニーズに必ずしも合っていないように思えます。昨年,フリーランス協会主催で,フリーランスと労働法についてのマスコミ向けのブリーフィングをしたときにも論点になったものですが,フリーランス側は,その時点では,必ずしも最低報酬などの強制的な規律を望んでいませんでした。厚生労働省にやらせると,家内労働法からスタートというようなことになってしまうのでしょう(みなさん家内労働法の最低工賃の設定の手続がどのようなものかご存じでしょうか。それを知れば,とてもフリーランス向けに適合的とは思えません)。あるいはクラウドワーカーの現状を見よ,ということになります。こういう発想でこの問題にアプローチをしてはならないというのが,私がずっと主張していることです。
 そもそも,政府はフリーランスのことを扱っている余裕などないのではないでしょうか。厚生労働省は,経産省の動きが気になるのでしょうが,本丸の雇用労働者のほうの働き方改革が暗礁に乗り上げそうになっています。4日前にも書いたように,きちんと労働法制がわかっている人をブレーンにつけなければ,また失言が起こりかねません。労働法のなかでも,労働時間法制はきわめて複雑で,労働法専門の法律家しか正確なアドバイスはできないでしょう。東京には労働法の研究者はたくさんいるので,ちょっとアドバイスを受ければすむ話だと思うのですが,アドバイスを求める側が,どこが地雷かわかっていない可能性がありますね。
 今朝の日経新聞で日本総研の山田久さん(拙著『労働時間制度改革』(中央経済社)の書評を日経新聞でしてくださった方)も,私がブログで書いたのと同じようなコメントをされていましたが,まさに「本質の議論」をしなければならないのです。野党は敵失に欣喜雀躍するのではなく,日本の将来にとって必要な労働時間制度を一緒に作り上げようというような建設的な議論をすべきです。裁量労働制などを含む広義のホワイトカラー・エグゼンプションは,解雇の金銭解決と同様,導入の是非を論じる段階ではなく,どのような制度にするかを議論すべきです。10年後の日本人から,あのとき何であんな小さいことで時間を空費していたのか,ということにならないようにしてもらいたいです。といっても,現在の国会議員に,そんな未来のレピュテーションを気にしろというのは無理なことかもしれませんが。

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2018年2月19日 (月)

集中力と負けずぎらい

 17日に,藤井聡太六段が指した二局とも,その集中力はすごかったと思います。盤上没我で,羽生善治竜王(・棋聖)が,しきりに髪をかいたり,有名な羽生睨み(対局者をじろりと睨むこと)をしたりして,落ち着かない様子だったのとは対照的でした。将棋は,優勢になったときに消極的な手を指すことを「震える」と言うのですが,そういう震えが藤井六段にはなかったのです。時間の短い将棋で,重要棋戦の準決勝で,初の棋戦優勝にもう少しで,しかも相手が羽生となると,震えなければおかしいのですが,それがなかったのです。ひたすら最善手を追い求める藤井六段には,「震える」余地などなかったのでしょう。
 決勝のときには,すでに王者の風格でした。顔つきも羽生戦のときからすでに以前と違うような気がしていました。子供っぽさの残る少年の時代を終え,自信と風格をまとった堂々とした青年でした。まさに「男子三日会わざれば刮目して見よ」です。10代の伸び盛りに,修業と鍛錬に明け暮れる藤井六段の未来には輝かしいものがあるでしょう。あとは大学に行けとすすめたり,将棋界の発展のためといった理由で無駄な営業に参加させるとか,周りが,本人が将棋に集中できないような環境を作らないことが大切です。
 実は羽生竜王の指し手も震えていました。羽生竜王の「震え」は有名ですが,これは上記の意味の「震え」ではありません。勝利の執念がにじみ出て手を震わせるのです。羽生竜王の将棋は,プロからみると華麗なところはあまりありません。華麗な指し手という点では,谷川浩司九段のほうが上というのはプロのほぼ一致した評価でしょう。それでも勝利への執念ということでは,羽生竜王に勝てる人はいません。羽生竜王の負けず嫌いは,土壇場で「羽生マジック」と呼ばれるような,相手に間違えさせる鬼手を指すことにも表れています。さらに凄いのは,羽生竜王は棋士としてピークが過ぎつつある年齢になっても,勝利への執念だけはいささかも衰えず,昨年も竜王を奪取するなど成績もしっかり残しているところです。羽生竜王にはスランプがありません。連敗はほとんどないのです。一局ごとへの集中がすごいのです。
 並外れた「負けず嫌い」が,鍛錬するモチベーションとなり,技量を高めていき,実際の勝負では,勝利への執念がこれとうまくかみあって,集中力を生み出すのでしょう。
 実は藤井六段は,この羽生竜王の特徴をそのまま引き継ぎ,それに加えて,谷川九段ばりの華麗な攻めのテクニックも兼ね備えている感じがします。2月17日を境に,同世代の棋士は,すでに彼には勝てないという諦めの境地になっているのではないでしょうか。
  もちろん,世の親御さんは,藤井六段のように子供に育ってもらいたいと考えていると,子育ての仕方を間違えるでしょう。スケートの羽生弓弦選手も同じですが,負けず嫌いと集中力は,傑出した結果を残す天才を生む可能性はありますが,それは将棋とかスケートとか個人競技の世界だからです。社会でうまく生きていくためには,あまり勝ち負けを競わず,他人と仲良くしていくほうが,凡人には必要なことです。
 とはいえ,競争しない人ばかりになっても困ります。適度の競争こそが社会の活力を生みます。ちなみに「負けず嫌い」の人は,実は負け方がきれいです(もちろん子供のときは負けると泣き叫んだりして手がつけられないこともあるのですが)。自分の負けを率直に受け入れ,そして反省して,次の勝ちにつなげることができる人が,ほんとうの「負けず嫌い」なのでしょう。こういう「負けず嫌い」なら,しっかり教育の現場に取り入れてもよいかもしれません。

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2018年2月18日 (日)

佐藤博樹・矢島洋子『新訂 介護離職から社員を守る』

 佐藤博樹・矢島洋子『新訂 介護離職から社員を守る-ワーク・ライフ・バランスの新課題』(労働調査会)をいただきました。いつも,どうもありがとうございます。
 この本は,前に紹介したことがあるような気がしますが,今回は新訂版で,育児介護休業法の改正を受けて,著者が対談をした部分が追加されています。親の介護のために社員が離職するのは,人材活用という点ではもったいないところがあるので,労働者が介護休業をとりやすくすると同時に,企業もそれに理解を示して,適切な制度を整備すべきということがよくわかります。
 もっとも,個人的には,育児休業にしろ,介護休業にしろ,本質的には福利厚生の一つで,企業にとって人材のリテンションなどのために必要であれば導入すればよく,そうでない企業にまでこうした休業を保障する法律は過剰介入であると考えています。
 したがって,介護休業のようなものを法律で強要するのなら,それが日本経済にとって重要であるというような,より高次の正当化が必要なのです。そうした正当化は可能ではあるのですが,これを突き詰めていけば,実は,高齢者の介護は,家族ではなく社会でやるべきであって,個人で介護をすることを前提に,企業にも介護休業の負担を担わさせるというアプローチは妥当でないということになりそうです(もちろん企業が任意でやるのは自由)。
 今後,介護サービスの領域でも,家族の負担(あるいは介護労働者の負担)がもっと減るような技術革新が生まれてくるのではないかと思っています。理想は,両立は企業の理解ではなく,技術の助けによってやるということでしょう。介護を受ける側に近づきつつある私にとっても,いかにして家族に迷惑をかけずに老い,死んでいくかが大切であると思っています。介護される側という点からは,健康寿命の延伸が大切です。それも最近では,新技術の発達がめざましい分野です。
 技術の発達で,介護される側が減り,他方で,介護する側の負担も減るというのが,高齢社会における理想型です。そうすると,介護離職から社員を守るという課題も自ずから解消されていくのではないでしょうか。

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2018年2月17日 (土)

藤井聡太棋戦初優勝

 フィギアスケートで,羽生結弦の連覇はすごかったですし,宇野昌磨もよく頑張って,見事なワンツーフィニッシュで感動しました。とくに宇野選手は最初の4回転で転倒したのに,残りをよくまとめました。4回転もしっかり跳んでいたことで致命傷にならず銀メダルにつながりましたね。羽生は貫禄です。技がどうこういうよりも,王者の風格です。最後に帳尻をしっかり合わせるということが,いかに難しいことか。私もとても大きな刺激を受けました。20代に戻りたいです。
 そして,もう一人,日本の若者がものすごいことをやってくれました。こちらは15歳です。
 AbemaTVは将棋チャンネルがあるので有りがたいです。朝日杯の準決勝と決勝をLiveで配信してくれました。今日の藤井聡太五段(段位は朝の段階)は,まず午前中,準決勝で羽生善治竜王(二冠)相手に快勝し,午後の決勝では,広瀬章人八段相手に完勝でした。史上初の中学生の棋戦優勝です。朝日杯は全棋士参加なので,若手棋士や一部の推薦棋士だけが参加する棋戦とは異なり,真の実力が問われるものです。これにより,この前に五段に上がったばかりの藤井五段は,六段に昇段です。朝日杯では,名人と竜王に勝ち,決勝もバリバリのA級棋士に勝って,文句のつけようのない勝利です。瞬間的には,現在の棋士の中で一番強いと言ってもよいかもしれません。
 今日の対局は,どちらも藤井六段が先手となったのは運も味方につけていました。藤井六段のほうから攻めることができ,そのまま相手に何もさせないままに押し切ったという感じです。藤井の攻めの圧力の前に,羽生竜王も広瀬八段も角を自陣に打たざるを得ないなどじりじりと押し込まれたという印象です。
 午前中の対局では,羽生竜王は苦し紛れの9九銀というのがあり,怪しげな勝負手でしたが,結局,その銀は終局まで活躍することなく,最後は羽生の玉は5五にまで追いやられ,4七桂で詰みに討ち取られました。あの羽生竜王が,藤井玉にほとんど迫ることができなかったのが印象的で,緩まず相手玉に迫っていく力強さが印象的でした。今年になって,また強くなったのではないか,という印象です。
 広瀬八段戦は,早い段階で角を切って攻め入り広瀬玉を裸にし,相手を防戦一方に追い込みました。途中で広瀬八段に起死回生をねらった勝負手も出しましたが,藤井六段の切り返しが秀逸で,タダの4四桂捨て,さらに最後の決め手のタダ捨ての2七金など,ファンが喜びそうな派手で魅せる手も出ました。 
 スケートの羽生の二連覇も歴史に残る快挙ですし,さらに将棋の藤井六段の優勝も,将棋界の歴史を変える出来事です。2018年2月17日は,日本の若者が大活躍した日として,長く記録に残される日となることでしょう。

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2018年2月16日 (金)

人材と競争政策に関する検討会報告書

 昨日,公正取引委員会が,「人材と競争政策に関する検討会報告書」を発表しました。事務局は,もともと芸能人の専属契約の問題などについて関心をもっていたようで,人材獲得競争をめぐる独占禁止法上の問題について検討しようとした,たいへん興味深いものです。
 もとより私もインディペンデント・コントラクターらを自営的就労者と呼んで,その人たちに対する法的規律のあり方を考えていくべきだと,しつこく述べており,競争法上の問題はそのなかの主要な部分を占めるものです。競争法上は,むしろ優越的地位の濫用といった切口が主たるものとなるでしょう(報告書でも若干取り上げられています)が,この報告書は,発注者側の人材獲得について競争制限的な行為が行われているという点にフォーカスをあてています。
  いずにれせよ,今後の自営的就労者をめぐる法的問題の研究にとって,重要な意味をもつ報告書だと思います。私自身は,公正取引委員会の範囲内の問題にとどまらず,むしろ民事上の新たなルール形成が必要と考えており,そのために,現在,法分野の横断的な共同研究ができないかと考えているところです。
 それはさておき,この報告書の発表に合わせてということなのですが,事前にNHKのWorld Radio Japanから,フリーランスのことについて私のコメントをほしいということで,取材に答えていました(取材は13日)。報告書の内容とは直接関係するものではなく,フリーランスがなぜ重要となっているか,どのような問題が起きているか,それについて,どのような政策的課題があるかという,いつもの論点について,15分ほどのインタビューでしたが,答えています。
 その内容が,英訳されて昨日流れました。私の生の音声(日本語)も5秒ほどですが,流れています。初めてのラジオ出演です(いろんな仕事があるものですね)。関心のある方は,ここからアクセスできます(ちょうど6分40秒くらい経過後にフリーランスの話が登場しし,私へのインタビュー内容はその1分後,さらに私の声は1分後くらいに登場します)。
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/upld/medias/en/radio/news/20180215200000_english_1.mp3

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2018年2月15日 (木)

周りが悪いのでは?-首相の裁量労働制発言

 裁量労働制に関して,安倍首相が失言をしたということで,野党はチャンス到来と感じているようです。問題となったデータの評価については,専門家の判断に任せますが,撤回したということなので,首相側にデータの使い方にミスがあったのでしょう。
 労働基準法改正案での裁量労働制とは,企画業務型裁量労働制(38条の4)の対象業務に「課題解決型提案営業」と「裁量的にPDCAを回す業務」を追加する点を言っているのでしょう。これがなぜ大きな争点となるのか,私にはよくわからないのですが,ましてや首相が,裁量労働制を導入したほうが労働時間が短くなるというような余計なことをなぜ言ったのかは理解できません。かつてホワイトカラー・エグゼンプションを導入すると,少子化が改善するという珍妙な発言をして,法制化をつぶしてしまったのと同じ轍を踏まないか心配です。
 裁量労働制で働くと,実労働時間が長くなる可能性もあるし,短くなる可能性もあります。業務の性質上,業務遂行の方法を労働者の裁量に大幅にゆだねる必要があるものが,裁量労働制の対象であり,それゆえ本人の裁量の行使のやりかたによっては,労働時間が長くなるかもしれないのです。それでも労働者本人が自律的に業遂遂行をするのに適し,そうする必要がある業務だから,本人の同意を得たうえで,そのような働き方をすることが認められているのです。こういう働き方では,法定労働時間を超えれば時間比例で割増賃金が支払われるというのはおかしいですよね,ということです(自分で時間を調整して長く働いて割増賃金を不当に多くもらうという弊害も起こりえます。これは労務管理の問題でもあるのですが)。
 裁量労働制の要件にはなっていませんが,法は,こうした労働者には,労働時間ではなく,成果で賃金が支払われることを想定しています。だから,割増賃金は不要ですよね,ということです。労働時間が長くなっても,それでよい成果が上がれば,賃金が増えて満足できるはずというのが裁量労働制の働き方のポイントです。こういうことを首相は説明すべきだったのです。
 つまり,裁量労働制の対象業務とされるものが,こうした働き方に適しているかどうかは議論の対象となりえますが,裁量労働制によって労働時間の長さがどうなるかどうかは本質的な論点ではありません。また長時間労働になりうる可能性があるからこそ,健康確保も別途配慮されていますし,今回の改正で充実化も図られています。
 私は裁量労働制は中途半端な制度だと思っているので,高度プロフェッショナル制度とあわせてより抜本的な適用除外制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)に組み替えるべきという立場ですが,それにしても,変なところで,裁量労働制にケチがついてしまうのは残念です。
 制度を導入したらどのようなメリットがあるかどうかという議論をしたがるから,こういう話になるのです。労働時間制度改革は,導入すれば得か損かという議論をしていては先に進みません。とくにそれが金銭的な面から考えると,議論が錯綜します(残業が減ると残業代が減るから損という珍妙な議論も,こういうところから出てきます。残業がないほうが健康によいから法律は法定労働時間を1週40時間,1日8時間としているのであり,残業がなく,それゆえ残業代が支払われないような働き方が理想なのです)。
 働き方の本質にあった労働時間制度はどういうものか。そういう筋論をすべきです。労働時間が減るから良い制度ですよ,などという国民を小馬鹿にした議論をしようとしてはいけません。
 なお,私は安倍首相の国会答弁をフォローしているのではなく,上記の発言のみしかみていないので,もしかしたら,他の箇所でしっかり説明しているのかもしれません。かりにそうだとしても労働時間の長短の話は余計です。そして,それを首相に言わせて恥をかかせた周りのブレーンに問題があるのではないでしょうか。

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2018年2月14日 (水)

神大生棋士

 神戸大学経済学部に,プロ棋士の学生がいます。今年,四段に昇段した古森悠太君です。藤井聡太五段より一期下になります(年はずいぶん上ですが)。最近では,大学を出ているプロ棋士も多いです(中村太地王座は早稲田大政経学部卒,丸山忠久九段・元名人は早稲田大学社会科学部卒,片山大輔六段・東大法学部卒,糸谷哲郎八段・大阪大学大学院文学研究科卒業などが有名)。藤井五段は,お母さんが高校に進学し東大に行くことを希望しているという噂が流れていますが,高校に行くことが良いことかどうか。パラレルキャリアの時代なので,棋士と何かの両立というのは良いのですが,高校に行き,東大をめざすことで,将棋のほうに悪影響となるとか,あるいは将棋以外のキャリアにも必ずしもプラスにならない可能性があることも,よく考えておく必要があります。10年以上経つと,東大卒というキャリアはそれほど輝いていない可能性もあります。
 ところで,この古森四段と藤井五段が,新人王戦で対戦しました。藤井五段は,羽生竜王との決戦前の対局となり,結果は藤井五段の快勝でした。四段に上がったばかりの新人は勢いがあるものですが,相手の藤井五段の強さは際立っていました。17日の藤井・羽生戦は,オリンピックの真っ最中ですが,マスコミの大きな注目を浴びることになるでしょう。
 先日のNHK杯の山崎隆之八段と斉藤慎太郎七段の勝負はすごかったです。山崎八段の定跡無視の力強い指し回しと,最後の見事な詰まし方で,いま勢いのある若手の齋藤七段の玉を頓死させました。こういう将棋をみると,人工知能がどんなに強くても,人間どうしの対局は面白いと感じるでしょうね。
 この間,王将戦七番勝負は,久保利明王将が挑戦者の豊島将之八段に勝って2勝1敗としました。久保王将は順位戦A級でも豊島八段と並んでおり,名人との二冠に近づいています。棋王戦五番勝負は,渡辺明棋王が,挑戦者の永瀬拓矢七段に勝って先勝です。叡王戦は,なんとC級1組の金井恒太六段とC級2組の高見泰地六段との決勝七番勝負となりました。タイトル戦に昇格したばかりの叡王戦に,タイトル戦初登場の低段位の若手がいきなりタイトルを取ることが確定しているので,スポンサーとしては喜んでいるかどうか。両名にとっては,棋士としての全運勢をこの棋戦に集中したという感じです。好局を期待したいです。
 女流棋戦では,里見香奈女流五冠が,女流名人戦を伊藤沙恵女流二段に3連勝で防衛です。六冠目のマイナビ女子オープンは,準決勝で西山朋佳三段にやぶれて敗退したので,六冠は来年にお預けとなりました。


 

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2018年2月13日 (火)

新作

 週刊労働新聞で連載中の「雇用社会の未来予想図-技術革新と働き方-」の第5回目のテーマは「序列が変わる」です。雁行型からカエル跳び型への変化をみていこうという内容になっています。ビジネスガイドで連載中の「キーワードからみた労働法」は,前に予告しましたように,「リハビリ勤務と賃金」です。
 書籍では,『最新重要判例200労働法』(弘文堂)の第5版も,もうすぐ刊行されます。第4版までと同様,多くの人に活用していただければと思います。
 さらに,お待たせしました。ようやく解雇の金銭解決に関する本『解雇規制を問い直す-金銭解決の制度設計』(有斐閣)が刊行されます。経済学の川口大司さんとの共編で,多くの人に助けていただき,ようやく刊行にこぎつけました。こちらは論争の書となるか,スルーされてしまうか,なんともいえませんが,政策論義に一石を投じることができればと思っています。

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2018年2月12日 (月)

AI採用について考える

 採用選考にAIを活用することについて,AIはブラックボックスなので,説明責任がはたせないのではないか,という意見をよく耳にします。エントリーシートの選別でAIを活用する企業も,最終的には人間が判断すると広言しています(真実かどうかはわかりません)。今朝の日本経済新聞でも,「AIの偏見が,既成事実につながる怖さがある」として,AIに嫌われれば,理由もわからないままアルバイトを転々とすることになるのではないか,ということが書かれていました。
 しかし,採用時の選別については,どのようなポイントで人を判断するかという正解データは,人間が作っているので,AIは途中の判断プロセスはブラックボックスであるとしても,人間がやることを効率的にやっているにすぎないともいえます。なんとなくこの人はうちの会社に合いそうだ,というような,審査する側の個人的な直観や偏見をできるだけ排除して,客観的にする面もあります。
 結局,より曖昧な要素が多く偏見が混入しやすい人間の判断で排除されるのと,途中経過はわからないが人間のような偏見はなく結論を出すAIによって排除されるのとで,どちらが納得がいくかという問題でもあります。前にも書いたことがあると思いますが,ある犯罪行為について,人間の裁判官に懲役10年と言われるのと,AI裁判官に懲役10年と言われるのとでは,どちらが納得がいくかという問題と同じようなものかもしれません。偏見があるかもしれない人間よりも,AIのほうが納得しやすいという人もいれば,そうでない人もいるでしょう。
 機械が間違ったらどうすると言われますが,人間も間違う可能性が高い場合はどうでしょうか(このことは,自動運転の議論に最もよくあてはまります)。人間は人間にしたことに寛大で,機械がしたことには厳しいような気がします。何かあったときの不満や怒りの矛先は,生身の人間のほうがよいということでしょうか。AIが人間社会に浸透していくうえでは,この人間の心理がどういうものなのかが重要でしょうね。
 少なくとも採用選考については,学生からすれば,AIにより審査されることを望んでいる人のほうが多いと思います。上の世代の評価なんて当てにならないと思っている若者は多いはずですから。 それに,AIによる個人のプロファイリングが進めば,それへの対策というビジネスも出てくるでしょう。AIの判断が既成事実化することを逆手にとるビジネスです。そうなると,AI採用なんて怖くないなんてことになるかもしれません
 実は私は,別の理由でAI採用には限界があると考えています。企業側からすれば,AI採用は,企業の望む人を採用することはできるかもしれませんが,その企業に革新的な価値を生むかもしれない人材を見つけ出すことはできません。AIができるのは,人間の入力したデータがベースで,それは現時点の評価を基準にしたものですから。そこにAIではなく,人間が採用に関与することの意味があるかもしれません。もちろん,その企業がそういう革新的な人材を採用してもよいと考えていることが話の前提ですが。

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Willkommen bei den Hartmanns

  久しぶりに映画館で映画を見ました。日本語のタイトルは「はじめてのおもてなし」ですが,ちょっと違うと思います。いつも,映画の邦語タイトルはもう少ししっかり考えてもらいたいと思っているのですが……。
 この映画は,ドイツ人の富裕な中流家庭の抱える問題と,ドイツに増えてきている難民の問題を描いたもので,具体的には,その難民の一人をHartmann家に受け入れたことにともなうドタバタを,コメディタッチで描いたものです。
 校長まで勤め上げた元教師の母Angelika は,医師の夫で若作りに執心のRichardとの仲がうまくいかず,いつもワイングラスを離すことのできないアルコール依存症になっています。心の空白を埋めるかのように,難民に寄付をしたりするなかで,ついに夫と息子の反対を押し切って,ナイジェリア難民のDialloを受け入れることにします。Dialloは好青年ですが,Richardは心の中では外国人への差別意識は捨てておらず,職場での言動にそれが表れます。隣家のおばさんも外国人に敵視を向きだしにしています。難民施設の職員も,決して,外国人にフレンドリーというわけではなく,彼らをなんだか檻に入れた動物のように扱っています。おまけに国もテロリストの危険がないか,随時,監視しています(受け入れ先のHartmann家の中まで監視しているところも怖いです。いまや家庭内のプライバシーなどあったものではありません)。
 Hartmann家は,弁護士の息子Philippは妻に逃げられ,小学生の息子Basiは引き取ったものの,なかなかBasiをかまってやれず両親に任せているなかで,Basiはいろいろ問題を引き起こします。30をすぎても大学生の娘Sofieは,王子様がやってくることを夢見るお嬢様で,恋も学業もぱっとしない毎日を送っています。そんな家族の問題を,Dialloは,いろいろ助けていくのですが,世間はDialloに白い目を向けます。
 外国人への偏見の問題を描いた作品であり,最後はハッピーエンドなのですが,若干,気になったのは,Angelikaは,難民問題に理解をもつ女性とはいえ,それは決して進歩的な考え方によるものではなかったところです。家庭の問題など自分の心の問題を解消するために慈善活動に走ったという面があることからもわかるように,家族がボコ・ハラムに殺されてしまい天涯孤独になったDialloを,ある種の哀れみからドイツに同化させることに協力した女性だったのです。
 Dialloは,好青年だし,テロリストと関係がなく,ナイジェリアから家族を連れてくる危険もなく,むしろHartmann家の家庭問題を解決してくれるような,ドイツ人にとって文句のつけようのない好ましい難民でした(最終的には亡命申請が認められます)。難民問題に揺れるドイツですが,このわかりやすい選別意識が透けてみえて(それは当然の本音であり非難することはできないのですが),ここに難民問題の難しさがかえって浮き彫りになったように思えます(Dialloのような難民はなかなかいないでしょう)。
  さらに気になったのは,Bastiの非行が学校で問題となったときに寄付で解決できたことや,Philippがワーカホリックからくる精神異常から入院させられていたときに退院を医師への賄賂で実現できたことなどがさらっと描かれており,ほんとうにドイツでそんなことがあるのかと思ってしまいました。映画の全体の流れからすると,ここだけフィクションとも思えず,これもまたドイツの闇を描いた部分なのかもしれません。厳格なドイツ人のイメージと違うのですが,でも難民への差別意識などと並び,人間の本質はどこでも同じということなのかもしれません。
  (★★★☆☆ ★三つで,普通のコメディとしても楽しめますが,いろいろ考えさせられる映画だとも思います)

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2018年2月10日 (土)

週刊ニュース深読みに出演しました

 NHK生放送の「週刊ニュース深読み」に出演しました(https://www.nhk.or.jp/fukayomi/maru/2018/180210.html)。ときどき見たことがある番組ですが,詳しくは覚えていなかったので,少し不安でしたが,とりあえず無事に終わったと思います。
 だいたいの進行の打ち合わせはあったのですが,本番はほぼぶっつけという感じで,あっという間に終わってしまいました。昨年12月にBS11の番組に出演してきたときは,コマーシャルがあったのですが,NHKはコマーシャルがないので,休む間もなかったです。事前に生放送は,話したいことは先に話したほうがよいし,出演者間のバトルだよと言われていたので,日頃のように,できるだけ出しゃばって話すようにしたつもりです。
 ただ実際には,言うべきことや言いたいことの3分の1も話せなかったのですが,やはり時間が短すぎましたね。
 事前に法律の難しい話は避けてほしいということで(今回はNHKの解説委員の竹田忠さんが法律系の話は結果として担当してくださいました),それならなぜ法律屋の私がいるのかということにもなるのですが,実は私自身,法律の細かい話はしろと言われたらしますが,それにそれほど大きな情熱があるわけでもないので,ある程度,おおざっぱなことだけれど,本質を突くというような話ができればと思って臨みました。成功したかどうかわかりませんが,個人的には,貴重な経験となりました。
 50歳を過ぎてもいろいろ新しい経験をさせてもらうというのは,有りがたいことです。調子に乗って言わせてもらうと,時間がたっぷりあるBSフジのプライムニュースでホワイトカラーエグゼンプションのことをじっくり語らせてもらいたいと思っているのですが,いつかオファーは来ませんかね。

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2018年2月 9日 (金)

適温経済の終焉?

 Goldirockという言葉が,経済界ではよく使われます。適温経済という意味で,この言葉がどこから来たかということは,たびたび解説されているので,ここであえて書くまでもないことでしょう。童話の世界の言葉です。インフレもなく(過熱もせず),景気後退もない(冷え過ぎもしない),ちょうど良い具合に経済が進んでいるという状況に慣れてしまうと,いざ大きな変化が起きたときに,すぐに対応できなくなるかもしれません。
 トランプ政権がなんだかんだ言って支持されているのは,アメリカ国内の経済が好調だからでしょう。安倍政権もそうです。野党は雇用/労働政策については格差問題くらいしか攻撃できないのですが,失業率も低く,内定率も高く(若年者失業が少ない),非正社員が増えているからといって,最低賃金も着実に上がり,非正社員から正社員への転換も進み,法律もそれを後押ししている(労働契約法18条)というような状況で,さらには春闘にまで介入して賃上げ要請をしている政府に,国民は不満をもちようがないのです。インフレは,政府や日銀の思いとは異なりなかなか進まないのですが,それは国民にとってはありがたいことでもあります。北朝鮮のような国難に,アメリカと連携して対処できるのも,安倍政権しかなさそうだということまで,安倍政権に有利に働いています。
 しかし,日米の政権も,適温経済が終わると,どうなるでしょうか。現在のような幸福な状況はいつか終わるはずです。すでに,先週来,アメリカでも日本でも株価の大幅下落が起きており(といっても昨年秋からが異常な株高状態だったので,本来の水準に戻る調整局面に入ったということにすぎないのかもしれないのですが),不穏なムードが漂っています。少なくとも日本企業の業績は好調で,企業の評価が下落したから株価が下がったわけではないようですが,景気とは心理的なものなので,今後の動きは予断を許さないものとなっています。
 経済が悪くなれば,政権は危なくなり,思い切った将来志向の政策を打ち出せなくなります。気がかりなのは,現在の雇用・労働政策が,「働き方改革実行計画」にしばられてしまっていることです。この計画の遂行のためにエネルギーを使いすぎて,もっと大胆な改革が遠のくことが気がかりです。あの実行計画は,ファーストステップにすぎないのです。そこからさらにホップして,ステップして,ジャンプする必要があります。
 高度プロフェッショナル制は,中途半端な改革ですし(それでも野党が反対しているのですが),同一労働同一賃金は看板に偽りがある怪しげなスローガンです。解雇の金銭解決は計画の中にさえ入っていません。インディペンデント・コントラクターに対する政策も,正面から取り上げられていません(テレワークといったところでは出てきていますが)。
 これまでの順風の経済が止まりそうになっている現在,政権が思い切った雇用・労働政策に打ってでるチャンスが徐々に遠のいていかないか心配です。後から振り返って,あのときにもっとやっておくべきだったということにならないことを祈りたいものです。

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2018年2月 8日 (木)

経営労働政策特別委員会報告

 経団連がその年の春季労使交渉(春闘)に臨む方針を定める「経営労働政策特別委員会報告」では,私もアドバイザーの一人に名前が挙がっているので,私の意見が少しは反映されていると誤解している方もおられるようなので,はっきり言っておきますが,そういうことはありません。その年の方針は経団連ですでに決めてしまっているので,それについて意見は言いますが,おそらく参考にされるとしても,次年度以降ということになるのでしょう。
 報告書の原案段階で一応みせてもらうのですが,私の労働政策の考え方と違うところもたくさんあります。もちろん私の個人の政策は,経団連のそれとは違うので,自分の意見を特に強く主張するのではなく,私が出す意見は,標準的な労働法の研究者なら気になるような点について指摘するにとどめることが多いです。もっとも,どうしても言いたいところは意見をいいますが,今年の報告書でいうと副業に関する部分です。ここは私の考え方とかなり異なっています。懐疑的な意見は述べましたが,それが反映されることがもしあるとしても,次年度でしょうね。ただ数年前には意見を述べても一顧だにされなかったAIなどの先端技術の話は,きちんと入っていますね。全体的には,政府の意向をなぞっているだけという感じがあり,やや物足りないところがあります。もう少し経団連の攻めの姿勢があってもよいのではという気がしました。みなさんは,どうお感じでしょうか。
 なお副業については,NHKの週刊ニュース深読みという番組で2月10日に取り上げられます。そこに私も出演します(http://www.nhk.or.jp/fukayomi/)。昨年12月のBS11に続いての生放送の出演となります。うまく喋れるでしょうか。

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2018年2月 7日 (水)

プラットフォームの責任と自営的就労者の集団的権利

 先日の比較法シンポジウムの話の続きです。今回のインディペンデント・コントラクターの議論の背景には,デジタライゼーションやUber化が働き方にもたらすインパクトということもあり,その点も活発に議論がされました。
 とくに韓国の李ジョン先生から,韓国で流行っているカカオタクシーの例が紹介されて,興味を引きました。これはUberと同じような配車アプリを使ったタクシーサービスです。カカオタクシーは,ドライバーを使って,ユーザーに運送サービスを行っているのか,それともカカオタクシーはアプリを提供して,ドライバーとユーザーをマッチングしているだけなのか,という点です。前者であれば,カカオタクシーがドライバーに対する使用者となる可能性が高く(指揮命令の有無によりますが),後者であれば,ドライバーはインディペンデント・コントラクターとなるでしょう。
 この問題は,Uberをめぐっても,各国で類似の論点が浮上し,裁判にもなっています。日本でも紹介されているので,皆さんも聞いたことがあるでしょう。
 さらにGramanoさんからは,フランスの2016年の法律についても,紹介されました。その場では詳細はわからなかったので,後でネットで調べてみると,その法律は,LOI n° 2016-1088 du 8 août 2016 relative au travail, à la modernisation du dialogue social et à la sécurisation des parcours professionnels でした(「労働,労使対話の現代化及び職業的過程の安定化に関する法律」(法律名は仮訳))。その第60条で,労働法典の第7編(Septième partie)のLibreⅢ(第3章)に,新たにTitleⅣ(第4節)が追加され,「TRAVAILLEURS UTILISANT UNE PLATEFORME DE MISE EN RELATION PAR VOIE ÉLECTRONIQUE」(意訳すると,デジタルプラットフォームを利用する労働者)という表題の下に,デジタルプラットフォームを利用する自営的就労者(travailleurs indépendants)の保護のための規定が新設されていました(L.7341-1条以下)。
 そこではまず,自営的就労者が労災保険に加入する場合のプラットフォームによる保険料の補填(L.7342-2条),継続的な職業訓練へのアクセス権の保障(L.7342-3条)が定められ,さらに集団的権利も保障されました。集団的権利については,全訳(仮訳)しておきましょう。

L.7342-5条
 L.7341-1条の労働者(筆者注:デジタルプラットフォームを利用する自営的就労者)により組織化されたサービスの提供を,その職業上の要求を主張する(défendre leurs revendications professionnelles)ために,共同して拒否する行動(mouvements de refus concerté)は,濫用の場合を除き,契約(筆者注:債務不履行)責任を引き起こさず,プラットフォームとの関係の破棄理由にはならず,その活動の遂行に対する制裁的な(or 不利益な)措置を正当化するものではない。

L.7342-6条
 L.7341-1条の労働者は,労働組合を結成する権利,労働組合に加入する権利,及びその集団的利益を労働組合を通して主張する権利を享受する。

  従属労働者でいうと,L.7342-5条はストライキ,L.7342-6条は団結権の規定ですね。ストライキが団結権の前に来ているのは,フランスでは,ストライキ権は団結が行使するものとは構成されていないことを反映しているのだと思います(拙著『雇用社会の25の疑問-労働法再入門-(第3版)』の第5話「労働者には,どうしてストライキ権があるのか。」53頁も参照)。1946年の憲法前文でも,団結権(Tout homme peut défendre ses droits et ses intérêts par l’action syndicale et adhérer au syndicat de son choix.)とストライキ権(droit de grève)は区別されています。
 デジタルプラットフォーム利用の自営的就労者に限定したものとはいえ,団結権まで認めていることは,競争法との関係がどうなるのか,ということも含めて,興味深いところです。適用範囲を定める規定によると,サービス提供の内容の特徴と価格をプラットフォームが決定していることが条件となっています(L.7341-1条)。ここに経済的従属性をみているのでしょうかね。
 先のシンポジウムでも,経済的に従属的なインディペンデント・コントラクターのストライキをどう考えるかが,活発に議論されました。いずれにせよ,フランスのことも調べていく必要がありそうです。

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2018年2月 6日 (火)

名古道功『ドイツ労働法の変容』

 名古道功『ドイツ労働法の変容』(日本評論社)をいただきました。どうもありがとうございます。ドイツ労働法の研究をコツコツと積み重ねてこられ,関西労働法研究会の幹事という地味な仕事もずっと引き受けられてきた名古先生が,これまでの研究業績を1冊の本にまとめらたことは,ほんとうに喜ばしいことです。
 京大系の労働法学者の多くは,数人の例外を除き,ドイツ法を比較法の対象とされています。関西にいると,ドイツ法研究をしなければ労働法学者ではないというくらい多くの研究者がドイツ法に取り組んでいますが,西谷敏先生のような大学者がいるので,なかなかドイツ法研究で独創的な成果を出すことは難しいところもありました。そうしたなか,名古先生の著書は「変容」という言葉がタイトルに含まれていることからもわかるように,ドイツ法の変化を分析するという切り口で,日本法への示唆を得るという試みをされたものといえます。
 第5章の「総括」で,そのことが語られています。もちろん私とは現状認識や評価からそれへの対処法まで,意見を異にする部分がほとんどで,それは労働法に関する根本的な考え方が違うことからくるものですが,名古先生のような研究スタイルこそが日本やドイツの労働法学の主流であり,そのオーソドックスな考え方に基づく正統的な労働法の研究成果を出して下さることは,ほんとうに大切なことだと考えています(皮肉でも何でもありません)。
 本書の最後の文章は,次のようなものです。
 「労働の現場においてデジタル化等の技術革新が進んだとしても,利潤の徹底追求との資本の論理に変化があるとは思われず,また労働者でしかできない多くの仕事は存続する以上,『人間の尊厳に値する生存』を常に基軸として労働法を構想していかねばならないであろう。」  
 これと拙著『AI時代の働き方と法-2035年の労働法を考える』(2017年,弘文堂)の第8章「労働法に未来はあるか?」を読み比べてもらえれば,名古先生の正統労働法と私の異端労働法との距離の大きさがおわかりになるかと思います。

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2018年2月 5日 (月)

第2の正田彬待望論

 リスク管理という意味では,今回の比較法シンポジウムは,ゼロ点でした。もし私のインフルエンザ罹患が1週間遅れていたら,どうなっていたでしょうか。報告者と裏方の両方をやっていたので,私がたおれるとシンポの開催はできなかった可能性があります。そう思うと,背筋がゾッとします。なんとなく自分は健康で大丈夫という思い込みで,一番ダメなリスク対応をしてしまっていました。結果オーライなだけです。もともとは,Independent Contractor をめぐる海外の動向を知りたいから,人を呼ぼうという熱に駆られて企画したことで,あとは力業でなんとかシンポジウムはできるだろうと思っていたのですが,ほんとうの熱にかかってしまったので,危ないところでした。
 ところで,イタリアの新法(2017年5月22日法律81号)の注目点は,自営的就労者・独立労働者(lavoratore autonomo)に対して,経済的従属性に着目した不公正な取引を規制する法律の規定を援用しているところです。たとえば,2条は,「Tutela del lavoratore autonomo nelle transazioni commerciali(商取引における自営的就労者の保護)」という表題の下に,EUの支払遅延指令(2000年)を国内法化した法律(2002年10月9日委任立法231号「Attuazione della direttiva 2000/35/CE relativa alla lotta contro i ritardi di pagamento nelle transazioni commerciali」)の規定を援用しています。日本でいえば,下請代金支払遅延等防止法(下請法)の規定を適用すると定めたのと同じような感じでしょう。  
 詳細は別の機会にゆずりますが,イタリアは,これまでドイツと並んで,労働者と自営的就労者の中間にある経済的従属的な自営的就労者(準従属労働者)を対象とした法規制(第3のカテゴリーの創設)を行う国と整理されてきました(Alain Supiot「Au-delà de l'emploi」でも,情報が古いので,そのような整理です)。しかし,すでに2015年の法律でそのアプローチは放棄され,従属労働者の範囲を若干広げて(組織的従属性があれば,フルセットの保護のある従属労働者として扱う)と自営的就労者の二分法に戻していました(なぜ二分法に戻したかは,私はどこかでちょっとだけですが書いているはずです[どの論文か忘れました])。その流れの延長で,今度は2017年の法律で,自営的就労者における経済的従属性への対処を,競争法の規制を援用するという方法で行ったのです。もちろん2017年法は,自営的就労者の妊娠,病気,ケガの場合の契約中断(契約は終了させないこと)を求める権利を認めるなど労働法的な規定も設けています。このイタリアの「実験」は,自営的就労者に向けての労働法の新たな展開の可能性を感じさせるものといえるでしょう。
 労働法と経済法の統合というと,正田彬先生のことを思い出します。正田先生の論文は,読んだことはあります(日本労働法学会誌24号の「労働法と経済法の関係についての試論」など)が,あまり印象に残っていません。いま一度,勉強してみる必要があるのかもしれません。いずれにせよ「優越的地位の濫用(abuse of dominant position)」(の禁止)という法理の普遍性が,これから問われていく時代になるのだと思います。第2の正田彬が登場してきてもおかしくありませんね。

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2018年2月 4日 (日)

比較法シンポジウム

 土曜日,無事に比較法シンポジウムが終わりました。イタリアからは,Maurizio Del Conte教授が3泊4日の強行日程で日本に来てくれました。彼は,昨年制定されたイタリアの自営業者法(Statuto del lavoro autonomo[独立労働憲章])の生みの親であり,立法者の声を直接聞けた点でも貴重でした。また,韓国からは李ジョン先生が,韓国の議論状況をきわめて手際よく紹介してくだいました。李先生は東大の大学院生時代からの仲間で友人であり,長い付き合いです。今回,はじめて神戸大学に招待することができて良かったです(この4月からは1年間,東大に客員で来られるそうです)。また,韓国からオブザーバーが5人も来られ,たくさん質問をして,議論を盛り上げてくれました(韓国では,私の書いたものの翻訳がかなり読まれているということを聞いて,少し驚きました)。台湾からは,李玉春先生が,多忙な中,駆けつけてくださいました。台湾は,自営業者の問題はそれほど議論されていないようですが,これはどうも労働者概念のほうの議論がまだ流動的なことと関係しているようでした。
 また,このシンポジウムには,Del Conteの教え子で,現在,フランクフルト大学でバイス教授の下で研究員をしているElena Gramanoさんが自費参加してくれたのですが,彼女が大活躍でした。Uber化現象と労働者概念などについて,EU法の研究をしているので,この問題のエキスパートとして,シンポジウムの議論に大きく貢献してくれました。若きスター誕生という感じです。英語も堪能なので,今後,国際舞台での活躍が期待されます。その第1歩が神戸だったとなると,それは素晴らしいことです。
 今回のシンポジウムでは,参加者全員の英語のペーパーが出ていますし,日,台湾,韓国からは日本語のペーパーも出ているので,どこかで公表することを考えたいと思っています。
 懇親会では,ゲストに神戸を楽しんでもらおうと思って,神戸ワインを用意して出したのですが,あまり人気がなく残念でした(せっかく個人で買って,持ち込んだのですが……)。とくにイタリア人の評判が悪かったです。仕方ないですね。日本酒も福寿を買ってきて出しましたが,これもイタリア人にはあまり評判が良くなかったです。個人の好みの問題だけだったのかもしれませんが。

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2018年2月 3日 (土)

屋外ならよいというものでもない。

 受動喫煙の話はすでに何度も書いてきたところですが,もう政府の動きには諦めを感じています。他人に受動喫煙させることを正当化するために必死の論者の顔をみていると情けなくなります。
 個人的には,もうラディカルなことはしようとしても時間がかかるだけなので,喫煙可能の店は,店の外の目につくところに喫煙可というマークをかかげることを義務づけるというだけでよいと思っています。そのなかでは自由に喫煙させてよいでしょう。ただ,飲食店も勇気をもって禁煙にすると客が増えると思いますよ。目の前にいる客の減少と,潜在的に存在している客を比較することは,小規模な飲食店経営者には難しいのかもしれません。とくに現時点の経営で満足しているところでは,いまいる客をキープすればいいということかもしれません。
 ただ,ここ数年で新たに喫煙不可とした飲食店は,私の住んでいるところの近くでも数軒あって,そこでは客は減っていないそうです。屋外での喫煙は可としておくと,吸いたい人は外に行って吸うだけなのです。その店が好きな人は,煙草を吸いにだけ来ているという例外的な人を除き,禁煙にしても引き続き来てくれるのです。
 あとは経営者の判断です。煙草を吸わない人のほうがすでにかなり多いと言われているなか,冷静に考えると禁煙店のメリットは多いと思うので,どこかで一挙にドミノ倒しのように禁煙店が増えるような気がします。法律よりも,その時期の到来を待つほうが,期待大といえそうです。
 むしろ問題は路上喫煙です。屋内禁煙にすると屋外での喫煙が増えます。外国でもそうです。屋外はモラルの問題かもしれませんが,条例で規制しているところもあるので,そういうところは規制を徹底してもらいたいですね。モラル的にも,風上で煙草を吸う人は,自分の吐き出す煙がどこまで他人に迷惑をかけるか考えてほしいです。
 実は神戸大学も,キャンパス内に,屋外での喫煙場所が設けられていますが,これが問題なのです。大学は山手で風がよく通るので,一人が煙草を吸うだけで,風に乗って,かなり拡散するのです。煙草の風に襲われるという感じで,これはひどいものです。大学のグローバル化を言うなら,まずは施設面で,キャンパス内の完全禁煙を即刻実現すべきでしょうね。
 いずれにせよ屋外であっても,風上に喫煙場所を設けていたら,受動喫煙の被害はなくならないことは,広く知ってもらいたいものです。

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2018年2月 2日 (金)

リーガルテック

 ある役所の地方の局から届く源泉徴収票は,なぜか簡易書留です。受け取りが大変なので,やめてもらいたいものです。源泉徴収票は,毎年,かなりの数が送られてきますが,簡易書留で送ってくるのは,この役所だけです。収入が書かれている文書だから慎重に取り扱っているということかもしれませんが,大した額ではないし(3万円くらいです),税金の無駄使いでもあります。普通郵便で十分です。ほんとうは紙ではなく,電子メールで送ってもらったほうが助かります。紙は保管が大変です。せっかく電子納税ができるようになっているのだから,源泉徴収票もデジタルデータで送ることを義務づけるようにルールを変えて,ここでもペーパーレスをお願いしたいものです(マイナンバーカードのコピーを書留で送れというのも困りものです。郵便局に行く時間がない人はどうすればよいのでしょうか。私は無視して普通にポストに投函しています。ひどいところでは,コピーを所定の紙に切り貼りせよということまで言ってくるところもありますが,これももちろん無視です)。
 裁判所のIT化の検討をしているということは,私たちの業界では知られていましたが,その検討のスピードが遅すぎるような気がします。今朝の日本経済新聞でも紹介されていましたが,あまり進展がみられません。ペーパーレス化は年内にも実施するというくらいのスピードでやってもらいたいものです。労働委員会となると,ペーパーレスは検討の俎上にも載っていないようです。中労委は,研修などを企画するなら,第1にやるのはペーパーレス化についての研修をすべきでしょう。
 源泉徴収票と同じで,裁判は文書でやると思い込んでいる人が多いのが問題です。むしろデータというのは,裁判であろうが,基本的にはすべてデジタルとすべきで,そのうえで,紙でやる必要性があえてあるかどうかを検討するというように,「立証責任」を転換していくべきでしょう。
 デジタル化は,リーガルテックという点では,入口の入口であり,もっとテクノロジーを使ってやれること,やるべきことが数多くあります。最高裁も中労委も,あるいはその他の関連役所も,非効率な業務を削ぎ落とし,国民に必要な司法や行政のサービスをいかにして安く確実に提供できるかというテーマに取り組んでいってもらいたいです。
 もちろん,「リーガルテックの活用のための有識者会議」なるものを立ち上げて,その資料を紙で作って配布するなんて笑い話が起こらないようにしてもらいたいものですが(役人は,こういうことを平気でするのです)。

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藤井聡太五段誕生

 藤井聡太四段が,順位戦C級2組で勝って全勝を守り,最終局を待たずに昇級を決めました。C級2組は50名が在籍するなか,C級1組に昇級できるのは3名だけ。しかも成績が同じであれば上位順位者優先ということで,今年C級2組に入ったばかりで順位が45位と低い藤井四段にとっては,全勝する以外は昇級は無理という状況でした。そのようななか,本日の対局前にすでに単独トップの全勝となっていて,そして昨日も勝って楽々と昇級ということで,このレベルでは敵なしというところを見せつけました。史上初の中学生五段の誕生です。このまま毎年順位戦で昇級すれば,一つずつ昇段していきますが,棋戦優勝やタイトル挑戦などがあると,飛び級的に昇段していく可能性もあります。すでに実力的にはB級1組クラスで,七段くらいであってもおかしくない感じです(糸谷哲郎八段は,B級2組在籍時から竜王経験者として八段でした。ようやく来期A級に昇級するので,順位と段位が一致することになりました)。世間では,2月17日の朝日杯の準決勝での羽生善治竜王・棋王との対局で,すでに盛り上がっているようです。
 昨日は谷川浩司九段も,王座戦の予選に登場で,阿部隆八段相手に単手数の快勝でした。攻めの切れが戻ってきていますね。順位戦の残り1局も頑張ってほしいです。
 また昨日はA級順位戦のラス前の一斉対局でした。一番早く終わったのが,羽生竜王・棋聖と,屋敷伸之九段の対局。羽生竜王が勝って6勝4敗で全対局を終えました(最終局は空け番)。この時点でまだプレーオフ進出の可能性が残っています。屋敷九段は2勝7敗で,降級決定第一号となりました。今期は他の棋戦でもふるわず,降級はやむを得ないところでしょう。
 続いて終わったのは,久保利明王将と渡辺明棋王の対局で,久保王将の勝ちです。久保王将の充実ぶりが目立ちます。久保王将は6勝3敗で名人挑戦の可能性を残しました。3月2日の最終局の相手は深浦康市九段です。渡辺棋王は敗れて4勝5敗で,まだこの時点で降級の可能性が残っています。竜王失冠など,冴えない今期を象徴する成績です。最終局の相手は三浦弘行九段です。
 次に終わったのが,行方尚史八段と佐藤康光九段との対局。こちらは行方八段が豪快に攻め勝ちました。3勝6敗となりました。負ければ即降級だったので,この時点で,首の皮一枚つながっています。次の相手は,今日は空け番で5勝4敗の稲葉陽八段です。佐藤康九段は5勝4敗となりましたが,この時点でまだプレーオフ進出の可能性が残っています。次の相手は今日降級が決まった屋敷九段です。
 日付が変わってまだやっていたのは,広瀬章人八段対深浦九段,豊島将之八段対三浦九段の対局でした。この時間帯になると残り時間も少なく,疲れもピークとなってくるのですが,ここでしっかり指せなければ順位戦では生き残れません。
 そのあと,深浦九段が投了しました。これで広瀬八段は5勝4敗です。深浦九段は4勝5敗となり,まだ降級の可能性が残ってします。
 最後に,12時半くらいに,豊島・三浦戦も決着が付きました。三浦九段が勝ちました。プロの評価を聞かなければなりませんが,土壇場の大逆転だったのではないでしょうか。豊島八段は痛い敗戦です。これで豊島八段は6勝3敗となり,久保王将と並びました。最終局,豊島八段は広瀬八段と,久保王将は深浦九段と対局です。ともに勝てばプレーオフです。ともに負けると大変なことになる可能性があります。6勝4敗が最大6人となる可能性が残っています(豊島,久保,羽生,広瀬に加え,稲葉,佐藤康も勝てば6勝となります)。
 降級争いは,三浦九段が勝ったために混沌としてきました。現時点で3勝は行方八段だけで,行方八段は稲葉八段に負ければ降級確定。勝った場合,2人目の降級ラインも4勝6敗となり(3人目の降級ラインは最初から4勝6敗),下の深浦九段と三浦九段がともに負ければ4勝6敗で3人が並び,順位が上の行方八段の残留。深浦九段と三浦九段のどちらか一人でも勝てば勝った方は5勝となるので,行方八段は降級です。
 三浦九段は,最終局に渡辺棋王に勝てば5勝5敗となり残留。負ければ降級です。
 深浦九段は,最終局に久保王将に勝てば5勝5敗で残留。負ければ三浦九段が勝っていれば降級です。
 渡辺棋王は,最終局に三浦九段に勝てば5勝5敗で残留。負ければ,深浦九段が勝っていれば降級となります。
 行方八段以外は自力残留があるということです。渡辺棋王が因縁の相手三浦九段と降級をかけて争うというのも見ものですね。最終局(将棋界の1番長い日)はすべての対局が挑戦か降級に関係するということで,大いに盛り上がるでしょうね。おそらく私の記憶するなかでは最も白熱した最終局となりそうです。

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2018年2月 1日 (木)

復帰

 インフルエンザ休みから明けて,今日から職場復帰です。今日は,インフルエンザ休講の補講(フランス語の文献購読),LSの定期試験の実施,週末のシンポジウムの打ち合わせ(シンポの内容ではなく,ロジ関係です。職員の人にも助けてもらっていますし,当日は学生にも手伝ってもらいますが,それでも,会場の手配,懇親会のメニューの相談・お酒の選定,コーヒー用のポットの確保,招待者への旅費等の支払いのための小銭の用意など細々とした雑用がたくさんあり,それは私が全部やらなければならないことなのです)など,一気に済ませたので,疲れてしまいました。A型が治ったからといって,B型にかからないことはないそうなので,できるだけ疲れないように用心をします。
 インフルエンザを経験して,つくづく自分はダメだなと思ったのは,先週木曜に病院に行ったとき,なんとマスクをし忘れていって,受付の女性の,汚いものを見るかのような視線を浴びてしまったことです。咳エチケットというものが身についていないのが,私のダメなところです(今日はあえてマスクはしていませんでしたが,心配そうな顔をされる前に,先手を打って,もう1週間は休んだから,皆さんにはうつりませんと宣言していました。それでも,いつ発熱したのですか,と日数確認をしてくる人もいましたが)。
 病院の受付の女性は,私にマスクを渡し,体温計を渡し,向こうのソファのところで熱を測れと指示をしたのですが,私はその指示がよくわからず,近くのソファに座って熱を測っていると,周りの人から冷たい視線を浴びてしまいました。なんだイヤな奴らだと思っていると,どうも受付の人は,ソファの奥に扉があり,その先にもソファがあったので,そっちに行けという指示だったようです。そこで私は,自分が伝染病の疑いのある患者のくせに,マスクもせずに無防備に普通の席に座っているとんでもないヤツという視線を浴びていることに気づいたのです。普通の患者から隔離されたところに行けという指示だったのです。それに気づき移動したら,そこは寒い廊下のソファで,なんとも屈辱的な経験でした。その後,看護婦さんが可愛そうに思ったのか,暖かいところに移動させてくれたので良かったのですが。
 実は私はその時点では熱は下がっており,自分はインフルではないが,念のための検査に来たという意識だったのが,まずかったのでしょう。周りはそうは見ていませんでした。私が受け付けでインフルかどうかの検査に来たと言ったとき,それはおそらく待合の全員に聞こえていたはずなので,もうみんな私をインフルと決めつけられていたのでしょう。
 そして実際にインフルにかかっていたのですが……。

 皆さんにはどうでもいいことですが,個人的には,あんまり他人からああいう視線を浴びたことがなかったので,良い経験になりました。

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