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2017年8月24日 (木)

池井戸潤『アキラとあきら』

  池井戸潤『アキラとあきら』をKindleで読みました。この著者の得意の銀行ものです。苦境に陥った主人公の男が最後に逆転して乗り切ると言うワンパターンの話ではありますが,読んだ後に感動が残るのがこの著者の凄いところでしょう。
 彬(あきら)と瑛(あきら)はそれぞれ社長の息子です。彬は大企業の東海郵船グループの創業一族の社長の長男ですが,瑛は町工場の中小企業の社長の長男で,その会社は倒産してしまいます。2人はともに境遇が全く異なる少年期を送りながら,大学は東大に行き,そして同じ産業中央銀行の銀行員になります。入社時の新人研修の際に早くも頭角を現して将来を嘱望された2人。瑛は自分の父親の倒産経験などから,人情に厚い銀行員を目指します。他方の彬は,家業の東海郵船グループ内での,父と叔父の確執,彬と弟との対立など,家族内のドロドロがあり,本人はグループを離れて銀行員になったものの,なかなか家族のしがらみが断ち切れません。そして,グループが瀕死の状態に陥ったときに,銀行を辞めて東海郵船の社長になったのですが,そこから先も苦難の連続でした。この絶体絶命の状況を救ってくれた銀行員が,かつての同僚の瑛でした。瑛の秀逸した稟議書のおかげで,融資がなされ,彬の東海郵船は復活できました。
 稟議書という銀行特有のものがポイントになっていて,あまりこういうことに詳しくない私にはピンとこないところもありましたが,それでも十分に楽しむことができました。ワンパターンという悪口も書きましたし,著者の割と強引な登場人物の設定が鼻につくところもあるのですが,それでも最後にしっかり感動させてくれるのは,著者のストーリーテラーとしての力量なのでしょうね。しばらくは読まなくてもいいですが,たまにはまた読みたくなる著者かもしれません。  ★★★☆☆(星三つ)

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