« 2017年7月 | トップページ | 2017年9月 »

2017年8月

2017年8月31日 (木)

菅井王位誕生

菅井竜也七段が王位戦で4勝1敗で羽生善治三冠からタイトルを奪取しました。菅井七段が勝った対局はほぼ完勝で最終局も強かったです。消費時間にも差がある対局が多く、さすがの羽生三冠も苦しんだようです。平成生まれの初のタイトルホルダーで、藤井ブームが実力派若手に火をつけたのかもしれません。その藤井四段も菅井新王位には先日負けましたし、もう一人名人奪取を狙っている若手最強豪の豊島将之八段にも棋王戦決勝トーナメントで完敗でした。豊島八段はA級順位戦でも3連勝です。
羽生は二冠になりましたが、竜王挑戦の可能性は残っています。松尾歩八段と1勝1敗のタイで決戦は8日です。

|

2017年8月29日 (火)

経済教室

今朝の日経新聞の経済教室に私の原稿が掲載されました。昨年の5月以来で単著としてはおそらく4本目(記憶違いで5本目)でしょう。内容的には異論やツッコミどころはいっぱいあるでしょうが,将来を展望した成長戦略について労働市場政策という観点から執筆してほしいという依頼をいただきましたので,最近の私の政策論的立場をできるだけ盛り込んだものを思い存分に書いてみました。今後の労働政策論議の少しでも参考になれば幸いです。

|

全国学力テストに思う

 全国学力テストは,都道府県対抗戦のようになっているのですね。でもあまり競争をあおってはいけないということで,正答率は小数点を四捨五入して整数にしたため,同点のところが多く,あまり差がはっきりしないことになりました。教育に活かすというのであれば,公表しないで,各都道府県に自分の順位を伝えて,低いところには反省を促すということでもいいと思います。なんでも公表すればよいというものではないと思うのですが。
 兵庫のライバルは大阪でしょうか。いや大阪は全国最低レベルですね。隣の県というと鳥取や岡山でしょうか。これは兵庫が優越意識をもっていてライバルとは思いにくいかもしれません。なんていうバカな議論をしながら,ついつい表を見てしまいますね。
 司法試験のことも思い出しました。法科大学院間でも合格率が数字に出るので,競争心がかなり強いです。もうすぐ合格発表がありますね。
 司法試験にせよ,学力テストにせよ,数字の競争が強まると,テストで点をとらせるためにどうすればよいかというテクニックに走りがちになります。教育改善につながればいいですがね。
 とくに学力テストのほうは,できの悪い学生に特訓をして過度な負担がかかるということにならないよう祈りたいです。小学校や中学校では,国語や数学が出来なくても立派な人になれるのです。そういうことをいうと,無責任なことを言うなという反論がきますが,でも国語や数学が出来なくても,運動,音楽,絵画が得意ということはあるでしょう。どっちのほうが,これからの社会で成功するのでしょうか。
 AI時代に必要な教育は何かが大切です。そこを間違って,意味のない教育に,教師や子供を駆り立てて,結果として,疲弊した教育労働者と子供たちだけが残ったということにならないよう,くれぐれもお願いします。

|

堀江貴文『多動力』

 ビジネス書としてトップ独走ということでしたので,堀江貴文『多動力』(幻冬舎)をKindleで読んでみました。感想は二つ。この人,私とかなり同じことを考えているな,と驚いたこと。もう一つは,結構,楽にラフにモノを書いているな,ということ。
 同感したところは,たくさんありました。いくつかあげてみましょう。

・「自分の時間を取り戻そう」
 私も,堀江氏ほどではないですが,時間に対するこだわりはかなり強くもっています。無駄な面談や会議に対する抵抗感も同じです。拙著の『勤勉は美徳か?』(光文社新書)の主題も時間主権の回復です。

・「電話をかけてくる人間とは仕事をするな」
 私の場合には,すぐに面談したがる人とは仕事をするな,ですね。こういう人は,私から時間を奪う泥棒なのです。

・「大事な会議でスマホをいじる勇気をもて」
 あまりお勧めではありませんが,気持ちはわかります。これも時間泥棒対策です。私はひどい会議では,スマホないし「内職」をします。

・「おかしなヤツとは距離を取る」
 これも同様に時間泥棒対策です。ホリエモンのようにはなかなか割り切れませんが,気持ちはわかります。

 以下は働き方に関係するもので,私と同じ考えかそれに近いものです。
・「寿司屋の修業に意味がない」
 ネットで簡単に情報が入る時代に,秘伝を教わるためにずっと下働きばかりさせられるのには意味がないということです。私が,若者の育成といっても,会社に入ってやらされる仕事は,将来役に立たないかもしれないので注意せよ,といっているのと同じことですね。AIに代替される作業のための訓練は無駄になるので,やらないほうがいいのです。

・「バカ真面目の洗脳を解け」
 言葉は激烈ですが,同感するところが多いです。この趣旨は,私が言っている自前主義をやめろ,ということとほぼ同じです。何でも自分でやらなければいけません,という思い込みが発展を阻害しているのです。ただ,これについては,私は堀江氏のようには自分では実践できていません。これからの企業は自前主義はダメと言いながら,自分は何でも抱え込んでやりすぎています。ほんとうは信用できる人がいれば任せて,その分はしっかり報酬を払って,自分の時間を買いたいのですが,なかなかそうはいきません(人材はいても,そういう人もまた忙しいのです)。よい仕事のパートナーというのは,編集者クラスでは何人かいますが,恒常的に助手のような人が近くにいたら助かるなということをいつも感じています。個人的にはいますぐにでも自前主義はやめたいのです。

・「見切り発車は成功のもと」
 これも,同感するところが多いです。これはあまり自慢できることではありませんが,論文も著作も100点を目指すと行き詰まります。90点を目指すくらいでいいと考えています。これが油断につながるといけませんが,90点をとるのと,そこから100点まで引き上げるのとでは,クオリティはあまり変わりがないのに,努力はものすごくかかります。100点主義は,自己満足の世界です。それを目指している人は尊敬しますが,私とは生き方がやや違います。自分の限られた時間は,別のところに注ぎ込みたいと思っています。

・「仕事を選ぶ勇気」
 そのとおりです。転職力を身につけよ(拙著『君の働き方に未来はあるか?』(光文社新書)を参照),という私の主張とも通じます。

・「教養なきものは奴隷になる」
 これは彼がわかって書いているかはなんとも言えませんが,まさにリベルルアーツ(教養)こそ,人を自由に(リベラル)させるための技芸(アーツ)ということです。奴隷ではなく自由な人間になるために教養は必要です。ただ,彼の言っている「教養」はちょっと広すぎますが。

・「知らないことは『恥』ではない」
 わからないことは専門家に教わるほうが効率的です。その前提として,自分が何かわからないかを知ることも大切です。ここで私も失敗することがあります。自分の知識に常に謙虚であるべきで,他人から教わるという気持ちをもつことが大切です。もっともダメ学生や無能なジャーナリストのように,自分で何も努力せず,何から何まで教わろうとするのは最悪です。
 これは「なぜデキる人は『質問力』が高いのか」にもつながります。優秀な人は,当然のことながら,質問が素晴らしいです。よい質問に誘発されて,良い答えができて,それがこちらの刺激になることもあります。こういう取材を受けたときは幸福です。

・「ヒマな人ほど返信が遅く,忙しい人ほど返信が早い」 
  これは常識です。私はヒマではないので,返信は早いと思います。返信をしないのは,返信する必要もないものです。少し考えて返信しなければならないようなメールは,そのうち忘れてしまうので,やはり返信しません。ややこしい相談ごともできるだけ即決します。もっとも私は勘が鈍いので,即決して失敗したことも少なからずありますが,へこたれないようにしています。
 
 そのほかにもいくつかあって,あまり同感できないものもありますが,全体として納得できる部分のほうが多かったです。では,この本は読む価値があるかというと,私は多くの人には道を誤らせる危険な本ではないかと思います。ということで,★★☆☆☆(★二つ)。

|

2017年8月28日 (月)

誉田哲也『プラージュ』

 誉田哲也『プラージュ』(幻冬舎文庫)をKindleで読みました。以下,ネタバレあり。
 住んでいたアパートが火事になり焼け出されてしまった貴生には,頼れる人は保護司の小菅しかいませんでした。貴夫は覚醒剤犯で執行猶予中でした。小菅が紹介してくれたのは,潤子という女性がやっている「プラージュ」というシェアハウスでした。そこはドアがなくプライバシーがまったくない変わったところで,食事は希望すれば潤子のやっている店のものを食べさせてもらえて,月の家賃がたった5万円というところでした。貴生は,そのうちそこの住民がいろいろな事情から犯罪に手を染めていた前科者であることを知ります。
 貴生は犯罪者といっても,たった1日,職場でいやなことがあって羽目をはずして飲み過ぎて,悪い連中と合流してしまって覚醒剤を1回使用したときに捕まったにすぎないのですが,会社を解雇され,再就職もままならないという不運にありました(おまけに家も火事になりました)。その他の同居人は,もう少し重い犯罪ですが,いずれもそれぞれに事情がありました。誰も根っからの悪人はいませんでしたが,世間の偏見と差別にさらされていました。悪い男につかまり,なかなか縁の切れない紫織,若いときにはやんちゃをしていたが,その後はまじめに働き彼女もいたのに,あるときに不良との騒動にまきこまれ,やや行きすぎた過剰防衛をしたために刑務所に入れられてしまった通彦などです。
 なかでも20歳の美羽は強烈でした。彼女は世間の常識がわからないサイコパスでしたが,嘘はつかないという娘でした。彼女には,かつて喧嘩をふっかけられて敵を派手に死傷させてしまった過去がありました。彼女には,被害者からの復讐の魔の手が迫っていました。
 もう一人,同居人のなかには友樹という男がいました。子供のころからの親友の重明を殺したとして第1審は有罪でしたが,控訴審で無罪となりました。重明の当時の彼女の証言でアリバイが認められたからです。友樹にふられた彼女は,第1審では偽証したのです。重明は友樹からずいぶんとお金を借りていました。あるとき,重明は,働いていた自動車販売会社が実は盗難車を扱っていて,そのことを事件を追っていたジャーナリストに喋ってしまったところ,それがばれてマフィアから逃げなければならなくなったが,逃亡資金がないので貸してくれと友樹に頼んできました。しかし友樹はそれを断りました。もう彼には金を貸さないと決めていたからです。その重明が,その夜,殺されたのです。彼と重明がいさかいをしていたのが目撃されていたことから疑われました。  
 この殺人事件を追っているジャーナリストがいました。彼は友樹はほんとうは有罪であり,その悪事を暴いて社会的正義を実現しようと考えていました。友樹がプラージュにいることを突き止めた彼は,プラージュに潜入するために彰という偽名で同居人となります。ところが,徐々に彰は友樹を告発することを断念する気持ちになります。
 あるとき,美羽が彼女に復讐しようとする者たちによって拉致されます。プラージュの同居人や客は,一致団結して美羽奪回に立ち上がります。奪回は成功したのですが,その現場で,彰は刺殺されてしまいました。
 彰が残していたファイルに,驚きの真相が書かれていました。彰も前科者でした。友樹の悪事を暴くのは,実は社会的正義ではなかったのです。重明が語ったジャーナリストは彰でした。重明を殺したのは彰でした。重明がお金をくれなければ,彰のことをマフィアに伝えると脅したために殺してしまったのです。彰は,自分を守るため,友樹が犯人であるという記事を書こうとし,そのネタ集めのために友樹に接近していたのでした。彰こそ極悪人でしたが,でも最後は悔い改めます。
 潤子にも悲しい過去がありました。潤子の父は一度の過ちのために社会復帰が許されませんでした。そして苦しんで自殺しました。潤子は,普通の人がちょっとしたことで犯罪者となり,そしていったんそうなったら世間の厳しい目でなかなか脱却できないという現実をみて,なんとかしようと考えてプラージュを作ったのです。プラージュとは,フランス語で「海辺」という意味です。悲しい前科者が波のように寄せてきては,なんとか自立して波のように去って行くという場ということでしょう。
 いろいろ考えさせられるし,ストーリー展開もなかなか面白かったですよ。 ★★★☆☆(☆三つ)

|

2017年8月27日 (日)

ビッグデータ収集とクラウドソーシング

  昨日の日経新聞の「オピニオン」に,村山恵一氏の「ネット群衆の力 生かす解を」というタイトルの論考が掲載されていました。村山氏は,私も一度取材を受けて,オピニオンに登場させてもらったことがあります。非常に優秀な方です。
 今回の記事の内容も,そのとおりと思う部分がほとんどでしたが,労働法屋としてちょっと気になるところがありました。それは次の部分でした。
 「例えばクラウドワークスは,人工知能(AI)を開発したい企業のために,ビッグデータを収集するサービスに乗り出した。大量の音声を録音したり,大量の画像に注釈を付けたりする作業も,140万人の登録ワーカーがかかれば,あっという間に処理できる。海外より出遅れ気味の日本のAI開発をクラウドソーシングで後押しする。そんな新手法といえる。」
 AI開発に必要なビッグデータの収集は,IoTなどによる無作為にできるものもあれば,コンピュータに学習させるための「教師データ」作りのように,人間の手が必要なものもあります。この作業は,基本的には,単純労働の部類のもので,人海戦術が使えることが多いようです。どれだけの報酬が支払われるのかわかりませんが,内職的な家内労働の現代版のようなものではないか,という気がしないわけではありません。クラウドソーシングをそのための手段として使うのは名案のようですが,クラウドワークを,これからのフリーランスの働き方の一典型例と位置づけて考えていきたい私にとっては,ちょっと複雑な気持ちです。
 クラウドソーシングは,文字どおり,人材をクラウド(群衆)から調達するもので,ネット社会だからこそ可能なものです。ただ私は,これを仲介する事業が社会的に支持されるためには,アウトソーシングをする側の正当な利益と,自営的労務を提供する側の適職探しを結びつけるという要素がなければならないと考えています。もちろん労働需給のマッチングさえできればそれでよいのでは,という考え方もあります。とりわけ今回の記事に出てくるようなAI時代に必要なデータの収集のためだから,社会的正当性があるともし言われると,そうかな思うかもしれません。
 ある研究会で,今後のAIの発達により,営業担当の人の仕事が不要になったとき,これまでの営業で培った膨大な情報をデータ化する作業に配転すれば雇用が維持できるというアイデアを聞いたことがありました。AIはデータあってのものですから,こうした作業は必要です。自分の仕事を奪ったAIのためにデータを作成するのは皮肉な感じもしますが,リストラを回避するためであれば,むしろ有用な人材活用と評価できるかもしれません。ただ,こういうケースとは異なり,ビッグデータ集めのために,新たに請負労働者を多数活用するとなると,ちょっとどうかなと思ってしまいました。これもAI時代の到来には避けて通れない道なのでしょうか?
   このモヤモヤ感は,私の誤解から来ているところも多いのでしょう。もう少し勉強してから,もう一度,このブログで報告したいと思います。

|

2017年8月26日 (土)

プレフラではないですが……

 25日は多忙な1日でした。月末までにやるべき仕事がたまっていて午前中はそれをこなし,午後はSkypeでの取材が1件(AI関係),その後は,雑誌の執筆の打ち合わせが1件(フリーランス関係),そして,夜は,毎年2回(夏休みと正月)の恒例の高校時代の友人との会食でした。今回は,あまり他人には教えたくない名店,「栄ゐ太Hanare」です。ミシュランの星をとっている「栄ゐ太」の近くに隠れ家のように存在するこの店は,なかなか予約がとれないのですが,今回はラッキーでした。のどぐろのしゃぶしゃぶや神戸牛も出てくる贅沢コースで,あわせる日本酒はすべて店にチョイスしてもらいました。飲んだことのない日本酒も出てきて満足でした。「栄ゐ太」関係では,そこから独立して六甲道で店を開いている「いわもと」もお薦めです(前に書いたかもしれません)。「栄ゐ太Hanare」にせよ,「いわもと」にせよ,コースで食べれば値段はかなり行きますが,神戸の食文化のレベルの高さを実感できます。
 2次会は,このあたりに行ったときの定番で「Vieni」です。Prosciutto crudo とformaggio をつまみに,私は,グラス(bicchiere)でvino rosso (sangiovese系),vino bianco,grappa と来て,最後はaffogatoです。イタリアとほぼ同じ環境での飲食が可能な店があるということもまた,日本の食文化のレベルの高さを示していると思います。

|

2017年8月24日 (木)

池井戸潤『アキラとあきら』

  池井戸潤『アキラとあきら』をKindleで読みました。この著者の得意の銀行ものです。苦境に陥った主人公の男が最後に逆転して乗り切ると言うワンパターンの話ではありますが,読んだ後に感動が残るのがこの著者の凄いところでしょう。
 彬(あきら)と瑛(あきら)はそれぞれ社長の息子です。彬は大企業の東海郵船グループの創業一族の社長の長男ですが,瑛は町工場の中小企業の社長の長男で,その会社は倒産してしまいます。2人はともに境遇が全く異なる少年期を送りながら,大学は東大に行き,そして同じ産業中央銀行の銀行員になります。入社時の新人研修の際に早くも頭角を現して将来を嘱望された2人。瑛は自分の父親の倒産経験などから,人情に厚い銀行員を目指します。他方の彬は,家業の東海郵船グループ内での,父と叔父の確執,彬と弟との対立など,家族内のドロドロがあり,本人はグループを離れて銀行員になったものの,なかなか家族のしがらみが断ち切れません。そして,グループが瀕死の状態に陥ったときに,銀行を辞めて東海郵船の社長になったのですが,そこから先も苦難の連続でした。この絶体絶命の状況を救ってくれた銀行員が,かつての同僚の瑛でした。瑛の秀逸した稟議書のおかげで,融資がなされ,彬の東海郵船は復活できました。
 稟議書という銀行特有のものがポイントになっていて,あまりこういうことに詳しくない私にはピンとこないところもありましたが,それでも十分に楽しむことができました。ワンパターンという悪口も書きましたし,著者の割と強引な登場人物の設定が鼻につくところもあるのですが,それでも最後にしっかり感動させてくれるのは,著者のストーリーテラーとしての力量なのでしょうね。しばらくは読まなくてもいいですが,たまにはまた読みたくなる著者かもしれません。  ★★★☆☆(星三つ)

|

2017年8月23日 (水)

藤井聡太四段28勝目(通算38勝目)

 藤井聡太四段は,朝日杯将棋オープン戦で,大石直嗣六段と竹内雄悟五段に連勝して,ついに28勝3敗となりました。勝率も再び9割越えです。大石六段との対局は長引きましたが,藤井四段が攻め倒したという感じです。接戦という感じではなかったですね。竹内五段は,振り飛車穴熊に固めて攻め,藤井四段の玉はかなり危ない形になりましたが,プロ的にみると余裕があったようで,最後は穴熊攻略で,竹内五段は必死に抵抗しましたが,藤井四段が勝ち切りました。このクラスの相手にはしっかり勝てますね。明日は,棋王戦の挑戦者決定トーナメントで豊島将之八段との対局です。最強豪の一人と重要な棋戦での対局となります。普通に考えれば豊島八段の勝ちですが,藤井四段の真価が問われるところです。もちろん豊島八段も,今期はA級に上がっていきなりの名人挑戦も現実味が出てきているところなので,ここで負けているようではいけません。
 羽生善治三冠と菅井達也七段の王位戦は,菅井七段が攻め倒して,タイトル奪取に王手をかけました。菅井七段の中飛車に,羽生王位も飛車を振る展開でしたが,一日目の最後のほうで,すでに菅井優勢で,二日目も昼食休憩後の早い段階で羽生投了となりました。菅井七段は持ち時間を4時間以上も残していました。圧勝といってよいでしょう。まあ羽生王位は,こういう負け方をしても,まったくへこたれないのですが,菅井戦は相性が悪いのか,負け方が極端ですね。さて菅井七段は残り3局のうち1つ勝てばタイトル奪取です。これまでの戦いをみるとかなり有望ですが,かつて七冠を奪われた三浦弘行九段以外は,自分よりも若い世代では,おそらく渡辺明二冠と佐藤天彦名人にしかタイトルをとられていないはずです(上の世代の谷川浩司九段や同世代の森内俊之九段,佐藤康光九段,郷田真隆九段,深浦康市九段,丸山忠久九段,藤井猛九段には取られたことはあります)。タイトルをとれば将棋界の歴史に名を残す棋士になれるのですが,菅井七段が快挙を達成するか,注目の第5局は29日・30日です。

|

2017年8月22日 (火)

民進党の最後の代表選挙か?

 民進党の代表選挙が盛り上がりませんね。前の代表である蓮舫が,2重国籍の疑惑を晴らす証明をして,国会で加計学園問題について安倍首相に対してかなり切り込んでいったなと思っていたら,突然の代表交代です。何かあったのかと思えば,都議選の結果の責任をとるということです。蓮舫おろしをするのなら,安倍首相の追及は別の人にやらせればよかったのです。代表の交代で一番喜んでいるのは安倍首相ではないでしょうか。前原氏にしても,枝野氏にしても,「昔の名前で出ています」です。民進党の人材難を露呈してしまいました。
 そもそも安倍首相批判で一番キレがよいのは同じ自民党の石破茂氏です。これでは民進党の存在理由がありません。また民進党は,保守自民党と対抗できるリベラル政党のはずですが,安倍政権の働き方改革などには,リベラルな(あるいは,リベラルなようにみえる)政策がかなり入っていて,民進党が独自に労働者にアピールできるものがあまりありません。せいぜい「高度プロフェッショナル制度」に反対するとか,解雇の金銭解決に反対するとかいった程度でしょう。ただ,これこそ愚かなポピュリズムで,国民にとってほんとうに必要な政策が後回しになってしまいます(なお,今朝の日本経済新聞では,「安倍政権の新自由主義的な経済政策に対して,社会民主主義的な対立軸が明確になる意義はある」と書かれていましたが,いまの安倍政権の経済政策はケインズ主義で,ぜんぜん新自由主義的ではありませんよね。日経は,現在の安倍政権は新自由主義派だと考えているのでしょうか)。
 防衛・外交といった大きなテーマでも,実は自民党は前防衛大臣で自ら大きく転んでいたのに,民進党はその好機をうまく利用できていません。ぐずぐずしているうちに,北朝鮮の脅威が高まってきており,こうなると国民は経験と安定を求め,また理想論より現実論でいく自民党のほうに傾いていくでしょう。
 もっとも,現実だけでいくなら,優秀な官僚だけで十分です。理想を語るだけなら,学者で十分です。政治家こそが,理想を語りながらも,現実と折り合いをつけて,国民を幸福にすることが可能なのです。その技量が民進党にあるでしょうか。左派的な大きな政府論や社会保障の充実は,財源面で説得的な主張をしないかぎり,現実性がなく,国民を幸福にできそうにありません。思うに,同じ時間軸で勝負しているかぎり,自民党に勝てる余地はないと思います。そこで,あえて10年後の日本をどうするかといった未来と理想を語ればどうでしょうか。時間軸をずらすことによって,いまの自民党の政策が10年後の日本にとって良いのか,という議論ができると思います。そのためには,将来に向けた明確なビジョンを描くことが必要なのですが,民進党にそれができるでしょうか?

|

2017年8月21日 (月)

テレワーク・デイ?

 7月24日はテレワーク・デイだったそうです。政府のHPをみると,次のように書かれていました。
 「2020年の東京競技大会でも,国内外から大勢の観光客が集まり,大会会場周辺で大変な交通混雑となることが予想されるため,ロンドン大会の成功にならい,2017年から2020年までの毎年,開会式に相当する7月24日を「テレワーク・デイ」と位置づけて,テレワーク一斉実施の予行演習を呼び掛けて参ります」。
 内容は,交通機関や道路が混雑する始業から10時半までの間の一斉テレワークということです。2時間くらいのテレワークなのでしょうか。それから通勤でしょうか。もしそうならフレックスタイムに毛の生えたようなものですかね。まあ,これを契機としてテレワークを普及ということのようですが,こんなものがテレワークだと思われては困ります。
 テレワークは定義は広いので,上記のテレワークだって立派なテレワークだし,一斉にやるというのは大きなことかもしれません。
 ただ,私が考えているテレワークは,いわば完全テレワークです。会社には基本的には出勤しない。どうしても必要な場合には,年に数回かは出勤があってよいでしょうが,働くための場所的移動をなくすというのがテレワーク推進派の私にとっての最終目標です。そのためには,働き方,働かせ方を根本的に変えなければなりません。そこまで行かなければ「働き方改革」の名に値しないでしょう。
 現在の勤務態勢のまま,ときどきICTを使ってテレワークができるといった程度では,かえって社内にストレスが溜まる可能性があります。やるならもっと徹底的にすべきでしょう。
 もちろん,いろいろ反対があるでしょうし,政府が音頭をとって,多くの企業に参加してもらおうと思うから,なかなか思い切ったことはできないのでしょうが,どうせイベントとしてやるのなら,せめて全日テレワーク,さらに夏期の1週間はテレワークくらいはやってほしいものです。1日のなかで,出勤しなければならないようなものをテレワークと呼んでもらいたくないですね。
 そもそも民間に呼びかけるキャンペーンというのが,いけません。テレワークは別に民間にしかできないものではありません。まず厚生労働省や総務省から,どんどんテレワークをすればいいのです。とくに総務省の職員は,所管のICTをフル活用して,完全テレワークをすれば,国民の働き方のモデルになるでしょう。やれない理由は山ほどありますが,どうしたらやれるかを考えて自分たちで実践して,そこでノウハウをしっかりつかんで,それから大きなイベントをしてほしいものです。

 と書いたあとに,総務省のHPをみると,「本年7月18日(火)から24日(月)までを『総務省テレワークウィーク』に設定し、職員の積極的な利用を促します。」となっていました。昨年もやっていたようです。1週間だけですね。やはり完全テレワークへの道は険しいということでしょうかね。

|

2017年8月20日 (日)

無駄な業務の点検はまず役所から

 今日の日本経済新聞で,「違法残業『かとく』がにらみ 厚労省の過重労働特別対策班-電通事件で注目,大手本社に照準-」という記事が出ていました。行政監督機関としての厚労省が乗り出すのは,ある程度まではよいことですが,このマンパワーの投入が,どれだけ長時間労働是正につながるかというと何ともいえないでしょう。違法残業という記事の言葉が,何を意味しているのか,よくわかりませんが,違法残業にもいろいろなタイプのものがあります。三六協定の締結なし,届出なし,三六協定の定める範囲を超える時間外労働,三六協定そのものが限度時間を超えているなど多様で,悪質性もまた多様です。また労働時間は何かというのは,実際には難しいので,そのチェックもたいへんです。監督官が過労にならないことを祈ります。行政がにらみをきかすことによる抑止効果はあるかもしれませんが,経営者たちが本気で意識改革し,過度の顧客重視の見直しなどをとおして,健康経営に向けた業務体制の見直しを促進することが一番効果的でしょう。
 その意味で,記事の最後に,「企業は不要な業務がないか点検し,労働生産性の向上で労働時間の短縮を図るなどの対策を考えなければならない」とあるのは,正鵠を射たものです。
 先日,ある公的機関に報告書を書いて出したときに,番号の振り方について(3)とするところを,(2)と間違っていたとして,その1か所だけのために書き直しを求められることがありました。馬鹿馬鹿しいですね。こういうことをチェックする作業が無駄ですし,それを私に指示してくる業務も無駄で,これに巻き込まれた私の書き直し作業も無駄です(たいした時間はかからなかったのですが)。私の無駄はともかく,こういう業務にかける時間を,もっと他の有益な業務に使ってくれたら国民のためになるのにな,と思いました。内容に問題があるという指摘なら意味のあることですが,形式面に過度にこだわる潔癖主義は困ったものです。どの役所にも,こうした傾向がないでしょうか。手続や要式はできるだけ簡素にして,必要な審査やチェックはより実質的なものに限定するということにしてほしいものです。これは役所の人の時短につながり,ひいては国民の時短にもつながるのです。
 記事に戻ると,先ほどの文章の前に,「日本の正社員は欧米に比べ職務内容が不明確で,それが長時間労働の温床ともいわれる」と書かれていました。これはよく言われていることなのですが,ただ業務が明確であっても,早く帰ると言えないような場合には,ズルズルと残業になります。したがって,上記の説明は因果関係が逆で,業務限定型で働いている人はプロ的人材で,ワークライフバランスにも敏感なので,仕事が終わればとっとと帰るため長時間労働にならないということではないでしょうか。たんに業務を明確化しただけで,労働時間が短くなるものではないでしょう。

|

Mi piace il bonito.

  鰹のことを,英語でbonito といいます。ラテン的な響きで,いかにも形容詞っぽいのですが,イタリア語では聞いたことがありませんでした。調べると,スペイン語やポルトガル語で,イタリア語でいえば,bello(美しい),carino (可愛い)といった意味です。これが名詞になったので,可愛らしい魚ということなのでしょうかね。イタリア語では形容詞の「bonito」はありませんが,名詞の「bonito」は鰹と呼ぶようです。イタリアで鰹料理に出会った記憶はありませんが,マグロの親戚みたいな位置づけで,実はよく食べられているそうです。
 日本でも,もちろん鰹はよく食べられていますよね。私も大好きです。とくに鰹のダシは大好物です。ラーメンもとんこつはちょっと苦手で,鰹だしベースがいいですね。
 ところで神戸元町の鯉川筋に,「座屋(いざりや)」という土佐料理の店があります。ここでは絶品の鰹を出してくれます。なかなか予約が入りませんが,本場土佐から直送の鰹に,土佐の久礼(くれ)がよく合います。店の中に滑車があったり,ガラス張りの外観や禁煙の清潔感など,必ずや満足できるでしょう。スペインのMadridにも店があるそうです。銀座にもあるそうなので,鰹好きの方にはおすすめです。「座屋サラダ」も非常にレベルが高いですよ。

|

2017年8月18日 (金)

藤井聡太四段26勝目(通算36勝目)

 藤井ブームに乗っかって,加藤一二三九段もタレントになってテレビに出まくっています。米長邦雄が生きていたら,どう言っていたでしょうね。将棋界は,三浦問題ですっかりイメージが悪くなったこともあり,藤井四段の爽やかさと加藤九段のキワモノ的な商品価値で,人気向上につながればよいということかもしれませんが,加藤九段のほうはもうあまりみたくありません。
 それはさておき,藤井聡太四段が,王位戦の予選に登場しました。相手は,小林健二(コバケン)九段です。かつて四間飛車で一世を風靡したベテランです。もう還暦で,さすがに最近は勝てなくなっていますが,こういう実力のあるベテランが,ときどき若手を転がすこともあるのです。小林九段は和服で登場したそうで,この対局に賭けるものを感じさせました。小林九段が先手でしたが,振り飛車ではありませんでした。早々に藤井四段の桂馬が6五に飛んできて,それを避けるように小林九段が玉を右に移動させるといった変わった進行になりましたが,藤井四段が快調に攻めて完勝でした。3敗はしたものの,このあたりの相手であれば負けないですね。これで26勝3敗です。あと1勝で9割に戻りますね。ところで,藤井四段は,NHK杯の次の相手は森内俊之九段(第18代永世名人の有資格者)で,なんと生放送となるそうです。NHKも異例の対応です。藤井人気に乗っかっていますね。
 その他の棋戦では,羽生善治三冠が重要な対局で勝っています。今期は勝ち星は伸びていませんが,松尾歩八段との竜王戦の挑戦者決定戦の初戦は,大熱戦でしたが,羽生先勝です。久しぶりの渡辺明竜王・羽生戦をみたいところですが,ここは松尾八段にも頑張ってもらいたいですね。さらに昨日は,A級順位戦で,羽生三冠は久保利明王将と対戦し,こちらは後手の羽生三冠の快勝でした。久保王将はどうも羽生三冠との相性が悪いですね。さばきのアーティストの久保王将が,押さえ込まれてしまいました。これで,羽生,久保ともに2勝1敗です。順位戦はまだまだ先が長いです。

 

|

2017年8月17日 (木)

転勤について思う

 今日の日本経済新聞の水野裕司上級論説委員の「望まぬ転勤減らす工夫を」は,労働法屋からみても,重要な論点が含まれています。最近,ようやく転勤への問題意識が高まってきているようです。記事の中にも出てくる,中央大学大学院戦略経営研究科の佐藤博樹さんやリクルートワークス研究所の大久保幸夫さんらが関心をもっておられ,転勤の効用を疑うエビデンスが出てきているようです。
 私も何度かこのブログでも書いたことがありますが,『雇用社会の25の疑問-労働法再入門』(弘文堂)は,2007年の初版のときから,「転勤を当然とする雇用社会の掟に疑問をもち,批判的な視線を投げかけていくという意識改革から,まずは初めていくしかない」と書いて,日本の転勤文化を問題視してきました(現在は,2010年刊の第2版の第3話の35頁)。私は大学院に入ってかなり早い段階から,日本の転勤法理に対して疑問をもっていたのですが,これはやはり海外留学の経験が大きかったです。上記の本でも書いていますが,イタリア人の感覚からすると,転勤は異常なことなのです。イタリアでは,法律(労働者憲章法)上も,転勤について制限があります(この点は,拙著『勤勉は美徳か』(光文社新書)80頁も参照)。
 裁判例のなかに,夫婦が同じ企業で働いているのに,夫を遠くに転勤させる命令を有効としたものがあります(帝国臓器製薬事件)。地裁判決か高裁判決か忘れましたが,この事件を,東大の労働判例研究会でどなたかが報告していたとき,どういうわけか有斐閣の方が傍聴に来ていたことがありました。私は原告敗訴の判決に反対の意見を述べた記憶があり,そのとき有斐閣の方が賛成をしてくださったことを覚えています。でも研究者の間では,反対論はなかったと思います。
 転勤は仕方ないよね,というのは,裁判官も含め法律家の常識になってしまっていたのかもしれません。出版社のような転勤がないところでは,私の考える健全な(?)感覚が残っていたのかもしれません(この有斐閣から出した本で言うと,拙著『労働の正義を考えよう-労働法判例からみえるもの』(有斐閣)の第14話でも,このテーマをしつこく論じています)。 
  ところで,水野氏の記事では,平成元年の東亜ペイント事件・最高裁判決について,「単身赴任になる会社の転勤命令について,家庭生活への影響は『通常甘受すべき程度のもの』とみなし,権利乱(ママ)用には当たらないとした」とあります。大きな間違いではないのですが,最高裁は,「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益」という表現を使い,「著しく超える」という,いかにも簡単には不利益を認めないぞ,という姿勢を示しているところがポイントです。単身赴任はこれにあたらないと言い切っているわけではありません。単身赴任に大きな生活上の不利益が付着する場合には,やはり権利濫用となり得るのですが,それはめったなことでは認めないだろうというのが,この判決を理解するうえで重要な点です。
 しかし,より重要なのは,この判決は,業務上の必要性がない転勤は権利濫用だといいながら,この業務上の必要性を,非常に広く認めている点です。ここで書くのは大変なので,ぜひ拙著『最新重要判例200労働法(第4版)』(弘文堂)の第35事件の判旨Ⅲをみてほしいのですが,要するに,転勤で業務運営の円滑化になるといった必要性でもいいのです。これによって,たいした必要性もなく行われる転勤にも,最高裁のお墨付きが与えられてしまったのです。東亜ペイント事件・最高裁判決は,公式判例集である最高裁判所民事判例集(民集)に掲載されておらず,最高裁が重視していなかった判決ですが,その後の日本の雇用社会には甚大な影響を及ぼしたという,珍しい判決でした。
  今後もし意味のない転勤をやめていくという動きが広がると,ひょっとすると転勤をめぐる判例にも変化が起こるかもしれません。良い事案が出てきて,良い弁護士がうまく戦ってくれると,判例が変わるかもしれませんね。でもその前に,裁判官の転勤慣行が変わるなどして,裁判官の意識や社会通念が変わらなければなりません。転勤は,それを規律する法律上の規定はなく(例外は育児介護休業法26条),裁判官任せの権利濫用法理の解釈にゆだねられています。だから転勤に関する法的ルールを変えるためには,裁判官の意識改革が大切なのです。

|

2017年8月16日 (水)

WEB会議時代の名刺交換

 大学は14日~16日まで夏季の特別休暇というものがあり,11日から6連休となっています。もちろん年次有給休暇をくっつければ,もっと休むこともできます。私はもう少し後で休暇をとるので,まだ年次有給休暇は使っていません。長期連続休暇などのときに困るのは,郵便物と電話です。郵便物は大学宛に来るものがほとんどですし,電話も留守番に残っていることがときどきあります。私はメールアドレスを公開していますし,何かあれば紙媒体や電話ではなくメールでお願いしますと言っていますが,なかなか言うことを聞いてくれない人がいます。
 郵便など紙でもらったものは,大事そうなものはスキャンし,それ以外はほとんどすぐに捨てるようにしています。電話で用件を伝えてくる人も,最近ではめっきり減りました。
 携帯電話もほとんど使うことがありません。通信費用は激減しました。iPhoneは,もはや電話として使うことはほとんどなく(家族間のLine電話は使いますが),メール,アプリ(日経新聞,日本将棋連盟,Yahooニュース,Yahoo天気,Dysonのセンサーによる部屋の空気汚染度チェックなどが使用頻度大),Google検索,Kindleでの読書,Apple payなどが主たる活用用途です。原稿を書くのはパソコンを使いますが,メモや草稿はiPhoneのメモに音声入力して記録しておきます。かなりアナログ人間だった私も,この半年くらいで生活が激変しました。
 ところで名刺についても,最近ある方に教えてもらったCamCardのアプリを入れています。名刺交換は面倒ですが,断るわけにはいかないので,いただいたものはすぐにスマホの画像に取り込んでデータ化し,紙のものは捨てます(変わったデザインの名刺は,スキャンできちんと読み取れないので困ります。名刺はシンプルなものにかぎります)。こちらが名刺を切らしていたときは,「あとで名刺をメールでお送りします」と断り,スマホでスキャンしたあと,いただいた名刺にあったメール宛てに,私の電子名刺(自分で画像に取り込んでいる)を送ります(これなら切らすことがありません)。これがどれくらい失礼なことかわかりませんが,個人的には,手で名刺を渡すのと,メールで名刺を送るのと同じなので,とくに何も文書をつけずにそのまま送っています。
 ところでWEB会議となると,名刺交換ができないので,どうしてもそれをしたい人は電子名刺のやりとりとなるでしょう。しかし,これはなんとなく馬鹿馬鹿しい気もするのです。それは電子名刺だからではなく,名刺交換そのものが,実はかなり馬鹿馬鹿しいことなのではないでしょうかね。挨拶や自己紹介は必要でしょうが,それが名刺交換である必要はないのではないでしょうか。

|

2017年8月15日 (火)

終戦記念日に思う

 終戦記念日がいつかを知らない若者が増えているそうです。たしかに72年前というのは,遠い昔です。私が大学生のときの72年前というと大正時代であり,たいへん昔のことのように思えていたはずです。いまの大学生たちが終戦記念日を知らないのも仕方ないことかもしれません。
 しかし,そのことと戦争の悲惨さを知らないのとは別のことです。戦争に行った生き残りの世代の人々も徐々に少なくなっています。戦争はどこか遠い国のことのように思えますが,日本も悲惨な戦争の当事国として,72年前までは戦っていたのです。
 私たちの平和な生活は,戦争が起これば吹っ飛びます。いくら未来の労働政策を考えようなんて言っていても,すべて無意味なことになるかもしれません。北朝鮮からのミサイルがもし日本の本土に落下すれば何が起こるでしょうか。大地震どころの騒ぎではないでしょう。天変地異ならまだ諦められても,自国にいながら他国の攻撃で殺されるなんて死んでも死にきれないでしょう。その意味で,原爆投下で亡くなった人の無念さはどれほどだったかと思います。
 北朝鮮の態度は,昨日今日に始まったことではありません。あのときこうしていればよかったということは,繰り返してはならないのです。北朝鮮への挑発が危険なことは,以前にこのブログでも書いたことがありますが,私たち国民は,もっと政府のやることに関心をもっていなければなりません。アメリカとの関係も慎重に考える必要があります。アメリカを信用してはならないのは歴史の教訓から明らかです(ロシアも同様ですが)。
 前防衛大臣にお気に入りの無能な大臣をつけ,そして大混乱を引き起こすといったむちゃくちゃなことをした首相は猛省をすべきです。本気で日本の防衛を考えているのでしょうか。前外務大臣も,たいした用もないのに神戸大学に来るなどのんきなことをしていました。人柄温厚そうだとはいえ,そんなことは関係ありません。核兵器禁止条約に日本が交渉にすら参加しなかった責任は,この大臣にあります。
 私たちは,この内閣に頼るしかありません。首相をはじめ現在の防衛大臣,外務大臣にはしっかり頑張ってもらうしかないのです。

|

世界陸上

 オリンピックのときにも書きましたが,男子100m×4のメダルはすごいことです。リオ五輪では銀メダル,今回も銅メダル。短距離では,この4Kのリレーしかメダルの可能性はありませんが,それにしても見事です。もちろん,リオではアメリカの失格での銀,今回もボルトの負傷でジャマイカが脱落したから3位に入れたのですが,それは問題ではありません。ケガなく,またバトンをきちんと渡して失格せずに走るというのも実力です。堂々たるメダルです。
 タイムは38秒04で五輪のときよりも悪かったですが,あのときとメンバーが2人代わっているのもすごいところです。日本の男子100mの層が厚くなったということです。彗星のように現れた大学生の多田修平(準決勝敗退),五輪のときのメンバーですが,今回,個人戦では走れなかった桐生祥秀,個人戦は200mの飯塚翔太(準決勝敗退),そして五輪メンバーでもなく,個人戦でも走っていない藤光謙司というメンバー構成は,どう考えても勝てそうにないのです。実質エースになっていたサニブラウンを休ませ,不調のケンブリッジ飛鳥を外したコーチの英断を褒めましょう。
 今後,リオ五輪の37秒60を上回るのは,多田⇒サニブラウン⇒桐生⇒ケンブリッジのときではないかと思います。ただ,次の五輪では,この4人のうち何人かは,個人戦にもでるでしょうから,個人で3本ないし4本走り,リレーで2本ないし3本はきついかもしれません。サニブラウンも100mと200mの両方に出て,より多い本数走るでしょうから,あまり期待しては可愛そうです。リレーで勝つためには,選手の底上げで補欠の選手の頑張りが必要ですね。
 それと地味な種目ですが競歩の50kmも快挙です。荒井選手の五輪に続くメダルはすごいことです。陸上競技男子で,2位と3位を日本人がとるなんてところは,見たことがないですね。しかも3人目も5位です。20kmはダメでしたが,距離が伸びると結構戦えるというのは,かつてのマラソンと似ているのでしょうか。男子マラソンは,世界との差が開いて,メダルなどは夢のまた夢になってしまいましたが。

|

2017年8月14日 (月)

無期雇用派遣の増加

 12日の日本経済新聞の朝刊で,「人材派遣会社が相次ぎ派遣社員を無期雇用契約に切り替える」という記事が出ていました。派遣労働者の確保のためにも,積極的に無期雇用にして派遣労働者の待遇を改善しようということでしょう。労働契約法18条の無期転換のXデー(2018年4月以降)が迫るなかでの対応という面もあるのでしょう(これは派遣労働者に限ったことではなく,すべての有期雇用社員にあてはまります)。
 ところで,記事のなかで,「無期雇用契約への切り替え」をどういう意味で使っているのか紛らわしい部分がありました。「人材派遣分野では技術者派遣などを除き,大半の派遣社員が有期雇用だ。派遣社員を無期で直接雇用すると,派遣会社は派遣先企業が切り替わる際の待機時などに社員の給料を負担する必要が生じる可能性がある」という部分です。これを素直に読むと,派遣社員を無期で「直接雇用」することを,無期雇用契約への切り替えと呼んでいるようであり,そうなると話は全然違ってきます。人材派遣会社が派遣社員を無期で直接雇用するという言い方は,普通に考えれば,派遣社員を,人材派遣会社の正社員(自らは派遣されずに派遣社員を派遣する業務に従事する)にするということになるからです。
 これはこれで,特定有期雇用派遣労働者に対して定められている雇用安定化措置の一つ(労働者派遣法30条1項3号の「派遣労働者以外の労働者として期間を定めないで雇用することができるように雇用の機会を確保するとともに,その機会を特定有期雇用派遣労働者等に提供すること」)を想起させるもので,そういう転換があってもおかしくはないのですが,でも記事が伝えたかったことは,全体の文脈からすると,有期雇用派遣労働者を無期雇用派遣労働者に転換するということではないのでしょうか。もしそうなら,「直接雇用」という言葉はミスリーディングとなります。派遣労働者を派遣元で無期雇用にしたからといって,それはあくまで間接雇用です。
 ところで,言うまでもないことですが,無期雇用派遣と有期雇用派遣との区別については,派遣元での労働契約の期間の有無という違いだけでなく,2015年改正で新たに導入された派遣期間の規制(事業所単位の制限と個人単位の制限)について,有期雇用派遣には適用されるが,無期雇用派遣には適用されないという大きな違いがあります(労働者派遣法40条の2)。そこから浮かんでくるのは,派遣先にとっては,無期雇用派遣のほうが使い勝手がよいので,人材派遣会社に派遣社員を無期雇用にして派遣するよう要請があり,そのために無期雇用派遣が増えているという仮説です。この視点は記事にはありませんでした。ただ,人材派遣ビジネスが好調で,派遣先との間で人材派遣会社の交渉力がそれだけ上がっているということであれば,やはり人材確保が,無期雇用派遣の増加の背景になっていると考えるのが合理的なのかもしれませんね。

|

2017年8月13日 (日)

何をシェアしようか

 私は5年程前から美容院で髪はカットしてもらっています。たぶん美容院でカットだけというのはいけないという規制があったころからです。実効性がなかった規制ですが,さすがに今はその規制はないはずですよね。美容師さんに確認するのも馬鹿馬鹿しいので,確認していませんが。
 もちろん私の髪など,どうせ少ないですし,別にきれいにセットしているわけではないので,どうでもいいようなものですが,切ってから2週間か3週間くらい経ったときの伸び方というか,寝癖のつき方というか,そういうところで微妙に気になることがあって,いまの美容師さんのカットはそこがちょうどいいのです。私の髪の質をよくわかって,伸びてきたときにうまくおさまるように切ってくれているのです。プロの技です。いままで理容師にせよ,美容師にせよ,いろんな人にカットしてもらってきましたが,いまの美容師さんが最高です。こうなると,その人が店を移籍しても,客はついていきますよね。ということで,いまはカットは,お気に入りの美容師さんのところで,そして頭皮エステは,その美容師さんが前にいた美容院のサービスなので,そこに行っています(頭皮エステは,残された髪を維持するのに,とても大切です。カットより,こっちのほうがほんとうは重要かも)。美容院の難点は,ひげを剃ってもらえないことと,女性が多いことです。
 話は変わりますが,今朝の日経新聞の社説「人の力をいかす日本へ(1)働き手は工夫でもっと増やせる」についてです。いろんなことがゴチャゴチャに書かれていたような気もしますが,やっぱり高齢者向けサービスが重要でしょう。それに出前サービスの時代でしょう。高齢の父をみていると,ヘルパーさんと看護師はもちろん,医師,マッサージも「出前」です(病院での検査は別ですが)。食事も朝食は「出前」です(朝は体調が悪いことが多いので)。散髪は幸いマンション内に理容室があるのでそこで用が済みますが,一戸建てなどに住んでいる場合には,理容や美容も「出前」のニーズは高いと思います。
 記事にあるUberEats(おそらく)は,登録した配達員が料理を運ぶということですが,シェアリングということでいえば,料理人そのものをシェアできないかと考えます。
  働き方改革で,テレワークとして自宅から移動しないで働ける時代が来つつあります。商品は,宅配クライシスはあったものの,基本的にはネットで注文して自宅で受け取ることができます。さらにサービスも,いろんなものが,自宅から移動しないで提供されるようになっていくでしょう。
 労働者が仕事のために移動(通勤)し,サービス提供者は店舗を構えるというのが逆転して,労働者は自宅にいて,サービス提供者が移動するというイメージです。
 料理人に自宅に来てもらうなんて最大の贅沢のようですが,将来はネットに料理人の登録があり,手軽に今日はイタリアンの料理人を呼んで,このワインにあわせて,自宅のこの食材で,夕食を作ってもらおうというようなサービスを安価で注文できるときがくるかもしれません(料理人を移送するのはUberかもしれません)。食材にこだわってゴージャスなレストランで食べるという場も必要でしょうが,デリバリーとなると,料理人のほうも店舗をもつ必要はなく,そうなると起業のリスクが減り,本人の技能ひとつで稼げる可能性があることににあります。そうなると参入者は増えて,値段も下がっていくのです。主婦があいている時間を使って,近所の超高齢者のところで料理を作るなんてことも,いまは無償でやっていることが多いでしょうが,ビジネスにすることもできるはずです。そうしたほうが,もっと広がります。それも技能のシェアでしょう。まさにUber○というビジネスモデルです。その潜在的なニーズは高いでしょう。問題は,こういうことが自由にできるかです。規制はいろいろあるでしょうから。美容院での男性カットができないような意味のない規制がどこまであるかのチェックが必要ですね。
  

|

2017年8月12日 (土)

ビジネスガイドの「キーワードからみた労働法」の訂正

 ビジネスガイドの「キーワードからみた労働法」の最新号は,「試用目的の有期労働契約」というテーマで,福原学園事件の最高裁判決が登場したことを受けて,神戸弘陵学園事件・最高裁判決との比較という視点でとりあげました。
 ところで,その原稿から最後からの2つ目の段落で,文章に誤りがありました。校了後に気づいたのですが,間に合いませんでした。ビジネスガイドのHPに掲載されているので(http://www.horei.co.jp/bg/owabi.html),ご確認ください。読者のみなさんには,たいへんご迷惑をかけました。深くお詫び申し上げます。
 実は,この原稿は,ゲラが出たあと,字数を大幅にカットするために,最後のほうの部分に大きく手を入れていました。手を入れる前の原稿では,最後から二つ目の段落は,次のようになっていました。
 「ただ,無期労働契約への転換への合理的期待がある場合には,労働契約の期間が試用期間になるという解釈はあり得ます。もし,この解釈が可能であるとすると,神戸弘陵学園事件・最高裁判決のいう『期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合』以外は試用期間になるという解釈準則に,新たな解釈準則が追加されることになります。」
 この内容が適切かどうかは議論があるところでしょうが,「特段の事情」の意味は間違っていませんでした。ところが,この原稿を手直しする途中で,「特段の事情」をどういうわけか逆に解釈してしまい,その結果,間違った表現になってしまいました。
 ちょうどこの原稿の校了後数日経った7月29日に,神戸労働法研究会が行われて,JILPTの山本陽大君が,この福原学園事件・最高裁判決の報告をしてくれました。その議論をしているときに,ふと原稿を直し間違えていたのではないか,ということに気づきました。しかし,もう間に合いませんでした。
 今後は,このようなことがないよう注意をいたします。

 またこの事件の位置づけ自体,研究会の議論をふまえて,もう少し追加したいところも出てきました。これは,またそのうちに書きます。

|

2017年8月11日 (金)

藤井聡太四段 順位戦3連勝

 順位戦C級2組で,藤井聡太四段が,高見泰地五段に勝ち,3連勝となりました。今回はすきっと勝ちましたね。寄せも早くて見事でした。
 新人の藤井四段の順位は最下位に近い45位で,このクラスは3人しか昇級できません。1つでも負ければ今期の昇級は難しくなります。全勝(10勝)しても昇級できない可能性さえあります。ただ,3戦終わったところで,全勝の藤井四段は7位に浮上しました。藤井四段より上位で3戦全勝が6人しかいないということです。順位戦の対戦相手はすべてあらかじめ決まっていますが,そのなかには現在上位の6人は含まれていないので,直接対決で引きずりおろすことはできません。ただ,この前に負けた三枚堂達也四段(2勝1敗)との対局が最終戦に入っています。そこまで全勝で行けるでしょうか。今期の通算成績は25勝3敗となりました(勝率は0.893)。
   羽生善治三冠に菅井達也七段が挑戦している王位戦は,羽生三冠が勝って1勝2敗となりました。羽生三冠は,棋王戦挑戦者決定トーナメントで,まさかの及川拓馬六段に完敗という番狂わせがあったのですが,こういうのを引きずらないのが羽生三冠の強さですね。王位戦は,これから菅井七段がどこまで羽生王位を追い込めることができるかが楽しみです。
 A級順位戦は一斉対局ではないので,ぽつぽつと3回戦に入っています。稲葉陽八段は深浦康市九段に勝って2勝1敗。2期連続の挑戦に向かって前進です。深浦九段は1勝1敗です。広瀬章人八段は佐藤康光九段に敗れて,ともに1勝2敗です。A級昇級以降,安定した成績を残している広瀬八段ですが,序盤での2敗は痛いですね。次の久保利明王将(2勝)と羽生三冠(1勝1敗)との対局が前半の山場でしょうか。

|

2017年8月10日 (木)

第136回神戸労働法研究会その1

 7月末にあった研究会では,特別ゲストとして,福島大学の長谷川珠子さんに,岡山短期大学事件・岡山地判平成29年3月28日(平成28年(ワ)274号)の判例評釈をしてもらいました。長谷川さんは,本研究会の初報告です。どうもありがとうございます。
 いまや障害者雇用の第一人者に登りつめた感じの長谷川さんですが,今回は,視覚障害を有する大学教員が,授業をはずされて学科事務のみの担当となり,研究室もキャリア支援室への移動となるなどの職務変更の適法性等が争われた事件を担当してくれました。結論賛成,判旨の理由付けに疑問ということでした。
 本件の職務変更は,受講生からクレームがあるなど授業担当が不適格であることが理由でしたが,裁判所の判断では,能力・資質に問題があるとはいえず,職務変更の必要性はなかったとしています。そのため,本件は,厳密にいうと,障害者への配慮が問題となった事件ではありませんでした。とはいえ,判決には,使用者のほうがもう少し配慮をしていれば,授業をもう少し円滑にできたはずであるという実質的な考慮もあるように思えます。こうみると,合理的配慮の要請が,配転の必要性の判断にも影響しているのかもしれません。
 障害者雇用促進法が改正されて,今後は障害者雇用をめぐる裁判例が増えていくと思われますが,同法の規定の射程がどこまで及ぶかは,はっきりしないところがあります。とくに同法の「合理的配慮」(36条の3。文言は違うが)は,これまでの判例でも要請されていた使用者のさまざまな配慮義務とどこが違うのか,この規定の追加により,使用者のすべき配慮の範囲はどこまで広がるのか,といった点は,今後の実務においてきわめて重要な検討課題となるでしょう。研究会では,このあたりの点についても突っ込んだ議論がなされました。
 本件とは逆に,障害のある労働者が配転を望んでいるような場合に,合理的配慮として,別の業務への配転をしなければならないかという論点もあります。妊産婦の軽易業務への配転(労基法65条3項)のような権利があるのか,です。障害者に対する合理的配慮については,過重な負担があれば応じなくてよいという免責規定が明文で存在しているのですが,もし過重な負担なしに配転できるものであれば,労働者の要望を聞いて配転をしなければならないという考え方もありえそうです。これは,片山組事件・最高裁判決にも通じるものですが,障害者というファクターが入ると,この義務がどうパワーアップするのかも,今後の重要な論点となるでしょう(また,使用者の安全配慮[労働契約法5条]という別の配慮も関連してきそうです)。「障害」となると,配慮義務が量的にも質的にも(法的効果面),どんどん広がっていくとする解釈は,企業に障害者が忌避されやすくなり,かえって副作用が生じると思います。ここは「過重な負担」の解釈も含め,適切な解釈論を展開していく必要があります。
 いずれにせよ,本件では,労働者は,研究室も変更させられ,授業もできなくなり,嫌がらせのような形の配転になっているように思えます。これは雇用を継続するためのをやむを得ない措置であったのか,それとも退職勧奨的なものだったのか。いずれにせよ,裁判所は,とくに本人のキャリアを活かせないような部署につけてしまったことを問題として,慰謝料100万円を認定しています。その意味で,本件はキャリア権的な論点とも関係している事件です(さらに,本件では,授業をする法的地位という「教員の就労請求権」の論点もからんでいます)。

|

2017年8月 8日 (火)

ちょい乗り経験

 先日,東京に行ったとき,丸の内線の本郷三丁目から,東大正門前までタクシーに乗りました。初乗り410円で済みました。距離はたいしたことはなく,歩いて10分で行けますが,昼間だったので汗だくになるのがわかっていました。荷物もあったので,バスに乗ろうかと思ったのですが,一度410円タクシーに乗ってみようと思いました。軽く乗れる感がよかったです。Apple pay を使えたので,支払いも楽でした。これだと超近距離でも,みんな軽い気持ちで乗るのではないでしょうか。
 7月31日の日本経済新聞の電子版には,次のような記事が出ていました。
 「日本交通(東京・千代田)など東京都のタクシー大手4社は都内の一部について初乗り運賃を1月30日に改定した効果で,半年間の営業収入の合計が前年同期に比べ6.8%増えた。日本経済新聞社が31日まとめた利用実績で明らかになった。初乗り運賃が下がったことを実感しやすい2キロメートルまでの利用回数は2割増の740万回。短距離の「ちょい乗り」需要がタクシー利用回数を増やし,全体の増収につながった。」
 これですよね。「ちょい乗り」需要は,ものすごくあるはずです。高齢者になってからの医者通いも「ちょい乗り」の距離のところも少なくないでしょう。神戸圏ではまだ「ちょい乗り」タクシーはないと思いますので,ぜひ導入してほしいですね。
 それと,まだクレジットカードが使えないタクシーが多いのも問題です。現金なしで乗れるようにしてほしいです。クレジットカード対応可は必須ですし,できればApple pay 対応(IDかSuica)でお願いできればと思います。どうせ何年か経てば,現金のやりとりはなくなるので,早めに対応したほうがいいですよ。

|

凋落の兆し?

 驕る平家は久しからず。誰もが知っている格言ですが,なかなか肝に銘じて行動するのは難しいことです。いまだから言うのではないのですが,今回の内閣改造で,おやっと思ったのは,江崎鉄磨沖縄・北方担当大臣でした。73歳で当選6回,初入閣で二階派。派閥均衡,在庫一掃で,比較的楽な大臣ポストに当てた,ということではないかと思ったのです。案の定,自ら転んでしまいましたね。謙虚に官僚答弁を読み上げるということですが,「仕事人内閣」の看板に泥を塗りました。人事にはいろいろな配慮があるのでしょうが,「仕事人」という看板は,そういうものを乗り越えて適材適所にするということのはずです。前の法務大臣もそうですが,自分でしっかり語れないような大臣(あるいは語るとろくなことを言わないような大臣)は即刻去るべきです。国民をバカにしてはなりません。沖縄の人も怒っているのではないでしょうかね。首相は,言葉使いだけは丁寧になっていますが,ほんとうに危機意識をもっているのでしょうかね。国民はバカだから,ちょっと低姿勢になっていれば,すぐに人気は回復するなんて思っていませんかね。
 もう一つ気になるのが,小池百合子都知事系の若狭勝議員が立ち上げた「日本ファーストの会」です。すでにネットでも指摘されているようですが,これは最悪のネーミングです。Trumpの「アメリカファースト」が,世界中から顰蹙を買っているのに,今度はそれの日本版かと思われてしまいます。こういうネーミングを平気でやるところに,政治センスの低さがうかがえます。小池さんの「都民ファースト」に乗っかるということだけを考えているから,こういうことになるのでしょう。
 こういうちょっとしたところに,本質がうかがえます。国民をみていない政治家は,必ず痛い目にあうというのが,民主主義のはずです。選挙に勝った者は権力者です。首相は当然ですが,小池知事も若狭議員もいまや大変な権力者なのです。権力は腐敗します。私たち国民は,民主主義社会の権力の源泉が自分たちにあるという自覚をもって,腐敗や慢心を見逃さないようにしましょう。

|

2017年8月 7日 (月)

黒革の手帳

 武井咲の主演で,再び「黒革の手帳」がテレビでやるということだったので,まだ読んだことがなかった原作をKindleで読みました。上下巻でしたが,あっというまに読み終えました。
 テレビでは,米倉涼子主演で有名でしたが,そのときは見たことはありませんでした。今回は,武井咲の立派なママぶりで,思わず見惚れてしまいました。
 清張の原作では,主人公の原口元子は冴えない銀行員という設定でしたが,テレビでは正社員ではなく派遣社員になってしまいました。派遣社員の恨みというほうが動機としてより説得力があるということでしょうかね。銀行の借名口座の存在を手帳に書き取り,それで銀行から大金を横領し,その後銀行を脅して返済請求を放棄させ,その金をもとでに銀座でクラブのママになった元子。しかし,元子の横領のために,支店長らは左遷されます。さらにクラブの客のなかで借名口座をもっていた産婦人科の院長(テレビでは美容外科の院長)がいたことを突きとめて,その客からもお金を出させるなどし,さらに調子に乗って金持ちの弱点を突いてお金を脅し取ろうとした元子でしたが,復讐の魔の手が迫っていました。結局,見事に罠にはめられてしまった元子の最期は悲惨でした。
 不動産登記の移転についての錯誤無効が一つのポイントでしたが,議員の口利き,医大への裏口入学,弁護士もおそれる大物総会屋など,元子の敵は彼女がかなうような相手ではありませんでした。それでも,一人の女性が,銀行から堂々と横領をして,銀座にクラブをもつというスケールの大きな設定に,裏社会の問題を絡ませる手法は,清張ならではでしょうかね。
 今回のテレビドラマでは,設定が少し変わっているので,これからどういう結末になるのか気になります。
 手帳に手書きというのは,いかにも古くて,リメイク版なら,もう少し違った設定にもできたのでしょうが,銀座のママにはやっぱり黒革の手帳がお似合いなのでしょうね。

|

2017年8月 6日 (日)

神戸の花火大会

 今年も神戸の花火大会に行ってきました。ホテルのレストランを予約して,見やすい位置から快適に見物できました(臨場感は犠牲になりますが)。今年は神戸港開港150年ということで,花火の数も多かったそうで,十分に堪能できました。
 大勢の人が来ていました。若者の浴衣姿も目に付きました。日本の文化がしっかり継承されているようで,とても頼もしく思いました。あれだけの人数がいれば,混乱も起こりそうなものですが,このあたりが日本人の行儀良さですね。
  この日は大阪でも花火大会があったようです。夏は,あちらこちらで花火大会が開催されています。マラソン大会も同様ですが,こういうイベントは大きな経済効果があるのかもしれません。と思いながら,ルミナリエのときにも書きましたが,どれだけ地元にお金が落ちているのか,疑問でもあります。儲かっているのは阪急やJRだけ,ってことはないでしょうか。
 阪急三宮駅では,必要も感じられないのに,スピーカーをつかった大音量で,こちらに聞き取れないような指示をむやみにしている駅員が何人かいて,うっとうしかったです。明石の花火大会での事故が教訓となっているのかもしれませんし,警察の要請もあるのかもしれませんが,状況をみて必要であれば指示をするというくらいでいいはずです。通行整理の必要性はわかりますが,もう少しスマートにやってもらいたいものです。
 そういえば,先日の人身事故のとき,阪急電車が遅れていたのですが,六甲駅では駅員が何も言ってくれず,結局,三宮駅に着いたときのアナウンスで事故を知りました。前にもそういうことがあったのですが,駅員の仕事は,こういう遅延のときに客に迅速に情報を伝えることにあると思うのです。六甲では,電車が遅れたときに三宮に行く手段は,JR,阪神,バスなどいくつもあります。だから改札のところで情報をほしいのです。これって当然のサービスですよね。他のところに逃げないように,事故情報を伝えてないのではないかと勘ぐりたくもなります。
 過剰なサービスを求める客であってはいけないと思いながら,まずはきちんとした仕事をしてもらうよう要求することはしてよいと思っています(電車代は安くありません)。
 最後は阪急電鉄への苦情となりましたが……。
 花火大会は費用面で継続が厳しいところもあると聞きます。レストランの人に来年も花火大会用のメニューをやってね,と声をかけると,花火大会が開かれればですけど,と言っていました。神戸がダメなら,芦屋もあるし,加古川もあるのですが,まあ神戸は大丈夫でしょう。

|

2017年8月 4日 (金)

藤井聡太四段3敗目

 7月27日に,銀河戦で,すでに勝ったことのある平藤眞吾七段に勝ち24勝2敗となっていた藤井聡太四段は,今日,王将戦の一次予選の決勝で,強敵の菅井竜也七段との対戦となりました。ここまで順調に勝ち上がってきましたが,さすがに決勝では強敵とあたってしまいました。これまで公式戦で対戦したなかで一番強い相手でしょう。なぜ強いかというと,菅井七段は通算勝率7割を超える若手強豪であるというだけでなく,現在,王位戦で羽生善治三冠とタイトル戦を戦っている旬の棋士で,しかも羽生三冠相手に2連勝しているのです。ということで,菅井七段もここで藤井四段に負けているようでは,タイトル奪取への勢いがつきません。
 この対局は先手の菅井七段が得意の中飛車で,玉を穴熊に囲うなか,藤井四段がやや無理気味に攻めさせられるという流れになりました。独特の鋭い攻めの感覚をもつ菅井七段は,先日の羽生戦でも攻め倒して快勝していました。藤井四段との本局でも,快勝といってよいでしょう。さすがに藤井四段も,このクラスが相手となると,まだ苦しいということでしょうか。これで24勝3敗で,勝率は9割を下回り,8割9分となりましたが,まだ高い勝率であることに変わりはありません。次は,来週順位戦C級2組で高見泰地五段との対局です。
 進行中の王位戦は,上述のように,菅井七段が2連勝して面白くなっています。来週第3局があります。
 王座戦は,羽生王座への挑戦者は,中村太地六段と決まりました。中村六段は王座戦には相性がよく,4年前にも羽生王座に挑戦し,2勝1敗で羽生王座を追い込んだこともありました(その後2連敗で奪取失敗)。その前年にも中村は挑戦者決定戦にまで進出しており,そこで羽生に敗れたという因縁もありました。その年は,棋聖戦の挑戦者にもなり,羽生棋聖に3連敗で敗れていました。4年前のあと一歩ということがあって以来,少し低迷していた印象のある太地六段ですが,再び大舞台に登場して,羽生と戦うことになります。順位戦ではなかなかスムーズに昇級できずB級2組にとどまっており,関西の若手との出世争いでは一歩遅れを取っているところもありますが,羽生相手にビッグタイトルをとれば一気に追いつけます。
 羽生三冠は,王位戦では菅井七段,王座戦では中村六段と,実力若手の相次ぐ挑戦を受けています。そろそろ50歳に近くなってきている羽生三冠がどこまで持ちこたえることができるでしょうか。
 もう一つ大きな棋戦の竜王戦は,結局,挑戦者決定戦に進出したのは,藤井聡太四段に勝った佐々木勇気六段ではなく,また佐々木六段(7月11日に六段に昇段)に勝った久保利明王将でもなく,松尾歩八段でした。松尾八段は,1組で優勝しており,この棋戦に白星を集めています。そして,その対戦相手は,稲葉陽八段に勝った羽生三冠です。渡辺明竜王に挑戦するのは,松尾八段と羽生三冠の三番勝負の勝者となります。ランキング戦の1組決勝でも両者は対戦し,松尾八段が勝っていますが,さて挑戦者決定という大一番でどうなるでしょうか。松尾が挑戦権を得れば,はじめてのタイトル戦登場となります。将来の名人候補と言われ,もう若手とはいえない年齢(37歳)になった松尾八段ですが,ここで大きな花を咲かすことができるでしょうか。
 それにしても,こうみると,藤井が強いとかなんだかんだ言っても,やっぱり棋界は,羽生三冠を軸に回っている感じですね。

|

人づくり革命に期待できるか?

  第3次安倍第3次改造内閣が誕生しました。厚生労働大臣も変わりました。前大臣については,その主導の懇談会や有識者会議に参加する機会がありましたが,大臣が変わると,また新たなものが次々と立ち上がるのでしょうかね。
 今回,注目したいのは,経済財政・人づくり革命を担当する内閣府特命担当大臣に茂木敏充氏が就任したことです。「人づくり革命」に実力派の大臣がついたことで,今後の政策の展開が楽しみです。と思っていたのですが,今朝の日経新聞では,茂木大臣は,「3日の会見で,『個人が新たな能力を身につければいつでも人生の再起動ができる。政府も多様な支援策を用意する』と述べた。近く政府に新たな会議を設け,教育無償化や社会人の学び直し支援,子育て世帯への支援充実などを議論する」と出ていたので,私が期待しているものと少し違っていました。
 「人づくり」は,もっと中長期的な支援の下に,AI時代にそなえたものでなければなりません。おそれているのは,厚生労働省は目先の法案のことにエネルギーをとられ,内閣府もキャッチーな政策に目を奪われ,文部科学省は省内の混乱の沈静化に追われ,「どのような人」をつくるのかという,最も重要な政策がおざなりになる,ということです。
 安倍政権は,すでに人気も低下傾向で,そんななか次の選挙が少しずつ近づいてきます。中長期的なビジョンで政策を進める余裕が今後なくなっていかないか心配です。安倍内閣は,とにかく,いろんなことをやっている感を見せるのが大切だと考えている内閣のようですが,後からみて,見せかけだけで,たいした中身がなかったということにならないようにしてもらいたいですね。優秀な若手官僚を,そんなつまらないことに動員して,彼ら,彼女らのエネルギーを浪費してほしくないからです。
 「人づくり革命」が,革命の名に値するものになるとすれば,これまでの人材とは異なるまったく新たな人材(つまり,AI時代に対応できる人材)を,国家の戦略で育成していく必要があります。この内閣にそれができるでしょうか。

|

2017年8月 2日 (水)

第135回神戸労働法研究会その2

  6月の研究会の続編ですが,もう一人の報告者は,大阪経済法科大学のオランゲレルさんで,大王製紙事件・東京地判平成28年1月14日(平成25年(ワ)6929号)を評釈してくれました。
 この事件は,前会長と現経営陣との対立があるなか,前会長の元秘書の従業員が,会社の機密情報を前会長に伝え,それがマスコミに開示されたことから起こった紛争で,最終的には,この元秘書が出向命令を拒否して懲戒解雇されたため,その有効性などが争われました。
 この裁判はマスコミでも報道され,日本経済新聞での地裁判決のときの記事の見出しは,「内部告発で報復解雇は無効」でした。ただ,この見出しはミスリーディングで,記事のなかでも書かれていたように,判決は内部告発を正当でないとし,配転や降格(懲戒)は有効としていました。内部告発が正当とされたかのような見出しは,法律屋としては気になります。
 たしかに出向命令は無効とされ,これに従わなかったことを理由とする懲戒解雇も無効となったのですが,出向命令の無効の判断は,どちらかというと出向の必要性がないということ(出向先のポストが,業務内容からみて合理性がないこと)がポイントで,そのうえで,実質的に懲戒の趣旨による出向なので,動機・目的が不当であるとして,権利濫用とされたものでした。
 法律論としては,出向命令権の濫用といいながら,労働契約法14条の枠組みを意識しないものとなっているところが気になります。動機・目的の不当性は,同条の「その他の事情」に該当するのでしょうかね。実は,この判決は,転勤に関する東亜ペイント事件・最高裁判決を参照しているので,転勤も出向も同じようなものとみているのか(とくに,この会社では,就業規則上も配転,転勤,出向は同一の規定で同じように取り扱われていますし,実態としても出向の配転化現象はあったのでしょう),あるいは,東亜ペイント事件・最高裁判決は人事権の濫用に関する一般的な判断基準を示しているとみているのか,どちらかでしょうが,いずれにせよ労働契約法14条の存在感はあまりにも希薄です(裁判所の「完全無視」の姿勢を目の当たりにすると,そもそも同条を労働契約法に入れる必要性はなかったのではないかという疑問も出てきます)。
 それはともかく懲戒の趣旨の出向であれば,不当な動機・目的があるというのも,少し気になります。懲戒処分の実質があったとしても,そういう制裁的な機能をおよそ人事権の行使に含ませてはいけないということではないと思います。ケースによっては懲戒処分を受けるより,人事で対処してもらったほうが,労働者に有利なこともあるでしょう。もちろん,それでも懲戒的要素が,権利濫用性の判断に影響することはありえるのですが(なお,懲戒の趣旨があれば,懲戒処分の法理を適用するという見解[客観説]もありえますが,それにも賛成できません。この点は,拙著『労働法実務講義(第3版)』(日本法令)274頁の補充解説「人事権の行使としての降格と懲戒処分としての降格」も参照)。
 ところで,オランゲレルさんの報告では,内部告発の正当性に焦点があてられていました。本件は内部告発としてはちょっと異色で,告発先の元会長(現顧問)は,会社側にかなり近い人間であること(ただし現経営陣と対立的),外部への漏洩はその元会長によるものであること(元秘書もそのことを想定していたこと),告発目的は経営陣を失脚させることにあり公益性がないことなど,公益通報者保護法で想定している内部告発とはかなり異なります。もちろん,同法の対象外であっても,権利濫用法理などによる保護はあるのであり,実際,本件ではそういう観点から懲戒解雇は無効とされたわけです。
 法律構成としては,内部告発が正当であったら,就業規則違反が免責されるのか,あるいはその後の処分の権利濫用性を補強する要素となるのか,といったところが気になりますが,通常は権利濫用法理の枠組みのなかで対処すれば十分でしょう。
 本判決は控訴されましたが,原判決がほぼそのまま維持されています(東京高判平成28年8月24日(平成28年(ネ)880号)。

|

2017年8月 1日 (火)

労働政策審議会労働政策基本部会に望むこと

 労働政策審議会労働政策基本部会というものができて,その第1回の会議が昨日東京であったようです。私も会議がされていた時間,偶然ですが,別の用務で,かなり近いところにいたことになりますね。
 事前にこういう基本部会が立ち上がるというメールを厚労省からいただいていましたが,誰が委員になるのかは知らされていませんでした。ドタバタで選ばれたのでしょうか。
 この部会は,私も参加した「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」の報告書のなかの次の部分を受けて設置されたものです。
 「働き方やそれに伴う課題が多様化する中,旧来の労使の枠組に当てはまらないような課題や就業構造に関する課題などの基本的課題については、必ずしも公労使同数の三者構成にとらわれない体制で議論を行った方がよいと考えられる。これを踏まえ,基本的な課題については新たな部会(「労働政策基本部会(仮称)」(以下「基本部会」という。))を本審の下に設置し議論することとする。基本部会は,公労使同数の三者構成ではなく有識者委員により構成するものとし,課題に応じて高い識見を有する者を選任する。この中には,企業や労働者の実情を熟知した者も含めるものとする。委員は有識者として個人の識見に基づき自由闊達な議論を行うものとし,また,そのような者を選任する。基本部会においては,委員からの課題の提起を受けて議論を始めることもあり得る。」
 この部会にどのようなことを期待するかは,人それぞれでしょう。私個人は,公労使がダメというよりも,労使は組織から離れて発言できなければならない,ということを強調していました。重要なのは個人の識見です。
 いずれにせよ,基本部会の委員は,就任にあたって,どのような考え方で部会に臨むかということを表明してもらいたいです。HPでみたかぎりでは,1年かけて「技術革新とこれからの働き方に適応した基本的な政策の方針について」というテーマで検討して報告書をまとめるということのようです。こうしたテーマについて,各委員がどのような意見をもっているかを,国民に知らせるべきではないかと思います。それが個人の識見に基づき自由闊達な議論を行うことを期待されている部会の委員の責務だと思います。こういうことからやっていかなければ,ほんとうの意味での労働政策プロセスの改革はできないのです。
 たんに新たな部会が出来て,ちょっと新しそうなテーマで,数回集まって,事務局主導で報告書がまとめられるというようなことは,もちろんあるはずがないですし,絶対にあってはなりません。
  個人的には,基本部会で取り上げられる予定のテーマは,昨日,私が東大で話した内容と同じようなことであり,すでに拙著『AI時代の働き方と法』(弘文堂)でも書いているような関心の高いテーマですから,1年後の報告書がどんなものになるかほんとうに楽しみです。

 

|

デジタライゼーションと労働法 

 昨日は,東京大学の荒木尚志先生が座長をされている「2017年度労働問題リサーチセンター研究プロジェクト」の第1回目に呼んでいただき,「デジタライゼーションと労働法」というテーマで講演をしてきました。今回のプロジェクトの課題が「第4次産業革命と労働法の課題」ということでしたので,拙著の『AI時代の働き方と法-2035年の労働法を考える』(弘文堂)をベースに,これからの研究者が取り組んでいくべき政策課題について,東大系の若手を相手(参加者は,荒木先生以外は,基本的には若手研究者)に話をし,議論をしました。
 政策は多少悲観的な将来像をもって準備すべきだと考えているので,AIやロボットの技術的可能性がどこまでかを見極めること,新技術の社会実装のためには経営者の姿勢が重要で,現在は技術を十分に活用しきれていないので問題が顕在化していないが,これはときが来れば一挙に変わる可能性があるので,そういう事態も想定しておくべきこと,そして,ICTの発達もあわせ考えると,労働法が想定してきた生産のあり方やそこからくる労働者の従属性というものが根本的に変わるので,労働法は変容せざるを得ないこと,そのようななかで新たな時代に適した政策課題があり,とくにIC(自営的就労者)に関する政策課題が重要であることなどについて話してきました。
 私の報告のあと,参加メンバーがこのプロジェクトでどのような研究課題に取り組むかの報告がありました。私の印象としては,デジタライゼーションのもたらす問題点に着目した議論が多いように思えました。それはそれで重要で,しっかり取り組んでもらいたいのですが,大きなパラダイムシフトが進むなか,いかにして将来性のあるテーマを見つけ出せるかも重要だと思います。AIに代替されない研究者になるためには,知的創造性が必要だという喝を入れてきたつもりですが,どう受け止めてくれたでしょうか。
 日頃の判例研究会とは違い,AI時代の労働のあり方といった大きな話題についても議論ができました。荒木先生は,人々がかりに働く必要がない時代が到来しても,生きがいなど働くことの意義は残るのではないか,ということを強調されていました。それについては,私は,そう思う人もいるかもしれないが,そもそも働くことを前向きにとらえるのは,実は日本人がマインドコントロールされているのであり,そのマインドコントロールが解ければ,のんびりと過ごしたり,趣味に生きたりして,労働をしなくてもよい時代を楽しめるのではないか,という趣旨のことを述べました。
 これは上記拙著のエピローグでとりあげている内容とも関係しています。そのエピローグは,「人工知能の発達は,人間をして,種を残すために必要な行為(摂食と生殖)に専念できるようにする……。これが労働革命の行き着く先ならば,そんなに悪い話ではなかろう。」と結んでいます。研究会では,逆に,労働しないで,動物のように生きることで人間は我慢できるのだろうか,という問題提起もありました。
 まじめに生きている優秀な人たちは,何か働いていなければダメになるし,知的な活動をせず,生殖と摂食だけでは,動物並みへと堕落すると思ってしまうかもしれません。政府も,そういう堕落した人間が増えると困ると思うかもしれません。しかし,それもやはり,マインドコントロールなのではないでしょうか。
 ケインズは,労働をしなくてよくなると,退屈となり,それは平凡な人にとって恐ろしいことになると述べたのですが,南国で海をみながら日がな一日のんびりすごし,ただ,(アレントの分類を借用すると)ときどき天下国家を論じ(activity),ときどき制作活動をし(work),ときどき生きるための労働をする(labor),といった生き方は,まさに理想のように思えますが,いかがでしょうか。拙著の『勤勉は美徳か?-幸福に働き,生きるヒント 』(光文社新書)も参照してもらって,日本人の幸福な生き方,働き方について,みんなで考えてもらえればと思います。

  それはともく,若手俊英たちの知を結集した報告書がどのようなものになるのか,とても楽しみです。

|

« 2017年7月 | トップページ | 2017年9月 »