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2017年7月17日 (月)

プロ人材と独禁法

 昨日の日本経済新聞の朝刊にも出ていましたが,プロ人材の抱え込みが独禁法の問題とならないか,ということで,公正取引委員会が研究会を発足するということが記事に出ていました。非常に面白いテーマです。
 事前に公正取引委員会の人が私のところに来て話をしたとき,そこで思ったのは,労働法のアナロジーで考える場合に,労働者側の話と使用者側の話がゴチャゴチャにならないようにしなければならないということでした。もちろん非雇用型だと,労働者も使用者もないのですが,どちら側の競争制限行為を問題とするのかで議論の仕方も異なってきそうです。記事では,労働者的なプロ人材を使用者的な取引先が抱え込むことが問題とされていたので,使用者側的な立場にある人の「談合」が問題となるのでしょうね。
 私個人は,むしろ非雇用型のプロ人材の団結と独禁法の関係に関心があるのですが,彼らのほうは,どちらかという使用者側の人間が引抜をしない協定などをしてプロ人材を抱え込むことの問題点に関心をもっていました。芸能事務所とかプロスポーツ選手が具体的なターゲットです。
 たしかに,これは副業・兼業といった経産省の関心の延長戦上にある問題で,ここに独禁法でメスを入れるというのは興味深いアプローチです。
 プロ人材の引抜防止協定が結ばれたとき,これを優越的地位の濫用や下請法的なアプローチで対処することもありえるのですが,これをプロ人材のほうの団結で対抗できるということにしてみればどうでしょうか。労働者でいえば,使用者団体と労働者団体の交渉の問題となるということです。使用者側の競争制限行為があれば,労働者側も競争制限行為で対抗するのです。
  どうしてこういう発想をもったかというと,欧州での産別交渉で,たとえば経営者側の団体で,これ以上の賃金では労働協約を締結しないという「談合」をしたとき,これは理論的には競争制限的な行為として問題となり得ますが,労働者側も労働組合を結成してこれに対抗することができるのです。「談合」には「談合」を,です。こうなると力勝負の話になり,マイナスとマイナスが打ち消し合って,競争的な状況が成立しているとみることはできないのでしょうか。だからこそ労使自治が成立し,独禁法の問題から離れるということではないでしょうか(欧州では,労働組合は合法的なカルテルだと言われることがあります)。この論でいくと,雇われないプロ人材にも,同じことがあてはまるかもしれません。
 今後,独禁法の禁圧から解放されて組合立法ができた歴史のあるアメリカ労働法が注目されるところです。欧州の労使自治の研究やアメリカ労働法の分厚い歴史研究が,再び脚光を浴びるかもしれません。公正取引委員会の研究会での議論の展開に注目したいところです。

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