« 永野仁美他編『詳説障害者雇用促進法』(弘文堂) | トップページ | 山川隆一編『プラクティス労働法(第2版)』 »

2017年7月20日 (木)

銀行の生産性

 14日の日経新聞の経済教室(井上知義・高口鉄平「企業のAI・IoT活用 非製造業 ゼロから構築を既存事業からの脱却急げ」)のなかで,非製造業のIoT投資が遅れているという話がとりあげられていて,そこで「銀行を例にとると,旧来の店舗窓口やATMを維持しながら,オンライン取引の普及に取り組んでいるため,投資増が必ずしも労働生産性の向上に結びついていないと考えられる。過渡期としてやむをえない面は当然あるが,いずれキャッシュレス社会を前提に,店舗のみならずATMも廃止する方向に踏み込まないと,こうした構図を変えることはできない」と書かれていました。
 裁量労働制のおかげで,私は,昼間に銀行に行くことも可能です。ほとんどオンラインサービスでまかなえますが,住民税の振込だけは,銀行(かコンビニ)でやっています。口座振替にすればいいのですが,20年くらい前にちょっとした引き落としトラブルがあり,そのときに取り戻すのがたいへんだったことがあったので,それ以来,自動引き落としにはしていません。駅前の某有名銀行の某支店を利用することが多いのですが,そこにはいつも何人かの客が待っています。多いのは,高齢者と主婦と学生です。それに加えて,事前対応する行員が2人くらいいて,警備員もいます。かなり狭いスペースに人がごちゃごちゃいる感じです。ATMで取引できないような人がいるのでしょうかね。ATMさえ利用しない人に,オンラインはもっとハードルが高いでしょう。だから銀行のほうは,窓口は必要だし,ATMも当然必要だと考えているのでしょう。しかし,もう一歩先をみておく必要もあります。高齢者は年齢を重ねるといつか歩行が困難となります。そういう歩行困難な高齢者が大きく増えたときにそなえて,オンライン対策の必要性は高いはずです。それにより銀行業務も効率化し,省力化することでしょう。
 先日,その銀行で,人生ではじめて資産運用の相談をしてみました。資産といっても,夏季賞与の運用をどうすればいいかといった程度のものです。銀行が普通に相手にする客と運用額の桁が2から3つくらい違うでしょうから,銀行も困ったのかもしれません。予約をしていましたが,対応してきた人は若い女性でした。若手をつけてきたところで,重要な客ではないとみられたのだろうなと思いました。まあ預金額はむこうは知っていたでしょうから,当然のことです。案の定,私の質問には,タブレットをみせて説明してくれるのですが,それは私が自宅でもみることができる画面でした。知識面でも,私がもっていたもの以上のものはありませんでした。会話することに意味があるという感じで,そこからこちらのニーズを探って提案するということのようでしたが,たいした提案はありませんでした。結局は,その銀行のキャンペーンをしていた外貨預金を強く推奨されただけでした。時間の無駄でした。おまけに,いろんな資料のパンフレットやコピーをどっさりもらいました。オンライン派の私には不要です。何かチグハグでした。
 でも経験してよかったです。銀行での人間の業務は減るという仮説は正しいと実感できたからです。余計なお世話かもしれませんが,私に対応してくれた若い行員の将来が心配になりました。いまや知識はネットで簡単に手に入ります。人間が対応するからきめ細かく対応できるというのは「可能性」にすぎず,実際に,個人がネットから簡単に得られる情報を上回るような情報をもち,プロとしてのアドバイスができる能力をもつ人はどれだけいるのでしょうかね。もちろん,私が資産家なら,もっとレベルの高い行員が登場したのかもしれませんが,いやしくも銀行の店舗で,そこに口座をもつ客への対応で出てきた以上,そんな変な行員を出してきたわけではないでしょう。
 携帯電話をAUから格安に変えたのも,店舗対応に意味がないと感じたからです。AUがあわてて料金引き下げをしようとしていますが,それでも今の携帯料金のほうが低いです。毎月の負担は劇的に下がりました。そもそも電話での通話はほとんどしないので,基本料金の高さがネックだったのです。複雑な料金体系も問題でした。複雑な料金体系だから,店舗での説明というニーズもあったのでしょう。これはビジネスモデルがおかしかったのです。料金体系をシンプルにし,基本料金を下げ,店舗対応を不要とするというのが,これからの携帯会社のあるべき姿でしょう。
 機械による雇用代替が進まないのは,人間による対応が必要と思い込んでいる企業が,ITやAIを活用した新しいビジネスモデルを構築し切れていないところに原因があります。このことは,新しいビジネスモデルがでてくれば,あっというまにそれが席巻し,少なくとも旧来の業務はなくなり,そこに張り付いていた人は,うまく転換できなければ余剰人員となるということを意味しています。
 そういえば銀行については,ネット銀行に口座を開設しました。海外での利用がしやすいことが理由でしたが,国内での利用も何も問題がありません。店舗がなくても何も支障がありません。上記の若い行員はそのネット銀行の名前を知りませんでした。Uberを知らないタクシー運転手に会ったときと同じような危うさを感じました。

|

« 永野仁美他編『詳説障害者雇用促進法』(弘文堂) | トップページ | 山川隆一編『プラクティス労働法(第2版)』 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事