« プロ人材と独禁法 | トップページ | 銀行の生産性 »

2017年7月18日 (火)

永野仁美他編『詳説障害者雇用促進法』(弘文堂)

  永野仁美・長谷川珠子・富永晃一編『詳説障害者雇用促進法ー新たな平等社会の実現に向けて』(弘文堂)を1年半くらい前にいただいておりました。どうもありがとうございます。たぶんお礼を書いていませんよね。遅くなって申し訳ありません。
 今回,障害者雇用のことを書く機会があったので,この本を読んで勉強してみました。非常にうまく作った本だなというのが最初の印象です。障害者雇用というと,ちょっと重い感じになりそうですが,明るい装丁で,内容も読みやすく,レイアウトもいいです。若い感覚がうまくフィットしたようです。
 障害者雇用は,私も関心をもっていて,かつて東大の若手たちと研究会を開いて報告書をとりまとめたこともあります。私の当時の関心は契約の自由と差別との関係というテーマにあり,そのなかでも「障害」は,最後に残された最も難しいテーマでした。男女差別で出てくるポジティブアクションとは異なり,そもそも何らかの配慮をしなければ雇用に到達しにくい障害者を,資本主義社会における労働市場においてどのように位置づけるのかは難問です。
 あのころの研究会では私は無理だろうと思っていた,雇用率制度とADAの差別禁止アプローチ(+合理的配慮)の重複規制が,日本法に入るとは夢にも思っていませんでした。あのときのメンバーでもあった永野仁美さんがフランス法を参考に,こうしたアプローチを主張していたのですが,その影響で立法にまで至ったのでしょうか。
 本書では実務的なことから理論的なことまで議論されていて,これ一冊で障害者雇用法制の主要な内容を網羅していると思います。障害者というと福祉という視点になりがちですが,就労という視点にしぼってまとめられた本書は,障害者雇用が法律の研究分野としての可能性を十分に感じさせるものです。
 いまの個人的な関心は,障害者という人でみるのではなく,障害を機能としてみて,それをいかにしてロボットやAIの発達により克服するかということにあります。障害者という概念が消えて,苦手な部分は機械でカバーし,誰もが自分のもつ個性を発揮できる社会の到来が理想だと思っていますが,AI時代にはこれが可能となりそうな予感があります。
 それとは別に,明治大学の小西康之君が,『講座労働法の再生』の第6巻の「若年期・高年期における就労・生活と法政策」という論文でも書いているように,60歳代の高齢者の能力や就労意欲の多様性を克服するため,年金支給は70歳以上に引き上げ,60歳代で働ける人は就労,働けない人は障害給付というドイツ法的なアプローチまで視野に入れると,「障害」概念の今後の理論的展開には大きな可能性があります。
 それはさておき,現在,障害者雇用促進法がどのような内容になっているかということは,教養としても知っておいたほうがいいでしょう。多くの人が読むべき本だと思います。いまごろになってこんなことを書いている私に言う資格はないかもしれませんが。

|

« プロ人材と独禁法 | トップページ | 銀行の生産性 »

読書ノート」カテゴリの記事