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2017年7月

2017年7月31日 (月)

解雇規制についての英語論文in イタリア

 昨年2月にイタリアのMilano国立大学で行われた解雇規制に関する比較法セミナーでのプレゼンを原稿にしたものを収録した論文集(「Evoluzione della disciplina del licenziamento -Giappone ed Europa a confronto: The Evolution of dismissal regulation - A comparison between Japan and Europe」)が,同大学のMaria Teresa Carinci教授編で,イタリアの法律系の出版社Giuffrè(日本の有斐閣のようなもの)から出版されました。もともとは日本で同種のセミナーを,Maurizio Del ConteとMaria Teresa Carinciを招聘して神戸大学で行ったのですが,それのいわば続編として,イギリス,フランス,ドイツ,スペインの研究者を呼んでもらって,拡大セミナーをイタリアで開いたという感じでした。どの国から招聘するかは事前に相談されていたのですが,いま思えば中国を入れておけばよかったかなという気もしました。中国の解雇法制は比較法的にも興味深いところがありますので。ただ,私は中国(メインランドチャイナ)の研究者に知り合いが一人もおらず,仕方なかったです。
 Milanoのセミナーでは,日本でやったときと同様,日本をいわば比較法の軸にしてくれたので,私の論文も最初に掲載されています。当日のプレゼンはイタリア語でしましたが,原稿は英語で書きました。これをイタリア語に翻訳してくれるのかなと思っていたら,英語のままで掲載されてしまいました。ちょっとがっかりです。それなら,がんばってイタリア語で書いて,ネイティブに直してもらう(perfezionare)ほうがよかったなと思います。論文を直してもらうと,たいへん良い語学の勉強になりますので。
 論文名は平凡で,「Dismissal regulation in Japan」。ナショナルレポートのようなものです。原稿を提出したのは昨年の5月くらいで,しつこい督促にこたえて急いで書いたのに,結局,刊行は1年後ということで,久しぶりにイタリア時間にやられてしまいました。ただ,Giuffrè出版の書籍への収録は,20年くらい前の山口浩一郎先生の還暦記念論文集(Marco Biagiと諏訪康雄先生編集の「Il diritto dei disoccupati: Studi in onore di Koichiro Yamaguchi」)以来で,個人的には大変名誉なことだと思っています。
 このほか,Business Labor Trend の最新号に,今年の5月12日に東京で開催された労働政策フォーラム「The Future of Work-仕事の未来」のパネルディスカッションの要約版が掲載されています。私はコーディネータを担当したもので,たいしたことは話していません。最近は,このテーマでの仕事が増えていますね。Business Labor Trendへの登場も久しぶりで,懐かしい気分でした(どうでもいいことですが,Business Labor Trendの紙質[物理的な意味]は悪化していませんかね)。

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2017年7月30日 (日)

第135回神戸労働法研究会その1

 1カ月以上前の神戸労働法研究会のことを書いていませんでした。
 一人目は,特別ゲストで,神戸大学大学院法学研究科の行政法担当の興津征雄教授に来ていただき,神奈川労基署長(医療法人総生会)事件・東京地判平成29年1月31日(平成26年(行ウ)262号)について報告してもらいました。以前にブログでこの判決の速報情報を流したことがありますが,そのときの情報提供元のO教授とあったのが,興津教授でした。主たる論点は,行政法上の「違法性の承継」(先行処分の違法性を,後の処分の違法性を争う手続で主張することができるか)ですが,労災認定の支給決定に対して,使用者に取消訴訟の原告適格を認めるという驚くべき判断がなされていることから,労働法上も無視できない判決となっています。ということで,これは行政法と労働法がまさに交錯する事件であると思い,私たちの研究会に行政法の先生を招待したのです。
 事件は,労災の支給決定がなされたあとの,労働保険料認定処分において,使用者側が,メリット制の適用を受けて増額された保険料に不満をもち,労災支給決定の違法性を主張して,保険料認定処分の取消を求めることができるかが問題となったものでした。
 行政処分の公定力からすると,労災支給決定処分の違法性を争うのは,その支給決定の取消訴訟の手続であり,取消訴訟の期間が経過すれば,もはやその処分の効力を争うことができなくなります。したがって,労働保険料認定処分の効力を争う手続において,労災支給決定処分の効力を争うことはできないのが原則です。しかし,労働保険料の認定処分にはメリット制が適用されるため,労災支給決定処分は後続の保険料認定処分と密接に関係しています。このような場合,後続の保険料認定処分の取消訴訟で,先行する労災支給決定処分の違法性を主張できる(これを,違法性の承継という)のではないか,ということが問題となりました。
 もっとも,これまでの実務では,労災支給決定について使用者が取消訴訟を提起することはできないとされてきました。使用者は手続の名宛人ではないからです。不服申立の適格もないし,取消訴訟の原告適格もないとされてきました。そのため使用者から支給決定処分の違法性を争えないのなら,違法性の承継の前提がないということになりそうです。 もっとも,行政法上,使用者の原告適格を否定するのが妥当かというと,実はそうではないようです。興津教授の報告によると,手続の名宛人ではなくても,行政処分の法的効果により権利の制限を受ける者は,行政手続法9条1項の原告適格の要件である「当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」に該当するという解釈が行政法学上有力だそうで,そうすると労災支給決定の法的効果としてメリット制により保険料増額という影響を受ける使用者は,当然,原告適格が認められることになります。これが行政法上の堅い結論であるとすれば,原告適格を否定するうえでは,労災保険の特殊性をいかにして説得に主張するかがポイントとなります。おそらく,それはきわめて困難であり,本判決も,原告適格は肯定しました。
 すでにレンゴー事件で,最高裁は,取消訴訟の補助参加人として使用者が参加することは肯定していました(最決平成13年2月22日)。民事訴訟法42条によるもので,適用条文は違うものの,実質的には,メリット制の影響を受ける使用者の利益を考慮した手続保障という考え方は,すでに最高裁のとるところだったのです。これを素直に展開していくと,原告適格を認めるのは当然のことといえます。
 では違法性の承継については,どうでしょうか。ここからは純粋な行政法の論点となりますので私は素人ですが,興津教授は,手続保障について特定事業主と被災労働者のどちらの保護を重視するかという価値判断が決め手となるということでした。そして少なくとも支給処分取消訴訟の原告適格が認められないのなら,違法性の承継は認めるべきということです。本判決は,逆に原告適格を認め,違法性の承継は否定するというものでした。被告である国側は,原告適格も違法性の承継も認められないと主張していましたが,これは不当というのが興津教授の見解でした。
 いずれにせよ,本件では事業主のほうに取消訴訟ができた期待可能性はないのであり(実務上原告適格が否定されていたため),この判決が原告適格を認めたからといって,本件での事業主のほうの手続保障が十分であったとはいえないはずです。判決は早期確定の必要性にも言及していますが,興津教授は,もらえないはずの給付をもらえるという正義に反する結論が,早期確定の要請を上回るとは考えられないという趣旨のことも述べています。行政法の観点からは,事業主が,不当な行政処分に対して十分な救済を受けられないことの不正義のほうが重要と考えられるようです。ここでは,事業主と労働者との関係だけをみる労働法と,市民と行政という関係でみる行政法との視点の違いがあって興味深いところでした。
 行政法の事件でしたが,素人にもわかるように非常にわかりやすく説明してもらったので,問題点がよくわかり,たいへん勉強になりました。やっぱり,こういう異業種交流はいいですね。

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2017年7月28日 (金)

誰のための連合か

 今朝の日経新聞の1面に出ていた記事のタイトルです。このような疑問が出てくるのも当然かと思います。
 「工場労働が中心だった時代と違い,経済のソフト化・サービス化が進んだ現在は,労働時間で賃金を決められるよりも成果本位で評価してもらいたいと考える人も増えていよう。効率的に働けば労働時間を短くできるメリットも脱時間給にはある。そうしたホワイトカラーのことを連合は考えているのか。」
 この第1文はそのとおりです。第2文はちょっと疑問です。別に現行の労働時間制度は,効率的に働くことを抑止してはいないからです。ホワイトカラー・エグゼンプションのメリットで,労働時間短縮が進みうるというのは,必ずしも間違いではないのですが,聞いたほうに騙された感が残るので,そういう理由は私は言わないようにしています。
 ホワイトカラー・エグゼンプションが導入されると,むしろ労働時間は長くなってもおかしくありません。でもポイントはメリハリをつけることができるということです。そうした自己コントロールをすることを,現在の労働時間規制は阻害しているのです(厳密にいうと,変形労働時間制,フレックスタイム制,裁量労働制などを使えば少しはできないことはありませんが,法のつくりが原則の例外という形なので,要件が厳しく使いづらいというのが,ホワイトカラー・エグゼンプションの議論をするうえでのポイントです)。
 長時間労働には良いものと悪いものとがあります(拙著『労働時間制度改革-ホワイトカラー・エグゼンプションはなぜ必要か』(中央経済社)のはしがきを参照)。たとえば大きな成果を生む仕事となれば,徹夜をしてでも仕上げたいことがあるでしょう。そこをしっかり区別して,そしてこれからの日本経済にとって必要なのは,働くときは長時間になっても頑張って成果を出す,休むときは大型にまとめて休む,といったメリハリのついた働き方をできる人材です。そうした人材がいないと決めつけて,パターナリスティックな労働時間規制を継続していれば,そのうち日本は世界の流れから大きく遅れることになるでしょう。高度プロフェッショナル制度に休息措置をいっそう強化する規定を入れるというのも,こうした観点から余計なことです。そういう半端なことではいけないのです。
 まずは労働時間規制を思い切って緩和してみましょう。もちろん,その対象となるべき人材は,業務の性質上,その遂行を労働者にまかせるのに適したものに限定されます。裁量労働制と類似ですが,裁量労働制のように,業務を法律で限定していく必要はなく,基本的には対象業務の範囲は,法令でガイドラインを作り,労使で合意をして特定するという方法で,できるだけ現場にまかせたほうがいいです。実際には,現時点でも対象者は少ないでしょうが,まずは受け皿を作ってみるべきなのです。そうすると,意外に,私の仕事はそれに該当するので,適用して欲しいという人が出てくるかもしれません。「残業代はいらないので,もっと思う存分仕事をさせてください。できれば成果に応じた賃金体系にしてください。もちろん,納得いく賃金がもらえないなら,転職させてもらいます」といえるような労働者が,ホワイトカラー・エグゼンプションの理想的な対象者です。そんな人がいないと決めつけてはいけませんし,またそんな人をもっと増やすことが必要なのです。
 ホワイトカラー・エグゼンプションは,大きな働き方改革の入口です。いや,その前の準備のようなものにすぎません。高度プロフェッショナル制度は,年収要件が高いなど,たいした規制緩和ではありません。この程度のものでも話が進まないようでは,困ったものです。

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2017年7月27日 (木)

最低賃金について考える

 今朝の日経新聞の社説で,最低賃金のことがとりあげられていました。そのなかで,次のような部分がありました。
 「ただ12年末に第2次安倍政権が発足してから,最低賃金の上げ幅は今年度を合わせ計100円近くになる。急激に最低賃金が上がることで中小企業の倒産が増える懸念もあるだろう。実際の引き上げ幅を決める各都道府県の地方最低賃金審議会は,地域経済の現状や地元企業への影響を十分に調べたうえで上げ幅を判断すべきだ。」
 最低賃金の決定方法には,普通の人にはわかりにくいところがあります。各都道府県で決定される地域別最低賃金は,誰が決めるのかというと,都道府県労働局長です。都道府県労働局長が,地方最低賃金審議会を開き,その意見を聞いてから決定します。ただ実際は,中央最低賃金審議会による目安の提示があり,それを受けて地方最低賃金審議会で額の答申をするので,地方の審議会の存在意義というのはあまりなさそうです。
 一方,法律では,こういう手続以外に,「地域別最低賃金の原則」というのが掲げられており(最低賃金法8条),そこに3つの原則が定められています(2012年改正で明記されました。改正前は,より一般的な「最低賃金の原則」という形で,次の第2の部分にほぼ相当するものが定められていました)。
 第1は,「賃金の低廉な労働者について,賃金の最低額を保障するため,地域別最低賃金は,あまねく全国各地域について決定されなければならない」。
 第2は,「地域別最低賃金は,地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない」。
 第3は,「前項の労働者の生計費を考慮するに当たっては,労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう,生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする」。
 第3は,生活保護との逆転現象を回避するために,2007年の法改正の際に追加されたものです。
 問題は,第2です。そこでは,「通常の事業の賃金支払能力」ということに言及されています。その意味は,2012年改正前から,「当該業種等において正常な経営をしていく場合に通常の事業に期待することのできる賃金経費の負担能力のことであって,個々の企業の支払能力のことではない。一般的にいえば,業種等の賃金支払能力を概括的に把握するためには,経済産業省『工業統計』等によって出荷額,付加価値額等を検討することによって可能である。」というのが,厚生労働省の解釈でした。
 つまり個別企業の支払能力を考慮して最低賃金の決定をする必要はないのですが,でも当該業種での一般的な支払能力は考慮されなければならないということです。したがって,上記社説で書かれているようなことは,法律上の要請ともいえますし,最低賃金引上げが中小企業の倒産を多発させるようなものであってはならないのは,言うまでもないことです。
 労働者の生活保障という論理だけから最低賃金を設定し,そうした賃金を払えないような企業は市場から退出すべきだというような議論を耳にすることはありますが,それは最低賃金法の想定していることではないのです。
 もちろん,これまでは,「通常の事業の賃金支払能力」は,最低賃金額を抑制するためのロジックに使われかねないことから,あまり重視すべきものではないとされていました。しかし,近年のような最低賃金引上げラッシュが続くと,この要素に注目したくもなります。
 もちろん,現実の最低賃金決定は,上述のように,中央の審議会の決めた目安に事実上しばられているのですが(中央のほうでは,この要素も考慮したうえで最低賃金額を設定してはいるでしょうが),ほんとうは地方の審議会の使用者委員は,中小企業の支払能力を考えて高すぎると思えばそう発言すべきなのだと思います。
 そもそも最低賃金の引上げ政策は,賛否両論あるところです。経済学者の間でも議論が分かれているようです。最低賃金の決定は,マスコミにもよくとりあげられるので,政府にとっては,懐を痛めずに,国民に「パン」と「サーカス」を提供できるという面があり,利用したくなるのでしょう。国民は,そんな簡単に懐柔されてたまるか,という気概をもちましょう。
 それでも賃金引上げ分が消費に回ればまだよいのでしょうが,最低賃金の影響を受けるのは基本的には非正社員であり,しかも最賃政策それ自体が将来のインフレをもたらしそうなので生活防衛の必要を彼ら・彼女らに感じさせるでしょうから,結局,賃金上昇の大部分が貯蓄に回ってしまう(これは経済的には合理的な行動ではないのですが),ということにならないでしょうか。

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2017年7月26日 (水)

連合の迷走?

 労働委員会の仕事などで,連合の関係者と会うことは多いので,あまり悪口を言うと怒られるかもしれませんが,高度プロフェッショナル制度をめぐって,連合はちょっとやらかしてしまいましたね。修正条件つきで承諾という報道に最初はびっくりしました。私は,そのうち活字になるはずの未来予測エッセイで,ホワイトカラー・エグゼンプションは実現しないと書いていたので,2017年に通ってしまえば書き直す必要があると思っていたのです(私のエッセイは,ホワイトカラー・エグゼンプションは通らなくても,そのうち自営的就労者が増えるので,問題はなくなるというオチなのですが)。でも,そうはなりそうにないですね。
 ほんとうは高度プロフェッショナル制度なんてものは導入してもほとんどインパクトがないので,それほど大騒ぎするようなものではありません。事の真相は,急速に弱った安倍政権を助けるようなことをするなというお叱りを連合のトップが受けたということでしょう。連合は,ここまで安倍政権が弱るとは思っていなかったのでしょうかね。民進党は,使える武器は最大限に使いたいところなので,高度プロフェッショナル制度を政府が導入しようとしたときも,徹底抗戦するつもりだったのでしょう。だから連合は余計なことをするなということです。
 もちろん私見は,いつも言っているように,高度プロフェッショナルはダメなものなので,もっと良いホワイトカラー・エグゼンプションを導入せよ,ということです。だから,安倍政権にも連合にも民進党にも反対なのです。正しい労働時間規制改革をしてほしい,というのは,このブログでもいつも述べていることですが,誰も耳を傾けてくれません(拙著『労働時間制度改革』(中央経済社)を参照)。
 ところで,今日のNHKのニュースでは,高度プロフェッショナル制度を,(私の記憶にまちがいがなければ)成果で給与を払う制度と説明していたと思います。脱時間給よりもマシかもしれませんが,これもおかしいです。これだと,連合が,成果型賃金の導入をめぐってもめているように聞こえてしまいます。聴衆は何でもめているんだろうと思わないでしょうか。日経新聞よりもはるかに影響力のあるNHKで,これでは困ります。なんで端的に割増賃金がなくなる制度と言わないのでしょうね。割増賃金が難しい言葉であれば,やや不正確ですが,残業代がなくなる制度と言えばいいのです。それを言うと,残業代ゼロとなってしまい,野党に加担することになってしまうから避けているのでしょうか。それなら,そこで一言注釈をつければいいだけです。残業代という制度はなくなるけれど,それは残業を観念しなくてよいような働き方をする人に導入するんだ,と言えばいいのです。それだけのことです。
 それにしても,これだけメディアが正確に報道できないというのは,よほどこれが難しいテーマなのでしょう。私にはマスコミの勉強不足という理由のほうが大きいと思いますが,これは上から目線の発言になってしまうのでしょうかね。

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2017年7月25日 (火)

テレビは怖い

 国会の閉会中審査では,加計問題と稲田大臣の日報問題に多くの時間が費やされていました。こんなことに政治家がエネルギーを使っているというのは馬鹿馬鹿しいのですが,悪いのは政権側ですから,ほんとうに困ったものです。テレビでは,野党の追及に安倍首相が明らかに苦しんでいるし,嘘をついているのだろうなという印象を多くの国民が受けたことでしょう。記憶を問われているようなことでも,想定問答集のようなものを棒読みして,事実を作っている,あるいはうまく説明しようと細工しているというのが,映像を通じて伝わってきます。こんなことをやっていると,安倍首相の支持率は悲惨なことになりかねません。
 もう真実が何かは関係ありません。国民にとっての真実は,首相の側近が忖度して加計学園の獣医学部の新設を国家戦略特区という枠組みのなかで超特急で進めようとしたことなのです。いくらそうでないと主張しても,よほどの決定的な証拠でも出てこないかぎり,真実はどうであれ,もう通じないでしょう。
 少なくとも長年の友達が経営している大学に有利な動きがあったことは確かなので,そこだけでも認めて謝罪をすれば,支持率は少しは回復するでしょう。日本人は,心から謝罪をしているとわかれば,追い詰めない国民です。必ず,「ああ言っているんだから,許してやろうじゃないか」という声が出てきます。そうせずに,あくまで無理に取り繕うとすると,国民の反感はますます高まるでしょう。稲田大臣への過剰な擁護も,見苦しいです。
 それにしてもある官僚の「記録がないので,記憶で言わざるを得ないが,記憶もないのだから,それは真実ではない」というのは,すごい論法です。こんな論法が通用するなら,世の中はむちゃくちゃになります。詭弁とはこういうことをいうのでしょう。良心も矜恃も感じられないです。
 もちろん私も文書管理能力がないので,大事な書類をなくしたりしますし,物事もすぐに忘れて記憶がないということがしょっちゅうなので(たとえば,講義で途中で脱線した話をしているとき,前に同じ話をしたような気もするのですが,記録も記憶もないので,学生相手に何度も同じことを話している可能性があります),他人のことは言えないのですが,でもあまりに堂々と公式の場で記録も記憶もないと言われると,ちょうどどうかなと思ってしまいますね。いまの高級官僚は,そんな雑な仕事の仕方をして,おバカな頭脳なのでしょうかね。そうではないですよね。おそらく記録も記憶もあるのです。でも良心が痛まないのは,それが首相のため,国のためという,間違った正義感があるからではないでしょうか。間違った正義でも,正義に殉じているかぎり,自分は国士であり,良心は痛まないのでしょう。
 「言った,言わない」は決着がつかないから意味がないというのは,自民党弁護の発言でしょう。テレビ画面で発言する人の表情,話し方などをみるだけで,いろんなことがわかってきます。テレビは怖いですね。

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2017年7月24日 (月)

藤井聡太四段(1日で)2勝

 B級1組の2回戦で,谷川浩司九段が斉藤慎太郎七段に勝って2連勝となりました。斉藤七段は1勝1敗です。関西の後輩若手に貫禄の勝利です。全盛期を思わせるような豪快な将棋で76手で若手強豪の斉藤七段を投了に追い込みました。やはり順位戦となると,持ち時間が長いので,実力を発揮できますね。2連勝は阿久津主税八段と谷川浩司九段だけです。初戦が空けだった糸谷哲郎八段は1勝です。2連敗は木村一基九段と丸山忠久九段。今年のB級1組は,A級以上の激戦と言われています。誰もが昇級も降級もあるという感じです。谷川九段はまずは残留をめざしてほしいですが,今期の降級は1人とはいえ,やはり5勝はしなければ安心できないでしょう。 
 藤井聡太四段は,棋聖戦の一次予選で2局対局しました。初戦は,西川慶二七段との対局は,かなり危ない勝ちだったように思えましたが,二局目の阪口悟五段には,前回は大逆転での辛勝の相手でしたが,今回は完勝でした。これで今期23勝2敗となりました(通算で33勝2敗)。もっとも,今回の相手は二人とも棋界では最弱の部類の相手ですので(失礼かもしれませんが),勝って当然でしょう。若手四段の間は棋戦の一番下からやるので,最初はこういう相手が多く,勝ち数も稼げます。問われるのは,勝ち数ではなく,内容です。もう少し歯ごたえのある相手との対局が来ればいいのですが。
  明日からは,王位戦です。羽生善治王位と菅井竜也七段の対局です(2日制)。菅井七段1勝を受けての第2局です。

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2017年7月23日 (日)

フィガロの結婚

 西宮北口の兵庫県立芸術文化センター(芸文)で,「Le nozze di Figaro(フィガロの結婚)」をみてきました。佐渡裕さんプロデュースで,彼はオーケストラの指揮もしていました。  このMozartのオペラは,日本でみるのは初めてです。4幕構成で,Figaroの結婚式が行われる1日のドタバタ騒動を描いたものですが,深い内容をもったものです。
 Figaroの結婚相手のSusannaは,Almaviva伯爵夫人に仕える女中ですが,伯爵はSusannaをなんとかものにしたいと考えています。自分の家来の新妻になんたることかという感じですが,領主の初夜権があった時代のことです。Almaviva伯爵は初夜権を廃止して,領民の支持を得たばかりだったのですが,それをいきなり(こっそり)復活させようとしていたのです。Figaroは,それに必死に抵抗します。ここには,貴族の暴政と市民の抵抗という図式があり,フランス革命につながる社会構造が描かれています。
 伯爵夫人は,浮気性の伯爵をこらしめようと,Susannaと組んで策略を練りますが,そのなかで,事をややこしくするのが美少年のCherubinoでした。伯爵は自分のことを棚に上げて,伯爵夫人のCherubinoとの浮気の噂に怒り,Cherubinoに出征命令を出すのです。でも結局,Cherubinoはこの命令に背き通すところも痛快です。
 今回のオペラは,外国人キャストの日と日本人キャストの日があり,ほんとうは外国人キャストのほうをみたかったのですが,日本人キャストの日しかチケットが残っていませんでした。それでも席はほぼ満席で,オペラ人気の高さがわかります。この日は伯爵夫人とSusanna役の2人の日本人女性のソプラノがすばらしかったです。Cherubino役は,唯一の外国人でしたが,あの有名な「恋はどんなものなの(Voi che sapete che cosa è amor)」は見事な熱唱で,大きな拍手を受けていました(Cherubinoは,女性が少年を演じることになっているのですが,劇中では女装をするということで,難しい役でしょう)。カーテンコールでは,この3人のsopranoに一番大きい拍手があり,bravoの声も飛んでいました。一方,Figaro役は声量不足で,歌詞が聴きとりにくかったのが残念でした。主役でしたが,カーテンコールでの拍手は少なかったです。伯爵役も,伯爵夫人やSusannaと比べると,ちょっと物足りなかった感じがします。脇役ですが,酔っ払いのAntonioは良い味を出していて,存在感があり,拍手も大きかったです。
 ということで,日本人キャストでも十分に楽しめました。Mozartはオーストリアの人ですが,イタリア語も堪能だったようで,イタリア語の良さを存分に生かした,明るくて歯切れのよいAriaが多く,心地よかったです。休憩30分を含めて3時間半の大作でしたが,まったく時間を感じさせないものでした。またチェンバロが,当時の時代の雰囲気を醸しだしてくれて,これもとても良かったです。   佐渡さんには,またMozartのオペラを芸文でやってもらいたいですね(2年前の「Così fan tutte」もみましたよ)。

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2017年7月22日 (土)

藤井四段の33戦目

 藤井聡太四段の勝敗は,まだNHKのニュースになっていましたね。上州Yamadaチャレンジ杯という若手だけが登場して,持ち時間20分という早指しで,すでに3勝して勝ち上がっていた藤井聡太四段でしたが,三枚堂達也四段に敗れました。200手を超える激戦で,最後は30秒将棋で何が何だかわからない感じでしたが,最後は後手の藤井四段の無念の投了となりました。これで今期は21勝2敗です。棋戦初優勝の期待がかかっていましたが,そんなに甘いものではなかったですね。
 竜王戦決勝トーナメントでは,その初戦で藤井四段を破ってその連勝をとめた佐々木勇気四段が,次の阿久津主税八段にも勝ち,強さをみせましたが,その次の相手であった久保利之王将には歯が立たなかったです。藤井四段に完勝した佐々木四段も,やはりA級棋士でタイトルホルダーの久保王将が出てくると,ダメでしたね。若手棋士は相手がまだ軽い間には力を発揮できても,一流棋士が出てくると力が出せないことが多く,そこがトップ棋士の貫禄と技なのでしょう。竜王戦はベスト4が決まり,次は松尾歩八段対久保王将,羽生善治三冠対稲葉陽八段になります。それで最終的な勝者が,渡辺明竜王に挑戦します。
 順位戦では,A級は2回戦が終わりました。本命だった羽生三冠に豊島将之八段が勝ちました。3年連続で新八段がそのまま挑戦ということになるでしょうか。2回戦が終わって,2連勝は,久保王将と豊島八段だけ(初戦が空きだった,深浦康市九段は1勝)。2連敗は行方尚史八段,佐藤康光九段だけです(2回戦が空きだった,屋敷伸之九段は1敗)あとは1勝1敗という状況です。もう一人の本命だった渡辺竜王は,深浦九段に痛い敗戦を喫しました。今期のA級は,佐藤天彦名人への挑戦争いも注目ですが,降級が3人という例外的な事態なので,厳しい降級争いにも注目です。現在2連敗の2人は降級候補でもありますが,どこまで巻き返せるでしょうか。

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2017年7月21日 (金)

早くも夏バテか

 さすがに疲れが出てきました。この2週間は,かなり働きました。今日は体調が最悪で,学生なら体調不良で欠席というところでしょうが,昭和のおじさんはちょっとのことでは体調不良といった「めめしい」(差別用語ではないですよね)ことは言いません。とはいえ,昼食はとれず,お菓子を2個食べただけでしたので,ふらふらしながら,教壇に立ちました。講義もあまり調子が出ませんでした(とくに初めは声が枯れていて学生は聞き苦しかったでしょう)。まあ,なんとかこなしましたが,そのうちガスター10が効いてきたらしく,徐々に復調し,その後のSkypeでの会議では,ほぼ普通の調子に戻っていました。
 それでも胃の不調が完治したわけではなかったので,休肝日としました。久しぶりに鍼にでも行きたいのですが,明日はオペラがあるので,時間をみつけるのが難しいですね(腰痛は,テンピュールのクッションのおかげで,かなり良くなっているので,鍼のお世話にはしばらくなっていません)。
 今回は,暑さ,暴飲暴食,疲れ,寝不足といった複合要因によるものですね。私は夏バテをしたことがかつてはほとんどなく,結構,強い胃腸をもっていると思っていたのですが,最近は,胃薬を飲まなければならないことが増えています。若いときと同じような調子でやっていてはいけませんね。

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2017年7月20日 (木)

山川隆一編『プラクティス労働法(第2版)』

 山川隆一編『プラクティス労働法(第2版)』(信山社)をお送りいただきました。いつもどうもありがとうございます。山川総監督(プレイングマネージャー)が,若手精鋭部隊を陣頭指揮しながら完成した教科書というところでしょうか。
 共著の教科書は評価しないと言ってきたのですが,この本は,かなり成功している気がします。執筆者の力量もありますが,図表が効果的に使われていて読みやすくなっているし(図表が下手な私からみると羨ましいです),本書の特徴とされている illustration も面白いですし,事例の紹介も的確です。初学者よりちょっと上くらいのレベル向けで,そうした人をターゲットとした教科書の戦いのなかでは,一歩抜けているかもしれません。

  それにしても本書の参考文献にあるように,労働法の教科書ってこんなにあるのですね。実務家が書いたものをいれるともっと多いでしょう。狭い市場にひしめき合うということなのか,拡張しつつある市場なので適量なのか。それに演習書も結構あるのですね。残念ながら私が編者をした『労働法演習ノート』(弘文堂)は,選から漏れていましたが。

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銀行の生産性

 14日の日経新聞の経済教室(井上知義・高口鉄平「企業のAI・IoT活用 非製造業 ゼロから構築を既存事業からの脱却急げ」)のなかで,非製造業のIoT投資が遅れているという話がとりあげられていて,そこで「銀行を例にとると,旧来の店舗窓口やATMを維持しながら,オンライン取引の普及に取り組んでいるため,投資増が必ずしも労働生産性の向上に結びついていないと考えられる。過渡期としてやむをえない面は当然あるが,いずれキャッシュレス社会を前提に,店舗のみならずATMも廃止する方向に踏み込まないと,こうした構図を変えることはできない」と書かれていました。
 裁量労働制のおかげで,私は,昼間に銀行に行くことも可能です。ほとんどオンラインサービスでまかなえますが,住民税の振込だけは,銀行(かコンビニ)でやっています。口座振替にすればいいのですが,20年くらい前にちょっとした引き落としトラブルがあり,そのときに取り戻すのがたいへんだったことがあったので,それ以来,自動引き落としにはしていません。駅前の某有名銀行の某支店を利用することが多いのですが,そこにはいつも何人かの客が待っています。多いのは,高齢者と主婦と学生です。それに加えて,事前対応する行員が2人くらいいて,警備員もいます。かなり狭いスペースに人がごちゃごちゃいる感じです。ATMで取引できないような人がいるのでしょうかね。ATMさえ利用しない人に,オンラインはもっとハードルが高いでしょう。だから銀行のほうは,窓口は必要だし,ATMも当然必要だと考えているのでしょう。しかし,もう一歩先をみておく必要もあります。高齢者は年齢を重ねるといつか歩行が困難となります。そういう歩行困難な高齢者が大きく増えたときにそなえて,オンライン対策の必要性は高いはずです。それにより銀行業務も効率化し,省力化することでしょう。
 先日,その銀行で,人生ではじめて資産運用の相談をしてみました。資産といっても,夏季賞与の運用をどうすればいいかといった程度のものです。銀行が普通に相手にする客と運用額の桁が2から3つくらい違うでしょうから,銀行も困ったのかもしれません。予約をしていましたが,対応してきた人は若い女性でした。若手をつけてきたところで,重要な客ではないとみられたのだろうなと思いました。まあ預金額はむこうは知っていたでしょうから,当然のことです。案の定,私の質問には,タブレットをみせて説明してくれるのですが,それは私が自宅でもみることができる画面でした。知識面でも,私がもっていたもの以上のものはありませんでした。会話することに意味があるという感じで,そこからこちらのニーズを探って提案するということのようでしたが,たいした提案はありませんでした。結局は,その銀行のキャンペーンをしていた外貨預金を強く推奨されただけでした。時間の無駄でした。おまけに,いろんな資料のパンフレットやコピーをどっさりもらいました。オンライン派の私には不要です。何かチグハグでした。
 でも経験してよかったです。銀行での人間の業務は減るという仮説は正しいと実感できたからです。余計なお世話かもしれませんが,私に対応してくれた若い行員の将来が心配になりました。いまや知識はネットで簡単に手に入ります。人間が対応するからきめ細かく対応できるというのは「可能性」にすぎず,実際に,個人がネットから簡単に得られる情報を上回るような情報をもち,プロとしてのアドバイスができる能力をもつ人はどれだけいるのでしょうかね。もちろん,私が資産家なら,もっとレベルの高い行員が登場したのかもしれませんが,いやしくも銀行の店舗で,そこに口座をもつ客への対応で出てきた以上,そんな変な行員を出してきたわけではないでしょう。
 携帯電話をAUから格安に変えたのも,店舗対応に意味がないと感じたからです。AUがあわてて料金引き下げをしようとしていますが,それでも今の携帯料金のほうが低いです。毎月の負担は劇的に下がりました。そもそも電話での通話はほとんどしないので,基本料金の高さがネックだったのです。複雑な料金体系も問題でした。複雑な料金体系だから,店舗での説明というニーズもあったのでしょう。これはビジネスモデルがおかしかったのです。料金体系をシンプルにし,基本料金を下げ,店舗対応を不要とするというのが,これからの携帯会社のあるべき姿でしょう。
 機械による雇用代替が進まないのは,人間による対応が必要と思い込んでいる企業が,ITやAIを活用した新しいビジネスモデルを構築し切れていないところに原因があります。このことは,新しいビジネスモデルがでてくれば,あっというまにそれが席巻し,少なくとも旧来の業務はなくなり,そこに張り付いていた人は,うまく転換できなければ余剰人員となるということを意味しています。
 そういえば銀行については,ネット銀行に口座を開設しました。海外での利用がしやすいことが理由でしたが,国内での利用も何も問題がありません。店舗がなくても何も支障がありません。上記の若い行員はそのネット銀行の名前を知りませんでした。Uberを知らないタクシー運転手に会ったときと同じような危うさを感じました。

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2017年7月18日 (火)

永野仁美他編『詳説障害者雇用促進法』(弘文堂)

  永野仁美・長谷川珠子・富永晃一編『詳説障害者雇用促進法ー新たな平等社会の実現に向けて』(弘文堂)を1年半くらい前にいただいておりました。どうもありがとうございます。たぶんお礼を書いていませんよね。遅くなって申し訳ありません。
 今回,障害者雇用のことを書く機会があったので,この本を読んで勉強してみました。非常にうまく作った本だなというのが最初の印象です。障害者雇用というと,ちょっと重い感じになりそうですが,明るい装丁で,内容も読みやすく,レイアウトもいいです。若い感覚がうまくフィットしたようです。
 障害者雇用は,私も関心をもっていて,かつて東大の若手たちと研究会を開いて報告書をとりまとめたこともあります。私の当時の関心は契約の自由と差別との関係というテーマにあり,そのなかでも「障害」は,最後に残された最も難しいテーマでした。男女差別で出てくるポジティブアクションとは異なり,そもそも何らかの配慮をしなければ雇用に到達しにくい障害者を,資本主義社会における労働市場においてどのように位置づけるのかは難問です。
 あのころの研究会では私は無理だろうと思っていた,雇用率制度とADAの差別禁止アプローチ(+合理的配慮)の重複規制が,日本法に入るとは夢にも思っていませんでした。あのときのメンバーでもあった永野仁美さんがフランス法を参考に,こうしたアプローチを主張していたのですが,その影響で立法にまで至ったのでしょうか。
 本書では実務的なことから理論的なことまで議論されていて,これ一冊で障害者雇用法制の主要な内容を網羅していると思います。障害者というと福祉という視点になりがちですが,就労という視点にしぼってまとめられた本書は,障害者雇用が法律の研究分野としての可能性を十分に感じさせるものです。
 いまの個人的な関心は,障害者という人でみるのではなく,障害を機能としてみて,それをいかにしてロボットやAIの発達により克服するかということにあります。障害者という概念が消えて,苦手な部分は機械でカバーし,誰もが自分のもつ個性を発揮できる社会の到来が理想だと思っていますが,AI時代にはこれが可能となりそうな予感があります。
 それとは別に,明治大学の小西康之君が,『講座労働法の再生』の第6巻の「若年期・高年期における就労・生活と法政策」という論文でも書いているように,60歳代の高齢者の能力や就労意欲の多様性を克服するため,年金支給は70歳以上に引き上げ,60歳代で働ける人は就労,働けない人は障害給付というドイツ法的なアプローチまで視野に入れると,「障害」概念の今後の理論的展開には大きな可能性があります。
 それはさておき,現在,障害者雇用促進法がどのような内容になっているかということは,教養としても知っておいたほうがいいでしょう。多くの人が読むべき本だと思います。いまごろになってこんなことを書いている私に言う資格はないかもしれませんが。

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2017年7月17日 (月)

プロ人材と独禁法

 昨日の日本経済新聞の朝刊にも出ていましたが,プロ人材の抱え込みが独禁法の問題とならないか,ということで,公正取引委員会が研究会を発足するということが記事に出ていました。非常に面白いテーマです。
 事前に公正取引委員会の人が私のところに来て話をしたとき,そこで思ったのは,労働法のアナロジーで考える場合に,労働者側の話と使用者側の話がゴチャゴチャにならないようにしなければならないということでした。もちろん非雇用型だと,労働者も使用者もないのですが,どちら側の競争制限行為を問題とするのかで議論の仕方も異なってきそうです。記事では,労働者的なプロ人材を使用者的な取引先が抱え込むことが問題とされていたので,使用者側的な立場にある人の「談合」が問題となるのでしょうね。
 私個人は,むしろ非雇用型のプロ人材の団結と独禁法の関係に関心があるのですが,彼らのほうは,どちらかという使用者側の人間が引抜をしない協定などをしてプロ人材を抱え込むことの問題点に関心をもっていました。芸能事務所とかプロスポーツ選手が具体的なターゲットです。
 たしかに,これは副業・兼業といった経産省の関心の延長戦上にある問題で,ここに独禁法でメスを入れるというのは興味深いアプローチです。
 プロ人材の引抜防止協定が結ばれたとき,これを優越的地位の濫用や下請法的なアプローチで対処することもありえるのですが,これをプロ人材のほうの団結で対抗できるということにしてみればどうでしょうか。労働者でいえば,使用者団体と労働者団体の交渉の問題となるということです。使用者側の競争制限行為があれば,労働者側も競争制限行為で対抗するのです。
  どうしてこういう発想をもったかというと,欧州での産別交渉で,たとえば経営者側の団体で,これ以上の賃金では労働協約を締結しないという「談合」をしたとき,これは理論的には競争制限的な行為として問題となり得ますが,労働者側も労働組合を結成してこれに対抗することができるのです。「談合」には「談合」を,です。こうなると力勝負の話になり,マイナスとマイナスが打ち消し合って,競争的な状況が成立しているとみることはできないのでしょうか。だからこそ労使自治が成立し,独禁法の問題から離れるということではないでしょうか(欧州では,労働組合は合法的なカルテルだと言われることがあります)。この論でいくと,雇われないプロ人材にも,同じことがあてはまるかもしれません。
 今後,独禁法の禁圧から解放されて組合立法ができた歴史のあるアメリカ労働法が注目されるところです。欧州の労使自治の研究やアメリカ労働法の分厚い歴史研究が,再び脚光を浴びるかもしれません。公正取引委員会の研究会での議論の展開に注目したいところです。

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瀬戸内寂聴『秘花』

 豊臣秀吉が,甥の秀次に関白の地位を譲った後,秀頼が誕生したために,秀次切腹・一族絶滅事件が起きたのは,よく知られている史実です。秀吉がなぜこのような狂気に陥ったのかについては,さまざまな説がありますが,長らく子が出来なかった秀吉に秀頼が誕生したために,甥が邪魔になったというのは,わかりやすい話としてよく伝えられているところです。そして,この秀次事件により,一族から秀頼以外の成人男性がいなくなり,これが豊臣家の滅亡につながりました。
 同じようなことが,能の世界でもあったということは知りませんでした。それが世阿弥です。こちらのほうは滅亡しなかったのですが。世阿弥は長らく自分の子がいなかったため,その後継者を弟の息子である甥の元重としようとしていました。その後,実子の元雅が誕生し,世阿弥は元重を後継者としたことを後悔し,元重を邪険に扱うようになります。
 世阿弥は,父の観阿弥の希望もあり,将軍足利義満の近習となり,その寵愛を受けます。衆道です。そのおかげで,観阿弥は大成功を遂げます。しかし,義満亡き後,流れは変わります。元雅は元重ほどの才能はなく,そして世阿弥に疎んじられた元雅は独自に道を切りひらき,やがて将軍家の庇護を受けるようになります。立場は逆転しました。そして,世阿弥は出家して70歳を超えていたにもかかわらず,理由も判然としないまま,佐渡に流刑となります。
 瀬戸内寂静の小説『秘花』(新潮文庫:Kindle版で読みました)は,「秘すれば花なり」で有名な世阿弥がちょうど佐渡に流されるときに,自分の人生を振り返って語ったという設定のものです。世阿弥が,衆道をとおして最高権力者たちの寵愛を受けていた少年時代,そして大人になってからの息子たちへの深い愛,甥との確執,そして流刑による最愛の妻との別離,佐渡で世阿弥の世話をした沙江という女性にみとられた最期という波乱万丈の人生が,ドラマチックに描かれています(後半は沙江の日記帳で語られています)。
 秀次と秀吉は確執というほどでもなく甥の秀次の自決で終わったのですが,世阿弥のほうは,甥との確執で敗れてしまったわけです。ただ後世に名を残したのは,世阿弥のほうだったのでしょう(元重は音阿弥の名で知られて,彼の手で観世流が大成したと言われていますが)。
  功成り名を遂げた者が,年老いてから流刑というこれ以上ないむごい仕打ちを受けるなか,その美しい人生の終わり方が見事に描かれています。 ★★★

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2017年7月15日 (土)

小池真理子『ノスタルジア』

 小池真理子『ノスタルジア』(講談社文庫)をKindleで読みました。ときどき小池真理子の本は読みたくなります。新作ではありませんが,Amazonのレビューなどを参考にチョイスしました。Amazonからの私宛のレコメンドには,さすがに含まれていませんでしたね。  父の友人で,父が死んだ後,母が頼りにしていた仙波雅之と,24歳も年が離れていたにもかかわらず恋に落ちた繭子。繭子はそのときまだ22歳でした。仙波には妻子がいたため不倫関係で,繭子の姉は,そうした不倫に溺れた妹のことを非難していました。  そんな仙波も9年間の付き合いのあと亡くなり,繭子は仙波との思い出を大事にしながら,姉から母と一緒に3人で住もうという呼びかけを断り,ずっと一人で小さな家に住んでいます。  そんな繭子のところに手紙が届きます。差出人は仙波俊之,すなわち雅之の息子でした。俊之は繭子と同じ年齢で,ちょうど46歳になっていました。繭子がはじめて雅之と会ったときの雅之の年齢と同じです。雅之とそっくりの俊之に会ううちに,繭子は徐々に俊之に惹かれていきます。そして徐々に,俊之と雅之との区別がわからなくなっていきました。  繭子のことを心配した姉は,俊之のことを調べるのですが,そこで驚くべきことがわかります。  当初はちょっと甘くて湿った感じの恋愛小説かと思っていたのですが,最後は幻想的なファンタジーになっていました。このストーリー展開には賛否があるかもしれません。繭子はかわいそうな女性だったのでしょうか。それとも燃えるような恋を二度もできた幸福な女性だったのでしょうか。  ★★★(女性のことを知りたい男性には勉強になります)

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広島日帰り出張

 昨日は,広島県労働委員会の委員研修の講師に招かれて,広島に行ってきました(その前の日は14都道府県の労働委員会の使用者委員の会議が,兵庫県担当であったため,そこでの講師もしました)。演題は,拙著のタイトルとおりの「AI時代の働き方と法」としました。現在の働き方改革の話をしてもよかったのですが,時間が限られているし,どうせなら私しか話せないような内容で話したほうがよいだろうと思い,このタイトルを選択しました(前日もタイトルは『第4次産業革命と雇用』と違っていましたが,やはりAIと労働政策の話が中心的な内容でした)。労働委員会での研修は,以前に佐賀と大分でやったことがあり,たぶんこれが3回目だと思います。やはり西日本が多いですね。
 講演のなかでは,自営的就労の話もしました。自営的就労については,公正取引委員会も動き出しており,今後,厚生労働省との縄張り争いが深刻となるかもしれません。私のところにも,先月,公取の方が話を聞きに来られましたが,まだ十分に論点がしぼれていない感じでした。ただ,ちょっと功を焦っている感じもあり,ほんとうは私たち研究者が地道な基礎研究をしたうえで,それを政策に反映させるという手順をふんだほうがよいのになという気はしています。
 私が労働法のニューフロンティアと呼んでいるように,自営的就労というテーマは,研究者にとって宝の山です。労働法の研究者も,競争法などの他分野の人たちとコラボしながら研究を進めていく必要があるでしょう。講演で呼ばれたときも,必ず自営的就労のことを話すようにしており,多くの人に関心をもってもらうよう努めています。
 それで広島の話に戻りますと,とても楽しかったです。なんと言っても,神戸から1時間くらいでいけるので,移動が楽でした。懇親会にも呼んでいただき,委員の方も職員の方もよくしてくださり,雰囲気もとてもよかったです。昨年から広島の公益委員をやっている山川和義君と久しぶりに会えたのもよかったです。短時間の滞在でしたが,広島にはとても良い印象が残りました。宮島は以前から気に入っていたところで,旅行に行ったこともあります。今回は時間がなかったですが,また近いうちに宮島に遊びに行きたいと思います。帰りは賀茂鶴ゴールドともみじまんじゅうをお土産に買いました(ついでに獺祭も買いました)。

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2017年7月14日 (金)

日経新聞(地方版)に登場

 14日の日本経済新聞の中部経済版に登場しました。勤務間インターバルについてのコメントです。電話インタビューで20分くらい話しましたが,掲載されたのはワンフレーズです。まあ,そんなものでしょう。
  日経新聞では,少し前に,別の記者から,第2電通事件の処理に関するインタビューがありました。法人が罰金で,経営陣は不起訴になりそうだが,それについて,どう考えるかというものです。かなり時間をかけて,誤解が生じないように丁寧に答えました(別に電通を擁護するわけではないですが,世間はなにかあれば刑罰を求めるが,それはいかがなものかということ,でも労基法違反は犯罪になりうるということを経営者に知らしめた意味は大きいということ,大事なのは事件の再発防止だが,それに必要なのは個々の企業だけの問題ではないということなど)が,これは記事になるでしょうかね。
  日本法令のビジネスガイドの最新号では,今回は,「女性活躍推進」をテーマにしました。先日の日本労働法学会でのワークショップでコメントをしたこともあり,これをテーマに取り上げました。
 有斐閣の判例六法の労働法分野の編集会議では,今回は,判例百選に掲載されているが,判例六法に収録されていないものの検討をしました。その結果,2件の裁判例が追加となりました。最新判例の掲載は2件となります。どの事件が追加されたか楽しみにしておいてください。民法改正による修正も検討しましたが,これは私にも勉強になりました。時効に関する規定の改正のインパクトはしっかり押さえておく必要がありますね。
 この会議では,3年前から京都支店に行って会議をしていましたが,神戸から京都支店はかなり遠く(気分的には名古屋に行く方が近いです),私にとっては不便でした。そこで,今回はSkypeで自宅からの会議参加をお願いしました。小さなトラブルはありましたが,無事終了しました。テレワークの時代ですので,SkypeやWEB会議でできるものは,できるだけそれでやるようにしましょう。大切なのは,マイクの性能と配置ですね。

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2017年7月12日 (水)

藤井四段31勝目(デビュー以来)

 藤井聡太四段が,加古川青流戦トーナメントで,都成竜馬四段と対戦しました。すでに2勝している相手で,早くも3戦目です。藤井四段は後手で,先手の都成四段がゴキゲン中飛車戦法を採用しました。藤井四段は途中押し込まれた感じで,玉を上部に引っ張り出され危ない感じにみえましたが,後手玉を1筋から攻めて,最後は見事に勝ちきりました。完勝したという感じではありませんでしたが,なかなか相手に決め手を与えず,相手が隙をみせたところで一気に襲いかかるという,まさに勝負師の将棋をみせてくれました。これで31勝目です。今期の成績でいえば,21勝1敗です。もちろん断トツの好成績です。
 棋聖戦は,羽生善治三冠が,挑戦者の斉藤慎太郎七段に勝って,3勝1敗で防衛です。最終局は,あまり見せ場がなく,羽生棋聖の完勝だったのではないでしょうか。先日のNHK杯では,松尾歩八段相手に,電撃的な逆転勝利をあげた斉藤七段でしたが,羽生相手には,力が発揮できなかったですね。一連の若手の挑戦のなかでは,斉藤七段が羽生三冠にいちばん歯が立たなかった印象を受けました。
 わが谷川浩司九段は,新しくタイトル戦に昇格した叡王戦の段位別予選の九段戦に登場し,南芳一九段と対局しました。かつては何度もタイトルを争った黄金カードである谷川・南戦も,最近では,ほとんど話題にならなくなりました。この将棋は,飛車を振った後手の谷川九段が穴熊にするという展開です。じっくりと相手の攻撃を待ったうえで,一気に逆襲して,久しぶりに谷川九段らしい切れ味のある快勝譜でした。やっぱり谷川九段には,こういう将棋を指してもらいたいです。

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2017年7月11日 (火)

日経新聞はホワイトカラー・エグゼンプションに関する記事を書かないほうがいい

 「脱時間給」という誤ったネーミングをつけて,それを改めようとしない日経新聞には困ったものです。今朝の記事によると,連合が,労基法改正案に含まれていた高度プロフェッショナル制度を修正条件付きで承認する方針にしたということのようですが,「脱時間給」という言葉で記事が書かれているので,これが労働基準法改正案41条の2の高度プロフェッショナル制度のことをいっているのかが,はっきりしませんでした。
 ご丁寧にも,「脱時間給」の用語解説までしていました。ホワイトカラー・エグゼンプションの言い換えとして使っているのですが,その定義は「労働時間でなく,仕事の成果に応じて賃金を決める仕組み」だそうです。ホワイトカラー・エグゼンプションって,賃金制度だったんだですかね。エグゼンプションっていうのは,ここでは適用除外のことで,労働時間関連規定の適用除外なのですが。どうして賃金制度の話になるのでしょうね。賃金が時間給の人は,ホワイトカラー・エグゼンプションを適用できないのでしょうか(実際にはそういう例はないでしょうが)。そんなことありませんよね。時間給の人に「脱時間給」が適用されることも理論的にはありえるのですが,そんなとき日経新聞はどう説明するのでしょうね。
 おかしな解説はまだありました。裁量労働制について,「裁量労働は仕事の配分を自分で決める点で脱時間給に似るが,労働時間で賃金水準が決まる」です。裁量労働制は労働時間で賃金水準が決まるというのは,意味不明です。裁量労働制は,成果型賃金に適合的な賃金制度のはずなのですが。時間で決まるというのは,基本給ではなく,時間外労働のところのことを指しているのでしょうか。たしかに,裁量労働制でも割増賃金はあります。ただ1日8時間とみなすことがほとんどなので,割増賃金は発生しません。たしかに,1日9時間と決めれば,1時間分の割増賃金は発生しますが,こういうところをとらえて労働時間で賃金水準が決まるというのは変です。また,裁量労働と高度プロフェッショナル制度が似ているのは,実労働時間に応じた労働時間規制(長さの規制,割増賃金の規制など)をしないというところがポイントなので,やはり上記の説明はずれています。労働法を知らない人が解説したことは明らかです。
 こういう怪しい記事を1面トップに載せるのはやめたほうがよいです。誰かチェックはしないのでしょうか。他の記事の信用性も疑われます。
 きちんとした記事を書けないのなら,事実だけ流してください。解説は不要です。AIのほうがもっとまともな解説を書くのではないでしょうかね。
 それで本論に入りますが,「高度プロフェッショナル制度」には,連合としては立場上(?)注文をつけざるをえないのでしょうが,現在の法案でさえ適用範囲が限定されすぎているので,これ以上の限定は不要です。健康確保も,それを本人にまかせてよいような人こそがエグゼンプションの対象とすべきなのです。やるべきなのは一般労働者に対する労働時間の規制強化による健康確保です(これは秋に少し実現しそうですが)。健康確保も,そのやり方は,エグゼンプションの対象者にふさわしい方法を考えるべきで,強制的に休ませるといったたぐいのことは,趣旨にあいません。
 ここはよく考えてほしいのです。私は,ホワイトカラー・エグゼンプションの適用範囲は,真にエグゼンプションにふさわしい自律的で創造的な働き方をしている人に限定すべきだと考えています。しかし,そうした限定をした以上,強制的な休息確保や健康確保は不要だと考えています。逆にいうと,健康確保や休息の強制をするのは,ホワイトカラー・エグゼンプションの適用対象者を,それにふさわしくない人にも広げているということを意味します。そちらのほうが,よほど問題なのです。
 これについては,ホワイトカラー・エグゼンプションの適用対象の範囲は,最初は限定していても,必ず広がると決めつけている人もいます。労働者派遣の解禁業務だってそうだったということを必ず言う人がいます。でも,私見では,ホワイトカラー・エグゼンプションの適用対象者の範囲は,法令で一般的な基準を作り(その際に連合も関与できます),個々の事業場で労使で具体的な適用対象者を決定し(ここでも過半数組合を組織していれば連合は直接的に関与できます),さらに本人の同意も必要という三段階のチェックをすべきだと考えています。それでもなお不安というのなら,それは労働組合が自分たちは抵抗能力がなく無能であるということを公言するようなものです。
 ホワイトカラー・エグゼンプションはなぜ必要か。それは新たな知的創造的な働き方が重要となる時代がくるときにそなえて,それに適合的な制度的受け皿を,現在の裁量労働制や管理監督者制のかかえる問題を発展的に解消して,新たに設けるというものです。具体的な制度設計は,この趣旨に適合的なものとして一貫したものにする必要があり,政治的な取引材料にしてはなりません。
 こうなると,厚生労働省は,行司役になるのではなく,何が正しい政策かを真剣に考えて,しっかりリードしてもらいたいものです。それは具体的には労政審の場での仕事になるのですが,労政審にそれができるでしょうか。期待と不安をもって見守りたいところです。
 労働時間制度をどう考えるべきかについては,拙著『労働時間制度改革-ホワイトカラー・エグゼンプションはなぜ必要か』(2015年,中央経済社)で詳しく論じているので,ぜひ参照してください。

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2017年7月10日 (月)

東京労働大学

 今年で何年目でしょうか。渡辺章先生から引き継ぎ,東京労働大学の最終回を担当してきました。テーマは労働委員会と不当労働行為です。2時間ではとても話しきれないのですが,ポイントをしぼりこんでやっています。
 そうした限られた時間のなかですが,解釈論のようなことばかりやっても受講者は面白くないでしょうから,今回は労働組合の意義,その憲法的保障の意義,そのようななかでの不当労働行為救済制度の意義など,少し背景的なことも話しました。  
 もちろん,誠実交渉義務については,譲歩の義務がないことを利用して,デッドロック待ち作戦をとるような態度はいけないということを,今年も力を入れて話しました。使用者は,合意達成を模索する前向きの態度をとらなければなりません。これは,義務というよりも,労働委員会の委員としての熱望という感じでもあります。受講生にはもっとさらっと話してもよかったのですが,私の熱い気持ちはどのように伝わったでしょうか。
   この酷暑の時期に東京に行って講義することは,体力的にかなりきついです。受講生からいただいた講義の終了時の拍手はありがたかったですが,もう今年で最後にするかもしれません。やはり東京労働大学は東京の人がやったほうがいいでしょう。出張はできるだけしないというポリシーも貫徹しなければなりません。

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2017年7月 9日 (日)

ローマ法王になる日まで

 最近,映画をみていなかったので,うずうずしていました。「ローマ法王になる日まで」というイタリア映画をみました。原題は,「Chiamatemi Fancesco - Il Papa della gente」(私をフランチェスコと呼んで-みんなの法王)というもので,現法王Francescoの半生を描いたものです。
 アルゼンチン出身のFancescoの本名は,Jorge Mario Bergoglio(ホルヘ マリオ ベルゴリオ)です。彼は学生時代に化学の研究をしていましたが,その後,イエズス会に入り,神父になることにします。順調に出世し管区長になりますが,ときはちょうどVidela軍事独裁政権の支配下の時代でした。反政府武装闘争をしている人たちをかくまったりしていた司祭たちが,次々と殺されていきます(拷問や虐殺のシーンは,それほどリアルには描かれていませが,恐怖は十分に伝わってきました)。Bergoglioも間一髪で難を逃れることになります。大統領に直訴して,武装勢力と関係のない者の救済を求めますが,一定の効果はあったものの,恩師のEstherは無残に殺されてしまいます。
 Bergoglioは,軍事政権が終わったあと,神学を学ぶためにドイツにいき,そこで知った「結び目を解くマリア」の絵の信仰に心を打たれ,アルゼンチンに帰り,田舎で家畜に囲まれながら神父としての仕事を細々としていました。そうした活動が評価がされて,法王の命令でブエノスアイレスに戻ることになります。そこでも貧民地区の土地開発をめぐる当局側とのトラブルでは,住民側の立場で戦います。そんなBergoglioが,ついに法王に選出されるところで映画は終わります。
 決して順風満帆ではなかったBergoglioの人生。仲間を助けきれなかったという深い挫折も経験しています。それだけにドイツから帰国したBergoglioは,困っている人に寄り添うことのできる筋金入りの宗教者になったのです。
 まだ存命していて,かつ世界最大の権力をもつ人の半生記なので,ノンフィクションのドキュメンタリー的な映画だとは受け止めることはできません。それでも,一人の青年が法王に登り詰めるまでの人生物語はそれなりに楽しめます。 ★★★(法王ものの映画は,いつも面白いですね)

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2017年7月 8日 (土)

当然の最高裁判決ですが

  以前にこのブログでも紹介したことのある医師の割増賃金に関する事件について,最高裁判決が出ました(平成28年(受)第222号地位確認等請求事件,平成29年7月7日第2小法廷判決)。結論は予想どおりで,これまでの判例の踏襲です。下級審が,割増賃金込みの合意を認めていたのを覆し,通常の賃金の部分と割増賃金の部分との判別(分別)性がないので,割増賃金が支払われたものと認めることはできないとしました。前にも書いたように,高裁判決は,LSの学生が書けば不可となるような内容で,判例変更がされることを期待してチャレンジしたのならともかく,業務の特殊性とか年俸額が高額であるとか,「雰囲気的なこと」で病院を勝たせてしまっていました。最高裁はお灸をすえたのでしょう。
 この事件は,個別的デロゲーション(derogation)の論点(ここでいうデロゲーションとは,法の保護規制があっても,労働者が真の自由な意思による同意をしていれば,その保護規制を下回る場合でも有効としてよいということ)として採りあげられるべきでした。労基法37条に関する判例の示した判別性の基準は,強行規定の解釈を示した判例なので,強行性があります(ここでの強行性とは,当事者の合意で,労働者に不利な内容にできないこと)。業務の特殊性とか高い賃金額であるといった理由で,その例外を肯定できないのは当然のことです。医師が特別なんて言い出すと切りがありません。せいぜい立法論です。
 解釈論としてアタックするなら,ここはシンガー・ソーイング・メシーン事件や日新製鋼事件の最高裁判決を援用されるべきでした(拙著『最新重要判例200労働法(第4版)』(弘文堂)の第91事件と第92事件)。この2判決は労基法24条の賃金全額払いの原則に関するものです。すでに最高裁は使用者が労働者に対して有する債権での相殺により賃金を減額することを24条違反としていました。そのため,相殺に労働者が同意をしていても強行性に反するので無効となるはずだったのですが,最高裁は,上記の2判決で,まず労働者からの賃金債権の放棄について,ついで合意による相殺について,自由な意思に基づく場合には有効と判断したのです。
 実は割増賃金の判別性との関係では,テックジャパン事件の最高裁判決(前掲拙著の第104事件)で,労働者の放棄の自由意思性も争点となり,結論として自由意思性が否定されていました。そこでなされたのは,将来の額もはっきりしない割増賃金請求権の放棄は自由意思によるものとはいえないという判断でしたが,本件では,ここをもう一度採りあげて,自由意思論で攻める手はあったのではないかと思うのです。病院側弁護士は,ひょっとしたら,そういう主張をしていたのかもしれませんが,そうだとすると最高裁が,そこを完全無視したのは,たいへん問題です。
  今回の判決により,立法論としてホワイトカラー・エグゼンプションの議論を加速する可能性があるという意見もありますが,従来の判例が確認されただけで,プロの目からは衝撃度はほとんどありません。そもそも,医師は研究職を除きエグゼンプションの対象にすべきではないと考えています。むしろ大切なのは,解釈論としてのデロゲーションの議論をしっかり進め,本件での医師の業務の特殊性や高額年俸などは,労基法37条(に関する判例)と抵触するような合意の自由意思性の判断に盛り込んでけばいいのだと思います。それは法改正をしなくても解釈として十分に可能であり,しかもそのほうが,事案に応じた妥当な処理ができるでしょう。今回は,最高裁に,そういう解釈をとらせることができる絶好のチャンスだっただけに,非常に残念でもあります。
  こういう事件は,たんなる当事者間の紛争ということではなく,国の政策にもかかわるきわめて重要なものです。高裁判決の存在を知らなかったのは私の不覚ですが,知っていれば研究会で報告して評釈を書いて,最高裁に,この論点で何らかの判断をしてもらえるよう挑戦したかったところです(私の評釈を読んでもらえるかどうかわかりませんが)。判例情報の早期収拾の必要はないと前に書いてしまいましたが,こういうこともあるとなると,速報の入手も大切ですね。

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2017年7月 7日 (金)

前例を無視して,建設的破壊をせよ!

 七夕ですが,いまさら何を願うかということがありますが,健康や家内安全というのはちょっと平凡なので,あえて願うなら,創造的な仕事がしたい,ということでしょうか。いくら頑張っても,たいしたことはできないのですが,それでもそういう気概だけはもっておきたいものです。
 少し前の日本経済新聞(7月2日)に「トヨタ,『第3の創業』できるか」という記事が出ていました(工藤正晃氏の署名記事)。トヨタでは,従業員数が36万人に膨らんでいるなか,豊田章男社長は「新しいことをリスクとみる文化が強い」と危機感を強め,そして,「競争相手とルールが大きく変わろうとしている。建設的破壊と前例無視が必要だ」と話したということが紹介されていました。
 自動織機で創業したトヨタは,社長の祖父の喜一郎氏が,80年前に欧州で既存の繊維業が滅ぶ行く光景をみて,まだ創業の事業が安定していたにもかかわらず,自動車製造に踏み切ったそうです。そうした経験をもつトヨタが,いま第三の創業を目指しているのです。
 トヨタのこのチャレンジは,新聞でもよく報道されているので,私は授業や講演でも,よくふれています。トヨタほどの大企業でも,新しいことに積極的にチャレンジしていく必要があるのでしょう。いや大企業だからこそ,沈没しかけたら早いのです。思い切った舵切りが必要なのでしょう。
  「前例無視」というところがいいです。何も考えず前例を踏襲することこそ大切だ,と考える文化が危険なのですが,よくそういう文化をもつ組織に遭遇します。組織の有職故実に精通している人が幅を利かせているようなところには,将来性はありません。
 トヨタほどの企業でも,モデルチェンジをしていくのです。現在の企業が,そのまま安泰ということはありません。製造業に就職したつもりが,ソフト産業に変わってしまったということもありうるのです。企業がそうなので,労働者のほうも,変化が求められます。労働者にも,建設的破壊が必要です。
 平家物語がいうように,この世は無常で,盛者必衰ですが,そこで生きながらえるためには,破壊が必要なのです。以前にこのブログでもとりあげたように,生物はかつては自分の遺伝子をそのまま増殖させて存在し,死というものがありませんでしたが,そうした生物は大きな環境変化にあえば簡単に絶滅してしまいました。そこで,環境の変化のなかで遺伝子を確実に残すために,有性生殖により遺伝子をシャッフルして多様化し(子孫を残す),そして古い個体は死んでいくということになりました(性と生と死)(田沼靖一『ヒトはどうして死ぬのか』(幻冬舎新書)を参照)。
 このことは,企業や労働者の「生存戦略」にもあてはまりそうです。他の「遺伝子」を積極的に取り入れて環境変化に強い「遺伝子」を作りだし,それとともに古いものは寿命が来たものとして破壊していくということが必要なのです。ほんとうの遺伝子は,アポトーシス(細胞の自殺)のメカニズムがありますが,企業や労働者の遺伝子は,アポトーシスは働かない(社長の定年というのはアポトーシスの一種でしょうが,相談役として残るなど,なかなか組織からいなくなってくれないことが,いま問題となっています)ので,意識的に古いものを「殺していく」という破壊行為が必要なのです。
 物騒な話になってきましたが,大事なのは創造です。そのためには破壊も必要だよ,という当然のことを再確認してみました。

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新たな1勝

  藤井聡太四段が,順位戦C級2組で,中田功七段と対局しました。どんなに他の棋戦で勝っても順位戦で取りこぼすと,昇級が遅れます。名人への道でもあります。だから棋士にとって順位戦はきわめて重要な棋戦です。
 中田七段は,コーヤン流三間飛車という名前も付いているくらいの三間飛車のスペシャリストです。藤井四段との初手合いでも,後手の中田七段は三間飛車で臨みました。藤井四段は居飛車穴熊にし,中田七段の攻撃をしのいで,最後は見事に中田玉を詰ませました。藤井四段に力強さというものはとくに感じませんでしたが,ここ一発の若手キラーの得意戦法を撃破し勝ちきったことで,再出発のための大きな1勝となったことでしょう。これで順位戦は2連勝です。また今期20勝1敗となりました。もちろん現時点で対局数,勝ち数,勝率の3冠王です。
 もう一つ,王位戦が始まりました。羽生善治三冠に,菅井竜也七段が挑戦です。菅井七段は,谷川浩司九段の弟弟子の井上慶太九段門下です。羽生三冠は,棋聖戦では,同じ関西勢の斎藤慎太郎七段と対局しています。名人戦でも,関西の稲葉陽八段(菅井七段の兄弟子)が登場しました。稲葉八段は佐藤天彦名人に惜しくも敗れたものの,檜舞台に次々と関西の精鋭達が登場しているのは嬉しいことです。
 そこで王位戦の第1局ですが,菅井七段の快勝でした。先手の羽生王位の居飛車穴熊,後手の菅井七段は,得意の振り飛車で,途中で穴熊に構えました。とくに終盤の攻防は見応えがありました。飛角両取りがかかり窮地に陥ったようにみえた菅井七段でしたが,両取り逃げるべからずの格言どおり,これを放置して果敢に攻めていきました。羽生王位が苦しんで持ち時間にも大差がつくなど,菅井七段の充実ぶりがうかがえました。
 王位戦は2日制の七番勝負で長丁場ですが,菅井七段にとって,まずは幸先よいスタートとなりました。

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2017年7月 5日 (水)

藤井四段の高校進学問題

 余計なお節介でしょうが,藤井聡太四段の高校進学が話題になっています。どうも本人は進学したくないと言っているようです。最近の棋士は大学に進学する人もいますし,東大卒の棋士もいます(片上大輔六段)が,少し前までは高卒がほとんどでした。谷川浩司九段も高卒です。ちなみに谷川九段のお兄様は東大卒でリコーに就職されたのは有名な話です。故米長邦雄永世棋聖は,兄は自分よりバカだから東大に行ったと語ったのは有名な話です。学歴を超越した天才集団の世界なので,無意味に高校に進学する必要はないでしょう。
 何があるかわからないから高校くらい出ておいたらというお節介な大人の話に耳を傾けないほうがいいです。たとえば20年後の社会。藤井四段まだ34歳です。将棋界がどうなっているかわかりませんが,一般社会でも学歴の意味は大きく変わっているはずです。大学に出ていても仕事にあぶれた人たちがあふれているでしょう。ほんとうにAIに代替されない能力をもっている人しか生き残れないのです。
 藤井四段のような特殊才能がない普通の人であっても,無目的に高校や大学に行くのはリスキーとなりつつあります。10代の貴重な時間を何に割くかは,これからの人生を左右する重要なことであり,しっかりと人生設計を考えたうえで自己決定していく必要があります。いまの若者はこのあたりの精神年齢が低いように思えるのが少し心配です。藤井四段が自分で考えて高校に進学せず,将棋に邁進するということは素晴らしいことです。もし何かのアクシデントでうまくいかないことがあっても,自己決定した道であれば,納得できます。そして,そのときの再チャレンジに必要なことは,おそらく高校や大学(少なくとも法学部)に行っていても学ぶことはできていないでしょう。

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2017年7月 4日 (火)

フリーランス

 昨日の日本経済新聞の夕刊に少しだけ登場しました。フリーランスに関する政策についてのメールインタビューです。フリーランス協会の方が,昨年,私が経済産業省の「雇われない働き方」に関する研究会で行ったプレゼンを聞いておられ,拙著『AI時代の働き方と法』(弘文堂)も読まれたようで,その後,私にコンタクトしてこられました。先月には,東京に行ったついでに,意見交換もしました。そうしたことから,今回も協会から日経の記者に私が紹介され,今回の取材となりました。
 今回のインタビューで私が気をつけてほしいと注文をつけたのは,フリーランスにも労働法上の保護を,ということではいけない,ということです(以前に別のインタビュー記事で,私の発言のなかに「保護」という言葉を勝手に使われたので,このブログで釈明したことがありました)。労働法上の保護を及ぼすべきようなフリーランスもいます(その多くは偽装自営業者)が,それとフリーランス協会がおそらく想定しているであろうフリーランスとは違います。
 もちろん,自営であっても特定の取引先との経済的依存関係がある場合(準従属労働者のケース)もあって,そうした者に対する法政策を考えていくことも,もちろん必要です。しかし,より理論的にも難しく,かつ重要なのは,従属性がない自営業者に対する政策です。従属性がない以上,労働法と同じような形の保護はおかしいし,そこで保護を認めようとすると,自由と保護のいいとこ取りだという批判が当然出てきます。自営業者に必要なのは,従属労働者としての保護ではなく,経済的自立のためのサポートなのであり,そのサポートの内容は,労働者への保護とは違うものでなければなりません(詳細は,上記の拙著の第7章を参照してください)。たかが言葉の問題かもしれませんが,保護という言葉をフリーランスに使うと,フリーランスに対する政策への反発が強まり,うまくいかなくなるおそれがあります。政策を進めるためには,表現にも注意を払って,十分な戦略をもって進める必要があると考えています。経済産業省が担当役所でしょうが,くれぐれも功を焦らないようにお願いしたいものです。

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2017年7月 3日 (月)

井戸さんが5選

 兵庫県知事選は,サンテレビでは,開票早々に現職の井戸さんの当選確実でした。おめでとうございます。勝谷さんには,もう少し接戦をしてほしかったけれど,30万票差ということでは,どうしようもなかったですね。カツヤマサヒコshow のアシスタントをしていた女子アナの榎木麻衣さんが,お通夜の席のような悲しそうな顔をしていたのが印象的でした。本人の敗戦の弁が,Yahooニュースで出ていて,彼らしくてよかったです(言葉が下品でしたが)が,やはり最大の敗因は髪型を変えて,県民に迎合したような印象を与えたところではなかったでしょうか。政見放送も一回だけ見ましたが,あまり上手ではなかったです。テレビの人ですが,コメンテータとしてはいいけれど,自分が主役で人に訴えかけるという面では,現職の井戸さんとは役者が違いました。
 でも,共産党以外はオール与党の現職に果敢に挑んだ戦いには,ある種の男のロマンも感じました。彼は有名人で一般人とは違うとはいえ,組織の支持のない候補でした。兵庫県への愛を必死に訴えかけていたことは,よくわかったのです。その情熱で64万票を集めたというのは,ある意味ですごいことです。
 今回残念だったのは,投票率が低かったことです。年齢別の投票率の数字はもっていませんが,私の周りでは選挙に無関心な若者が多かったです。若者が戻ってこない県になっている兵庫県に,選挙でも若者が背を向けているような気がしました。ここに兵庫県の深刻な問題があります。井戸さんは,その抜群の安定感をいかして,5期目を自身の県政の総決算として,兵庫県の魅力をいっそう高め,若者が未来を感じる県になるよう,ぜひ取り組んでもらいたいです。71歳は高齢には思えますが,気力もまだ充実しておられるようですから。
 一方,都議会選は,兵庫県の知事選とは違い,盛り上がりました。都民ファーストというわかりやすいネーミングの党が,都民の心をつかみ,小池人気もあって,歴史的大勝を勝ち取りました。でも多くの人が指摘するように,自民党が勝手に転んだという面もあり,これだけ次々と問題が発生して自民党が勝てば,都民は日本中から馬鹿にされていたことでしょう。
 今回のように風が吹いて当選した候補には,いろいろな人が混じっているはずですが,どっちにしても小池チルドレンでいいのです。公明党にせよ共産党にせよ,個々の候補者ではなく,党に投票しているのです。都民ファーストは小池党ですから,都民は小池さんに投票したようなものです。党内で小池さんといろんな議論をすることは必要ですが,最終的に決めた政策は一枚岩で行かなければならないでしょう。小池さんのリーダーシップが見ものです。
 負けたとはいえ,自民党はまだ23議席あります。民進党は,今回の風にも乗れず,さらに議席を減らして5議席となりました。現有が7議席なので,減り方はわずかですが,民進党には未来がないということがはっきりしました。これから数回の選挙で,社民党と同様,この政党も消えていくことでしょう。
 都民ファーストにせよ,以前の大阪維新にしろ,これまでの地方自治におけるアンシャンレジームを打破しようとする強烈な突破力のある人が現れ,改革の波を起こしてきました。やはり,オール与党はあまり健全ではありません。4年後の兵庫県知事選は,どうなっているでしょうか。

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2017年7月 2日 (日)

藤井四段30連勝ならず

 藤井ブームがこれで沈静化するでしょうか。藤井聡太四段の連勝は29で止まりました。佐々木勇気五段の将棋は完璧でした。藤井四段はノーチャンスだったですね。将棋は先手が,正しく指してミスをしなければ勝てるということでしょう。佐々木五段の豊かな才能を感じさせられた一局でした。でも,藤井四段の29連勝,しかもデビュー以来ということがつくと,相撲の双葉山の69連勝,女子レスリングの吉田沙保里の206連勝に,匹敵するといえば言い過ぎでしょうか。
 将棋ファンとしては,マスコミがこれだけ注目してくれたことに喜びを感じるとともに,あまりに一般の人が将棋を知らないのだということを再発見もできました。棋士の方,もっと普及に頑張りましょう。ひふみんばかりでは,イメージが偏ります。
 いつもの棋戦情報に戻ると,棋聖戦の第3局は,挑戦者の斎藤慎太郎七段が,羽生善治三冠に勝ちました。後手の羽生三冠が意表をつく振り飛車で,斎藤七段は穴熊で対抗し,これに羽生は猛烈に攻めかかりましたが,斎藤七段はしっかりかわし,最後は羽生玉を見事に仕留めました。これで流れが変わるでしょうか。
 女流王位戦は最終局にまでもつれましたが,里見香奈女流王位が伊藤紗恵女流二段に勝ち防衛しました。女流の将棋は,激しい攻め合いが多いのですが,今回もなかなか面白かったです。伊藤さんは,見せ場を十分に作ってくれました。
 順位戦はB級1組もついに始まりました。わが谷川浩司九段は,今期も不調ですが,順位戦初戦は,ハッシーこと橋本崇載八段に大逆転勝ちで幸先の良い出だしです。最近,ハッシーには連敗していたので,ここでの勝利をきっかけに復調をはたしてほしいです。
 昇級組の斎藤七段は,九段に昇進した木村一基九段に勝ちました。勢いに乗っています。もう一人の昇級組の菅井竜也七段は,阿久津主税八段に敗れました。そのほかは,前期惜しくも昇級を逃した山崎隆之八段は,前期ぎりぎりで降級を逃れた郷田真隆九段に勝ち,B級1組の常連となりつつある松尾歩八段は,丸山忠久九段に勝ちました。糸谷哲郎八段は明け番です。
 今期のB級1組は名人経験者(谷川,丸山),竜王経験者(谷川,糸谷)がいるなどハイレベルです。前王将の郷田九段もいますし,現在,羽生三冠に挑戦中の斎藤七段もいます。そして菅井七段も,王位戦で羽生三冠への挑戦を決めました。谷川九段にはA級復帰を目指してもらいたいですが,これだけの新旧の実力者がそろうと,現実的には,残留を目標とすることになるでしょうかね。

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兵庫県知事選

 今日,三宮を歩いていたら,勝谷誠彦さんの選挙カーが最後のお願いをしていましたね。 私が出演したカツヤマサヒコshowが3月に終わったのは,知事選への出馬を考えていたからでしょうか。すでに昨年12月くらいに,3月で番組終了の噂を聞いていたのですが,てっきりサンテレビさんから勝谷さんがクビになったものと思っていました。真相はよくわかりませんが。
 ということで知事選は,現職の井戸敏三さんと勝谷さんの事実上の一騎打ちです。普通に考えたら,現職で,とくに失政もない井戸さんが,順当に再選となりそうですが,弱点がないわけではありません。5選目は長すぎるのではないか,71歳は高齢ではないか,という点です。多選も高齢も,能力主義からすると,別に問題はないということかもしれません。ただ,同じ人間が(県の)最高権力者の地位に長く就くことじたい,本来は忌避されるべきことともいえます。勝谷さんは,そこを突いていこうとしたのでしょうが,どこまで県民に声が届いているでしょうか。
 県民は,自分たちの将来を考えて,ぜひ投票をしてもらいたいと思います。多くの無関心層がいるようですが,知事の1期4年は長いです。私は投票するもしないも,個人の自由という考えをずっととってきたのですが,いまは少し違います。やはり,これからの兵庫県政を誰に託すかについて,自分でよく考えて投票することは,県民として重要なことだと思います。

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