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2017年6月26日 (月)

野川先生の書評に多謝

 拙著『AI時代の働き方と法-2035年の労働法を考える-』(弘文堂)について,日本労働研究雑誌の最新号(7月号)で明治大学の野川忍先生に書評をしていただきました。弘文堂のさくらんぼさん経由で,PDFファイルを送ってもらいました。日本労働研究雑誌のほうから,本書の英文タイトルの問い合わせがあったと聞いていたので,書評に取り上げていただけることは事前に知っていましたが,どなたが担当されるのかは知りませんでした。すでに経済学や経営学の専門家の方からは書評をいただいていたのですが,法学者がどのような反応をするのかは興味あるところでした。もちろん,ある意味で(?)労働法学を挑発した本なので,まともに相手にされない危険性もある,と思っていたのですが,野川先生はよく引き受けてくださいました。書評の内容は,本書の意図を十分に汲んでいただいており,たいへん感謝しています。
 限られた字数なので,野川先生の本音は十分に書かれていないかもしれませんが,「突っ込みどころ満載」とされていることから,言いたいことは山ほどあったのでしょう。いつか,どこかで論文で発表していただけるのかもしれません。そして,それは「おそらくこれこそ著者のねらい」と書かれているとおりなのです。既存の枠内にとどまらず冒険をして議論を喚起するということをしなければ,学問は発展しないというのは,学者修行を始めた当初から,山口浩一郎先生や諏訪康雄先生にたたき込まれていたことであり,私はそれを愚直に実践してきたつもりです。たとえ菅野シューレのなかでは異端になってしまっても,それはそれで存在価値があれば自分の人生としては満足行くものです。
 野川先生に最後に書いていただいた「高度に知的鍛錬に裏打ちされた重厚な学問的産出を中断することのないよう,切に願わずにはいられない」というのは,こんな軽薄な本を書いているようではいけないという先輩からの叱咤激励なのかもしれません。もっといえば,野川先生自身の書かれている『労働協約法』(弘文堂)のような本を書かなければならないということかもしれません。実は山口先生からも,本書には好意的な反応をいただきましたが,少し前までは,もっとしっかりしたものを書かなければならないというお叱りを受け続けていました。
 研究者としての私のことを心配してくださる先輩諸賢のアドバイスは,ありがたいことなのですが,私の考えは少し違うのです。たしかに,法学の本というのは,既存の文献や判例を詳細に紹介・分析し,外国法も参照しながら,これらとしっかり「対話」をし,慎重に一歩を踏み出す(解釈論や立法論を提起する)というスタイルのものを書けば手堅く重厚感が出てきます。学問的貢献度も大きいでしょう。拙著でいえば『労働条件変更法理の再構成』(有斐閣)は,それに近いスタイルです(慎重さは希薄かもしれませんが)。私も後輩にはそういうものを書けとアドバイスします。
 ただ現在の私の考え方では,本書のようなものこそ,高度かどうかはともかく「知的鍛錬に裏打ちされた……学問的産出」だと思っているのです。あえて「重厚感」をもたせないスタイルにしていますが,日常的な知的鍛錬は誰にも負けないつもりでやっています。既存の労働法学の議論の定跡は,だいたいわかったつもりです。実はそこから多くの知的刺激を受けなくなっているところが問題なのです。むしろ,定跡を崩して,何を作るかこそが大切だと考えています。そこに知的創造性が重視されるAI社会に共通の課題があると思っているのです。本のスタイルの重厚性や軽薄性は,知的産物の発信方法の違いによるものです。広く発信して理解者を広げていけば,社会的発言力は高まるでしょう。たとえ軽薄感があっても,そのなかに本当の知創造性があれば,それでよいと割り切っています。その意味で,本書の発信方法は,若干中途半端なのかもしれません。新書よりは難しく,プロ向けには軽薄感があるのでしょう。ただ,そうした点も本書の個性であり,それはそれで面白いのではと思っています。……という軽薄さがいけないということかもしれませんが。

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