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2017年6月12日 (月)

湊かなえ『リバース』

 湊かなえ『リバース』(講談社文庫)は,彼女の作品にしては珍しく男性が主人公のミステリーです。やや屈折した男性心理の細かい描き方には,違和感が残るところもありましたが,小説自体は,精密で無理のない構成に,いつもながら感心しました。以下,ネタバレあり。  「深瀬は人殺しだ」という言葉から始まります。深瀬と大学の同期である村井,谷原,浅見の4人の間には,墓場までもっていかなければならない秘密がありました。それは村井の別荘での夜,同じ仲間であった広沢が車の事故で死んだのですが,問題はその原因でした。実は,別荘に遅れてきた村井が,最寄りの駅に迎えにきてくれないかと頼んできました。タクシーはすぐには来そうになく,村井の別荘に来させてもらっているという負い目もあった4人は,すでに酒宴が始まっていましたが,つきあいでいやいや飲まされていた広沢に運転するように頼みます(酒の飲めない深瀬は運転免許がありませんでした)。そして,その途中で広沢は事故死するのです。広沢が飲酒していた事実こそ,4人の秘密でした。飲みたくもない酒を飲まされた広沢に,運転に無理に行かせたこと(村井は車で迎えにきてもらうことにこだわったこと)に,彼らは負い目を感じていました。  そんななか,「深瀬は人殺しだ」という手紙が,深瀬が付き合い始めたばかりの美穂子の職場に届きます。深瀬は,ひょっとして広沢の事故の真相を知っている者が脅迫状を送ってきたのだと思います。深瀬は自分は人殺しではないということを説明するために,美穂子にありのままを伝えます。しかし,美穂子は深瀬を人殺しと断じました。そして二人は別れることになりました。  その後,浅見は社宅の駐車場の車に「人殺し」とする紙を貼られ,谷原は職場に,村井は父親の選挙事務所に同様の手紙が送られてきました。いずれも悪質ないたずらとして扱われましたが,当事者たちは,広沢の事故の真相を知る誰かが復讐しているのではないかと考えます。そんななか,谷原が駅のホームから突き落とされるという事件が起きました。幸い,命は大丈夫でしたが,4人は恐怖におののきます。  深瀬は,広沢の一番の親友であったという思いから,広沢の故郷にまで行き,誰が手紙を送ってきているのかを探しだそうとします。少しずつ手がかりが出てきます。そして,最後に驚くべき真相が明らかになります。  美穂子が受け取った「深瀬は人殺しだ」は,美穂子のストーカーがやった単なる嫌がらせにすぎませんでした。しかし,残りの3人への嫌がらせは,広沢の事故に関係していました。ところが,広沢を(結果として)殺したのは深瀬だったのです。たとえ故意によるものではないとしても。ここが巧いところでしたね。  この本を読むと,コーヒーが飲みたくなります。でも蜂蜜はパスかも。 ★★★(ミステリーの秀作でしょう)

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