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2017年6月24日 (土)

前川氏の記者会見の感想

  小林麻央さんの訃報に涙し,豊田とかいう女性議員の「ハゲ~」という言葉におそらく多くの男性と同様強い憤りを感じながら,あまりに馬鹿馬鹿しい低レベルの暴力パワハラに失笑を禁じ得ないという「怒哀楽」の一日のなか,感情をおさえ冷静にみたのが,前川喜平元文部科学事務次官の日本記者クラブでの会見をYoutubeでした(前川氏の名前の「喜」で,喜怒哀楽が完結しました)。
 行政の決定プロセスの歪みについての衝撃的な告発だと思います。内容は生々しくかつ理路整然としています。もちろん,前川氏の証言は,あくまで文科省側からの認識によるものです。組織防衛の匂いがまったく感じられなかったわけではありません。実名をどんどん出したのは,相手が逃げられないようにするためで,文科省に圧力をかけた官僚への恨みは深いものだとも思いました。いずれにせよ,この告発を,官邸側は黙殺することはできないでしょう。
 それにしても国家戦略特区は,特定の人に恩恵を与えるものであるから,その対象決定プロセスはそれだけ透明性が必要だという趣旨のことが語られていたのは,非常に説得的でした。もちろんそれをあまり言い過ぎると既得権益を守ることにつながりかねないのですが,そこは前川氏もしっかり説明しています。つまり獣医学部新設について,特区の趣旨に合致しているかどうかを示すのは,専門的知見のある農林水産省と厚生労働省のほうの責任なのに,それが示されないまま手続が進められたということです。前川氏は,そこに怒りと憤りを感じていたことがよくわかりました。「加計」が先に決まっているので,あとはどう辻褄を合わせるかという,というような行政ではダメだということです。これを行政プロセスの歪みと呼んでいるのでしょう。文科省は,3省庁の連携ができるよう萩生田副長官に調整を託したようですが,それも功を奏せず,あとは「敗戦処理」をするだけになったという生々しい証言もしていました。
 最後に,恒例の署名のところで,「個人の尊厳」と「国民主権」という言葉を書かれていました。これは公務員として働く場合の国民への姿勢ということではなく,公務員にも尊厳をもった個人としての面があり,また一主権者なのだという気持ちをもって働いてほしいという後輩国家公務員へのメッセージのようです。これはまさに前川氏が,政治権力によって,強い圧力を受け,また文科省全体が,「黒を白と言わされる」ような状況に置かれたなか,良心の自由は重要だ,自分たちも主権者なのだということを強調したかったのでしょう。そこには,国民の知る権利にこたえるために,内部告発した自分の行為を正当化したいという気持ちも表れているように思います。もとより,私は公務員がこういう気持ちをもって仕事をすることは望ましいと考えており,逆にいうと,こういうことをあえて座右の銘のようなものにしなければならないほど,国家公務員は,たとえ高級幹部のような存在であっても(逆にそうだからこそかもしれませんが),政治家との関係ではhumilatingな立場に置かれているということが残念です。
 一方で,前川氏は,自分たちの行政が,どのように一般の国民のためになっているのかということを,それほど強く訴えた感じはありませんでした。自分たちのprofessionへの誇りはよくわかりましたし,加計や森友の問題点もよくわかってきました。しかし,官邸との関係で,蛇ににらまれたカエルであると述べて,自分たちの無力ぶりを強調していたところには,違和感もありました。国民にとっては,蛇ににらまれたカエルも,蛇にすりよっているカエルも,同じカエルです。加計をめぐる行政内の問題は,首相とお友達ではない圧倒的多数の国民にとっては,同じ穴のむじな(カエル)たちのやりとりであったように思えたのは,私だけでしょうか。

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