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2017年6月13日 (火)

拙著への書評御礼

  「改革者」(政策研究フォーラム)という雑誌の2017年6月号で,東海学園大学経営学部准教授の南雲智映氏が,拙著『AI時代の働き方と法-2035年の労働法を考える』の書評をしてくださりました(この雑誌の名を聞くのは初めてでした)。法学系以外の方がどのような感想をもつかは気になるところでしたが,とても良い書評をしてもらったと思っています。
 評者は,「著者はAI・ロボットに置き換わることを前提に議論を進めるが,本当にそうなのか」と疑問をなげかけます。評者の考えでは,代替があっても,同時に「正社員業務がより高度化・複雑化していくシナリオも考えられる」し,「担当者が明確でない仕事が常に生じる」ので,「このような仕事は正社員がカバーすることになる」と指摘されます。また機械が担当する仕事も,「つねに人間がカバーすべき職務が生じ続けてしまう可能性が高い」ので,そうした作業をするのは正社員ということになるし,しかも中長期的には,ロボットの担当職務を再設計するというような高度な職務を行う必要が出てくるので,そのためにも正社員は必要だとされます。
 基本的な認識に異論はありません。ただ,それが正社員なのか,というところは疑問が残ります。私の描くシナリオは,高度化・複雑化する仕事は,人間がやる必要があったとしても,それをやれる人材が社内にいるかが問題ですし,職務の再設計のような仕事を担当するのはマネージャーであり,多くの普通の一般正社員ではないでしょうし,機械をカバーする人間の仕事というのは常にあるでしょう(事故対応的なものなど)が,そのために長期雇用の正社員を多く抱え込む必要がどれだけあるかが疑問なのです。
 これからは事業そのものがスリム化し,水平的ネットワークで仕事をすることになるので(これはデジタライゼーションのインパクトと言えます),長期雇用の正社員ではなく,その都度のプロジェクトに結集したプロのマネージャーたちが,社外の人材やAIなどの先端技術を活用しながら事業を営んでいくということになるのではないかと思っています。
 また,日本型雇用システムが変わっていくというのが,私の議論のベースにあります。「正社員」は,日本型雇用システムの産物です。それがAIやロボットの急速な技術革新によりスキル形成の仕組みがかわり,長期的に企業が雇うべき人材が減ることにより,日本型雇用システムととおに,その性格を変えていくと考えています。悲観的シナリオですが,多少悲観的であったほうが,政策を考えていくほうがよいのではないか,と居直って(?)います。

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