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2017年6月 6日 (火)

「IoT・ビッグデータ・AI等が雇用・労働に与える影響に関する研究会」報告書

 厚生労働省からの受託研究である,三菱UFJリサーチ&コンサルティングでの「IoT・ビッグデータ・AI等が雇用・労働に与える影響に関する研究会」の報告書が発表されました(座長は佐藤博樹)。http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000089555.html私も委員として参加しておりました。
 報告者は,豊富なアンケート,インタビュー調査に基づいており,今後の政策の参考にしてもらいたいです。同時に,デジタライゼーションのインパクトの可能性を,各企業が情報共有していく際の資料に使ってもらえればと思います。
  AIについては,日本経済新聞の先日の日曜版で,あのアルファ碁で有名なDeep Mindのデミス・ハサビス(Demis Hassabis)氏が登場し,「あらゆる企業が『AIを使っている』と吹聴するが,9割はその意味を理解せず,マーケティング用語として使っている。まさにAIバブルだ」と述べたとしたうえで,記事では,彼とのインタビュー内容を,「『アルファ碁』の勝利は世間のAIに対する関心を一段と高めたが,手放しでは喜べないという。AIは70年代と90年代の2度,『冬』を経験している。いずれも期待先行で成果が伴わず失望を買ったためだ。過剰な期待は修正されるとみるが,一方で「『正しいはしご』を登り始めた今回は過去のような『冬』は来ない」と予言する」とまとめています。
 バブルが起きているが,今回のAIブームは過去2回のブームとは違い,社会実装と結びつき,マーケット的にも成果につながるということでしょう。ただ,これは「正しいはしご」を登るということが条件ですが。
 今回の調査報告書の話に戻ると,今回の調査で,現在の日本企業で,イノベーティブな形でAIに対応しようとしているところは,ほとんどなかったように思います。AI人材不足もあり,それが経営者マインドに火をつけていない,という悪循環が起きているように思えることも問題です。
 経営者は,早く社会実装の道筋を示してほしいという受け身ではなく,積極的に人材をかき集めて,AIを活用したビジネスモデルの構築にむけた研究投資をもっとすべきでしょう。Hassabisが揶揄するように,AIをマーケティング用語としてしか使っていない企業には未来がないのです。だから,労働者のほうも,そうした未来のない企業をみながら将来の準備をしていてはいけないという,いつもの話につながります。
 厚生労働省が,こうした研究を自前であれ外注であれ推進することはとても大切ですが,問題はそれをどう政策にいかすかです。首相官邸側のややこしい動きから距離を置き,着々と政策を立案し実行していくことがAI時代に向けて求められる厚生労働省の役割でしょう。

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