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2017年5月23日 (火)

共同規制とは?

 昨日の日本経済新聞で,シェア経済の拡大に対応し,法規制と自主規制との中間として「共同規制」を作ろうとする動きがあることが紹介されていました。業界団体による自主ルールということですが,そこに官も入っているということで,官と民が「共同」で作るから「共同規制」ということのようです。
  共同規制というのは,私は使ったことがない言葉ですが,解雇規制について私が提案したガイドライン構想は,まさにこのようなものでした。すなわち,法令で解雇についてのガイドラインを作り,労使でそれを具体化したルールを就業規則に定め,裁判所は,そのルールのガイドライン該当性と,具体的になされた解雇のルール該当性のみを判断するというものです。これも,ある種の共同規制でしょう。私は分権型規制と呼んでいました(詳細は,拙著『解雇改革』(中央経済社)を参照)。
 基本的な価値は法令で定めるが,それ以上のことは情報面でも能力面でも,政府は当事者に劣後するので,それは当事者にまかせるというのが基本的な発想です。
 シェア経済の場合,ガイドラインとの適格性を判断するのは,裁判所ではなく,外部の有識者委員会のようですね。ここには弁護士などが入るのでしょう。それにより認証の信頼性を高めるということでしょう。
 ここで終わっておけばいいのだと思いますが,認証を受けた事業者に補助金を与えるとか(新聞では何の保険か知りませんが,保険料の減額があげられていました),そういう国費の投入はやめたほうがいいように思います。厚生労働省の「くるみん」程度のものでよく,適格マークの使用を事業者に認めるくらいでいいのではないでしょうか。
 政府が助成しようとすると,やはり助成の正当化のために,何らかの規制をする必要性が出てきて(不祥事とかがいったん起こると,国民からそういう要望がでる可能性もある),そして外部の有識者委員会のメンバーにも,役所関係の人が入ってきて,そのうち事業者団体にも役所からの天下りがやってきたりという,いつもの話が起こるというのは,心配しすぎでしょうか。
 業界の発展のためには,利用者が安心して利用できるようにすることが何より大切というのが出発点です。そのために必要なのが業界団体での自主的ルールであり,そのルールが妥当な内容で,そしてきちんと遵守されていることを利用者に知らせるために認証制度があるということでしょう。これは「共同規制」といった政府が何か深く関与しているような表現を使うのではなく,「自主規制」と呼んだほうがよいのでしょう。逆に「共同規制」と呼ぶような実態が,ガイドラインを作ること以上に存在するのなら,それには警戒の目を向けなければならないでしょう。
  ところで,業界団体というとギルドを想起させます。中世のギルドは,営業の自由を抑圧するものとなり,市民革命では敵視されました(フランス革命における中間団体否認の思想)。
 しかし,ギルド的なものは,欧州にはずっと残っているのだと思います。自分たちの職業的利益を守るために,自主的にルールを作り,それを遵守しない者には営業を認めないというのは,それほど突飛な発想ではありません。実は(産業別)労働組合もそのようなものであり,労働者として働く(営業する)以上は,労働組合が使用者団体と決めた労働協約を遵守しなければならず,抜け駆けは許さないこととしたのです(それが労働協約の「規範的効力(normative Wirkung)」です)。その意味でこうした中間団体は,カルテル的な機能ももちます。
 シェア経済の共同規制は,市場vs政府という点からみると,ルール形成能力は政府よりも市場のほうにあるといえそうなので,政府は出しゃばるなというのであれば,よく理解できるところです。前述のように,市場のオペレータの情報や判断能力のほうが高く,政府の失敗の危険性が大きそうな分野でもあります。
 それに,新しいビジネスについて,自主ルールからスタートするというのは,私は健全なことだと思っています。国が乗り出してくるのは,欧州的なsubsidiarity の発想からしても,最後のものであるべきです。今回の試みがどのように進展していくか,私も注目していきたいと思います。

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